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調剤薬局の経理は何から確認?調剤報酬・消費税・棚卸の基本

税務
調剤薬局の会計と税務|調剤報酬の計上・非課税売上・医薬品の棚卸
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調剤薬局の経理で、まだ入金されていない調剤報酬を売上に入れるか、迷っていませんか。法人では、入金を待たず、調剤して薬を渡した期の売上に計上します。保険調剤と市販薬の販売は消費税の扱いが異なり、期末の薬の在庫も利益に影響します。

この記事では、売上を記録する時期、消費税の区分、医薬品の棚卸で確認することを整理します。医療機関全般の税務は医療・クリニック・歯科の税務をご覧ください。

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調剤薬局の売上と消費税の区分

健康保険法63条は、療養の給付として「薬剤又は治療材料の支給」を挙げ、療養の給付を受ける先として厚生労働大臣の指定を受けた薬局(保険薬局)を挙げています。国税庁「消費税法基本通達 第6節 医療の給付等関係」の6−6−1は、健康保険法、国民健康保険法等の規定に基づく療養の給付を非課税の範囲に挙げ、6−6−3は患者が負担する一部負担金に係る療養も含まれるとしています。

一方、通達6−6−2は、療養等に該当しない医薬品の販売は課税資産の譲渡等に該当するとしています。国税庁のタックスアンサーも、市販されている医薬品を購入した場合は非課税取引に当たらないとしています。売上を区分すると次のようになります。

売上の区分 消費税 根拠
調剤報酬(保険者負担分) 非課税 通達6−6−1(1)
一部負担金(窓口) 非課税 通達6−6−3
生活保護の医療扶助・公費負担医療 非課税 通達6−6−1(3)(7)
介護保険の居宅療養管理指導 非課税 通達6−7−1(1)ホ
市販薬・日用品などの販売 課税 通達6−6−2

介護保険関係では、通達6−7−1が、病院、診療所又は薬局の薬剤師等が行う居宅療養管理指導を非課税の範囲に挙げています。会計ソフトの売上科目や税区分は、この区分に合わせて設定しておきます。

調剤報酬は調剤した事業年度の売上にする

保険者は、保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、審査の上で支払います(健康保険法76条4項)。審査と支払の事務は、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構又は国民健康保険団体連合会に委託することができます(同条5項)。このため、調剤報酬は調剤した月よりも後に入金されます。

法人税法22条の2第1項は、資産の販売等に係る収益の額を、別段の定めがあるものを除き、目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入するとしています。調剤報酬は、入金日ではなく、調剤して薬剤を交付した日の属する事業年度の売上になります。

決算では、次の2つを売掛金として計上します。

  • 請求済みで、期末までに入金されていない調剤報酬
  • 決算月に調剤し、まだ請求していない調剤報酬

審査を経て支払われるため、請求額と入金額が一致しないことがあります。審査支払機関ごとに請求額を一覧にし、入金のたびに消し込んでおくと、差額や未入金の請求を把握できます。差額が出たときは、審査支払機関からの通知などで理由を確かめてから処理を決めます。

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非課税売上があると仕入税額控除が制限される

この制限は、課税事業者が一般課税(本則課税)で申告する場合の話です。課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち非課税とされるもの以外のものをいい(消費税法2条1項9号)、基準期間の課税売上高は課税資産の譲渡等の対価の額をもとに計算します(同9条2項)。調剤報酬は非課税のため、納税義務や簡易課税の判定に使う課税売上高には含まれず、市販薬などの課税売上高で判定します。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます(特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合などを除く)。課税事業者でも、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間は、届出により簡易課税を選べます。簡易課税では、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じた金額を仕入れに係る消費税額とするため、以下の課税売上割合による制限の計算は行いません。

国税庁タックスアンサー「No.6401 仕入控除税額の計算方法」によると、課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95パーセント以上の場合は、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除できます。課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95パーセント未満の場合は、課税売上げに対応する部分のみを控除します。

課税売上割合は、課税売上高(税抜き)を総売上高(税抜き)で割った割合で、総売上高は課税売上高と非課税売上高の合計額です。調剤報酬が売上の中心であれば、分母に調剤報酬が入るため、課税売上割合が95パーセントを下回ることがあります。

個別対応方式と一括比例配分方式

課税売上割合が95パーセント未満などの場合は、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかで仕入控除税額を計算します。

方式 計算 注意点
個別対応方式 課税売上げにのみ要するもの+共通して要するもの×課税売上割合 課税仕入れ等を3つに区分している場合に限り採用できる
一括比例配分方式 課税仕入れ等に係る消費税額×課税売上割合 選択すると2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できない

薬局の課税仕入れを3つに区分する

消費税法基本通達11−2−15は、非課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等を「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」としています。調剤に使う医薬品の仕入れは非課税の調剤のために仕入れるものなのでこの区分に、店頭で販売する市販薬や日用品の仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に、店舗の家賃や水道光熱費など両方に使うものは「共通して要するもの」に区分して考えます。

通達11−2−18は、個別対応方式では個々の課税仕入れ等について必ず3つに区分しなければならず、課税資産の譲渡等にのみ要するものを抜き出して残りを全て共通に区分することは認められないとしています。区分は課税仕入れを行った日の状況で行いますが、その日に区分が明らかでなくても、課税期間の末日までに明らかにされたときは、その区分によることができます(通達11−2−20)。

