「税理士に頼むと高そう」という理由で、確定申告を毎年自分でやり続けている個人事業主は少なくありません。ただ、青色申告特別控除65万円を使えるようにするだけで、所得税と住民税を合わせて約19万5,000円(税率30%の場合)の負担が減ります。税理士費用が10万円なら、この一点だけで差し引き約9万5,000円のプラスです。
個人事業主が税理士に支払う費用は、確定申告代行で3万〜15万円、月次顧問で月1万〜3万円が相場です。本記事では、2026年時点の相場を依頼形態別・売上規模別に整理したうえで、どこから費用を回収できるのか、そして費用を抑えながら税理士を活用する方法までを解説します。
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個人事業主が税理士に支払う費用の種類と相場
| 依頼の種類 | 費用相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| 確定申告代行のみ | 年3万〜15万円 | スポット依頼。売上・取引数で変動 |
| 月次顧問(年間サポート) | 月1万〜3万円(年12万〜36万円) | 毎月の税務相談+確定申告対応 |
| 記帳代行 | 月5,000〜3万円 | 帳簿入力の代行。仕訳数で変動 |
| 税務相談のみ | 5,000〜3万円/回 | スポットの税務相談 |
上記は目安で、事務所の規模・地域・サービス内容によって変わります。まず押さえておきたいのは、確定申告代行と月次顧問はまったく別のサービスだという点です。前者は「申告書を作る」もの、後者は「1年を通じて税務判断に伴走する」ものです。節税の余地は決算を迎える前にしか作れないため、節税提案を期待するなら月次顧問が前提になります。
確定申告代行の費用相場
申告方式によって工数が変わるため、費用も変わります。
| 申告方式 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 白色申告 | 3万〜5万円 | 記帳が簡易。控除がないため依頼は減少傾向 |
| 青色申告(10万円控除) | 4万〜7万円 | 簡易簿記。自分で記帳していれば安く済む |
| 青色申告(65万円控除) | 5万〜10万円 | 複式簿記+e-Tax等が必要 |
| 副業・不動産・暗号資産を含む | 7万〜15万円以上 | 所得区分が複数で集計が複雑 |
不動産所得(減価償却と修繕費の区分判断)や暗号資産取引(大量取引の損益計算)が絡むと、同じ売上規模でも費用が一段上がります。確定申告のみを依頼する場合の詳しい料金帯は個人が税理士に確定申告を依頼する費用相場でも整理しています。
月次顧問料と記帳代行の相場
月次顧問は月額1万〜3万円が目安で、確定申告代行がセットになっていることが多く、年間の税務相談・記帳指導も含まれます。記帳代行を追加で依頼する場合は月5,000〜3万円が相場です。仕訳数(取引件数)で変動し、クラウド会計ソフトで銀行明細を自動連携している場合は低めに設定されることが多くなっています。
法人を含めた料金体系の全体像は税理士の顧問料・報酬相場はいくら?個人・法人の料金目安一覧をご参照ください。
税理士費用が変わる5つの要因
1. 売上規模と月次の仕訳数:売上が大きくなるほど取引数が増え、記帳・申告の工数が増えます。年商500万円と年商5,000万円では費用が2〜3倍変わることも珍しくありません。
2. 所得の種類:事業所得だけでなく不動産所得・雑所得(暗号資産、FX等)がある場合、それぞれ別に計算・集計するため費用が上がります。
3. 帳簿の整理状況:freeeやマネーフォワードクラウドで自分で記帳できていれば税理士側の作業が減り、費用は抑えられます。逆に領収書を袋のまま渡す「丸投げ」は、記帳代行料が上乗せされます。
4. 事務所の規模と地域:都市部の事務所は高め、オンライン対応の事務所は抑えめの傾向があります。ただし費用だけでなく、業種への理解と対応の速さで選ぶことが結果的にコストを下げます。
5. サポートの手厚さ:毎月訪問・電話相談無制限といった手厚いサポートは費用が上がります。自分に必要なサポートレベルを先に決めておくと、過剰な契約を避けられます。
費用は回収できるのか——節税効果で考える
青色申告65万円控除だけで約19万5,000円
青色申告特別控除は、要件を満たすことで所得から最大65万円を差し引ける制度です。所得税率20%・住民税率10%の方であれば、次の効果があります。
65万円 × 30%(所得税+住民税)= 約19万5,000円の負担軽減
