相続の手続きは、思いついた順にやると、やり直しになることがあります。たとえば、相続人が全員そろっていない状態で遺産分割の話し合いをしても、その結果は使えません。手続きには、先に済ませないと次に進めないものがあるからです。
この記事は、遺産の確認から名義変更、相続税の申告までの手続きを、順番に並べたものです。どの手続きが何に必要か、どれを並行して進めてよいか、司法書士・税理士・弁護士・行政書士のどこに何を頼めるかを、法令と公的機関の案内で確かめて整理しました。亡くなった直後の届出(死亡届・年金・健康保険)は、親が亡くなったらすること一覧|期限順のチェックリストで説明しています。この記事は、その後の「相続そのもの」の手続きを扱います。
この記事の要点
- 順番は「遺言書の確認 → 相続人の確定 → 財産と借金の調査 → 相続放棄の判断(3か月)→ 遺産分割 → 名義変更」が基本です。準確定申告(4か月)と相続税の申告(10か月)は、並行して進めます。
- 遺産分割の協議は全員でします。一人でも欠けると使えないため、先に戸籍で相続人を確定します。
- 遺産分割が終わるまで預金を動かせないときは、民法909条の2で、金融機関ごとに150万円まで払い戻せます。
- 遺産分割の前でも、相続税の申告は10か月以内です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに分割された財産が対象です。
- 専門家の分担は、登記は司法書士、税務は税理士、争いのある遺産分割の代理は弁護士、書類の作成は行政書士です。
相続手続きの流れ|遺産の確認から相続税の申告までの順番
全体の順番を、表にまとめます。期限のあるものは、数え始めの日と一緒に書いています。
| 順番 | 手続き | 主な窓口 | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 遺言書の有無の確認(あれば検認など) | 家庭裁判所・法務局・公証役場 | 検認は遅滞なく |
| 2 | 相続人の確定(戸籍の収集・法定相続情報一覧図) | 市区町村・法務局 | なし(ただし3〜10か月の期限の前提) |
| 3 | 財産と借金の調査 | 金融機関・証券会社・市区町村など | なし(相続放棄の判断は3か月以内) |
| 4 | 相続放棄・限定承認の判断 | 家庭裁判所 | 知った時から3か月以内 |
| 5 | 遺産分割協議(協議書の作成) | 相続人全員・家庭裁判所(まとまらないとき) | 期限なし。相続税の特例を使うなら申告期限が目安 |
| 6 | 名義変更・解約・払戻し | 金融機関・証券会社・法務局 | 相続登記は3年以内 |
| 7(並行) | 準確定申告 | 税務署 | 知った日の翌日から4か月以内 |
| 8(並行) | 相続税の申告・納付 | 被相続人の住所地の税務署 | 知った日の翌日から10か月以内 |
表の1〜6は、前の手続きの結果が次の手続きの前提になる順番です。7と8の税金の申告は、遺産分割や名義変更が終わるのを待つものではなく、亡くなったことを知った日の翌日から数える期限(4か月・10か月)までに、ほかの手続きと並行して行います。
1〜6の順番は、相続の仕組みから決まります。相続人が数人いる場合、遺産分割が終わるまでの間、相続財産は相続人全員の共有です。各人の持分は、法定相続分で決まります(民法898条)。そこから、誰がどの財産を取得するかを決めるのが遺産分割で、決めるためには、相続人が誰か、財産が何かがわかっている必要があります。
先に済ませないと進めない手続き|順番が決まっている理由
次の表は、各手続きを進めるために先に必要なものと、その理由です。
| 進めたい手続き | 先に必要なもの | 理由・根拠 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議 | 遺言書の確認・相続人の確定・財産の調査 | 協議は相続人全員で行い、一人でも欠けた協議は有効にならないためです。民法907条1項は、共同相続人が協議で遺産を分割できると定めています。遺言書があれば、分け方がすでに決まっている場合があります |
| 相続人の確定 | 被相続人の戸籍 | 相続人は民法の順位で決まります(配偶者は常に相続人、子、直系尊属、兄弟姉妹の順。民法887条・889条・890条)。順位は戸籍で確かめます |
| 相続放棄の判断 | 財産と借金の調査 | 放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。借金の有無を知らないまま判断すると、3か月の期限に間に合わなくなるおそれがあります |
| 準確定申告 | 相続人の確定 | 申告書の付表に、各相続人の氏名・住所・続柄を書くためです(国税庁タックスアンサーNo.2022) |
| 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例 | 申告期限までの遺産分割 | 配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、原則として申告期限までに分割された財産が対象です(国税庁タックスアンサーNo.4158、No.4124、No.4208) |
