「経理の年収はどのくらいが相場なのか」「自分の年収は低いのではないか」「どうすれば上げられるのか」——経理として働くなかで、年収に関する疑問や不安を持つ方は多くいます。経理の年収は担当する業務の範囲や企業規模によって幅が大きく、平均値だけを見ても自分の位置がつかみにくいのが実情です。
この記事では、厚生労働省が2026年に公表した最新の公的統計をもとに、経理の年収を「年代別」「経験年数別」「企業規模別」の実数で整理します。あわせて、平均より実感に近い「中央値」、転職で賃金が増えた人の割合という最新データも紹介し、年収を左右する4つの要因と現実的な上げ方を会計実務の視点から解説します。数値はあくまで目安であり、個々の状況で変わる点も含めて見ていきましょう。
経理の平均年収は約512万円(2026年3月公表の最新統計)
経理の年収を考えるうえで、もっとも信頼できる出発点が厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。この調査では、職種の小分類として「会計事務従事者」(経理・会計の事務に従事する人)が集計されています。
最新の令和7年(2025年)調査(2026年3月24日公表、企業規模10人以上、産業計、男女計)では、会計事務従事者の賃金は次のとおりです。
| 項目 | 令和7年調査の数値 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額(月額) | 34万2,500円 |
| 所定内給与額(月額・残業代等を除く) | 32万1,300円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 101万2,400円 |
| 平均年齢 | 44.0歳 |
| 平均勤続年数 | 12.8年 |
| 集計対象の労働者数 | 約46万6,000人 |
月額に12を掛け、年間賞与を足して単純計算すると、年収の目安は約512万円(34万2,500円×12+101万2,400円=512万2,400円)になります。残業代を含まない所定内給与額で計算した場合は、約487万円です。
出典となる職種別の詳細データは、政府統計ポータルe-Stat の賃金構造基本統計調査で誰でも確認できます。
平均より「中央値」のほうが実感に近い
512万円という平均を見て「自分はそんなにもらっていない」と感じた方もいるかもしれません。年収の平均は、一部の高い層に引っ張られて高めに出る傾向があります。同じ令和7年調査には、会計事務従事者の所定内給与額(月額)の分布も掲載されています。
| 分布上の位置 | 所定内給与額(月額) | 読み方 |
|---|---|---|
| 下から10%(第1・十分位) | 20万9,300円 | これより低い人が1割 |
| 下から25%(第1・四分位) | 24万1,600円 | これより低い人が4分の1 |
| 真ん中(中位数) | 29万1,100円 | ちょうど真ん中の人 |
| 上から25%(第3・四分位) | 36万7,100円 | これより高い人が4分の1 |
| 上から10%(第9・十分位) | 46万9,700円 | これより高い人が1割 |
(令和7年賃金構造基本統計調査 職種第17表、企業規模10人以上・産業計・男女計。残業代・賞与を含まない月額)
真ん中の人の所定内給与は月29万1,100円で、平均の32万1,300円より約3万円低くなっています。自分の給与明細の「基本給+諸手当(残業代を除く)」をこの表に当てはめると、平均と比べるよりも現実的に自分の位置をつかめます。
年代別に見た経理の年収相場
同じ調査の年齢階級別データから、会計事務従事者の年収目安(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与)を計算すると、次のようになります。
| 年齢階級 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収の目安 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 25万4,700円 | 47万5,200円 | 約353万円 |
| 25〜29歳 | 28万3,400円 | 83万9,500円 | 約424万円 |
