税務署から電話が来たら、最初に「何の用件か」と「調査なのか、行政指導なのか」を確かめます。税務署からの電話は、申告書の内容の確認、税務調査の事前通知、税務署への来署の依頼、納付の催告などに分かれ、どれに当たるかで、その後の手続も加算税の扱いも変わるからです。税務職員を名乗る不審な電話もあるため、相手の所属・氏名・電話番号を聞いて一度切り、税務署の代表番号へかけ直すのが安全です。
この記事では、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ」と不審電話への注意喚起、国税通則法の条文に沿って、電話の用件の見分け方、なりすましの見分け方、折り返す前に手元に用意するもの、用件によって加算税がどう変わるかを、法人・個人事業主の両方に向けて整理します。
税務署からの電話の主な用件
税務署(国税局を含む)からの電話は、おおむね次の用件に分かれます。電話の最初の数分で、どれに当たるかを確かめることが出発点です。
| 用件 | 電話で言われること | その後の流れ |
|---|---|---|
| 申告内容の確認(行政指導) | 申告書に計算誤りや記載漏れ、法令の適用誤りがないか見直してほしい | 自分で見直し、必要なら修正申告書を出す |
| 実地の調査の事前通知 | 調査を始める日時・場所、調査の目的、対象の税目・期間、対象の帳簿書類など | 指定の日時に事業所などで調査を受ける |
| 来署の依頼(実地の調査以外の調査) | 税務署に来て申告内容を説明してほしい | 税務署で申告内容の確認を受ける |
| 納付の催告・案内 | 納期限までに納付されていない税金がある、または納期限が近い | 納付する、または納付の相談をする |
| 取引先についての照会(反面調査) | 取引先の申告内容に関係する取引について確認したい | 自社の取引の記録を示して回答する |
このうち、申告内容の確認と調査は似ているようで、扱いが違います。国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2は、申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ、法令の適用誤りなどがあると思われる場合に、行政指導の一環として自発的な見直しを要請し、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請することがあると説明しています。そのうえで、担当者は具体的な手続に入る前に、調査と行政指導のいずれに当たるのかを納税者に明示することとしています。
納付の催告は、国税局の集中電話催告センター室(納税コールセンター)が、所轄の税務署に代わって電話や文書で行っています。納期限の前に、納税の案内の電話をすることもあるとされています。納期限までに完納していない税金には、原則として納期限から50日以内に督促状が出されます(国税通則法37条)。
電話で最初に確かめる4つのこと
電話を受けた時点で数字や事実を即答せず、手元の資料で確かめてから答えると伝えて構いません。次の4つを聞き取り、メモに残してから、折り返す日時を伝えて切ります。
- 相手の所属部署(○○税務署の何課か、国税局のどの部署か)、氏名、電話番号
- 用件の対象:税目(法人税・所得税・消費税・源泉所得税など)と年分・事業年度
- 調査なのか、行政指導なのか
- 回答や書類の提出に期限があるか、あるならいつか
3番目は特に大切です。後で説明するとおり、調査の通知の前か後かで、修正申告をした場合の加算税の割合が変わります。担当者が明示することとされているので、はっきりしないときは「これは調査ですか、行政指導ですか」と聞いて構いません。
法人の場合は、電話を受けた人が経理の担当者や社長でないこともあります。誰が受けても同じ4つを聞き取れるよう、電話の近くに書き留める用紙を置いておくと、伝言の抜け落ちを防げます。顧問税理士がいる場合は、聞き取った内容をそのまま税理士に伝えます。
なりすましの電話を見分ける
国税庁は、税務職員を装った不審な電話や、国税庁をかたるショートメッセージ・メールに注意を呼びかけています。国税庁の「不審なメールや電話にご注意ください」によると、税務職員が電話で問い合わせをする場合は、提出された申告書等を基に、その内容を本人に確認することを原則としています。そのうえで、国税庁・国税局・税務署が行わないこととして、次のものを挙げています。
