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経理を一人に任せている会社のリスク|不正と属人化を防ぐ分担の見直し方

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経理を一人に任せている会社のリスク|不正と属人化を防ぐ分担の見直し方
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経理を一人に任せている会社のリスクは、大きく2つです。1つは、支払や入金の記録を同じ人が作って確かめるため、誤りや不正があっても気付く人がいないこと。もう1つは、手順や暗証番号がその人の頭の中にしかなく、退職や休職で支払・納付・申告が止まることです。

対策は、経理の人数を増やすことではありません。「承認する」「お金を動かす」「記録する」「照合して保管する」という役割を、少なくとも2人以上に分けることです。この記事では、一人経理で起きやすい場面、小さな会社でもできる分担の作り方、記録を後から書き換えられない仕組み、属人化を防ぐ手順を、表とチェックリストで整理します。

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一人経理で起きやすいこと:不正と属人化

一人の担当者が発注から支払・記帳・照合までを持つと、次のような場面で、誤りや不正があっても外から見えにくくなります。どれも担当者を疑う話ではなく、仕組みとして確かめる人がいない状態を指しています。

場面 起き得ること 気付きにくい理由
振込 振込先口座の書き換え、同じ請求書の二重払い 振込データの作成と承認を同じ人がしている
経費精算 領収書の使い回し、私的な支出の混入 申請と承認と入力が同じ人
現金 小口現金の不足の先送り、現金売上の計上漏れ 現金の数え直しを誰もしない
売上と入金 入金の消込のずれ、売掛金の放置 請求書の発行と入金の確認が同じ人
帳簿 残高を合わせるための調整仕訳、仮払金・仮受金の滞留 試算表を見る人がいない
退職・休職 給与・源泉所得税・社会保険料の支払や申告が止まる 手順と暗証番号を本人しか知らない

不正が無くても、一人で回している経理は「誤りに気付く機会」が少ない状態です。分担を見直す目的は、担当者を守ることと、会社の数字を経営者が信頼できる状態にすることの両方にあります。

分担の基本:4つの役割を別の人に分ける

経理の仕事は、お金が動く流れに沿って4つの役割に分けられます。同じ人に重ならないようにするのは、特に「お金を動かす人」と「照合する人」です。

役割 内容 小さな会社での分け方の例
承認する 発注・支払・経費精算を認める 経営者
お金を動かす 振込データの作成、現金の出し入れ 経理担当者
記録する 会計ソフトへの入力、請求書の発行 経理担当者、または外部の記帳代行
照合して保管する 通帳と帳簿の残高の突合せ、証憑の保管、試算表の確認 経営者と、外部の税理士など

社員が経営者と経理担当者の2人しかいない会社でも、「振込データは経理担当者が作り、承認ボタンは経営者が押す」「通帳の残高は月に1回経営者が自分で見る」の2つで、お金を動かす人と確かめる人が分かれます。人が足りない部分は、外部に照合の一部を担ってもらう方法があります。

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お金の動きごとの見直し方

どこから手を付けるかは、動く金額が大きく、毎月繰り返すものからが目安です。次の表で、今の状態と見直し案を比べてみてください。

項目 一人で回している状態 見直し案
インターネットバンキング 担当者が作成も承認もできる 作成者と承認者を分ける設定にする。承認者は経営者
新しい振込先の登録 担当者が自由に登録・変更できる 登録と変更は請求書の写しを付けて経営者が確認
通帳・明細 担当者だけが見ている 経営者が月に1回、残高と大きな出金を自分で見る
小口現金 担当者が管理し、数え直しをしていない 月末に担当者以外が数え、帳簿の残高と合わせる。現金の支払自体を減らす
経費精算 担当者が自分の精算も自分で承認 本人の精算は別の人が承認する
売上と請求 請求書の発行と入金の確認が同じ人 売掛金の一覧(未入金の一覧)を月に1回、営業の責任者か経営者が見る
給与 計算・振込・記帳を同じ人がする 給与の総額と人数を経営者が承認してから振り込む

全部を一度に変える必要はありません。まずは「振込の承認を経営者に移す」「通帳を経営者が見る」の2つから始めると、日々の作業量をほとんど増やさずに牽制が働きます。

記録を後から書き換えられない仕組みにする

分担と並んで効くのが、記録の書き換えが残る仕組みです。会社法432条は、株式会社に対して適時に正確な会計帳簿を作成すること、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を保存することを求めています。税法上の保存期間は、法人の場合、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)です。

税法の電子帳簿等保存制度にも、書き換えを残す考え方が入っています。国税庁は、訂正・削除・追加の履歴が残ることなどを要件とする「優良な電子帳簿」について、過少申告加算税の軽減に加え、内部統制や対外的な信頼性の観点からも優れているとしています(国税庁『優良な電子帳簿のススメ!』)。

対象 書き換えを残す・防ぐ仕組み 確かめること
会計ソフトの仕訳 訂正・削除の履歴が残る設定、ユーザーごとの権限 締めた月の仕訳を誰が変えられるか
メールやWebで受け取った請求書などの電子取引データ タイムスタンプ、訂正・削除の履歴が残るシステム、改ざん防止のための事務処理規程のいずれか データを消さずに保存しているか、誰が保存先を触れるか
紙の証憑 月ごとの綴じ方と保管場所を決める 担当者以外が取り出せるか

