決算を承認する株主総会が遅くなる会社では、法人税の申告期限に間に合うか気になりますよね。定款の定めなどで、定時総会を決算後2か月以内に開けない状態が続く法人には、延長の特例があります。要件を満たして申請すれば原則1か月延ばせますが、作業の遅れだけで使える制度ではありません。
この記事では、延長できる条件と申請期限、消費税・地方税の手続きを整理します。延長中の利子税や、見込みの税額を先に納める方法も確認できます。
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原則の期限と、延長の特例の仕組み
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて確定申告書を提出しなければなりません(法人税法第74条)。申告書は確定した決算に基づいて作るため、決算についての定時総会をいつ開くかが、申告の期限と関わってきます。
そこで法人税法第75条の2は、定款等の定めにより、または特別の事情があることにより、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる法人について、申請に基づいて申告期限を延長できることとしています。延長される期間は次のとおりです。
| 法人の状況 | 延長される期間 |
|---|---|
| 定款等の定めや特別の事情により、2か月以内に定時総会が招集されない常況にある | 1か月 |
| 会計監査人を置いていて、定款等の定めにより3か月以内に定時総会が招集されない常況にある | 定めの内容を勘案して、4か月を超えない範囲内で税務署長が指定する月数 |
| 特別の事情により3か月以内に定時総会が招集されない常況にあることその他やむを得ない事情がある | 税務署長が指定する月数 |
この特例は、申請した事業年度だけでなく、その事業年度以後の各事業年度に適用されます。ただし、残余財産の確定の日の属する事業年度は除かれます。また、延長の特例は「定時総会が招集されない常況」に着目した制度です。決算の作業が遅れているという理由だけで使うものではない点に注意が必要です。
なお、災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合の延長は、別の規定(法人税法第75条)です。こちらは事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請する仕組みで、この記事で扱う継続的な延長の特例とは別の手続です。
申請の期限と必要な書類
延長の特例の申請は、申告書に係る事業年度終了の日までに、申請書を提出して行います(法人税法第75条の2第3項)。国税庁の手続案内「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」でも、提出時期は最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで(通算法人は事業年度終了の日の翌日から45日以内)とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類の名前 | 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書 |
| 提出期限 | 最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで |
| 提出先 | 納税地の所轄税務署長 |
| 提出方法 | e-Taxソフトで作成・提出(書面の場合は持参または送付) |
| 添付書類 | 定款等の定めを理由とする場合は、定款等の写し |
| やめるとき | やめようとする事業年度終了の日までに届出書を提出 |
申請書には、定款等の定めや特別の事情の内容、月数の指定を受けようとする場合はその月数などを書きます。申請に対して、事業年度終了の日の翌日から15日以内に延長や却下の処分が無かったときは、延長されたものとみなされます(法人税法第75条の2第8項で準用する第75条第5項)。
実務で大事なのは、期末を過ぎてからでは間に合わないことです。たとえば3月31日が事業年度終了の日なら、その事業年度から延長を受けるには、3月31日までに申請書を出しておく必要があります。決算の準備が遅れそうだと期末後に気づいても、その事業年度には使えません。
消費税の申告期限の延長は別の届出が要ります
消費税の確定申告は、原則として課税期間の末日の翌日から2か月以内です(消費税法第45条)。法人税の延長の特例を受けている法人は、消費税についても申告期限の延長を受けられますが、そのためには「消費税申告期限延長届出書」を出す必要があります(消費税法第45条の2)。届出をすると、提出期限は課税期間の末日の翌日から3か月になります。
| 項目 | 法人税 | 消費税 |
|---|---|---|
| 手続 | 延長の特例の申請書 | 消費税申告期限延長届出書 |
| 対象 | 定時総会が2か月以内に招集されない常況にある法人など | 法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人に限る |
| 提出時期 | 最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで | 特例の適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日まで |
| 延長される期間 | 原則1か月(会計監査人設置法人などは指定された月数) | 1か月(課税期間の末日の翌日から3か月) |
| 延長期間の利子税 | かかる | かかる |
国税庁の手続案内「消費税申告期限延長届出手続」でも、対象は法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人に限るとされています。消費税だけを延長することはできません。逆に、法人税の延長を受けていても、消費税の届出を出していなければ消費税の期限は2か月のままです。やめるときは、その旨の届出書を出します。
延長しても利子税がかかる:納付のタイミング
延長の特例を受けると、申告書の提出期限が延びます。確定申告で納める法人税は申告書の提出期限までに納付するものとされているため(法人税法第77条)、納付の期限も延長後の期限になります。ただし、延長された期間については利子税がかかります。
