経理の転職で「職務経歴書に何を書けばよいか分からない」「経験を書き出しても、ただの業務の羅列になってしまう」と悩む方は多くいます。経理は担当する範囲が人によって大きく異なる専門職のため、書き方しだいで「任せられる人材」と伝わるかどうかが変わります。
書類選考でつまずく典型が、「経理業務全般を担当」とまとめてしまうパターンです。書いた本人にとっては幅広さのアピールでも、採用担当から見ると「何をどこまで任せられるか分からない」書類になってしまいます。
この記事では、経理の職務経歴書で採用担当が見ている5つの項目を整理したうえで、そのまま書き換えて使える見本(経験者向け・経験が浅い人向け)と職務要約の例文3パターンを紹介します。担当した会計範囲・会計ソフト・規模感・成果の数値化の伝え方、形式の選び方、避けたい失敗例まで、会計実務の視点からまとめました。
経理の職務経歴書で採用担当が見ているポイント
職務経歴書は、企業が様式を指定しない限り決まった形式はなく、A4で1〜2枚程度に自由に記載する書類です。厚生労働省(ハローワーク)の履歴書・職務経歴書の書き方でも、職務経歴書は履歴書では書ききれない具体的なキャリアをアピールするための書類と位置づけられ、作成手順や記載例をまとめたパンフレットが公開されています。自由だからこそ、経理職では「何を、どこまで書くか」で差がつきます。
「担当できる会計範囲」がもっとも重要
採用担当が最初に確認するのは、応募者がどの業務をどこまで担当できるかです。経理の仕事は、仕訳・伝票処理といった日次業務から、月次決算(=毎月の業績を締める作業)、年次決算、連結決算、税務申告補助、開示業務まで幅があります。
同じ「経理5年」でも、月次決算のみの5年と、年次決算・連結まで関与した5年では、任せられる仕事がまったく異なります。だからこそ、年数ではなく範囲と関与の深さで書くことが評価につながります。
| よくある書き方 | 評価につながる書き方 |
|---|---|
| 経理業務全般を担当 | 月次決算を単独で担当(3年)、年次決算は上長の補助として関与(2年) |
| 決算業務を経験 | 月次決算の締め(10営業日)、勘定科目内訳明細書の作成、監査法人への資料提出を担当 |
| 会計ソフトを使用 | 勘定奉行クラウドを4年使用。freeeへの移行プロジェクトにも参加 |
| 業務効率化に貢献 | 経費精算をペーパーレス化し、月20時間の処理時間を削減 |
規模感と使用ソフトで実務イメージが伝わる
同じ「月次決算」でも、扱う伝票の量や会社の規模によって業務の難易度は変わります。在籍企業の売上規模・従業員数、処理した伝票や取引の量、経理部門の人数と分担を添えると、採用担当が業務の実態をイメージしやすくなります。あわせて、使用した会計ソフトやERP(freee・マネーフォワード・勘定奉行・SAP・OBIC7など)を明記すると、即戦力かどうかの判断材料になります。Excelの関数やピボットテーブルなど、集計・分析のスキルも具体的に書ける項目です(書き方は経理に必要なExcelスキルで整理しています)。
経理の職務経歴書の基本構成(5つのブロック)
経理の職務経歴書は、次の5つのブロックで構成すると、過不足なくまとまります。
| ブロック | 書く内容 | 経理ならではのポイント |
|---|---|---|
| 職務要約 | 経歴を3〜5行で要約 | 担当した会計範囲と年数を冒頭で示す |
| 職務経歴 | 在籍企業ごとの業務詳細 | 会計範囲ごとに見出しを立て、箇条書きで具体化 |
| 活かせる経験・スキル | 強みの整理 | 効率化・早期化の経験、会計ソフトの習熟度 |
| 資格 | 取得資格 | 日商簿記など、級と取得時期を明記 |
| 自己PR | 貢献できることの提示 | 応募先で再現できる強みに絞る |
形式は「逆編年体」が経理には使いやすい