電子取引データの改ざん防止は、タイムスタンプが付与されたデータの受領、受領したデータへのタイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステム等での授受・保存、改ざん防止のための事務処理規程の策定・運用・備付けのいずれかで行います(国税庁『電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について』)。事務処理規程を選ぶ場合も、規程を作って終わりにせず、誰が保存し、誰が確かめるかを分けておくと、牽制の仕組みとして働きます。

属人化を防ぐ:手順書とIDを会社のものにする

属人化への備えは、「その人がいなくても1か月回るか」で確かめます。次のチェックリストに当てはまらない項目があれば、そこが止まる場所です。

  • 毎月・毎年の作業と期限の一覧(給与日、源泉所得税の納付、社会保険料、決算、年末調整など)が紙かファイルで残っている
  • インターネットバンキング・会計ソフト・給与ソフトの管理者権限を、経営者も持っている
  • e-Taxの利用者識別番号と暗証番号、eLTAXの利用者IDを会社として控えている
  • 取引先ごとの支払条件や、毎月の定額払い・口座振替の一覧がある
  • 担当者が休暇を取った月に、別の人が支払と締めを回した経験がある

e-Taxの利用者識別番号や暗証番号が分からなくなり、新しく利用者識別番号を取得し直すと、それまでの「メッセージボックス」などの内容は引き継がれません。国税庁は、番号や暗証番号が分からない場合は「変更等届出」の手続きを行うよう案内しています(国税庁『e-Tax ご利用の流れ』)。番号を会社として控えておくことは、担当者の退職への備えにもなります。

手順書は、細かい画面操作より「いつ・何を・どこから・どこへ」を書くと、外注先や次の担当者にもそのまま渡せます。

外部の目を入れる方法

社内で分担しきれない部分は、外部に照合を担ってもらう方法があります。例えば、記帳は社内で行い、月に1回、税理士や記帳代行の担当者が通帳・カード明細と帳簿を突き合わせる形です。記帳そのものを外部に出す場合は、外部が記録し、社内の経理担当者がお金を動かし、経営者が承認する、という分け方になります。

外部に見てもらう項目 見る理由
預金・現金の帳簿残高と、通帳・実際の現金の一致 記録とお金のずれを早く見つける
仮払金・立替金・仮受金の残高と内訳 説明できない残高が残っていないか
売掛金・買掛金の滞留 入金漏れ・二重払いの手がかり
前年同月との科目ごとの比較 急に増えた経費の確認

外部の照合は、社内の分担の代わりではなく補いです。外部が見るのは月に1回の結果であり、日々の振込の承認は社内でしか担えません。経理の外注の向き不向きは経理アウトソーシングのメリット・デメリット、月次の締め方は中小企業の月次決算のやり方で扱っています。

まとめ:一人経理の見直しは「承認」と「照合」を移すことから

  • 一人経理のリスクは、誤りや不正に気付く人がいないことと、退職・休職で支払や申告が止まること。
  • 承認・お金を動かす・記録・照合の4つの役割のうち、「お金を動かす人」と「照合する人」を分ける。
  • 最初の一歩は、振込の承認を経営者に移すことと、経営者が月に1回通帳を見ること。
  • 会計ソフトや電子取引データは、訂正・削除の履歴が残る仕組みにする。会社法は会計帳簿の10年間の保存を求めている。
  • 手順と期限の一覧、管理者権限、e-Taxの番号を会社のものにして、属人化を防ぐ。

どこまで分けられるかは人数と業務量で変わるため、自社の流れを表に書き出し、同じ人に重なっている役割から1つずつ移してください。

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よくある質問

Q. 経理担当者が1人しかいない会社でも、分担はできますか?

できます。経理担当者が振込データを作り、経営者が承認する。通帳と試算表は経営者が月に1回見る。この2つだけで、お金を動かす人と確かめる人が分かれます。照合の一部は、外部の税理士や記帳代行に担ってもらう方法もあります。

Q. 分担を見直すと、担当者を疑っているように受け取られませんか?

分担は特定の人を疑うためのものではなく、誤りに早く気付き、担当者が休んでも業務が止まらないようにするための仕組みです。見直しの目的を「会社の数字を誰でも説明できる状態にすること」として伝え、担当者自身に手順書づくりから関わってもらうと進めやすくなります。

Q. 会計ソフトで、誰が仕訳を変えたかは分かりますか?

ソフトや設定によって、記録される内容と見られる範囲が違います。訂正・削除の履歴が残るか、ユーザーごとに権限を分けられるかを、使っているソフトの公式ヘルプで確かめてください。締めた月の仕訳を変更できないようにする設定がある場合は、それも使えます。

Q. 不正が疑われる取引を見つけたら、まず何をすればよいですか?

記録や証憑を消したり書き換えたりせず、そのまま保全してください。事実関係を確かめたうえで、法的な対応は弁護士に、帳簿の訂正や申告への影響は税理士に相談するのが一般的です。疑いの段階で本人を問い詰める前に、証拠の範囲を把握しておくことが大切です。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月29日

参考資料

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