| 相続税の申告 | 財産の評価(遺産分割は申告前が望ましい) | 遺産分割がまとまっていなくても、申告期限は延びません(国税庁タックスアンサーNo.4208) |
配偶者の税額軽減は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付すると、申告期限から3年以内に分割した財産も対象になります(国税庁タックスアンサーNo.4158)。
並行して進めてよいもの
順番に見えても、並行できるものがあります。
- 戸籍の収集と、財産の調査:どちらも、遺産分割の前に済ませるものなので、同時に進められます。
- 準確定申告の準備と、遺産分割の話し合い:準確定申告は4か月、遺産分割はそれより後まで続くことが多いため、先に所得の確認を始めます。
- 財産の評価と、遺産分割協議:不動産の評価など、時間がかかるものは、協議と並行して専門家に依頼します。
反対に、並行してはいけないものもあります。相続放棄を考えているときに、預金を引き出して使う、不動産を売るなど、相続財産を処分する行為です。処分すると、単純承認をしたものとみなされることがあります(民法921条1号)。
ステップ1:遺言書の有無を確かめる
最初に、遺言書があるかを確かめます。遺言書があれば、原則としてその内容に従います。見つかった場所と種類で、次の手続きが変わります。
- 自宅などで見つかった自筆証書遺言:開封せず、家庭裁判所に検認を請求します。封印がある場合は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(民法1004条1項・3項)。
- 法務局に保管されている自筆証書遺言:検認は不要です。保管の有無は遺言書保管事実証明書、内容は遺言書情報証明書で確認します(法務局における遺言書の保管等に関する法律9条〜11条)。
- 公正証書遺言:検認は不要です(民法1004条2項)。平成元年以降に作成されたものは、全国の公証役場で、相続人などの利害関係人が有無を問い合わせられます。
遺言書があっても、相続人を含めた関係者全員の同意があれば、遺産分割協議で遺言と違う分け方にできます。ただし、遺言の内容によっては分割できない場合もあるため、中身を確かめてから判断します。遺言書で遺言執行者が決まっているときは、遺言執行者が遺言の内容を実現する手続きを進めます。遺言執行者は、任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知します(民法1007条2項)。種類ごとの違いは、遺言書と相続税で説明しています。
ステップ2:相続人を確定する|戸籍の集め方と法定相続情報一覧図
相続人の確定には、一般に、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本を使います。戸籍は、結婚や転籍、戸籍の様式の改製で複数にわたることが多く、本籍地ごとに請求します。提出先によって求める範囲が違うことがあり、たとえばゆうちょ銀行は、婚姻(未婚の場合は16歳)から死亡までの連続した戸籍謄本を求めています。
- 本籍地の市区町村へ郵送で請求:戸籍の請求は、郵便などで送ってもらうこともできます(戸籍法10条3項)。
- 広域交付:2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、まとめて請求できるようになりました。
- 広域交付の条件:請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍です。請求する人が窓口に行く必要があり、郵送や代理人による請求はできません(法務省の案内)。コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外です。
戸籍がそろったら、法務局の法定相続情報証明制度を使うと、相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)の写しが無料で交付されます。この写しは、戸除籍謄本等の束の代わりに、相続登記などの手続きで使えます。どの手続きで使えるかは、提出先に確認します。一覧図は、申出日の翌年から5年間保存され、その間は再交付を受けられます。申出は、被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する登記所に出せます。郵送も可能です。
相続人の範囲と数え方の詳細は、相続税の法定相続人|範囲・順位と、養子・相続放棄・代襲相続の数え方で整理しています。
ステップ3:財産と借金を調べる|どこで何がわかるか
相続人は、相続を承認するか放棄するかを決める前に、相続財産の調査ができます(民法915条2項)。プラスの財産もマイナスの財産も含めて、一覧にします。
| 調べるもの | 調べ方 | 確かめられること |
|---|---|---|
| 銀行などの預貯金 | 通帳・郵便物から金融機関を探し、残高証明書を請求する | 亡くなった日の残高 |
| ゆうちょ銀行の貯金 | 現存調査(貯金の有無の調査)を、窓口に申し出る | 口座の有無。調査は無料で、結果は郵送。残高証明書は所定の手数料(ゆうちょ銀行の案内)。詳細はゆうちょ銀行の相続手続き |
