源泉所得税の納め忘れに気づくと、追加の税金や次の手続が気になりますよね。まずは遅れた月と税額を確かめ、納付書を作って早めに納めましょう。追加でかかる税金は、納めた時期やこれまでの納付状況などによって変わります。
この記事では、遅れに気づいたときの手順と、不納付加算税・延滞税がかかる条件を整理します。半年ごとに納める「納期の特例」への影響や、次の納め忘れを防ぐ確認点も分かります。
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源泉所得税の納付期限:原則と納期の特例
源泉徴収した所得税(復興特別所得税を含む)は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請によって半年分をまとめて納める「納期の特例」を受けられます(国税庁タックスアンサーNo.2505)。
| 区分 | 納付期限 |
|---|---|
| 原則 | 給与などを支払った月の翌月10日 |
| 納期の特例(1月〜6月に源泉徴収した分) | 7月10日 |
| 納期の特例(7月〜12月に源泉徴収した分) | 翌年1月20日 |
納期の特例の対象は、給与や退職金から源泉徴収した所得税と、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した所得税に限られます。それ以外の報酬・料金から源泉徴収した分は、特例を受けていても原則どおり翌月10日が期限です。
遅れが起きやすいのは、特例を申請した直後です。税務署長から却下の通知がなければ、申請書を出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、特例の対象になるのは申請書を出した月の翌月に源泉徴収する分からです。申請書を出した月に源泉徴収した分は、原則どおり翌月10日までに納めます。また、期限が日曜日・祝日などの休日や土曜日に当たる場合は、その翌日が期限になります(国税通則法10条2項)。
不納付加算税は遅れ方で3段階に分かれる
源泉所得税が法定納期限までに納められなかった場合、税務署長は不納付加算税を徴収します(国税通則法67条)。割合は、税務署からの納税の告知を受けた後か前か、調査があって告知を予知したかどうかで変わります。
| 納めた時期・状況 | 不納付加算税 | 根拠 |
|---|---|---|
| 納税の告知を受けて納めた、または告知を予知して納めた | 納付する税額の10% | 67条1項 |
| 告知を受ける前に、調査による告知を予知しないで自主的に納めた | 納付した税額の5% | 67条2項 |
| 上の自主納付のうち、法定納期限から1か月以内で、期限までに納付する意思があったと認められる一定の場合 | かからない | 67条3項 |
| 期限までに納めなかったことに正当な理由がある | かからない | 67条1項ただし書 |
計算には端数の決まりがあります。加算税の計算の基礎となる税額に1万円未満の端数があるとき、または全額が1万円未満のときは切り捨てます(国税通則法118条3項)。計算した加算税の全額が5,000円未満のときも切り捨てます(同法119条4項)。このため、遅れた税額が小さい場合は、不納付加算税が結果として0円になることもあります。
税務署からの「納税の告知」は、源泉徴収等による国税で法定納期限までに納められなかったものを徴収しようとするときに、税務署長が行う手続です(国税通則法36条1項2号)。告知を受けてから納めると10%になるため、遅れに気づいたら告知を待たずに納めることが、加算税を小さくするうえで最も効きます。
1か月以内の自主納付で不納付加算税がかからない条件
国税通則法67条3項は、告知を受けずに期限後に納めた場合で、法定納期限までに納付する意思があったと認められる一定の場合に当たり、法定納期限から1か月を経過する日までに納めたときは、不納付加算税を課さないとしています。「一定の場合」は、国税通則法施行令27条の2第2項で次のように定められています。
その納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉所得税について、次の2つのどちらにも当てはまること。
- 納税の告知を受けたことがない。
- 納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付した事実がない。
例で確かめます。原則の期限(翌月10日)で納めている会社が、令和8年6月支給の給与の源泉所得税(法定納期限は令和8年7月10日)を、期限を過ぎた7月21日に自主的に納めたとします(※説明のための架空の例です)。法定納期限の属する月の前月の末日(6月30日)から起算して1年前の日までの間に法定納期限が来た源泉所得税について、告知も期限後の納付もなければ、1か月以内の納付なので不納付加算税はかかりません。その間に1回でも告知を受けずに期限後に納めたことがあれば、5%の不納付加算税の対象になります。
この条件は「過去1年に遅れがないこと」なので、1年以内に遅れが2回あると、2回目は1か月以内に自主的に納めても5%の不納付加算税がかかります。1回目の遅れに気づいた段階で、原因(担当者の交代、納付書の不足、期限の思い違いなど)をつぶしておくことが、次の加算税を防ぐことにつながります。
延滞税もあわせてかかる
不納付加算税とは別に、延滞税がかかります。延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的にかかる、利息に相当する税です。割合は2段階で、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です(国税庁タックスアンサーNo.9205)。
