親が亡くなり、相続税の申告が必要なのか、何から手をつければ期限に間に合うのか迷っていませんか。
まずは財産や債務を調べ、特例を使う前の課税対象の合計額が、法定相続人の人数で決まる基礎控除を超えるか確かめます。申告が必要な場合の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内で、納税も同じ期限です。
この記事では、申告の要否と期限日の確認方法、書類集めから遺産分割、申告・納税までの流れを順に説明します。
この記事の要点
- 申告が要るのは、特例を使わない課税価格の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときです。特例や配偶者の税額軽減で0円になっても、申告書の提出が条件です。
- 期限は「相続の開始があったことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内」です。期限日が土日祝日・年末年始なら、翌日以後の最初の平日です。
- 提出先は、亡くなった人の住所地を所轄する税務署です。e-Tax・郵送・時間外収受箱で出せます。
- 申告書は、相続人全員で共同して出すことも、連絡が取れない場合などは別々に出すこともできます。
- 遺産分割がまとまらなくても、期限は延びません。法定相続分で申告・納税し、分割後に修正申告か更正の請求をします。
相続税の申告が必要な人|判定の分かれ道
相続税の申告が必要かどうかは、財産の合計額と基礎控除額の比べ方で決まります。国税庁のタックスアンサー(No.4205)は、遺産に係る基礎控除額を超えるときに、申告と納税が必要としています。比べる合計額は、相続や遺贈で取得した財産などの価額の合計額(債務などを引き、加算対象期間内の暦年課税の贈与財産を加えたもの)です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法15条1項)。人数の数え方は、相続税の基礎控除|3,000万円+600万円×法定相続人の数え方と人数別の早見で詳しく説明しています。
特例を使って基礎控除以下になるときも申告が要る
判定に使う合計額は、小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)などを適用しない場合の課税価格の合計額です(国税庁 No.4205の注2)。特例を使うと基礎控除以下になるときでも、申告書を出さなければ特例は使えません。
配偶者の税額軽減も同じです。相続税法27条1項は、申告書を出す義務を「課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合で、その人に相続税額があるとき」に生じるとしています。その「相続税額」の数え方からは、第19条の2(配偶者の税額軽減)が除かれています。軽減の結果が0円でも、申告は必要です。
4つの設例で見る「申告が要る・要らない」
配偶者と子2人(法定相続人3人・基礎控除4,800万円)の家族で、財産の内容を変えて比べます。当事務所の無料の相続税シミュレーターと同じ計算で出した金額です。
| 設例 | 課税価格の合計 | 相続税の総額 | 実際に納める税額 | 申告 |
|---|---|---|---|---|
| A 財産が4,800万円(基礎控除と同額) | 4,800万円 | 0円 | 0円 | 不要 |
| B 財産が8,000万円。配偶者がすべて取得 | 8,000万円 | 350万円 | 0円(配偶者の税額軽減) | 必要 |
| C 財産が8,000万円。法定相続分どおりに分ける | 8,000万円 | 350万円 | 175万円(子が各87万5千円。配偶者は0円) | 必要 |
| D 預金など3,000万円+自宅の土地4,000万円(200㎡)。配偶者が自宅を取得し、小規模宅地等の特例を使う | 3,800万円(特例の減額3,200万円を引いた後) | 0円 | 0円 | 必要(特例を使うため) |
設例Dは、特例を使わない場合の合計が7,000万円で基礎控除を超えるため、特例の適用を受けるには申告書の提出が条件になります。4つの設例は、いずれも債務・葬式費用・保険金がないと仮定した「例:」です。実際は、債務や葬式費用を引き、生命保険金などを加えて合計を出します。
申告が必要な見込みかどうかは、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でも、おおよその目安を確かめられます。
相続税の申告期限は10か月|数え方と休日の扱い
申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。国税庁は「知った日」を、通常の場合は被相続人の死亡の日としています。国税庁の例では、1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限です。
10か月の数え方の3つの決まり