| 30〜34歳 | 32万4,300円 | 95万2,100円 | 約484万円 |
| 35〜39歳 | 35万9,600円 | 104万9,100円 | 約536万円 |
| 40〜44歳 | 35万5,900円 | 113万1,300円 | 約540万円 |
| 45〜49歳 | 37万4,200円 | 117万5,000円 | 約567万円 |
| 50〜54歳 | 37万7,600円 | 114万1,800円 | 約567万円 |
| 55〜59歳 | 38万7,500円 | 132万4,800円 | 約597万円 |
(令和7年賃金構造基本統計調査、企業規模10人以上・産業計・男女計をもとに算出)
このデータから読み取れるのは、20代後半から30代前半にかけての伸びが大きいことです。25〜29歳の約424万円から30〜34歳の約484万円へ、およそ60万円上がっています。この時期は、月次決算を一人で締められるようになり、年次決算にも関与し始める段階と重なります。担当できる会計範囲の広がりが、そのまま年収に反映されやすい時期といえます。
一方、40代前半では伸びが一度緩やかになります。担当者としての経験値だけでは上がりにくくなり、連結・開示・経営管理といった上位の業務か、マネジメントに踏み出せるかどうかが分かれ目になる傾向があります。
なお、男女別に同じ方法で計算すると、男性が約627万円、女性が約449万円です。この差には、役職者比率や勤続年数、担当範囲の違いなど複数の要因が含まれており、同じ仕事の対価の差を直接示すものではない点に注意が必要です。
経験年数別に見た経理の年収
年齢よりも「経理としての経験年数」で比べたい方もいるでしょう。同じ令和7年調査の経験年数階級別データ(所定内給与額×12+年間賞与)では、次のようになります。
| 経理の経験年数 | 所定内給与額(月額) | 年間賞与 | 年収の目安(残業代除く) |
|---|---|---|---|
| 0年 | 27万8,600円 | 31万300円 | 約365万円 |
| 1〜4年 | 28万5,200円 | 88万7,500円 | 約431万円 |
| 5〜9年 | 31万1,400円 | 103万1,900円 | 約477万円 |
| 10〜14年 | 32万3,300円 | 110万6,300円 | 約499万円 |
| 15年以上 | 35万9,300円 | 123万4,400円 | 約555万円 |
(令和7年賃金構造基本統計調査 職種第10表、企業規模10人以上・産業計・男女計をもとに算出。残業代を含まないため、年代別の表より低めに出ます)
経験0年は、入社1年目で賞与の支給対象期間が短いケースが多いため、賞与が低く出ている点に注意が必要です。経験1〜4年から5〜9年にかけて約46万円、10〜14年から15年以上にかけて約56万円と、節目ごとに段階的に上がっていく傾向が見て取れます。経験年数そのものより、その期間にどこまで担当範囲を広げたかが次の段階に進めるかどうかを左右します。
経理の年収を左右する4つの要因
経理の年収は、次の4つの要因で大きく変わります。自分がどこを伸ばせるかを考える手がかりになります。
| 要因 | 年収が上がりやすい方向 |
|---|---|
| 担当範囲 | 月次決算のみ < 年次決算 < 連結・開示・経営管理 |
| 企業規模・属性 | 中小 < 大手・上場、内資 < 外資のケースもある |
| 役職・マネジメント | 担当者 < リーダー < マネージャー・財務責任者 |
| 資格・希少スキル | 簿記2級 < 簿記1級・USCPA・IFRS・IPO準備経験 |
担当範囲の広さ
もっとも影響が大きいのが、担当できる会計範囲です。月次決算のみを担当する場合より、年次決算・連結決算・開示・経営管理まで担える場合のほうが、年収レンジは上がる傾向があります。年代別データで30代前半に伸びが集中しているのも、この範囲拡大が起きやすい時期だからと考えられます。資金調達や資金繰りまで視野を広げたい方は、経理と財務の違いで役割と年収の違いを確認しておくと、進む方向を決めやすくなります。
企業規模による差は年間100万円以上
企業規模の影響は、統計にもはっきり表れています。同じ令和7年調査を企業規模別に見ると、会計事務従事者の年収目安は次のとおりです。
