「一般事務を続けてきたけれど、もっと専門性のある仕事に就きたい」「経理なら今の経験を活かせそう」——そう考えて、事務職から経理への転職を検討する方は多くいます。事務職は経理と接点が多い職種でもあり、キャリアチェンジの中では比較的つながりやすい道です。
この記事では、一般事務から経理を目指す方に向けて、転職の可能性と、事務経験のどこが評価されるのかを整理します。簿記の学習計画、志望動機の作り方、入りやすい求人の見分け方までを3つのステップにまとめ、会計実務の視点で具体的に解説します。事務職で培ったものを、次のキャリアにどうつなげるかを一緒に考えていきましょう。
一般事務から経理への転職は可能なのか
結論として、一般事務から経理への転職は十分に可能です。未経験からのキャリアチェンジにはなりますが、事務職は経理と業務の重なりが多く、転職先として現実的な選択肢です。請求書の処理や入金確認、データ入力など、事務職で日常的に行ってきた業務の中には、経理の入口業務と共通するものが少なくありません。
経理は、景気や業種を問わず必要とされる管理部門の職種です。一度スキルを身につければ業種を超えて通用するため、事務職から専門性のあるキャリアへ踏み出す道として、長期的な安定にもつながります。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag(ジョブタグ)」でも、経理事務の仕事内容や求められるスキルが整理されており、入職前に高度な専門経験を必須としない求人があることも示されています。
収入面の目安として、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の令和7年(2025年)調査(2026年3月公表)では、経理を含む「会計事務従事者」のきまって支給する現金給与額は月額34万2,500円、年間賞与その他特別給与額は101万2,400円でした。単純計算すると年収の目安は約512万円です。ただしこれは経験年数を問わない職種全体の平均(平均年齢44.0歳)であり、未経験からの入職時の水準ではありません。転職直後は下がるケースもあることを前提に、数年かけて担当範囲を広げていく前提で考えるほうが現実的です。年収の構造は経理の年収の相場と上げ方で詳しく整理しています。
事務経験のどこが経理で活かせるか
事務職から経理への転職では、「特別なスキルがない」と不安に感じる方もいます。しかし、事務職で培ったスキルの多くは、経理の現場でそのまま活きます。
| 事務で培ったもの | 経理での活かし方 |
|---|---|
| 正確な事務処理 | 仕訳入力・伝票処理での正確性 |
| ExcelやWordのスキル | 表計算・資料作成・データ集計 |
| 請求・入金の管理経験 | 売掛・買掛管理、支払業務 |
| 書類整理・期限管理 | 証憑管理、月次のスケジュール管理 |
| 社内外とのやり取り | 取引先・他部署・税理士との連絡 |
特に、請求書の発行や入金確認などお金に関わる業務を担当していた場合は、経理の入口業務と直結する経験としてアピールできます。事務職で当たり前にこなしてきた正確さや段取り力は、ミスが許されない経理にとって欠かせない素養です。経理に必要なスキルの全体像は、経理に必要なスキル一覧もあわせて確認してください。
一般事務と経理の仕事はどう違うか
活かせる部分がある一方で、働き方の性質は異なります。違いを理解しておくと、志望動機にも説得力が出て、入職後のギャップも減らせます。
| 比較の観点 | 一般事務 | 経理 |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 庶務・来客・備品・資料作成など幅広い | 会社のお金の記録と管理に特化 |
| 仕事の区切り | 日々の依頼に応じて処理する | 月次・年次の締めというサイクルで動く |
| 求められる正確さ | 業務によって幅がある | 数字の誤りが決算に直結するため厳格 |
| 繁閑の波 | 比較的平準 | 月初と決算期に集中しやすい |
