独身の兄弟や子どものいない姉妹が亡くなったとき、自分が遺産を相続するのでしょうか。亡くなった人に子も、その子に代わって相続する孫もおらず、親・祖父母もいなければ、兄弟姉妹が相続人になります。配偶者がいる場合は一緒に相続人となり、兄弟姉妹の相続税には2割が加算されます。
この記事では、相続人になる条件と配偶者の取り分、遺産額ごとの相続税、甥・姪が相続する場合や手続きの注意点を整理します。
この記事の要点
- 兄弟姉妹は、子(孫を含む)も直系尊属もいない場合に相続人になります。先に亡くなっていれば、その子(甥・姪)が代襲します(民法889条)。
- 兄弟姉妹の相続税には2割加算が付きます。遺産1億円・兄弟姉妹2人(配偶者なし)なら、納付額は合計924万円です。
- 配偶者がいる場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が合計4分の1です。遺産1億円・配偶者と兄弟姉妹2人で、配偶者が法定相続分どおり取得すると、兄弟姉妹は1人106万5,000円を納めます。
- 兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条)。遺言で全財産を配偶者などに渡しても、請求できません。
- 子や親が相続放棄をしても、孫は代襲しません。次の順位の人へ相続権が移ります(民法939条・889条)。
兄弟姉妹が相続人になる条件|順番の確認表
民法では、配偶者は常に相続人になります(民法890条)。配偶者以外の相続人は、次の順位で決まり、先の順位の人が1人でもいれば、後の順位の人は相続人になりません(民法887条・889条)。
| 確認する順番 | 状況 | 結論 |
|---|---|---|
| 1 | 子(養子を含む)がいる | 子が相続人。兄弟姉妹は相続人にならない |
| 2 | 子が相続開始以前に亡くなっていて、その子(孫)がいる | 孫が代襲して相続人になる(民法887条2項)。兄弟姉妹は相続人にならない |
| 3 | 子全員が相続放棄をした | 放棄した子は初めから相続人でないとみなされ(民法939条)、孫は代襲しない。第2順位の直系尊属へ移る |
| 4 | 父母・祖父母(直系尊属)のうち1人でも存命 | 直系尊属が相続人(親等の近い人が先)。兄弟姉妹は相続人にならない |
| 5 | 子・孫・直系尊属が全員いない、または全員が相続放棄をした | 兄弟姉妹が相続人になる(民法889条1項2号) |
| 6 | 兄弟姉妹の一部が相続開始以前に亡くなっている | その兄弟姉妹の子(甥・姪)が代襲して相続人になる(民法889条2項) |
| 7 | 亡くなった兄弟姉妹の子(甥・姪)も既に亡くなっている | その子には代襲しない(再代襲なし)。民法889条2項は887条2項だけを準用していて、再代襲を定める887条3項は準用していない |
| 8 | 兄弟姉妹が相続放棄をした | 放棄した兄弟姉妹は初めから相続人でないとみなされ、その子(甥・姪)は代襲しない |
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(異母きょうだい・異父きょうだい)は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の2分の1の相続分です(民法900条4号ただし書)。この記事の計算例は、すべて、父母の双方が同じ兄弟姉妹を前提にしています。
相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。子や親が全員放棄すると、兄弟姉妹が相続人になるため、兄弟姉妹の側にも、3か月の期間が始まります。放棄と相続税の関係は相続放棄と相続税で説明しています。
兄弟姉妹の相続税|基礎控除・2割加算・税額
基礎控除は「3,000万円+600万円×相続人の数」
配偶者がいない場合、基礎控除は、相続人(兄弟姉妹)の人数で決まります(相続税法15条)。1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円、4人なら5,400万円です。
兄弟姉妹の一部が亡くなっていて甥・姪が代襲する場合は、亡くなった兄弟姉妹は数えず、代襲した甥・姪を1人ずつ数えます。相続税法基本通達15-2の設例2(子が亡くなり孫が代襲する場合)と同じ考え方です。人数の数え方の全体は相続税の法定相続人にまとめています。
兄弟姉妹の税額には2割加算が付く
兄弟姉妹は、被相続人の一親等の血族ではないため、相続税額に20%が加算されます(相続税法18条、国税庁 No.4157)。甥・姪が代襲した場合も同じです。対象になる人の判定は相続税の2割加算で説明しています。
遺産額と兄弟姉妹の人数ごとの納付額(配偶者なし)