| 企業規模 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収の目安 |
|---|---|---|---|
| 10〜99人 | 32万4,800円 | 81万900円 | 約471万円 |
| 100〜999人 | 33万8,100円 | 100万6,800円 | 約506万円 |
| 1,000人以上 | 37万4,500円 | 130万2,700円 | 約580万円 |
10〜99人規模と1,000人以上規模では、年収の目安に約109万円の差があります。差の多くは年間賞与から生じており、月給よりも賞与水準で開いている点が特徴です。
ただし、規模だけで判断しないことが大切です。企業規模が大きいほど業務が分業化され、一人あたりの担当範囲が狭くなることもあります。中小企業では、月次から年次決算、資金繰りまで幅広く担当できるぶん、経験の幅が広がりやすいという側面もあります。どちらが有利と一概に言えるものではなく、自分が伸ばしたい方向と照らして考えることが大切です。
役職・マネジメント
担当者からリーダー、マネージャー、財務責任者へと役職が上がるにつれて、年収レンジも上がる傾向があります。40代以降で年収を伸ばすうえでは、マネジメント経験が大きな要素になります。具体的な進み方は経理マネージャー・財務責任者を目指すキャリアの作り方で整理しています。
資格・希少スキル
連結決算・IFRS・IPO準備など、対応できる人が少ない希少性の高いスキルは、評価されやすい傾向があります。日商簿記1級やUSCPA(=米国公認会計士)などの高度資格も、専門性を示す材料になります。どの資格が自分の方向に合うかは経理の資格おすすめ7選で比較できます。
転職で年収は上がる?最新の公的データ
「転職すれば年収は上がるのか」は、多くの方が気になる点です。厚生労働省の令和7年雇用動向調査(2026年8月31日公表)では、2025年に転職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかが集計されています。
| 前職と比べた賃金 | 割合 |
|---|---|
| 増加した | 40.8%(うち1割以上の増加 28.2%) |
| 変わらない | 25.5% |
| 減少した | 31.0%(うち1割以上の減少 21.9%) |
(令和7年雇用動向調査「転職入職者の賃金変動状況」。全産業・全職種の転職入職者の集計で、経理職に限った数値ではありません)
年齢別に見ると、「増加」した割合は25〜29歳で49.8%、30〜34歳で48.6%、35〜39歳で43.5%、40〜44歳で44.9%、45〜49歳で41.1%と、40代までは4割を超えています。一方、50〜54歳では29.4%に下がり、「減少」が「増加」を上回ります。
この数字から言えるのは、転職すれば必ず上がるわけではなく、増える人と減る人がいずれも一定数いるということです。経理の場合、年収が上がりやすいのは、担当範囲が広がるポジションや、賞与水準の高い規模の企業へ移るケースです。反対に、担当範囲が今より狭くなる求人や、残業代込みの提示額だけで比べた場合は、実質的に下がることもあります。応募前に経理の求人票の見方と選び方で業務範囲と給与の内訳を確認しておくと、ミスマッチを防ぎやすくなります。
自分の年収を相場と比べる3ステップ
統計を自分ごとにするには、次の3ステップで確認すると整理しやすくなります。
- 月の所定内給与で位置を測る:給与明細の残業代を除いた月額を、中央値(29万1,100円)や四分位の表に当てはめます
- 年代と経験年数の両方で比べる:年代別の表と経験年数別の表の両方を見て、どちらかで大きく下回っていないかを確認します
- 担当範囲と企業規模で補正する:月次中心か年次決算・連結まで担っているか、在籍企業の規模はどうかを踏まえ、相場から離れている理由を考えます
3つ目で「担当範囲のわりに低い」と分かった場合は、転職で評価を見直す余地があるサインです。反対に「担当範囲が月次中心だから相場並み」と分かった場合は、まず現職で年次決算などに関わる機会を取りにいくほうが、年収を上げる近道になるケースもあります。
経理が年収を上げる3つの方法