ここで重要なのが、65万円控除には要件がある点です。国税庁の定めでは、複式簿記による記帳と貸借対照表・損益計算書の添付(期限内申告)に加えて、次のいずれかが必要です。
- その年分の確定申告書・貸借対照表・損益計算書等を、期限までにe-Taxで提出すること
- 仕訳帳と総勘定元帳について、優良な電子帳簿の要件を満たした電子データでの備付け・保存を行うこと
このいずれも満たさない場合は55万円控除にとどまります。「複式簿記にしたから65万円」ではない、という点は誤解が多いところです。控除額が10万円変われば税負担は約3万円変わるため、要件の確認は費用対効果に直結します。要件の詳細は青色申告のメリット7選|白色申告との違いと65万円控除を受ける条件をご覧ください。
参考:国税庁 No.2072 青色申告特別控除
経費の取りこぼしを防ぐ効果
月次でチェックを受けることで、見落としていた経費(事業用スマートフォンの通信費、自宅兼事務所の家賃・水道光熱費の按分、交通費など)を適切に計上できます。仮に年間50万円の経費を追加計上できれば、税率30%の方で約15万円の負担軽減です。
なお、住民税の所得割が下がることで国民健康保険料も連動して下がるため、実際の手取りへの効果は所得税・住民税の計算より大きくなるのが通例です。ここは自分で申告していると見落としやすい部分です。
所得規模別の費用対効果の目安
| 事業所得の規模 | 年間税理士費用の目安 | 節税・時間削減の効果目安 |
|---|---|---|
| 事業所得200万円前後 | 5万〜8万円 | 5万〜15万円(回収できる可能性あり) |
| 事業所得500万円前後 | 7万〜12万円 | 15万〜30万円(回収しやすい) |
| 事業所得700万円以上 | 10万〜20万円 | 30万円以上(法人化の検討段階) |
上記は一般的な目安であり、実際の効果は所得の構成・控除の適用状況によって変わります。断定的な金額を約束できるものではないため、個別の試算は税理士にご確認ください。事業所得が700万円を超えてきたら、税理士費用の議論と並行して法人化の損益分岐も検討する段階に入ります。
見落とされがちな2つの実務ポイント
税理士報酬の源泉徴収は「必要な人」と「不要な人」がいる
税理士報酬を支払うとき、源泉徴収が必要かどうかは、支払う側が源泉徴収義務者かどうかで決まります。
国税庁は、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う税理士報酬等については、源泉徴収をする必要はないとしています。つまり、従業員を雇っておらず給与を支払っていない個人事業主は、税理士報酬から源泉徴収する必要がありません。
一方、アルバイトを含めて誰かに給与を支払っている個人事業主は源泉徴収義務者となり、税理士報酬からも源泉徴収して納付する必要があります。ここを取り違えると、納付漏れによる不納付加算税の対象になりかねません。仕訳や勘定科目の扱いは税理士費用の勘定科目は何?仕訳・源泉徴収・消費税・インボイス対応で詳しく解説しています。
参考:国税庁 No.2502 源泉徴収義務者とは
税理士費用は経費になるが、按分が必要な場合がある
事業に関連する税理士費用は必要経費に計上できます。勘定科目は「支払手数料」が一般的です。
ただし、事業と無関係な内容(給与所得だけの家族の確定申告、個人の相続相談など)が混在している場合は、事業分と個人分を合理的に按分する必要があります。請求書の内訳を分けてもらっておくと、按分の根拠が明確になり、税務調査で説明しやすくなります。
費用を抑えながら税理士を活用する3つの方法
クラウド会計で記帳を自分で行う:freeeやマネーフォワードクラウドで銀行口座・クレジットカードを自動連携し、日々の記帳を自分で回します。税理士には確定申告書の作成とチェックだけを依頼すれば、記帳代行料(年6万〜36万円)をまるごと削減できます。
確定申告のみスポットで依頼する:月次顧問ではなく申告時期だけの依頼にすれば、年間費用は3万〜8万円程度に抑えられます。ただし節税提案を受ける機会が減るため、売上が伸びてきたら月次顧問への切り替えを検討してください。
オンライン完結の事務所を選ぶ:訪問を前提としない事務所は、移動コストの分だけ費用を抑えられる傾向があります。地方在住でも都市部の事務所に依頼でき、業種特化の事務所を選びやすくなります。