どちらの方式が有利かは、仕入れの構成と課税売上割合で変わるため、数字で試算しないと決まりません。法人の消費税の計算の全体は法人の消費税の計算方法で扱っています。

控除できなかった消費税は法人税でどう扱うか

税抜経理方式を採用している場合に、課税売上割合が95パーセント未満などで控除できなかった消費税額等を「控除対象外消費税額等」といいます。国税庁タックスアンサー「No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理」では、次のように処理するとしています。

  • 資産に係るもののうち、課税売上割合が80パーセント以上の場合、棚卸資産に係るもの、一の資産に係る額が20万円未満のものは、損金経理をした金額をその事業年度の損金の額に算入する
  • 上記に当たらない資産に係るものは「繰延消費税額等」として資産計上し、60で除した額にその事業年度の月数を乗じた金額の範囲内で損金経理した金額を損金に算入する(取得した事業年度はその2分の1)
  • 資産に係るもの以外(経費に係るもの)は、全額をその事業年度の損金の額に算入する。ただし、交際費等に係るものは交際費等の額に加算して損金不算入額を計算する

医薬品は棚卸資産なので、医薬品の仕入れに係る控除対象外消費税額等は、損金経理によりその事業年度の損金に算入できます。調剤機器や店舗の内装など、20万円以上の固定資産を課税売上割合80パーセント未満の事業年度に取得したときは、繰延消費税額等として扱う点に注意します。なお、税込経理方式の場合は、消費税額等が資産の取得価額又は経費の額に含まれるため、特別な処理は要しません。

医薬品在庫の棚卸と評価

期末に実地棚卸をする

法人税基本通達5−4−1は、棚卸資産については各事業年度終了の時において実地棚卸しをしなければならないとしています。ただし、業種、業態及び棚卸資産の性質等に応じ、部分計画棚卸しその他合理的な方法で期末の在高等を算定することとしている場合には、継続適用を条件に認められます。

棚卸表は品目・規格ごとに数量を記録し、調剤システムの在庫データと実数の差を確かめます。

  • 品目・規格・包装単位ごとに数量を数え、開封済みのものの数え方を決めておく
  • 使用期限が切れたものや破損したものは別に集計する
  • 期末までに廃棄したものは、廃棄した日・品目・数量の記録を残し、在庫に含めない
  • 調剤システムの在庫数と実数の差は、原因を確かめてから修正する
  • 卸への返品や期末直前の仕入れが、正しい期に入っているか確かめる

評価方法の届出

棚卸資産の評価方法には、原価法(個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法)と、期末の時価と比べて低い方で評価する低価法があります(法人税法施行令28条)。評価方法を選定しなかった場合は、最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法になります(同31条)。

評価方法を選んで届け出る場合、普通法人を設立したときは、設立第1期の確定申告書の提出期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します(国税庁「棚卸資産の評価方法の届出」)。評価方法を変更するときは、新たな評価の方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、変更の承認申請書を提出します(同30条)。

評価損を計上できる場合・できない場合

法人税基本通達9−1−5は、評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例に、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことを挙げています。この場合、評価換えをして損金経理により帳簿価額を減額したときに、評価損を損金に算入できます(法人税法33条2項)。

一方、通達9−1−6は、棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、評価損を計上できる事実に該当しないとしています。価格の下落を期末の評価に反映させたい場合は、評価方法として低価法を選定しているかどうかが分かれ目になります。

まとめ:区分・期間・在庫の3点を決算前に確かめる

  • 調剤報酬・一部負担金・公費負担医療・居宅療養管理指導は非課税、市販薬や日用品の販売は課税として区分する
  • 調剤報酬は調剤した事業年度の売上にし、期末は請求済み未入金分と未請求分を売掛金に計上する
  • 一般課税で申告し、課税売上割合が95パーセント未満などの場合は、個別対応方式か一括比例配分方式で計算し、個別対応方式なら課税仕入れを3つに区分する
  • 控除対象外消費税額等は、棚卸資産に係るものは損金算入でき、高額の固定資産に係るものは繰延消費税額等になることがある
  • 医薬品は期末に実地棚卸をし、評価方法の届出の有無と評価損の要件を確かめる

開業や新店舗の出店、調剤機器の入れ替えを予定しているときは、課税売上割合の見込みと控除対象外消費税額等の扱いを事前に確かめてください。

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よくある質問

Q. 決算月に調剤した分の調剤報酬が翌期に入金されます。どの期の売上ですか?

調剤した事業年度の売上です。法人税法22条の2第1項は、資産の販売等に係る収益の額を、目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入するとしています。

Q. 窓口で受け取る一部負担金も非課税ですか?

非課税です。消費税法基本通達6−6−3は、非課税となる療養には、被保険者又はその家族の療養に際し被保険者が負担する一部負担金に係る療養も含まれるとしています。

Q. 個別対応方式と一括比例配分方式は、どちらを選べばよいですか?

仕入れの構成と課税売上割合で結果が変わるため、両方で試算して比べます。一括比例配分方式を選択した場合は、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。

Q. 棚卸資産の評価方法の届出を出していません。どうなりますか?

評価方法を選定しなかった場合は、最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法で評価します(法人税法施行令31条)。

Q. 仕入れた医薬品の価格が下がった場合、評価損にできますか?

時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情で低下しただけでは評価損は計上できません(法人税基本通達9−1−6)。品質変化等により通常の方法で販売できなくなった場合は、評価損を計上できる事実の例に挙げられています(同9−1−5)。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月29日

参考資料

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