期間の計算は、国税通則法10条と民法143条の決まりに沿って行います。次の3つを押さえると、自分の期限日を自分で出せます。
- 初日は数えません。亡くなった日の翌日が起算日です(国税通則法10条1項1号)。
- 暦に従って10か月後の応当日の前日に終わります。多くの場合、亡くなった日と同じ日付の10か月後が期限日になります(同項3号)。
- 10か月後の月にその日付がないときは、その月の末日です。起算日が月の初めの日(亡くなった日が月末)のときは、10か月目の月の末日になります(同項2号・3号ただし書)。
期限日が日曜日、国民の祝日、そのほか一般の休日にあたるときは、その翌日が期限とみなされます(同条2項)。土曜日と12月29日〜31日も、政令(国税通則法施行令2条2項)で同じ扱いです。1月1日〜3日は、元日と行政機関の休日(行政機関の休日に関する法律1条)にあたります。国税庁の手引きも、期限日が日曜日・祝日などの休日または土曜日にあたるときは、その翌日が申告期限になると説明しています。
亡くなった日別の申告期限の早見表(2026年に亡くなった場合)
2026年に亡くなった場合の期限を、休日の影響が出やすい日付を中心に並べました。祝日の日付は内閣府が公表している国民の祝日の一覧で確かめています。
| 亡くなった日 | 10か月後の日付 | 実際の申告期限 | ずれる理由 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月6日(火) | 2026年11月6日(金) | 2026年11月6日(金) | ずれません(国税庁の例と同じ数え方) |
| 2026年1月3日(土) | 2026年11月3日(火) | 2026年11月4日(水) | 文化の日 |
| 2026年1月23日(金) | 2026年11月23日(月) | 2026年11月24日(火) | 勤労感謝の日 |
| 2026年1月31日(土) | 2026年11月30日(月) | 2026年11月30日(月) | 11月に31日がなく、月末が期限(1月30日も同じ) |
| 2026年2月27日(金) | 2026年12月27日(日) | 2026年12月28日(月) | 日曜日 |
| 2026年2月28日(土) | 2026年12月31日(木) | 2027年1月4日(月) | 起算日が3月1日(月の初め)なので10か月目の月末。12月31日と1月1日〜3日は休日 |
| 2026年3月11日(水) | 2027年1月11日(月) | 2027年1月12日(火) | 成人の日 |
| 2026年4月11日(土) | 2027年2月11日(木) | 2027年2月12日(金) | 建国記念の日 |
| 2026年5月21日(木) | 2027年3月21日(日) | 2027年3月23日(火) | 日曜日の春分の日。翌日の3月22日(月)が振替休日 |
| 2026年8月31日(月) | 2027年6月30日(水) | 2027年6月30日(水) | ずれません(月末に亡くなると、10か月目の月末) |
| 2026年12月31日(木) | 2027年10月31日(日) | 2027年11月1日(月) | 日曜日 |
2月28日の行は、うるう年ではない年の例です。うるう年は2月29日が起算日になり、10か月後の日付も変わります。早見表にない日付や、月末近くに亡くなった場合は、所轄の税務署で確かめると安心です。
郵送でも期限の判定は消印日、納付は別
書類を郵便や信書便で出した場合は、通信日付印(消印)の日に提出したものとみなされます(国税通則法22条)。ただし、納税は別の話です。納付は、申告書を出したかどうかにかかわらず、期限までに済ませる必要があります(相続税法33条)。
国外に出る予定の相続人がいる場合は、納税管理人の届出をしないで期限内に国内に住所も居所もなくなるときの期限が条文に別に書かれています(相続税法27条1項かっこ書)。該当しそうなときは、早めに税務署へ確認してください。
相続税の申告書の提出先と提出方法|共同提出と別々の提出
提出先は亡くなった人の住所地を所轄する税務署
被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合、申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません(国税庁 No.4205、手引き)。相続人が遠方にいても、提出先は変わりません。被相続人の住所が国内にないときは納税地の定めが別になります(相続税法62条)。
e-Tax・郵送・時間外収受箱で出せる
国税庁は、相続税の申告書の提出方法として、e-Tax(電子申告)、郵便・信書便による送付、税務署の時間外収受箱への投函を挙げています。申告の内容によってはe-Taxを使えない場合があり、その場合は書面で作って持参か送付をします。
