いつも連絡する担当者が税理士ではないと分かると、申告や相談まで任せてよいのか気になりますよね。税理士の監督のもとで、職員が資料のやり取りや記帳を担当することはあります。確認したいのは、申告や税金の判断にどの税理士が関わり、どう確認しているかです。
この記事では、職員と税理士の役割分担、申告書などで担当税理士を確かめる方法を紹介します。契約前に聞いておきたい質問や、担当者が替わるときの確認点も整理します。
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職員が担当するのは制度の前提
税理士法41条の2は、税理士が税理士業務を行うため使用人その他の従業者を使用するときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならない、と定めています。この規定は税理士法人にも準用されます(48条の16)。法律は、税理士が職員を使って業務を行うこと自体を前提にしたうえで、その仕事の質を税理士が監督する仕組みをとっています。
監督の方法について、国税庁『税理士法基本通達』は、監督義務は税理士と職員が事務を行う場所によって異なることはないとしています。そのうえで、情報通信技術を使った監督方法の例として、職員と依頼者のオンラインの打合せに税理士も参加する方法と、職員が税理士業務の補助を行った履歴を確認する方法を挙げています。
事務所で働く人には、税理士でない職員のほか、税理士の資格を持つ職員もいます。税理士法2条3項は、税理士が他の税理士や税理士法人の補助者として業務に従事することを認めています。国税庁の税理士法基本通達48の6−1は、税理士法人の「使用人である税理士」を所属税理士としています。同じ事務所に複数の税理士がいても、申告書に署名する税理士と日々の担当者が別の人ということもあります。担当者が税理士かどうかは、名刺や事務所の案内、日本税理士会連合会の登録情報で確かめられます。
職員にできること、税理士でなければできないこと
税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)は、税理士・税理士法人でない者が行ってはならないとされています(税理士法52条)。職員は、税理士の監督の下でその業務を補助する立場です。依頼する側から見た分担は、おおむね次のように整理できます。
| 場面 | 職員(税理士でない人)が担うことのある役割 | 税理士の役割と根拠 |
|---|---|---|
| 月々の資料のやり取り・記帳 | 資料の受け取り、記帳の入力、不明点の取りまとめ | 職員の作業を監督する(41条の2) |
| 決算・申告書の作成 | 集計や申告書の下書きなどの補助 | 税務書類を作成した税理士が書類に署名する(33条2項) |
| 申告書の提出(税務代理) | ― | 税務代理をするときは、権限を証する書面を税務署に提出する(30条)。代理に係る税理士が申告書に署名する(33条1項) |
| 税務調査 | ― | 調査での主張・陳述の代理は税務代理(2条1項1号) |
| 税額に関わる質問への回答 | 税理士の判断を伝える | 税務相談は税理士業務(2条1項3号) |
表の「職員が担うことのある役割」は、事務所によって範囲が違います。どこまでを職員が担い、どこで税理士が確認するのかは、契約前に聞いておくと分かります。
税務調査のときに確かめておくこと
税務調査で会社に代わって税務署に主張や陳述をするのは税務代理で、税理士の業務です。税務代理をするときは、税理士が税務代理権限証書を税務署に提出します。調査の連絡が来たら、代理人として臨む税理士は誰か、当日は誰が同席するかを事務所に確かめておきます。調査の立会いを頼む場面の準備は税務調査の立会いを税理士に依頼するときで扱っています。
担当の税理士を書面で確かめる方法
税理士がどの書類に名前を出すかは、法律で決まっています。次の書類を見れば、会社の申告に責任を持つ税理士が分かります。
- 申告書の税理士の署名欄:税理士・税理士法人が税務代理をして申告書を税務署に提出するときは、その税務代理に係る税理士が申告書に署名します(税理士法33条1項)。署名するときは、税理士である旨などを付記します(同条3項)。
- 税務代理権限証書:税理士が税務代理をするときは、その権限を有することを証する書面を税務署に提出します(税理士法30条)。国税庁『税務代理の権限の明示』は、提出方法をe-Taxとし、書面で持参・送付することもできると案内しています。
- 税理士の登録:署名した税理士や担当の税理士が登録されているかは、日本税理士会連合会のホームページで確かめられます(国税庁『税理士をお探しの方へ』)。
申告書の控えを受け取ったら、税理士の署名欄を一度見ておくと、打合せで聞いた担当税理士と一致しているかが分かります。
秘密を守る義務は職員にもある
決算書、通帳、給与のデータなど、事務所に渡す情報には会社の秘密が多く含まれます。税理士法38条は、税理士が正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を漏らしたり盗用したりすることを禁じ、税理士でなくなった後も同様としています。