| 株式・投資信託 | 証券会社の口座があるか。不明なら、証券保管振替機構の開示請求 | 口座がある証券会社・信託銀行などの一覧(有料)。銘柄・残高は開示されないため、各社に直接確認します。詳細は株式・証券口座の相続手続き |
| 不動産 | 市区町村に、名寄帳の交付を請求する | 名義人ごとの土地・家屋の明細と課税内容。相続人は法定相続人である証明(戸籍謄本や法定相続情報一覧図)が必要(自治体の例:川口市) |
| 生命保険 | 保険証券・保険会社からの郵便物を探す | 請求権は請求できる時から3年で時効になります(保険法95条1項) |
| 借金・保証 | 契約書・通帳の引き落とし・郵便物を確認する | 借入金、未払いの税金・医療費、保証人としての責任(ゆうちょ銀行の案内にも例があります) |
預貯金の相続税の評価は、亡くなった日の残高が基本です。上場株式の評価は、亡くなった日の最終価格と、亡くなった月・前月・前々月の月平均額のうち最も低い価額です(国税庁タックスアンサーNo.4632)。非上場株式は、会社の規模などに応じて別の方法で評価します(財産評価基本通達178以下)。評価は、遺産分割の前に済ませると、分け方の検討がしやすくなります。
ステップ4:相続放棄・限定承認を判断する
調査の結果、借金のほうが多いおそれがあるときは、相続放棄や限定承認を考えます。期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。申述先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。調査に時間がかかるときは、利害関係人または検察官の請求で、家庭裁判所が期間を伸ばすことができます。
放棄をした人は、その相続に関して、初めから相続人とならなかったものとみなされます。そのため、放棄をした人は、遺産分割協議に加わりません。ただし、相続税の基礎控除の人数では、放棄がなかったものとして数えます。詳しくは、相続放棄と相続税|放棄しても死亡保険金は受け取れる?基礎控除の人数は?で説明しています。
ステップ5:遺産分割協議をする|参加者・分け方・協議書
誰が参加するか
遺産分割協議には、相続人全員が参加します。一人でも欠けた協議は、有効になりません。相続人の中に未成年者がいる場合は、原則として親が代理しますが、親も相続人であるなど、利益が相反する場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求します(民法826条)。
どう分けるか
分け方に決まりはありません。民法906条は、遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況などの一切の事情を考慮して分けると定めています。法定相続分は目安です。配偶者と子が相続人なら、配偶者と子の相続分は各2分の1です(民法900条1号)。子が複数いれば、子の分を人数で等分します。
協議書をつくる
協議がまとまったら、結果を書面(遺産分割協議書)にします。法律上、協議書の作成は義務ではありませんが、預貯金の払戻しや名義変更、相続税の申告で、分割の内容を示す書類として使います。金融機関は、手続きで相続人の印鑑登録証明書を求めるのが一般的です。書き方は、遺産分割協議書の書き方で説明しています。
まとまらないとき
協議がまとまらないときや、協議ができないときは、各共同相続人が、家庭裁判所に遺産分割を請求できます(民法907条2項)。調停を利用する場合は、遺産分割調停として申し立てます(裁判所の案内)。分割が終わるまでの間に、葬儀費用や生活費などで預金が必要なときは、家庭裁判所に、預貯金債権の仮の取得を求める申立てもできます(家事事件手続法200条3項)。
分割がまとまるまでの預金は、次の制度で一部を引き出せます。民法909条の2は、各共同相続人が、相続開始時の預貯金債権の額の3分の1に、自分の法定相続分を掛けた額まで、単独で払い戻せると定めています。ただし、同じ金融機関からは150万円までです(法務省令)。詳しくは、亡くなった人の銀行口座で説明しています。
ステップ6:名義変更・解約・払戻し|財産ごとの手続き先
| 財産 | 手続き | 窓口 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 預貯金 | 相続手続き(解約・払戻し・名義変更) | 各金融機関 | なし |
| ゆうちょ銀行の貯金 | 相続手続き。申出のあった口座は停止設定されます | ゆうちょ銀行・郵便局の貯金窓口(全国どこでも可) | なし |
| 株式・投資信託 | 相続人の口座への移管、または換金 | 証券会社・信託銀行 | なし |
| 不動産 | 相続登記(所有権の移転の登記) | 法務局(司法書士に依頼可) | 取得を知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象 |
| 生命保険金 | 保険金の請求 | 保険会社 | 請求できる時から3年(保険法95条) |
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、未登記のものは、2027年3月31日までに登記します(法務省のQ&A)。遺産分割がまとまらず3年以内に登記できないときは、相続人申告登記で、相続人であることを登記官に申し出れば、義務を果たしたものとみなされます(不動産登記法76条の3第2項)。費用は相続登記の義務化と費用で整理しています。
