「フリーランスのデザイナーさんに、請求書どおりの金額を振り込んでおいて」。
会社が個人のデザイナーにデザイン料を払うときは、原則として10.21%(100万円を超える部分は20.42%)の所得税などを差し引いて(源泉徴収して)、会社が国に納めます。しかも、デザイン料から源泉徴収した税金は「納期の特例」の対象外で、半年分まとめて納めることはできません。
この記事は、リーパル会計事務所のキャラクター・りーぱるくん、思い立ったらすぐ動くイノシシ社長、慎重派の経理担当リスさんの会話で進みます。
※りーぱるくん以外の登場人物と会社は、説明のための架空の例です。記事の内容は2026年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいています。
登場人物

リーパル会計事務所のりーぱるくんです。払う前に引く税金の話を、順番に整理します。

イノシシ社長だ!社員8人の販促物の制作会社をやってる。チラシのデザインは外のデザイナーさんにもお願いしてるぞ。

経理のリスです。どんぐりも会社のお金も、コツコツ数えて大事にしまっておく派です。

フリーランスでデザインをしているヒツジです。イノシシ社長の会社のチラシを担当しています。
個人に払う報酬には、源泉徴収が必要なものがある

新しいチラシのデザインを、ヒツジさんにお願いした。請求書どおり22万円を振り込んでおいてくれ!

社長、ちょっと待ってください。個人のデザイナーさんへのデザイン料って、源泉徴収が必要じゃなかったでしたっけ。

リスさん、正解です。会社が個人に払う報酬のうち、デザイン料や原稿料、講演料、弁護士や税理士の報酬などは、払うときに所得税などを差し引いて、会社が国に納めます。

わたしの請求書にも「源泉徴収税額」の欄を入れていますよ。

差し引いたら、ヒツジさんの取り分が減るじゃないか。

減ったように見えますが、差し引かれた分は、ヒツジさんが確定申告をするときに、前払いした税金として精算されます。
支払先が個人の場合に、源泉徴収が必要な報酬・料金の代表例は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.2792)。
- 原稿料、講演料、デザイン料(広告・ポスターなどのグラフィックデザインを含む)など
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士など、特定の資格を持つ人への報酬
- モデルや外交員などへの報酬
- 芸能の出演料など
支払先が会社(法人)の場合は、一部の例外を除いて源泉徴収はいりません。また、給与を払っていない個人事業主など、源泉徴収義務者でない個人が報酬を払う場合も、源泉徴収はいりません(No.2502)。
いくら差し引く?10.21%の計算
源泉徴収する金額は、支払金額によって次のように計算します(No.2795)。
| 支払金額(A) | 源泉徴収する税額 |
|---|---|
| 100万円以下 | A × 10.21% |
| 100万円超 | (A − 100万円)× 20.42% + 10万2,100円 |
請求書で報酬の額と消費税の額がはっきり分かれていれば、報酬の額だけに税率をかければ大丈夫です。インボイス制度が始まった後も、この取扱いは変わりません。
ヒツジさんへの支払いの場合
デザイン料20万円+消費税2万円=22万円の請求で、報酬と消費税が分けて書かれている場合:
- 源泉徴収税額:20万円 × 10.21% = 2万420円
- 振り込む金額:22万円 − 2万420円 = 19万9,580円

報酬と消費税が分かれていない請求書だったら、22万円に10.21%をかけるんですね。

そうです。その場合は、22万円 × 10.21% = 2万2,462円になります。
なお、2027年分以後は、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、新たに防衛特別所得税(所得税額の1%)が加わります。合計の税率(10.21%・20.42%)は変わりません(国税庁タックスアンサーNo.2260)。
いつまでに納める?「納期の特例」の落とし穴

うちは社員が10人未満だから「納期の特例」を受けていて、源泉した税金は半年に1回まとめて払ってるぞ。デザイン料の分も、そのとき一緒でいいんだろ?