| 国税庁・国税局・税務署が行わないこと |
|---|
| 還付金の受取りや納付のために、金融機関などのATMの操作を求めること |
| 国税の納付のために、金融機関の口座を指定して振込みを求めること |
| アンケートなどと称して電話をすること |
| AI・自動音声による電話で国税の納付を求めること |
| ショートメッセージにURLを記載した案内を送ること |
| 国税の納付の求めや差押えに関して、ショートメッセージ・メール・LINEのメッセージを送ること |
不審に思った場合は、即答を避け、相手の所属部署・氏名・電話番号を確認したうえで一度電話を切り、最寄りの税務署の総務課か国税局の納税者支援調整官に問い合わせるよう案内されています。かけ直すときは、相手が言った番号ではなく、国税庁ホームページに載っている税務署の電話番号を使います。
国税庁が示している不審な電話の例には、「国税局査察部です。税金の未納があります。」と切り出して住所や口座番号を聞き出そうとするもの、還付を受けられると言って口座番号や暗証番号を聞き出そうとするものがあります。電話口で口座番号や暗証番号を答える必要はありません。
用件別:折り返す前に手元に用意するもの
用件が分かったら、折り返す前に次のものをそろえます。法人と個人事業主で書類の名前が違うものは並べて書いています。
| 用件 | 用意するもの |
|---|---|
| 申告内容の確認 | 言われた年分・事業年度の申告書の控え、決算書(個人は青色申告決算書か収支内訳書)、指摘された項目の帳簿と請求書・領収書 |
| 実地の調査の事前通知 | 調査を受けられる日の候補、税理士に立会いを頼むかどうか、対象の年分・事業年度の申告書の控え・帳簿・通帳 |
| 来署の依頼 | 来署できる日の候補、言われた年分の申告書の控えと関係する資料 |
| 納付の催告 | 納付書、すでに納付したなら領収証書や振込の記録、納付が難しい場合は資金繰りが分かるもの |
| 取引先についての照会 | その取引先との契約書、請求書・領収書の控え、入出金の記録 |
事前通知の日時に都合がつかない場合は、変更を申し出ることができます。国税庁のFAQ問16は、事前通知の際に都合を尋ねることとしており、通知の後でも一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合など、理由が合理的と考えられれば変更を協議するとしています。申出の方法は法令で決まっておらず、口頭で差し支えないとされています(問17)。
税理士に税務代理を頼んでいる場合、納税者の事前の同意があれば、事前通知は税務代理権限証書を出している税理士に行えば足ります(問14)。同意が記載されていない場合は、納税者と税理士の双方に通知されます。電話を受けた後で税理士に相談するなら、聞き取った税目・期間・日時を正確に伝えることが、日程の調整や準備の出発点になります。
電話の用件で加算税の扱いが変わる
電話の内容を受けて申告を直す場合、それが調査の通知の前か後か、調査によって更正を予知した後かで、過少申告加算税の割合が変わります。国税庁タックスアンサーNo.2026「確定申告を間違えたとき」の整理は次のとおりです(所得税の例。法人税も同じ国税通則法65条の規定です)。
| 修正申告をした時期 | 過少申告加算税 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした | かからない |
| 事前通知の後、調査による更正を予知する前に修正申告をした | 新たに納める税金の5%(当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%) |
| 調査を受けた後に修正申告をした、または更正を受けた | 新たに納める税金の10%(同じく超える部分は15%) |
行政指導として見直しを求められた場合はどうでしょうか。国税庁のFAQ問2は、行政指導に基づいて自主的に修正申告書を出した場合、延滞税を納めてもらう場合はあるが、過少申告加算税は課されないとしています。当初の申告が期限後申告だった場合は、無申告加算税が原則5%かかります。