税務署の総合窓口の受付時間は、2026年10月1日から原則として午前9時から午後3時までです。土曜日・日曜日・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)は執務を行っていません。期限日が近いときは、窓口の時間だけでなく、郵送の日数やe-Taxの利用可能時間も見て日程を組みます。
共同して出す方法と、別々に出す方法
同じ亡くなった人から財産を取得した人は、申告書を共同して作って出すことができます(相続税法27条5項)。2人以上が共同する場合は、1つの申告書に連署して出します。国税庁の手引きは、相続人どうしの連絡が取れない場合などは、別々に申告書を出しても差し支えないとしています。なお、相続人による申告書への押印は、令和3年度の税制改正で不要になりました(国税庁)。
共同して出さない相続人がいるときは、共同して提出する人だけで1つの申告書を作ります。共同しない人は、別に申告書を作って出します。申告書への書き方は、「相続税の申告書を作る順番」の後ろの小節で説明します。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 全員で共同して提出 | 相続人どうしの連絡が取れ、分け方が決まっている | 連署が要るため、署名の日程を合わせる(申告書への押印は不要) |
| 相続人ごとに別々に提出 | 連絡が取れない・足並みが揃わない | 全員の合計額(課税価格の合計・相続税の総額)の考え方は共通。書き方は手引きの「参考記載」の説明に従う(後述) |
亡くなった日から申告までの流れ|逆算の日程表
10か月は、集めるものが多い人にとっては長くありません。国税庁(No.4202)は、申告の準備として、相続人の確認、遺言書の有無の確認、遺産と債務の確認、遺産の評価、遺産の分割という順番を示しています。この順番を、亡くなった日から逆算した日程にあてはめます。
例:2026年11月15日(日)に亡くなった場合。法的に期限が決まっているものは日付を、そうでないものは当所の整理による「目安」を並べました。
| 時期 | すること | 期限の根拠 |
|---|---|---|
| 亡くなってから7日以内 | 死亡届を出す | 戸籍法86条(知った日から7日以内) |
| 1か月目(〜2026年12月15日の目安) | 遺言書の有無を確認する。戸籍を集めて相続人を確認する。通帳・郵便物・ネットの契約から財産と債務の洗い出しを始める | 目安 |
| 3か月目(2027年2月15日) | 相続放棄・限定承認を考える場合の期限。財産と債務の全体像をつかむ | 民法915条1項(知った時から3か月以内) |
| 4か月目(2027年3月15日) | 準確定申告(亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得税の申告)が必要な場合の期限 | 所得税法125条1項(知った日の翌日から4月を経過した日の前日) |
| 4〜6か月目(〜2027年5月の目安) | 土地・非上場株式などの評価を進める。遺産分割の話し合いをする | 目安 |
| 7〜8か月目(〜2027年7月の目安) | 申告書を作る。納税額と納税資金の見込みをつける | 目安 |
| 9か月目(〜2027年8月の目安) | 署名、印鑑証明書(遺産分割協議書の分)、添付書類をそろえる。e-Taxや郵送の準備をする | 目安 |
| 10か月目(2027年9月15日(水)) | 申告書の提出と納税 | 相続税法27条1項・33条 |
目安の行は、法律で決まった日ではありません。財産の種類や相続人の人数、遺産分割の進み方で、前後します。土地や非上場株式の評価に時間がかかるときは、評価の段階を前倒しにします。亡くなった後の手続き全般の順番は、親が亡くなったらすること一覧|期限順のチェックリストと、相続手続きの流れにもまとめています。
家族で分ける担当表|誰が何を集めるか
申告までの作業は、1人で抱えると止まりがちです。相続人が複数いる場合は、窓口役を1人決め、集める物を分けておくと進めやすくなります。次の表は、国税庁が申告書に添付するよう求めている書類(手引き)を軸に作った分担の例です。
| 作業 | 担当の例 | 集めるもの・確認すること |
|---|---|---|
| 全体の窓口・日程管理 | 相続人の1人 | 期限日の確認、各担当の進み具合、税務署・専門家との連絡 |
| 相続人の確認 | 戸籍を取りやすい人 | 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本。相続開始の日から10日を経過した日以後に作られたものが必要。図形式の法定相続情報一覧図の写しで代えられる場合もある |
| 預貯金・保険の確認 | 被相続人と同居または近くにいた人 | 通帳、郵便物、保険証券。亡くなった日の残高や支払われる保険金の額 |
| 不動産の確認 | 実家の近くにいる人 | 固定資産税の納税通知書、登記の内容。評価が必要な土地の場所と形 |
| 債務・葬式費用の確認 | 葬儀を担当した人 | 領収書。葬式費用も遺産額から差し引く(国税庁 No.4202) |