職務経歴の並べ方には、主に3つの形式があります。経理は直近の担当範囲がもっとも評価されやすいため、新しい経歴から書く逆編年体が使いやすい形式です。
| 形式 | 並べ方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 逆編年体 | 新しい経歴から古い経歴へ | 直近で年次決算・連結など上位の業務を担当している人 |
| 編年体 | 古い経歴から新しい経歴へ | 在籍社数が少なく、段階的に範囲を広げてきた流れを見せたい人 |
| キャリア式 | 業務の種類ごとにまとめる | 会計事務所や複数社で、同じ業務を繰り返し経験してきた人 |
職務要約は「範囲・規模・ソフト・成果」を3〜5行で
冒頭の職務要約は、採用担当が最初に読む部分です。ここで担当範囲が伝わらないと、その先を丁寧に読んでもらえません。範囲(月次・年次・税務申告補助)、規模(売上・人数・部門体制)、ソフト、成果の4要素を入れると、3〜5行で必要な情報が収まります。立場別の例文は次のとおりです。
例文1:経理経験6年・月次〜年次決算を担当してきたケース
製造業(売上高約80億円・従業員約300名)の経理部にて、6年間経理業務に従事しました。経理部4名体制のなかで、月次決算の単独担当(4年)と、年次決算・税務申告補助(3年)を経験しています。会計ソフトは勘定奉行を6年間使用し、直近では月次決算の早期化に取り組み、締めを10営業日から7営業日に短縮しました。
例文2:経理経験2年・日次業務が中心のケース
IT企業(従業員約80名)の管理部にて、2年間経理業務を担当しています。仕訳入力・売掛金の入金消込・支払業務などの日次業務を中心に、月次決算では固定資産台帳の更新と経費の計上を担当しています。会計ソフトはマネーフォワード クラウド会計を使用しています。日商簿記2級を取得しており、今後は月次決算全体の締めを担えるよう準備を進めています。
例文3:経理リーダー・管理職候補のケース
上場企業グループの子会社(売上高約150億円)で経理課のリーダーとして5名をまとめ、月次・年次決算と親会社への連結パッケージ提出を統括しています。監査法人対応の窓口を担い、決算スケジュールの設計と進捗管理を行ってきました。担当者の業務分担を見直し、年次決算の残業時間を前年比で約3割削減しました。
職務経歴は「会計範囲ごとの見出し+箇条書き」で書く
職務経歴欄は、ただ業務を並べるのではなく、「【月次決算】(3年)」「【連結決算補助】(2年)」のように業務の種類ごとに見出しを立て、その下に担当内容を箇条書きで書くと読みやすくなります。
見出しの立て方としては、日次業務(仕訳・伝票処理・売掛買掛管理)、月次決算、年次決算、連結・開示、税務申告補助、資金管理といった区分が使いやすいものです。自分が関与していない範囲は無理に書かず、関与した範囲を深く書くほうが評価されます。
成果は数値で示す
経理は成果を数字で語りやすい職種です。「月次決算を10営業日から7営業日に短縮」「経費精算をペーパーレス化し処理時間を削減」のように、取り組みと結果を数値で示すと説得力が増します。
数値化の切り口は、決算日数、処理件数・伝票枚数、削減した時間、対応した子会社数、担当した勘定科目の範囲など複数あります。大きな実績でなくても、業務改善の工夫は十分に評価されます。
【見本】経理の職務経歴書(経験者向け)
ここからは、月次から年次決算まで担当してきた経理経験者を想定した見本です。【】の部分を自分の経歴に置き換えて使ってください。
職務経歴書
【提出日】現在 氏名:【氏名】
■職務要約
【業種】(売上高約【金額】・従業員約【人数】名)の経理部にて【年数】年間、経理業務に従事しました。経理部【人数】名体制のなかで月次決算の単独担当と年次決算・税務申告補助を経験し、【会計ソフト名】を【年数】年使用しています。直近では月次決算の早期化に取り組み、締めを【before】営業日から【after】営業日に短縮しました。