職員についても、税理士法54条が、税理士・税理士法人の使用人その他の従業者は正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らしたり盗用したりしてはならず、使用人等でなくなった後も同様と定めています。資格の有無にかかわらず、事務所で業務に関わる人には法律上の守秘義務があります。
そのうえで、情報の受け渡しの方法(クラウドの共有フォルダ、メール、郵送など)と、誰がその情報を見られるのかは事務所によって違います。マイナンバーや給与の情報を渡す場合は、受け渡しの方法を契約前に確かめておくと安心です。
契約前に聞いておくこと
担当者が職員であること自体は問題ではありません。確かめたいのは、税理士がどの場面で関わるのか、職員との連絡がどう回るのかです。次の質問を用意しておくと、事務所ごとの体制を比べやすくなります。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 担当の税理士と担当の職員 | 申告書に署名する税理士と、日々の窓口になる方は誰ですか |
| 税理士が関わる場面 | 決算の打合せや申告書の説明には、税理士も参加しますか |
| 質問への回答の流れ | 税金の扱いの質問は、税理士の確認を経て回答されますか。回答までの目安はどのくらいですか |
| 税務調査の対応 | 調査の連絡が来たら、誰が代理人として対応しますか |
| 担当の交代 | 担当の職員や税理士が替わるときは、どう引き継ぎ、いつ知らせてもらえますか |
| 情報の受け渡し | 資料やデータはどの方法で受け渡し、誰が見られますか |
契約書でこうした範囲を確かめる観点は税理士の顧問契約書で確認すべき9項目にまとめています。
会社の側で決めておくこと
事務所の体制だけでなく、会社の側の窓口が決まっていると、職員とのやり取りが滞りにくくなります。次の点を社内で決めておくと、担当者が替わったときも引継ぎがしやすくなります。
- 事務所との窓口になる社内の担当者(経理担当・社長など)を1人に決め、事務所にも伝えておく
- 資料を送る方法と締め日(毎月何日までに通帳・請求書・領収書のデータを送るか)を決める
- 税金の扱いの質問や、取引の予定(大きな設備の購入、借入、役員報酬の変更など)の相談は、記録が残る方法で送る
- 決算の前に、税理士と打ち合わせる日程をあらかじめ押さえておく
まとめ:職員の担当は前提。税理士が関わる場面と書面を確かめる
- 税理士事務所では、税理士でない職員が資料のやり取りや記帳を担当することがあり、税理士には職員を監督する義務があります(税理士法41条の2)。
- 監督は対面に限らず、オンラインの打合せへの参加や補助の履歴の確認といった方法も国税庁の通達に例示されています。
- 税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士業務で、税理士でない者が自ら行うことはできません。
- 申告書の署名欄と税務代理権限証書で、責任を持つ税理士が分かります。
- 職員にも退職後を含めた守秘義務があります(税理士法54条)。
担当者の資格よりも、税理士がどの場面で確認に入るか、連絡と引継ぎがどう回るかを契約前に確かめておくと、安心して任せやすくなります。
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よくある質問
Q. 担当者が税理士でないと、申告内容に問題がありますか?
職員が補助し、税理士が監督する体制は税理士法が前提としているものです。申告書は税務代理や作成に係る税理士が署名して提出します。気になるときは、申告書を確認した税理士から説明を受ける場を設けてもらえるかを聞いてください。
Q. 担当の職員に税金の相談をしてもよいですか?
質問を伝える窓口が職員であることは問題ありません。ただし、税額の判断に関わる回答は税理士業務なので、税理士の確認を経た回答かどうかを確かめておくと安心です。重要な判断は、税理士との打合せで直接確かめる方法もあります。
Q. 税務調査には職員だけが来ることもありますか?
税務署に会社の代理として主張や陳述をするのは税務代理で、税理士の業務です。誰が代理人として対応し、当日は誰が同席するのかは、調査の連絡を受けた時点で事務所に確かめてください。
Q. 担当の税理士に直接連絡してもよいですか?
連絡の窓口や方法は事務所によって違います。日々の連絡は職員、決算や重要な判断は税理士、というように分けている事務所もあるので、どの内容を誰に連絡すればよいかを契約の時点で決めておくと迷いません。
Q. 担当の職員が辞めたら、預けた情報はどうなりますか?
税理士法54条により、職員は辞めた後も、業務で知った秘密を漏らしたり盗用したりしてはならないとされています。担当の交代時には、引継ぎの方法と、情報の保管・アクセスの扱いを確かめておくと安心です。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月27日
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