「経理の転職市場は今どうなっているのか」「自分の経験は市場で評価されるのか」——転職を考える経理の方が気になるのが、市場の動向です。市場の状況は時期によって変わるため、最新の傾向と、その中で評価される人材の特徴を押さえておくことが大切です。
この記事では、経理の転職市場の現状を公的統計をもとに整理したうえで、需要が高い経理人材の特徴、デジタル化や働き方のトレンド、そして市場で評価されるための準備を、会計実務の視点から解説します。
経理の転職市場の現状
まず、求人市場全体の動向から見ていきます。
全体の求人動向
厚生労働省の一般職業紹介状況(職業安定業務統計)によると、全体の有効求人倍率は2025年度(令和7年度)平均で1.20倍、2026年に入っても1.1倍台で推移しています(2026年時点)。これは公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職の状況を示すもので、全体としては求人が求職をやや上回る状況が続いていることが分かります。なお、この数値は全職種の平均であり、職種や地域によって状況は異なります。
経理は景気・業種を問わず必要とされる
経理は、どの企業にも決算・支払・請求といった業務がある管理部門です。景気や業種を問わず一定の需要があり、簿記や決算のスキルは業種を超えて通用するため、経験を活かして転職しやすい職種といえます。一方で、未経験歓迎の求人は限られる傾向があり、入口の設計が重要になります。
需要が高い経理人材の特徴
同じ経理でも、市場で評価されやすい人材には特徴があります。
| 需要が高い人材 | 需要が限られやすい人材 |
|---|---|
| 年次決算・連結・開示まで担える | 定型的な記帳・入力が中心 |
| 経営管理・分析ができる | 担当範囲が限定的で広げていない |
| 会計+ITリテラシーがある | 新しいツールへの対応が乏しい |
| 希少スキル(IFRS・IPO等)を持つ | 汎用的な業務のみ |
決算・経営管理まで担える人材
定型的な記帳・仕訳は自動化が進む一方、決算や経営管理など判断を伴う業務を担える人材の需要は底堅い傾向があります。担当できる会計範囲が広いほど、市場価値が高まりやすくなります。
会計+ITリテラシー
クラウド会計やデータを使いこなせる人材は、自動化が進む環境でも価値を発揮しやすい傾向です。必要なスキルの全体像は経理に必要なスキル一覧|未経験〜管理職まで段階別に解説で整理しています。
市場のトレンド:デジタル化と働き方
経理の転職市場を理解するうえで、2つのトレンドを押さえておくとよいでしょう。
ひとつは会計のデジタル化です。クラウド会計、電子帳簿保存法、インボイス制度への対応が進み、定型業務の自動化と、専門業務へのシフトが起きています。この流れの中で価値が高まるスキルは経理の仕事はなくなる?AI時代に価値が上がる経理スキルで詳しく解説しています。
もうひとつは働き方の多様化です。リモート可の経理求人も見られるようになっていますが、企業の電子化の度合いによって状況は分かれます。残業の実態とあわせて、働き方は経理は残業が多い?繁忙期の実態と残業を抑える職場の見極め方も参考にしてください。
業界・企業フェーズによる求人の違い
経理は業種を問わず必要とされますが、企業のフェーズによって求められる経理像は異なります。求人を選ぶ際の視点として押さえておくとよいでしょう。
成長企業や上場準備(IPO準備)中の企業では、内部統制の整備や開示体制の構築に関わる経験が求められ、こうしたフェーズを担える人材の需要が見られます。上場企業では、連結決算や開示、監査対応など高度な業務の比重が高まります。一方、中小企業では、月次から年次決算、資金繰りまで幅広く担当することが多く、業務の幅を広げやすい環境といえます。
どのフェーズの企業を選ぶかは、自分が伸ばしたい方向と照らして考えることが大切です。専門性を深めたいのか、幅広く経験を積みたいのかによって、向いている求人は変わります。たとえば、将来的に経営管理や財務責任者を目指すなら成長フェーズの企業、専門性を究めたいなら上場企業の高度な業務、というように、目指すキャリアと企業フェーズを結びつけて選ぶと、入社後の成長につながりやすくなります。
転職市場で評価されるための準備
市場で評価されるには、担当できる会計範囲を広げ、デジタル対応力を高めることが基本です。現職で年次決算や経営管理に関わる機会を取りにいく、クラウド会計やExcelのスキルを磨く、簿記など資格で知識を補強する、といった準備が、市場価値の向上につながります。あわせて、これまでの経験を「担当した会計範囲・使用ソフト・成果」の形で整理しておくと、求人とのマッチングや選考でのアピールがしやすくなります。市場の動向は時期で変わるため、最新の状況はエージェントなどを通じて確認するとよいでしょう。
まとめ
経理の転職市場は、専門性とデジタル対応力が評価される方向に動いています。次のポイントを意識しておきましょう。
- 全体の有効求人倍率は1倍台で推移(2026年時点・厚労省統計)。経理は業種を問わず一定の需要がある
- 決算・経営管理まで担える人材の需要が底堅い傾向
- 会計+ITリテラシーや希少スキルが市場価値を高める
- デジタル化と働き方の多様化が市場のトレンド
- 担当範囲を広げ、デジタル対応力とスキルを高めて備える
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よくある質問
Q. 経理の転職市場は、いま売り手市場ですか?
A. 全体の有効求人倍率は1倍台で推移しており(2026年時点)、求人が求職をやや上回る状況が続いています。ただしこれは全職種の平均で、経理に限った数値ではありません。経理は専門性によって評価が分かれるため、担当範囲やスキルを高めることが、有利な転職につながります。
Q. 経理の需要は今後も続きますか?
A. 経理はどの企業にも必要とされる管理部門であり、需要は底堅い傾向があります。ただし、定型業務は自動化が進むため、決算・経営管理・内部統制など判断を伴う業務を担える人材の価値が高まる方向にあります。市場で評価されるには、こうした専門性を高めることが大切です。
Q. 経理の転職に有利な時期はありますか?
A. 求人の増減には時期による傾向がありますが、企業や年によって異なります。一般に決算期前後で動きが見られることもありますが、市場の状況は変わるため、最新の動向はエージェントなどを通じて確認するのが確実です。
Q. 経理経験が浅くても、転職市場で評価されますか?
A. 経験が浅くても、担当した業務を具体的に示せれば評価につながります。月次決算の一部や、使用した会計ソフト、正確さへの工夫などは十分にアピール材料になります。あわせて簿記やクラウド会計のスキルを高め、担当範囲を少しずつ広げていくことで、市場価値を高めていけます。
この記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗、およびキャリアアドバイザーの鳥羽友利絵が監修しています。
最終更新日: 2026年6月26日