つまり、同じ「税務署から電話があった」でも、行政指導であれば過少申告加算税はかからず、調査の事前通知であればその後の修正申告に加算税がかかり得ます。電話を受けた時点で調査か行政指導かを確かめておく理由は、ここにあります。修正申告をした場合の新たな税金は、修正申告書を出した日が納期限で、納付の日までの延滞税もあわせて納めます。
申告内容の確認の電話を受けて見直した結果、誤りがなかった場合や、逆に納めすぎていた場合もあります。納めすぎていたときは、原則として法定申告期限から5年以内であれば更正の請求ができます。見直しの結果をどう伝えるか、修正申告と更正の請求のどちらに当たるかは、申告書を作った税理士と確かめると確実です。
税理士に相談するタイミング
電話の用件ごとに、税理士へ連絡する目安は次のとおりです。顧問税理士がいる場合は、どの用件でも聞き取った内容をその日のうちに伝えるのが基本です。
- 申告内容の確認:指摘された項目が税法の解釈に関わるとき、または金額が大きいとき。
- 実地の調査の事前通知:日程を返事する前。立会いを頼むなら、税理士の都合も合わせて日程を決める必要があります。
- 来署の依頼:同席を頼むかどうかを決める前。
- 納付の催告:一度に納められず、猶予や分割の相談が必要なとき。
- 取引先についての照会:回答する範囲に迷うとき。
税務署に対する申告や調査に関する主張・陳述を納税者に代わって行うことは、税理士法2条で税理士の業務とされています。顧問税理士がいない場合は、調査の事前通知を受けた段階で依頼先を探し始めると、日程の調整がしやすくなります。税務調査の当日の流れや見られるポイントは「税務調査とは?連絡が来た時の対応法・当日の流れ」、事前通知を受けた後の準備は「税務調査の事前通知が来たらどうする?」で扱っています。
まとめ:用件と「調査か行政指導か」を先に確かめる
- 税務署からの電話は、申告内容の確認(行政指導)、調査の事前通知、来署の依頼、納付の催告、取引先についての照会に分かれる。
- 電話では、所属・氏名・電話番号、税目と年分、調査か行政指導か、期限の4つを聞き取り、その場で数字を答えない。
- ATMの操作、口座を指定した振込み、アンケートの電話、自動音声での納付の要求は、国税庁が行わないとしているもの。不審なら一度切って税務署の代表番号へかけ直す。
- 行政指導に応じた自主的な修正申告には過少申告加算税がかからない。調査の事前通知の後は5%または10%、調査の後は10%または15%。
- 事前通知の日時は、合理的な理由があれば口頭で変更を申し出られる。
電話の用件が分かれば、次にすることと用意する資料は決まります。まず聞き取りのメモを作り、顧問税理士がいればその内容を伝えてください。
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よくある質問
Q. 税務署からの電話に出られず、留守番電話に折り返しの依頼が残っていました。どうすればよいですか?
留守番電話で名乗った番号ではなく、国税庁ホームページに載っている税務署の電話番号へかけ、名乗った担当者の部署と氏名を伝えて取り次いでもらうと確実です。そのうえで、用件と、調査か行政指導かを確かめます。
Q. 事前通知の電話で「書面で送ってほしい」と頼めますか?
国税庁のFAQ問12によると、実地の調査の事前通知は原則として電話で口頭で行い、納税者の要望に応じて通知内容を書いた書面を渡すことはないとされています。電話を受けたときに、日時・場所・目的・税目・期間・対象の帳簿書類を書き留めておきます。
Q. 電話で調査と言われたのに、事前通知なしに来ることもありますか?
国税庁のFAQ問20は、申告内容や過去の調査結果などから、事前通知をすると正確な税額の把握を困難にするおそれなどがあると判断した場合は、事前通知をしないこともあるとしています。その場合も、調査の対象の税目・期間や目的は、臨場後速やかに説明することとされています。
Q. 税務署の電話で指摘された点を、その場で認めてしまいました。修正申告をしなければいけませんか?
電話で認めたことだけで修正申告の義務が決まるわけではありません。指摘された項目を帳簿と証拠書類で見直し、誤りがあれば修正申告、誤りがなければその根拠を説明します。判断に迷う項目は、申告書を作った税理士と確かめてから回答します。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
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