| 専門性の蓄積 | 会社ごとの運用に依存しやすい | 簿記という共通言語で他社でも通用する |
「同じ事務だから移りやすい」ではなく、「区切りのある専門業務に移る」という認識で準備を進めるほうが、選考でも入職後もうまくいきます。繁忙期の実態が気になる場合は、求人票だけで判断せず面接で確認しましょう。
準備ステップ1:簿記の学習で基礎と意欲を示す
まず取り組みたいのが、日商簿記の学習です。簿記は経理の共通言語であり、未経験者にとっては学習していること自体が意欲の証明になります。3級から始め、可能であれば実務レベルの証明となる2級まで目指すと、応募できる求人の幅が広がりやすくなります。
難易度の目安は、商工会議所が公表する受験者データで確認できます。2026年6月14日実施の第173回統一試験の合格率は3級33.8%、2級15.1%でした。随時受験できるネット試験(CBT)は、2026年4月〜6月の集計で3級44.5%、2級31.9%と、統一試験より高い水準です。
働きながら学習する場合、統一試験は年3回と機会が限られるため、都合のよい日程で受けられるネット試験を選ぶ方も多くいます。転職活動の開始時期から逆算し、「いつまでに何級を取るか」を決めておくと、志望動機でも計画性を示せます。簿記がどう評価されるかは、簿記は転職に有利?を参考にしてください。
準備ステップ2:志望動機で「事務との違い」を語る
志望動機では、「なぜ事務から経理なのか」に納得感を持たせることが大切です。「同じ事務だから」ではなく、「数字の専門性を身につけて長く働きたい」「会社のお金の流れに深く関わりたい」といった前向きな目的として語ります。
そのうえで、事務で培った正確さや請求・入金の経験を、経理でどう活かせるかに結びつけると説得力が増します。次のような順序で組み立てると整理しやすくなります。
- 事務で数字やお金に関わった具体的な業務を挙げる(請求書発行、入金確認、経費精算など)
- その業務を通じて経理に関心を持った経緯を書く
- いま進めている準備(簿記の学習状況と受験予定)を添える
- 入社後にまず担いたい業務と、その先に目指す姿を書く
志望動機の組み立て方は、未経験から経理を目指す志望動機の書き方が参考になります。
準備ステップ3:入りやすい求人を見分ける
未経験からのキャリアチェンジでは、求人の入口選びが結果を大きく左右します。いきなり年次決算や連結決算を任されるような即戦力ポジションに応募してもミスマッチになりやすいため、未経験歓迎・アシスタント・教育体制のある求人を選ぶのが現実的です。
求人票では、次の観点を確認しましょう。
| 確認する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 必須要件と歓迎要件 | 「実務経験○年以上」が必須か歓迎かで難易度が変わる |
| 募集の背景 | 増員か欠員補充か。増員なら教育の余力があることが多い |
| 経理部門の人数 | 一人経理は未経験には負荷が高い。複数名体制が安心 |
| 担当予定の業務 | 日次業務から始められるか、いきなり決算主担当か |
| 使用している会計ソフト | 求人票に記載があれば、入職前に概要を調べておける |
| 繁忙期の残業時間 | 決算期の実態を面接で必ず確認する |
注意したいのは、同じ「未経験からの転職」でも、前職によってアピールの仕方が変わる点です。営業職から経理を目指す場合の活かし方は営業から経理へ転職するにはで解説していますが、事務職の場合は「お金まわりの正確な事務処理」という、経理により近い経験を前面に出せるのが強みです。自分の経験の中で、経理に最も近い業務を選んでアピールすることがポイントです。未経験から経理に入る全体像は、経理に未経験から転職するにはで詳しく解説しています。
転職を進めるときに気をつけたいこと
ひとつ目は、年齢による準備の差です。20代であればポテンシャル採用の枠が比較的広い一方、30代以降は「簿記2級を取得済み」「請求・支払業務の実務経験がある」など、具体的な材料を揃えたほうが選考は進みやすくなります。年齢が上がるほど、学習の進捗を先に形にしておく意味が大きくなります。