延滞税は本税だけにかかり、不納付加算税にはかかりません。延滞税の計算の基礎となる税額の1万円未満の端数は切り捨て、計算した延滞税の全額が1,000円未満のときは切り捨てます(国税通則法118条3項・119条4項)。数日の遅れで本税が小さい場合は、延滞税が0円になることもありますが、遅れが長くなるほど、2か月を過ぎてから高い方の割合が効いてきます。
納期の特例の承認への影響
納期の特例を受けている事業者が納付に遅れた場合、特例がすぐに取り消されるのかが気になるところです。所得税法217条3項によると、税務署長が特例の承認を取り消すことができるのは、次の事実が生じたと認めるときです。
| 承認の取消しの事由(所得税法217条3項) | 中身 |
|---|---|
| 同条2項1号に当たる事実 | その事務所等で給与等の支払を受ける者が常時10人未満であると認められないこと |
| 同条2項3号に当たる事実 | 現に国税の滞納があり、その徴収が著しく困難であることなど、特例を認めると源泉所得税の納付に支障が生ずるおそれがあると認められる相当の理由があること |
条文の上では、納付が1回遅れたことそのものは取消しの事由として挙げられていません。ただし、遅れた源泉所得税を納めないまま滞納になり、徴収が著しく困難であるなどの事情があると、3号の事由に当たり得ます。取消しを受けた場合(10人未満でなくなったことだけを理由とするものを除く)、取消しの通知を受けた日以後1年以内に出した特例の申請は却下されることがあります(同条2項2号)。
給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、遅滞なく「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を出す必要があり、出した日の属する特例の期間から承認の効力がなくなります(所得税法218条)。人数が増えたのに半年ごとの納付を続けていると、原則の期限(翌月10日)を過ぎた状態になるので注意が要ります。
遅れに気づいたときの手順
- 遅れた月と区分を確かめる。給与・退職金の分か、報酬・料金の分かで、使う納付書(所得税徴収高計算書)の種類が違います。
- 源泉徴収した税額を、給与台帳や支払の明細から確かめる。
- 所得税徴収高計算書を作り、e-Tax、金融機関、税務署の窓口などで納める。税務署や業務センターが交付した所定の納付書を使います。
- 納めた日と金額を記録しておく。後日、税務署から不納付加算税や延滞税の通知が来たときに照らし合わせます。
- 原因を確かめ、次の期限を予定表に入れる。納期の特例を受けているかどうか、対象外の報酬がないかもあわせて確かめます。
源泉徴収をしていなかった、または少なく差し引いていた場合も、源泉徴収義務者が納めなかった所得税は、税務署長がその義務者から徴収します(所得税法221条1項)。納めた後で、差し引かなかった分を支払を受けた人に請求したり、次の支払から差し引いたりする手続もあります(同法222条)。差し引くべきだったかどうかの判断が絡むときは、支払の内容を整理して税理士に確かめます。デザイン料など報酬の源泉徴収が必要かどうかと、納期の特例の対象外になる報酬については「デザイナーへの支払い、源泉徴収は必要?」で扱っています。
まとめ:告知の前に、1か月以内に納める
- 源泉所得税の期限は原則翌月10日。納期の特例は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日で、対象は給与・退職金と一定の報酬に限られる。
- 不納付加算税は、告知後や告知を予知した納付が10%、告知前の自主納付が5%。
- 法定納期限から1か月以内の自主納付で、過去1年に告知も期限後の納付もなければ、不納付加算税はかからない。
- 延滞税は本税だけにかかり、令和8年中の期間は年2.8%(2か月まで)・年9.1%(それ以後)。
- 納期の特例は、1回の遅れだけで取り消すとは条文に書かれていないが、滞納と徴収困難などの事情があれば取消しの事由になり得る。
遅れに気づいた日が、加算税を小さくできる最も早い日です。まず遅れた月の税額を確かめ、納付書を作るところから始めてください。
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よくある質問
Q. 源泉所得税の納付が1日だけ遅れました。何か届出は必要ですか?
遅れたことについて届け出る手続はありません。気づいた時点で、遅れた月の分を所得税徴収高計算書で納めます。不納付加算税がかかる場合は、税務署から納税の告知などで知らされます。
Q. 役員報酬から源泉徴収した所得税が遅れた場合も同じ扱いですか?
同じです。不納付加算税は、源泉徴収等による国税が法定納期限までに完納されなかった場合にかかるもので、役員に払う給与から源泉徴収した所得税も対象です。延滞税も同じようにかかります。
Q. 不納付加算税の通知に納得できない場合はどうすればよいですか?
不納付加算税の賦課は国税に関する処分なので、再調査の請求か審査請求を選んで不服を申し立てることができます。期限までに納めなかったことに正当な理由がある場合は不納付加算税はかからないので、その事情を示す記録をそろえます。
Q. 納期の特例の申請書を出した月に支払った給与の源泉所得税は、いつまでに納めますか?
原則どおり翌月10日までです。特例の対象になるのは、申請書を出した月の翌月に源泉徴収する分からです。申請した月の分を7月10日や翌年1月20日にまとめるつもりで納め忘れると、不納付加算税や延滞税の対象になります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月30日
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