ステップ7:準確定申告と相続税の申告
亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が申告するのが準確定申告です。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法125条1項)。詳しくは、準確定申告|亡くなった人の確定申告の期限・やり方・必要書類をご覧ください。
相続税の申告は、特例(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例)を使う前の課税価格の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要です。特例を使って税額が0円になる場合も、申告は必要です(国税庁タックスアンサーNo.4205)。
期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、納付も同じ期限です(相続税法27条1項、15条1項、33条)。分割できていない財産は、法定相続分などで取得したものとして計算して申告します。
詳しい流れは、次の記事で説明しています。
- 分割がまとまらない場合:遺産分割がまとまらない時の相続税申告
- 申告全体の流れ:相続税の申告|期限(10か月)・流れ・必要書類の全体像
誰に頼むか|司法書士・税理士・弁護士・行政書士の分担
相続の手続きは、本人や相続人が自分でできるものが多くあります。専門家に頼むときは、法律で、誰がどの業務をできるかが決まっています。
| 専門家 | 頼める主な内容 | 根拠 | 頼めないこと |
|---|---|---|---|
| 司法書士 | 登記の手続の代理(相続登記など)、法務局に出す書類の作成、裁判所に出す書類の作成(相続放棄の申述書など) | 司法書士法3条1項 | 税務申告の代理(税理士法)。他の法律で制限されている業務は行えません(同法3条8項) |
| 税理士 | 相続税・準確定申告の代理、税務書類の作成、税務相談 | 税理士法2条1項 | 税理士業務は、税理士(法人)でない者は行えません(同法52条)。登記の代理や、相続人同士の争いの代理は、税理士の業務に含まれません |
| 弁護士 | 相続人同士の争いの交渉・調停・訴訟の代理など | 弁護士法72条 | — |
| 行政書士 | 遺産分割協議書など、権利義務に関する書類の作成、官公署に出す書類の作成 | 行政書士法1条の3 | 他の法律で制限されている業務(同条2項)。たとえば、登記の代理は司法書士法、税務代理・税務書類の作成は税理士法の範囲です |
| 土地家屋調査士 | 土地・建物の表示に関する登記の調査・測量と、その申請の代理 | 土地家屋調査士法3条1項 | — |
弁護士法72条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関して代理や和解などの法律事務を業とすることを禁じています。相続人同士で意見が対立している場合は、争いの当事者の代理は弁護士の領域です。争いがなく、書類をそろえる作業が中心なら、司法書士や行政書士、税理士が、それぞれの範囲で手伝えます。
法定相続情報一覧図の申出は、親族のほか、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士に、代理を依頼できます(法務局の案内)。
期限を逆算する|3か月・4か月・10か月の山の例
相続の期限は、3か月、4か月、10か月の3つの山に分かれます。例として、亡くなった日と知った日がともに2026年11月18日(水)のケースを見ます。
| 期限 | 末日(例) | それまでに決めておくこと |
|---|---|---|
| 3か月 | 2027年2月18日(木) | 相続人の確定と、財産・借金の概要。放棄・限定承認をするか、期間の伸長を申し立てるか |
| 4か月 | 2027年3月18日(木) | 準確定申告が必要か。必要なら、所得の資料の収集と申告 |
| 10か月 | 末日は2027年9月18日(土)。実際の期限は2027年9月21日(火) | 財産の評価、遺産分割(特例を使うなら申告期限まで)、申告書の作成、納付 |
相続税の申告期限は、末日が土曜日にあたるため、日曜日と、9月20日(敬老の日)を過ぎた最初の平日の9月21日(火)になります(国税通則法10条2項、同法施行令2条2項)。各期限の日付の数え方は、親が亡くなったらすること一覧で、5つの死亡日の例を表にしています。
手続きの順番でよくある誤り
- 相続人が全員そろう前に遺産分割協議書に署名している。戸籍で相続人を確定していない場合、後から相続人が見つかって、協議がやり直しになることがあります。
- 遺言書の有無を調べる前に分割の話を進めている。遺言書が後で見つかると、前提が変わります。
- 借金を調べる前に預金を使っている。相続財産の処分は、単純承認とみなされることがあります。
- 遺産分割が終わるまで相続税の申告を待っている。分割が終わらなくても、申告期限は延びません。
- 相続登記は急がなくてよいと思っている。取得を知った日から3年以内の義務です。
手続きを任せたいとき