個人事業主が自分でできる節税策は個人事業主の節税方法12選|確定申告前にできる対策にまとめています。まずここを一通り実行してから、残る論点を税理士に相談すると費用対効果が高まります。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
「税理士なし」と「税理士あり」の比較
| 比較項目 | 税理士あり | 税理士なし(自分で申告) |
|---|---|---|
| 年間費用 | 5万〜20万円 | 会計ソフト代 5,000〜3万円 |
| 作業時間 | 数時間(資料の受け渡し中心) | 30〜100時間以上 |
| 節税提案 | あり | なし(自分で調べる必要がある) |
| 申告の精度 | 高い | 誤りや計上漏れが起きやすい |
| 税務調査への対応 | 税理士が立ち会える | 自分で対応 |
確定申告を自分で行う場合、慣れていないと年間30〜100時間かかります。時給2,000円で換算すれば6万〜20万円相当の時間コストです。金額だけを比べると税理士費用は高く見えますが、時間コストと申告リスクを含めて比較すると評価は変わります。
契約前に確認したい消費税対応と相談体制
消費税申告の追加料金と制度対応
インボイス制度により、売上1,000万円以下でも課税事業者を選択する場合があります。消費税申告が必要なら、年額3万〜5万円程度の追加費用が目安です。所得税の申告料とは分けて確認します。
インボイス制度の経過措置への対応も確認します。2割特例を適用している場合は、終了後の有利・不利の判定も確認事項です。
相談料金と担当者の経験
格安プランでは、メールの相談ごとに料金が発生する場合があります。相談の料金体系を契約前に確認します。
担当者の資格や経験も確認します。初回面談では、話しやすく、無理なく質問できる相手かを確かめます。
よくある質問
Q1. 個人事業主は年商いくらから税理士に依頼すべきですか?
A. 法律上の基準はありません。実務上の目安は事業所得500万円前後です。ただし、青色申告65万円控除を確実に取りたい場合や、不動産所得・暗号資産取引など申告が複雑な場合は、事業所得300万円程度でも依頼する価値があります。判断軸は売上ではなく「申告の複雑さ」と「自分で申告にかけている時間」です。
Q2. 確定申告だけを税理士に頼むといくらですか?
A. 青色申告(65万円控除)で5万〜10万円、白色申告やシンプルな申告なら3万〜5万円が目安です。取引数、所得の種類、書類の整理状況で変わるため、複数の事務所から見積もりを取って比較することをおすすめします。見積時に「記帳代行が含まれるか」を必ず確認してください。
Q3. 税理士費用は経費にできますか?
A. 事業に関連する部分は必要経費に計上できます。勘定科目は「支払手数料」が一般的です。事業と無関係な個人の相談分が含まれる場合は按分が必要です。
Q4. 税理士報酬から源泉徴収をしないといけませんか?
A. 従業員に給与を支払っていない個人事業主は、税理士報酬から源泉徴収する必要はありません。一方、アルバイトを含め誰かに給与を支払っている個人事業主は源泉徴収義務者となり、源泉徴収と納付が必要です。ご自身がどちらに当たるかを確認してください。
Q5. 会計ソフトを使えば税理士は不要ですか?
A. 記帳と申告書の作成自体はクラウド会計ソフトでも可能です。ソフトが代替できないのは、経費として認められる範囲の判断、所得区分の判定、節税策の選択、そして税務調査への対応です。売上や取引が単純なうちはソフトだけで十分なこともありますが、判断を伴う論点が増えてきたら専門家の関与を検討する段階です。
参考資料
個人事業主の税理士費用は、確定申告代行で3万〜15万円、月次顧問で月1万〜3万円が目安です。金額だけを見れば安くありませんが、青色申告65万円控除の確実な適用、経費の取りこぼし防止、そして申告にかけていた時間の回復まで含めれば、事業所得が300万〜500万円を超えるあたりから回収できるケースが多くなります。
リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績とクラウド会計導入支援の知見をもとに、個人事業主・フリーランスの方の記帳から確定申告までをオンライン中心でご支援しています。今の費用が適正かを知りたい方も、お気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、中小企業の税務顧問とクラウド会計導入支援を専門とする。
最終更新日: 2026年10月24日
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