年収を上げる現実的な方法は、大きく3つあります。
ひとつ目は、担当範囲を広げることです。現職で年次決算や連結、経営管理に関わる機会を取りにいくことで、市場価値が高まります。年代別・経験年数別のデータが示すとおり、範囲の拡大は年収の伸びと連動しています。
ふたつ目は、希少性の高いスキルや資格を身につけることです。連結・IFRS・IPO準備の経験や、簿記1級・USCPAなどは、評価につながりやすい傾向があります。年収とキャリアの方向は連動するため、経理のキャリアパス4つの選択肢もあわせて整理すると、伸ばすべき方向が見えてきます。
みっつ目は、転職によって評価を見直すことです。同じ担当範囲でも、企業規模や役職によって年収水準は異なります。企業規模別のデータが示すように、規模の違いだけで年間100万円前後の差が生まれることもあります。転職で年収を上げるには、これまでの実績を具体的に伝えることが重要で、経理の職務経歴書の書き方で成果を数値化して示すことが効果的です。なお、自動化が進むなかで価値が上がる業務を見極めることも、長期的な年収につながります(経理の仕事はなくなる?AI時代に価値が上がる経理スキル)。
まとめ
経理の年収は、平均値だけでなく、自分の年代・経験年数・企業規模・担当範囲と照らして考えることが大切です。次のポイントを押さえておきましょう。
- 経理(会計事務従事者)の平均年収の目安は約512万円(令和7年調査、2026年3月公表)
- 所定内給与の中央値は月29万1,100円で、平均より約3万円低い
- 年代別では20代前半の約353万円から50代後半の約597万円まで、30代前半にかけての伸びが大きい
- 企業規模10〜99人と1,000人以上では、年収の目安に約109万円の差がある
- 2025年の転職者のうち賃金が増えた人は40.8%。上がるかどうかは移る先の担当範囲と規模しだい
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よくある質問
Q. 経理の年収の中央値はいくらですか?
A. 厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、会計事務従事者の所定内給与額(残業代・賞与を除く月額)の中位数は29万1,100円です。平均の32万1,300円より約3万円低く、平均だけを見るより実感に近い目安になります。なお、この調査で分布が公表されているのは月額の所定内給与で、賞与を含む年収の中央値は公表されていません。
Q. 経理の年収は低いと聞きますが、本当ですか?
A. 一概には言えません。統計上の平均は約512万円で、45歳以降では約567万〜597万円の水準です。ただし月次決算が中心のポジションでは伸び悩むこともあります。年次決算・連結・経営管理まで担えるようになると年収レンジは上がる傾向があるため、担当範囲を広げることが現実的な打ち手になります。
Q. 中小企業の経理から大手企業に転職すると年収は上がりますか?
A. 上がるケースはありますが、必ずではありません。統計上は企業規模10〜99人で約471万円、1,000人以上で約580万円と差がありますが、これは役職構成や担当範囲の違いも含んだ平均です。実際の提示額は、応募先の等級制度と自分の担当範囲の評価で決まるため、選考の早い段階でレンジを確認することをおすすめします。
Q. 経理で年収を上げるには、資格を取るべきですか?
A. 資格は年収を上げる要素のひとつですが、それだけで決まるわけではありません。簿記1級やUSCPAなどの高度資格は専門性を示す材料になりますが、実務でどの会計範囲を担えるかが評価の中心です。資格と実務経験を組み合わせて伸ばすのが効果的です。
Q. 年収交渉では何を材料にすればよいですか?
A. 担当した会計範囲(月次・年次・連結・開示など)、扱った規模感(売上高・伝票量・部門人数)、改善の実績(決算日数の短縮など)の3点を数値で示すことが基本です。統計上の相場は交渉の参考にはなりますが、根拠として使うより、自分の実績で語るほうが説得力があります。
この記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗、およびキャリアアドバイザーの鳥羽友利絵が監修しています。
最終更新日: 2026年9月29日