| 遺産分割の話し合い・協議書 | 相続人全員 | 遺言書がなければ、相続人全員で協議し、協議書を作る。遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写しを申告書に添付する |
| 各相続人の本人確認書類 | 各相続人が自分で | マイナンバーの番号確認書類と身元確認書類の写し。e-Taxで申告する場合は、本人確認書類の提示や写しの提出は不要 |
| 印鑑証明書 | 各相続人が自分で | 配偶者の税額軽減を使う場合は、遺産分割協議書に押印した印鑑の印鑑証明書が必要 |
| 納税資金の手当て | 各相続人 | 納付は各人が自分の税額を、期限までに金銭で納めるのが原則 |
担当を分ける目的は、書類の入手に使える時間を増やすことです。分担表のとおりに決める必要はありません。遠方の相続人がいるときは、書類のやりとりに日数がかかることも日程に入れます。
相続税の申告に必要な書類の全体像
申告書に添付する書類は、特例を使うかどうか、相続時精算課税を選んだ人がいるかどうかで変わります。国税庁の手引き(相続税の申告のしかた)は、一般の場合と特例の場合を分けて、次のように示しています。
| 場面 | 主な添付書類 |
|---|---|
| 一般の場合(特例などを使わない) | 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(または図形式の法定相続情報一覧図の写し)。遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し |
| 相続時精算課税を選んだ人がいる場合 | 上の書類に加えて、被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの) |
| 配偶者の税額軽減を使う場合 | 上の書類に加えて、相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)。申告期限内に分割できないときは「申告期限後3年以内の分割見込書」 |
| 小規模宅地等の特例を使う場合 | 上の書類に加えて、特例の区分(居住用・事業用・貸付事業用)に応じた書類(老人ホームに入っていた場合の契約書の写しなど) |
書類の種類ごとの詳しいチェックリストは、相続税の申告の必要書類一覧|戸籍・財産・債務・特例ごとのチェックリストにまとめています。遺産分割協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方を参照してください。
相続税の申告書を作る順番
申告書は多くの表で構成されますが、作る順番は決まっています。国税庁の手引きでは、一般の場合は次の3段階です。
- 相続税のかかる財産と、被相続人の債務などを、第9表から第15表に記入します。評価が必要な財産は、先に「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」や「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を作ります。
- 課税価格の合計額と相続税の総額を出すために、第1表と第2表を作ります。
- 税額控除の額を出すために、第4表から第8表までを作り、各人の納付税額を出します。
各表の書き方は、相続税の申告書の書き方|第1表〜第15表の作る順番と記入例で説明します。
共同しない相続人がいるときの書き方
申告書の第1表などには、共同して提出する人だけを書き、共同しない人は別に申告書を作って出します。
共同しない人の氏名や金額も合計額を示すために載せる場合は、「参考記載」欄に「1」と書いて、その人の分は申告書として扱われないことを示します。
税理士等がe-Taxでまとめて代理送信するときは、利用者識別番号を入力した相続人のデータが有効なものとして受け付けられます。
相続税の納税|期限と方法、払えないときの延納・物納
納税の期限は申告期限と同じ
相続税は、原則として申告期限までに、金銭で一度に納めます(相続税法33条、国税庁 No.4205)。申告書を出した後に税務署から納付書が送られてくることはありません。納付書で納める場合は、税務署で用意した所定の納付書を使います。
主な納付方法は、e-Taxのダイレクト納付、インターネットバンキングなどの電子納税、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、金融機関や税務署の窓口での現金納付です。クレジットカード納付は、納付できる金額が1,000万円未満でカードの決済可能額以下という制限があり、手数料もかかります。スマホアプリ納付は、納付税額が30万円以下の人が使える方法です。ダイレクト納付は、初回に利用届出書の提出が必要で、使えるようになるまでe-Taxで1週間程度、書面で1か月程度かかるとされています。
延納と物納は、申告期限までの申請が条件