■職務経歴
| 期間 | 会社概要 | 担当業務 |
|---|---|---|
| 【20XX年4月〜現在】 | 【会社名】(【業種】、売上高約【金額】、従業員約【人数】名)経理部 | 下記の会計範囲ごとの業務 |
- 【日次業務】(【年数】年)仕訳入力、売掛金・買掛金管理、支払業務(月約【件数】件)
- 【月次決算】(【年数】年・単独担当)月次試算表の作成、発生主義による費用計上、部門別損益の集計と経営会議資料の作成
- 【年次決算】(【年数】年・上長の補助)決算整理仕訳、勘定科目内訳明細書の作成、監査法人・税理士への資料提出
- 【業務改善】経費精算のペーパーレス化を主導し、月約【時間】時間の処理時間を削減
■活かせる経験・スキル
- 月次決算を単独で締めた経験と、早期化の取り組み
- 会計ソフト:【ソフト名】(【年数】年)、Excel:VLOOKUP・ピボットテーブルでの集計資料作成
- 監査法人・税理士など社外関係者との調整
■資格
- 日商簿記検定2級(【20XX年X月】取得)
■自己PR
月次決算を期限内に正確に締める仕組みづくりを強みとしています。締め作業の手順を洗い出し、チェックリスト化と前倒しできる作業の切り出しを行ったことで、早期化と引き継ぎのしやすさを両立できました。貴社でも、決算の正確さと効率化の両面で貢献したいと考えています。
見本の自己PRは要点だけにしています。強みの見つけ方や例文は経理の転職の自己PRで詳しく紹介しています。
【見本】経験が浅い人・担当範囲が限定的な人向け
経理経験が1〜2年の方や、担当が日次業務中心の方は、できる業務を正確に書いたうえで、伸びしろを示す構成にします。
■職務要約
【業種】(従業員約【人数】名)の管理部にて、【年数】年間経理業務を担当しています。仕訳入力・入金消込・支払業務などの日次業務を中心に、月次決算の一部(【担当範囲】)を担当しています。日商簿記【級】を取得しており、月次決算全体を担えるよう準備を進めています。
■職務経歴(担当業務の書き方例)
- 【日次業務】仕訳入力(月約【件数】件)、売掛金の入金消込、支払データの作成
- 【月次決算の一部】固定資産台帳の更新、経費の未払計上、残高の照合
- 【工夫した点】入金消込の照合手順をExcelで整理し、確認漏れを防ぐ仕組みを作成
経験年数が短くても、処理量や工夫を具体的に書けば、実務に向き合う姿勢は十分に伝わります。
経験年数・キャリア別の書き分け
職務経歴書は、自分のキャリア段階によって強調する点を変えると効果的です。
経験が豊富な方は、担当できる会計範囲の広さと深さ、効率化の実績を前面に出します。連結や開示、税務申告補助まで関与した経験があれば、それが差別化のポイントになります。
管理職・リーダーを目指す方は、チームの人数・分担の設計、他部署や監査法人との連携、決算スケジュール管理などのマネジメント経験を加えます。担当範囲の広さは年収レンジとも連動するため、経理の年収相場で自分の位置を確認したうえで、書くべき実績を選ぶと軸が定まります。
経験が浅い方や担当範囲が限定的な方は、いまできる業務を正確に書いたうえで、簿記の学習状況や業務改善の小さな工夫を添え、伸びしろを示します。
職務経歴書を整えたら、経理の転職の志望動機で動機を整理し、経理の面接でよく聞かれる質問とあわせて準備すると、書類から面接まで一貫した対策ができます。面接では職務経歴書の内容が深掘りされるため、書いた範囲を具体的に説明できるようにしておくことも大切です(面接でつまずきやすい点は経理の転職面接で落ちる7つの理由で解説しています)。
経理の職務経歴書でよくある失敗
ひとつ目は、業務の羅列で担当範囲が見えないことです。「経理業務全般」とだけ書くと、何をどこまで任せられるかが伝わりません。会計範囲を具体的に分解して書きましょう。
ふたつ目は、会計ソフト名や規模感の欠落です。実務環境が分からないと、採用担当は即戦力かどうかを判断できません。