手続きの全体像がわかったら、家族で分担を決めます。相続税の申告や、財産の評価が必要な場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。相続税がかかるか、どのくらいかかるかの目安は、無料の相続税シミュレーターで、分け方ごとの税額と二次相続を含めた合計を比べられます。
よくある質問
遺言書がなければ、法定相続分で分けなければなりませんか。
法定相続分は目安で、相続人全員が合意すれば、法定相続分と違う分け方にできます。その場合は、遺産分割協議書に、全員が署名・押印します。
相続人の一人と連絡がとれません。どうすればよいですか。
遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。連絡先がわからないときは、戸籍の附票などで住所を調べることから始めます。それでもまとまらないときは、家庭裁判所の調停などの利用を、弁護士や司法書士に相談してください。
名義変更や相続登記は、自分でできますか。
できます。相続登記は、法務局に自分で申請できます。登記の専門家である司法書士に頼むこともできます。法務省のQ&Aでも、お近くの法務局(登記手続案内は予約制)や、司法書士・司法書士会への相談が案内されています。
相続税がかからない場合も、これらの手続きは必要ですか。
必要です。相続税の申告は不要でも、名義変更、相続登記、遺産分割などの手続きは、別に必要です。必要な手続きは、相続税がかからない場合の手続きで整理しています。
司法書士と税理士と弁護士のどれから相談すればよいですか。
相談したい内容で選びます。不動産の名義変更なら司法書士、相続税の申告なら税理士、相続人同士の争いなら弁護士です。複数にまたがるときは、最初の相談先で、他の専門家との連携が可能かを確認すると、手間が減ります。
まとめ
- 相続の手続きは、遺言書の確認、相続人の確定、財産と借金の調査、相続放棄の判断、遺産分割、名義変更の順に進めます。準確定申告(4か月)・相続税の申告(10か月)は、遺産分割や名義変更を待たず、期限までに並行して行います。
- 遺産分割協議は、相続人全員で行います。戸籍で相続人を確定し、遺言書の有無を確認してから始めます。
- 遺産分割が終わるまでの間も、民法909条の2の払戻し制度(金融機関ごとに150万円まで)で、預金の一部を引き出せます。
- 相続税の申告は10か月以内です。遺産分割が終わっていなくても期限は延びませんが、特例を使うには、申告期限までの分割が原則です。
- 専門家は、登記は司法書士、税務は税理士、争いは弁護士、書類作成は行政書士と、業務の範囲が法律で決まっています。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 民法:887条・889条・890条(相続人)、898条(共同相続の効力)、900条(法定相続分)、906条・907条(遺産分割)、909条の2(預貯金債権の行使)
- 民法:915条(承認・放棄の期間)、921条(法定単純承認)、826条(利益相反行為)、939条(相続の放棄の効力)、1004条(遺言書の検認)、1007条(遺言執行者の任務)
- 民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令
- 家事事件手続法:200条(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
- 戸籍法:10条(戸籍謄本等の請求)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律:9条〜11条
- 不動産登記法:76条の2・76条の3・164条
- 保険法:95条
- 所得税法:125条/相続税法:15条・27条/国税通則法:10条(同施行令2条)
- 司法書士法:3条/税理士法:2条・52条/弁護士法:72条/行政書士法:1条の3/土地家屋調査士法:3条
- 国税庁 財産評価基本通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税/No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- No.4158 配偶者の税額の軽減/No.4124 小規模宅地等の特例/No.2022 準確定申告/No.4632 上場株式の評価
- 法務省 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)/相続登記の申請義務化に関するQ&A/民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
- 法務局 「法定相続情報証明制度」について/同 具体的な手続について
- 裁判所 遺産分割調停/相続の放棄の申述/遺言書の検認
- 日本公証人連合会 遺言(遺言の検索)
- 川口市 名寄帳の請求について(自治体の案内の例)
- 現存調査(貯金の有無の調査)
- 証券保管振替機構 登録済加入者情報の開示請求
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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