金銭で一度に納めることが難しいときは、延納(年賦で分けて納める)と物納(財産そのもので納める)の制度があります。どちらも、申告期限までに申請書などを出す必要があります(国税庁 No.4205・No.4211・No.4214)。
延納|年賦で分けて納める
延納は、納めるべき相続税額が10万円を超え、金銭で納めることを困難とする事由があるときに、年賦での納付が認められる制度です。延納期間は、不動産等の割合などによって、最長で5年・10年・15年・20年に分かれます(相続税法38条、国税庁 No.4211)。
許可か却下は、延納の場合、申請期限から原則として3か月以内に行われます(No.4211)。
物納|財産そのもので納める
物納は、延納によっても金銭で納めることが困難なときに、税務署長の許可を受けて財産で納める制度です(相続税法41条)。
納付が遅れたとき|延滞税
納付が遅れると、本税のほかに延滞税がかかります。延滞税の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までと、それを過ぎた後で分かれ、年ごとに定められる基準の割合によって決まります(国税庁の手引き)。仕組みと手続きは、相続税の納付|期限・延納・物納と、払えない時の方法で説明します。
期限に間に合わないとき|遺産分割・災害・期限後申告
遺産分割がまとまらなくても申告期限は延びない
国税庁(No.4208)は、相続財産が分割されていなくても、申告は期限までにしなければならず、分割されていないことを理由に期限は延びないとしています。分割が成立していないときは、各相続人が法定相続分(または包括遺贈の割合)で財産を取得したものとして計算し、申告と納税をします(相続税法55条)。
この申告では、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えません。分割が済んだ後に、実際の分割にもとづいて修正申告か更正の請求ができ、その際に特例も使えます。特例を使えるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合に限られます。更正の請求は、分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内です。申告書に添える「申告期限後3年以内の分割見込書」の出し方を含め、遺産分割がまとまらない時の相続税申告で説明します。
災害などやむを得ない理由があるとき
災害その他やむを得ない理由で、申告書の提出期限までに申告・納付ができないときは、被相続人の住所地を所轄する税務署長に申請できます。申請すると、その理由がやんだ日から2か月以内に限り、申告・納付の期限が延長されます(国税庁の手引き)。特定非常災害に指定された場合は、別の期限の特例があります。
期限を過ぎてしまったとき
申告期限までに申告しなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告した場合は、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります(国税庁 No.4205)。気づいた時点で、できるだけ早く申告書を出すことが大切です。手続きの流れは、相続税の申告期限を過ぎたら|期限後申告の加算税・延滞税と早めの対処で説明します。
申告した後に誤りに気づいたとき
申告書を出した後で、計算誤りなどに気づいたときは、次の方法で直します(国税庁の手引き)。
- 税額が少なすぎたとき:修正申告書を出します。納付する税額には、加算税や延滞税がかかる場合があります。
- 税額が多すぎたとき:申告期限から一定の期間に限り、更正の請求ができます。
- 未分割だった遺産の分割や、遺留分侵害額の確定など、一定の事由が生じたとき:その事由を知った日の翌日から4か月以内に、更正の請求(多すぎるとき)をします(相続税法32条)。
- 上の事由で税額が少なすぎるとき:修正申告書を出します(相続税法31条)。修正申告に、更正の請求と同じ4か月の期限はありません。
還付の期限や手続きは相続税の修正申告と更正の請求(還付)|期限と手続きで説明します。
相続税の申告でよくある誤り
- 期限を「死亡日から10か月後の同じ日」とだけ覚えている。土日祝日や年末年始、月末の日付で、実際の期限日は変わります。早見表のとおり、自分の日付で確かめてください。
- 相続人の住所地の税務署へ出そうとする。提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。
- 特例で基礎控除以下になるから申告は不要と考える。特例を使うには、申告書を出す必要があります。
- 配偶者がすべて相続して税額が0円だから申告しなくてよいと考える。配偶者の税額軽減は、申告書を出して初めて受けられます。
- 遺産分割がまとまってから申告すればよいと考える。分割の成否にかかわらず期限は同じです。