みっつ目は、成果がないことです。決算日数・処理件数・削減時間など、数値化できる取り組みがないかを改めて棚卸しすると、書ける材料が見つかるケースが多くあります。
よっつ目は、誤字や数字の不一致です。数字を扱う職種だからこそ、書類の正確さそのものが評価対象になります。在籍期間と年数の計算、売上規模の桁など、提出前に必ず見直しましょう。
なお資格欄では、日商簿記を記載するケースが多いです。日商簿記は商工会議所が主催する検定で、公式案内では3級が「基本的な商業簿記」、2級が「高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)」と位置づけられています(2026年9月時点。詳細は商工会議所の検定試験で確認できます)。2級・3級には統一試験とネット試験があり、どちらで合格しても資格としての扱いは同じです。級と取得年月を明記したうえで、学んだ知識を実務にどう活かしているかを自己PRで補足すると、より伝わりやすくなります。
まとめ
経理の職務経歴書は、「何を、どこまで、どんな環境で」担当したかを具体的に示すことが評価の鍵です。次のポイントを押さえて仕上げましょう。
- 「経理業務全般」と書かず、担当した会計範囲を分解して関与の深さと年数を明記する
- 職務要約の3〜5行に「範囲・規模・ソフト・成果」を入れる
- 形式は、直近の担当範囲が伝わりやすい逆編年体が使いやすい
- 使用した会計ソフト・ERPを製品名と年数で書く
- 成果は「10営業日から7営業日へ短縮」など数値で示す
- 誤字・数字の不一致がないか、提出前に必ず見直す
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よくある質問
Q. 「経理業務全般を担当」と書くのはなぜ良くないのですか?
A. 採用担当が知りたいのは、任せられる業務の範囲と深さだからです。「全般」では、月次決算までなのか、年次決算や連結まで担えるのかが判断できません。日次業務・月次決算・年次決算・連結・税務申告補助といった区分に分解し、それぞれの関与年数と関与の深さ(単独担当か補助か)を書くと、評価につながります。
Q. 経理の職務経歴書は何枚にまとめるべきですか?
A. A4で1〜2枚程度が目安です。経験が豊富で書く内容が多い場合でも、要点を絞って2枚以内にまとめると読みやすくなります。担当した会計範囲・規模感・成果に情報を集中させ、関連の薄い業務は簡潔にとどめましょう。
Q. 職務経歴書のテンプレートは何を使えばよいですか?
A. 応募先から様式の指定がなければ、自由な形式で作成して問題ありません。この記事の見本のように「職務要約・職務経歴・活かせる経験・資格・自己PR」の5ブロックで組み立てると、経理に必要な情報が漏れにくくなります。ハローワークでは作成手順や記載例をまとめたパンフレットが公開されており、窓口で書類の添削アドバイスも受けられます。
Q. 担当範囲が狭い場合、職務経歴書に書けることが少なくて不安です。
A. いまできる業務を正確に書くことが第一です。仕訳や月次の一部でも、使用した会計ソフトや処理した量、正確さへの工夫を具体的に示せば十分にアピールになります。あわせて簿記の学習状況や業務改善の小さな工夫を添えると、伸びしろが伝わります。
Q. 職務経歴書と志望動機は、どちらを先に準備すべきですか?
A. まず職務経歴書で経験を棚卸しすると、志望動機の材料が整理されるため、職務経歴書を先に作る方がスムーズなケースが多いです。経験を書き出したうえで、現職では実現できないこと・次に挑戦したいことを探すと、一貫した志望動機につながります。
この記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗、およびキャリアアドバイザーの鳥羽友利絵が監修しています。
最終更新日: 2026年9月29日