法人税の利子税は、その事業年度の法人税の額に、事業年度終了の日の翌日以後2か月を経過した日から延長された期限までの期間の日数に応じて、年7.3%の割合で計算します(法人税法第75条第7項を第75条の2第8項で準用)。消費税も、延長された期間について年7.3%の割合の利子税を納めます(消費税法第45条の2第4項)。
実際の割合は、租税特別措置法第93条により、各年の利子税特例基準割合が年7.3%に満たない場合は、その年中はその利子税特例基準割合になります。具体的な割合は年ごとに変わるため、納付の際に確かめます。
利子税を抑えたい場合は、本来の期限(事業年度終了の日の翌日から2か月)までに、見込みの税額を先に納めておく方法があります。国税通則法では、最近において納付すべき税額の確定が確実と認められる国税として納付する旨を申し出て納付することが定められています(第59条)。また、利子税には一部納付が行われた場合の計算の規定(第62条)が準用されるため、納付した税額は、その翌日以後の期間の計算の基礎から差し引かれます(第64条第3項)。
| 選び方 | 申告 | 納付 | 利子税 |
|---|---|---|---|
| 延長後の期限にまとめて納める | 延長後の期限まで | 延長後の期限まで | 2か月を経過した日から納付までの期間にかかる |
| 2か月以内に見込額を納め、差額を延長後に納める | 延長後の期限まで | 見込額は2か月以内、差額は延長後の期限まで | 差額の部分にかかる |
どちらが資金繰りに合うかは、会社ごとの手元資金と税額で変わります。決算から2か月後の納税資金の考え方は決算2か月後の納税と中間申告の記事で詳しく書いています。
地方税(法人事業税など)の手続は都道府県へ
税務署への申請で延びるのは国税の期限です。法人事業税については、地方税法第72条の25第3項が、定款等の定めや特別の事情によって定時総会が2か月以内に招集されない常況にあると認められる法人は、事務所または事業所所在地の都道府県知事(2以上の都道府県に事務所等がある法人は主たる事務所等の所在地の知事)の承認を受けて、事業年度終了の日から3か月以内に申告納付できると定めています。
つまり、法人事業税は都道府県知事の承認という別の手続です。申請の様式や時期、法人住民税の扱いは、事務所のある都道府県・市町村の案内で確かめます。税務署への申請だけで地方税の期限もすべて延びると考えないようにします。
| 税目 | 延長の手続 | 手続の相手 |
|---|---|---|
| 法人税 | 申告期限の延長の特例の申請書 | 所轄税務署長 |
| 消費税(法人) | 消費税申告期限延長届出書 | 所轄税務署長 |
| 法人事業税 | 都道府県知事の承認 | 事務所等の所在地の都道府県知事 |
| 法人住民税 | 法人税の確定申告書の提出期限までに申告(地方税法第53条・第321条の8)。延長したときの扱いは自治体の案内で確認 | 都道府県・市町村 |
延長の特例を検討するときの判断の分かれ目
延長の特例を受けるかどうかは、会社の事情で分かれます。たとえば次の点です。
- 定時総会を開く時期:定款で定時総会の時期をどう定めているか、実際に事業年度終了の日の翌日から2か月以内に開けない常況にあるかを確かめる
- 決算の承認の流れ:監査役の監査や株主の数などで、2か月以内に総会を開くのが難しいか
- 利子税と資金繰り:延長後にまとめて納めるか、見込納付をするか
- 消費税の届出:法人税と併せて消費税も延長するか
- 地方税の承認:法人事業税の都道府県への手続を同じ時期に済ませられるか
延長すれば作業の時間が増える一方で、利子税や手続の手間が増えます。どちらが会社に合うかは、決算の体制と税額で試算しないと決まりません。決算期の決め方そのものを見直す場合は会社の決算期の選び方の記事も参考にしてください。
まとめ:申請は期末まで、消費税と地方税は別手続
- 法人税の申告期限は原則、事業年度終了の日の翌日から2か月以内
- 定款等の定めなどで定時総会が2か月以内に招集されない常況にある法人は、申請で原則1か月延長できる
- 申請は最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで。期末後は、その事業年度には使えない
- 消費税は消費税申告期限延長届出書が別に必要で、法人税の延長を受ける法人に限られる
- 延長された期間には利子税がかかる。見込額を先に納める方法もある
- 法人事業税は都道府県知事の承認が別に必要
延長の特例は一度受ければ以後の事業年度にも続くため、受ける前に、定時総会の時期と納付の方法を社内で決めておくことが大切です。
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よくある質問
Q. 決算が間に合いそうにないので、期末後に延長の特例を申請できますか?
延長の特例の申請は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに行う必要があります。期末を過ぎてから申請しても、その事業年度には適用されません。災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合は、別の延長の制度(法人税法第75条)があり、事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請します。
Q. 消費税だけ申告期限を延ばすことはできますか?
できません。消費税の申告期限の延長は、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人に限られています(消費税法第45条の2)。法人税の延長を受けたうえで、消費税申告期限延長届出書を出す必要があります。
Q. 延長の特例は毎年申請するのですか?
申請した事業年度以後の各事業年度に適用されるため、毎年の申請は要りません。やめるときは、やめようとする事業年度終了の日までに届出書を出します。消費税の延長をやめるときも、その旨の届出書を出します。
Q. 延長の特例を受けると、納付の期限も延びますか?
確定申告で納める法人税は申告書の提出期限までに納めるものとされているため(法人税法第77条)、納付の期限も延長後の期限になります。ただし、事業年度終了の日の翌日以後2か月を経過した日からの期間には利子税がかかります。本来の期限までに見込額を納めておけば、その分は利子税の計算の基礎から外れます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月27日
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