- 家族名義の預金を財産に含めない。名義にかかわらず、被相続人が資金を出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは、相続税の対象です(国税庁の手引き)。名義預金の判断基準は別の記事で説明します。
- 申告期限を過ぎてから財産が見つかったとき、そのまま放置する。少なく申告した場合の直し方は、修正申告です。
相続税の申告を自分でするか、専門家に任せるか
申告書は、相続人自身が作って出すこともできます。ただ、土地の評価、非上場株式の評価、名義預金の判断、特例の要件など、判断が分かれやすい部分があると、作業の量と難しさが増えます。自分でできるケースとできないケースの見分け方は、相続税の申告は自分でできる?自分でできるケースと難しいケースの見分け方で説明します。
家族構成と財産の内訳を入れて、分け方ごとの税額と二次相続を含めた合計を比べたいときは、当事務所の無料の相続税シミュレーターが使えます。申告書の作成を任せたい場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。税理士の選び方の視点は、相続税の税理士の選び方|確認したい7つの点に整理しています。
よくある質問
10か月の期限は、遺産分割の話し合いが終わってから数え始めますか。
いいえ。亡くなったことを知った日の翌日から数えます。通常は死亡の日の翌日です。話し合いの進み具合は関係なく、期限は同じです。
申告期限が土曜日なら、金曜日までに出す必要がありますか。
いいえ。期限日が土曜日・日曜日・祝日・年末年始にあたるときは、その翌日以後の最初の平日が期限になります。土曜日に当たる場合は、通常は翌々日の月曜日です(月曜日が祝日ならその翌日)。
相続人の1人と連絡が取れません。申告できませんか。
申告できます。国税庁の手引きは、連絡が取れない場合などは、別々に申告書を出しても差し支えないとしています。その人の取得分を含めた全体の財産の把握は、できる範囲で進めます。
税額が0円なら、申告しなくてよいですか。
判定は、特例を使わない合計額で行います。その合計が基礎控除以下なら、申告は不要です。基礎控除を超えていれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って0円になる場合も、申告が必要です。
e-Taxで申告する場合、添付書類はどうなりますか。
国税庁の手引きは、e-Taxで申告する場合は本人確認書類の提示や写しの提出が不要としています。戸籍の謄本や遺産分割協議書などの添付書類の出し方は、国税庁の「相続税申告等のe-Tax提出方法一覧」で確かめてください。
まとめ
- 申告が必要かは、特例を使わない課税価格の合計が基礎控除を超えるかで判定します。特例や配偶者の税額軽減で0円になる場合も、申告書の提出が必要です。
- 期限は、知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内です。月末・土日祝日・年末年始で実際の日が動くので、早見表で自分の日付を確かめてください。
- 提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署です。e-Tax・郵送・時間外収受箱で出せます。共同して出すことも、別々に出すこともできます。
- 10か月を逆算して、3か月・4か月の期限(相続放棄・準確定申告)を先に見ておき、評価と遺産分割は早めに始めます。
- 納税は申告期限までです。難しいときは、延納・物納を申告期限までに申請します。遺産分割が間に合わなくても、期限は延びません。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 相続税法:27条(申告書)、33条(納付)、38条(延納の要件)、41条(物納の要件)、55条(未分割遺産に対する課税)、62条(納税地)、19条の2(配偶者の税額軽減)、15条(基礎控除)
- 国税通則法:10条(期間の計算及び期限の特例)、22条(郵送等に係る提出時期)
- 国税通則法施行令:2条(期限の特例)
- 行政機関の休日に関する法律:1条(行政機関の休日)
- 民法:143条(暦による期間の計算)、915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
- 所得税法:125条(年の中途で死亡した場合の確定申告)
- 戸籍法:86条(死亡の届出)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4202 相続税の申告のために必要な準備
- 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)
- 国税庁 B1-2 相続税の申告手続
- 国税庁 相続税の申告要否判定コーナー
- 内閣府 国民の祝日について
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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