ふたつ目は、転職時期です。経理の求人は決算期の前後で動きが出ることがあり、入職時期を調整できると選択肢が広がる場合があります。ただし企業ごとの事情によるため、時期にこだわりすぎて応募機会を逃さないことも大切です。
みっつ目は、条件面の見極めです。未経験からの転職では、入職時の年収が現職より下がるケースもあります。数年かけて担当範囲を広げ、月次決算を任される段階でどう変わるかまで含めて考えると、判断しやすくなります。
まとめ
一般事務から経理への転職は、事務経験を経理の文脈で語り直し、準備を整えれば十分に現実的です。次のポイントを押さえましょう。
- 事務の正確な処理・Excel・請求/入金の経験は、経理で活きる強みになる
- 一般事務と経理は「締めのサイクル」と「求められる正確さ」が異なると理解しておく
- 簿記の学習で基礎と意欲を示す(可能なら2級まで)。受験時期まで決めて計画性を示す
- 志望動機は「数字の専門性を身につけたい」など前向きな目的に変換する
- 未経験歓迎・複数名体制・教育体制ありの入口求人を選ぶ
- 入職時の条件だけでなく、数年後の担当範囲まで見て判断する
Leapal Career は、経理職に特化した転職エージェントです。ご利用は完全無料。ご登録後、担当のキャリアアドバイザーがお電話で希望条件やこれまでのご経験をお伺いし、会計事務所を母体とする経理特化の知見で、事務経験を活かせる求人のご提案や志望動機の整理をサポートします。「事務の経験がどう活かせるか分からない」という段階でも構いません。まずは公式LINEからお気軽にご相談ください。
→ Leapal Career に無料相談する(公式LINE)
よくある質問
Q. 一般事務から経理に転職するのは難しいですか?
A. 未経験からのキャリアチェンジにはなりますが、事務職は経理と業務の重なりが多く、比較的つながりやすい道です。請求・入金の管理やExcelスキル、正確な事務処理の経験は経理でも活きます。簿記の学習で基礎と意欲を示し、未経験歓迎の入口求人を選ぶことで、転職の可能性を高められます。
Q. 事務職の経験は経理の選考でアピールになりますか?
A. なります。特に請求書の発行や入金確認などお金に関わる業務を担当していた場合は、経理の入口業務と直結する経験です。また、正確な事務処理、Excelでの資料作成、書類整理や期限管理の経験も、経理に欠かせない素養として評価されます。経理に最も近い業務を選んでアピールするのがポイントです。
Q. 事務から経理に転職するには簿記は必要ですか?
A. 必須ではない求人もありますが、学習しておくことをおすすめします。簿記は経理の共通言語であり、未経験者にとっては学習していること自体が意欲のアピールになります。3級から始め、可能であれば実務レベルの証明となる2級まで目指すと、応募できる求人の幅が広がりやすくなります。統一試験は年3回のため、日程を選べるネット試験を活用する方法もあります。
Q. 事務職と経理では、仕事の進め方はどう違いますか?
A. 一般事務が幅広い庶務を担うのに対し、経理は会社のお金の流れを記録・管理する専門業務が中心です。月次・年次の締めという決まったサイクルで動き、数字の正確性がより強く求められます。繁忙期が決算期に集中しやすい点も違いです。事務で培った正確さや段取り力を土台に、簿記の知識を加えていくイメージを持つと、転職後のギャップを減らせます。
Q. 30代から一般事務を経て経理に転職することはできますか?
A. 可能なケースはありますが、20代のポテンシャル採用と比べると、選考で示せる材料をより具体的に揃える必要があります。簿記2級の取得、請求・支払・経費精算といったお金に関わる実務の経験、使用してきた会計ソフトや業務システムの範囲などを整理しておくと、選考が進みやすくなります。年齢だけで判断されるわけではないため、準備の中身で差を作ることが重要です。
この記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗、およびキャリアアドバイザーの鳥羽友利絵が監修しています。
最終更新日: 2026年8月28日