そこが今日一番の落とし穴です。納期の特例でまとめて納められるのは、給与・退職金と、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した分だけです。デザイン料や原稿料、講演料から源泉徴収した分は対象外で、支払った月の翌月10日までに納めます。

10月に払ったら、11月10日までですね。半年分と一緒にしないよう、別に管理しておきます。

そうしてください。期限の日が土日・祝日に当たるときは、休日明けの日が期限になります。
| 源泉徴収した税金 | 納期の特例 | 納付期限 |
|---|---|---|
| 給与・退職金 | 対象 | 特例を受けていれば、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日 |
| 税理士・弁護士・司法書士などの報酬 | 対象 | 同上 |
| デザイン料・原稿料・講演料など | 対象外 | 支払った月の翌月10日 |
差し引き忘れたら、どうなる?

もう22万円、全額振り込んじゃってた場合は?

源泉徴収をして納める義務は、払う側の会社にあります。差し引き忘れても、会社が本来の税額を納めなければなりません。差し引くはずだった分は、ヒツジさんと相談して返してもらったり、次の支払いのときに調整したりするのが一般的です。

次の請求のときに調整してもらえれば大丈夫ですよ。

また、期限に遅れて納めると、延滞税がかかることがあるほか、原則として納める税額の10%の不納付加算税がかかります。税務署から指摘される前に自主的に納めた場合は5%になり、法定納期限から1か月以内に自主的に納めるなど一定の要件を満たせば、かからないこともあります。
気づいたら、なるべく早く納めることが大切です。
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年が明けたら:支払調書の提出も忘れずに
個人に払ったデザイン料や原稿料などは、同じ人への1年間の支払金額の合計が5万円を超えると、翌年1月31日までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に出す必要があります。2026年分は、2027年1月31日が日曜日のため、2月1日(月)が期限です。

支払った相手ごとに、1年分の金額を集計しておきますね。
まとめ:個人への報酬は「引く・分けて納める・年明けに報告」
今日の話を1文にすると、こうなります。
個人のデザイナーへのデザイン料は、10.21%を差し引いて翌月10日までに納める。納期の特例を受けていても、この分は毎月の納付になる。
- デザイン料・原稿料・講演料、士業への報酬などを個人に払うときは、源泉徴収が必要
- 税率は10.21%(100万円を超える部分は20.42%)。消費税が区分されていれば、報酬部分だけで計算できる
- デザイン料などの分は納期の特例の対象外。支払った月の翌月10日までに納める
- 差し引き忘れても、会社が納める義務がある。遅れると不納付加算税や延滞税がかかることがある
- 同じ人への年間の支払いが5万円を超えたら、翌年1月31日までに支払調書を出す

払う前にひと呼吸。「この人は個人か、法人か」「どんな報酬か」を確かめる習慣をつけておきましょう。

よし、次からは振り込む前にリスさんに一声かける!
あなたの会社が今年、個人の方に払った報酬はいくつあったでしょうか。年末になる前に一度一覧にしておくと、源泉徴収の漏れと支払調書の準備を一緒に確かめられます。
関連記事:インボイス制度とは?/確定申告で認められる経費一覧
よくある質問
Q. 法人のデザイン会社に払う場合も、源泉徴収は必要ですか?
支払先が法人の場合、デザイン料の源泉徴収はいりません。源泉徴収が必要かどうかは、支払先が個人か法人か、どんな報酬かで決まります。
Q. デザイナーさんの交通費を一緒に払う場合はどうなりますか?
報酬と一緒に払う旅費や交通費も、原則として源泉徴収の対象に含まれます。ただし、会社が交通機関やホテルなどに直接払った、通常必要な範囲の交通費・宿泊費は、報酬に含めなくてよいとされています。
Q. インボイスの登録をしていないデザイナーさんでも、源泉徴収は必要ですか?
必要です。源泉徴収が必要かどうかは、インボイスの登録とは関係ありません。個人に払うデザイン料であれば、登録の有無にかかわらず源泉徴収をします。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月11日
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