配偶者も、子(代襲する孫を含む)も、親・祖父母などの直系尊属もいない人が亡くなり、兄弟姉妹が均等に相続する場合の、納付額の合計です(債務・特例・保険金はなし、2割加算を含みます)。
| 遺産の額 | 兄弟姉妹1人 | 2人 | 3人 | 4人 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 192万円 | 96万円 | 23万9,700円 | 0円(申告不要) |
| 8,000万円 | 816万円 | 564万円 | 395万9,400円 | 312万円 |
| 1億円 | 1,464万円 | 924万円 | 755万9,700円 | 588万円 |
| 2億円 | 5,832万円 | 4,008万円 | 2,951万9,100円 | 2,544万円 |
人数が増えると、基礎控除が増え、法定相続分も小さくなって低い税率で計算される部分が増えるため、合計の納付額は減っていきます。遺産5,000万円で兄弟姉妹が4人の場合は、基礎控除が5,400万円で、遺産がそれ以下のため、相続税はかからず、申告も要りません。
遺産1億円の内訳
| 兄弟姉妹の人数 | 基礎控除 | 相続税の総額 | 納付額の合計(2割加算を含む) | 1人あたり |
|---|---|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 1,220万円 | 1,464万円 | 1,464万円 |
| 2人 | 4,200万円 | 770万円 | 924万円 | 462万円 |
| 3人 | 4,800万円 | 629万9,800円 | 755万9,700円 | 251万9,900円 |
| 4人 | 5,400万円 | 490万円 | 588万円 | 147万円 |
3人のときだけ、端数のある金額になります。法定相続分の3分の1ずつに分けた各取得金額は、1,000円未満を切り捨てて税率を掛ける取扱いのためです(相続税法基本通達16-3)。
兄弟姉妹の納付額には、2割加算が含まれています。たとえば2人の行では、総額770万円のうち、1人385万円の算出税額に77万円が加算されて、1人462万円になります。
配偶者がいる場合|兄弟姉妹の取り分と税額
配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が合計で4分の1です(民法900条3号)。兄弟姉妹が2人なら、1人は8分の1です。
遺産1億円で、配偶者が法定相続分どおりに取得し、兄弟姉妹が残りを取得する場合を見ます。配偶者の取得額(7,500万円)は1億6千万円以下なので、配偶者の税額軽減で、配偶者の相続税は0円です。
| 兄弟姉妹の人数 | 基礎控除 | 相続税の総額 | 兄弟姉妹1人の納付額 | 兄弟姉妹の納付額の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1人 | 4,200万円 | 837万5,000円 | 251万2,500円 | 251万2,500円 |
| 2人 | 4,800万円 | 710万円 | 106万5,000円 | 213万円 |
| 3人 | 5,400万円 | 604万9,700円 | 60万4,900円 | 181万4,700円 |
配偶者の税額軽減は配偶者だけが受けるため、兄弟姉妹の分には軽減が働きません。上の表の兄弟姉妹の納付額には、2割加算が含まれています。
これに対し、遺言などにより配偶者が遺産の全部を取得した場合は、同じ遺産1億円で、兄弟姉妹の人数が1人でも2人でも3人でも、配偶者の取得額1億円が1億6千万円以下のため、納付額の合計は0円です。配偶者の税額軽減の仕組みは配偶者の税額軽減|1億6千万円まで相続税がかからない仕組みと注意点で説明しています。
子のいない夫婦の相続の全体像は子どものいない夫婦の相続で扱っています。
甥・姪が代襲する場合の数え方
兄弟姉妹の一部が先に亡くなっている場合の、取り分と人数の数え方を整理します。
| 状況(配偶者なし) | 相続人 | 基礎控除の人数 | 法定相続分 |
|---|---|---|---|
| 兄弟姉妹3人のうち1人が先に亡くなり、その子(甥)が1人 | 兄弟姉妹2人と甥1人 | 3人(3,000万円+600万円×3人=4,800万円) | 各3分の1 |
| 兄弟姉妹3人のうち1人が先に亡くなり、その子(甥・姪)が2人 | 兄弟姉妹2人と甥・姪2人 | 4人(5,400万円) | 兄弟姉妹が各3分の1、甥・姪が各6分の1 |
| 兄弟姉妹が1人だけで、その人が先に亡くなり、子(甥)が1人 | 甥1人 | 1人(3,600万円) | 全部 |
代襲した甥・姪の相続分は、亡くなった兄弟姉妹が受けるはずだった分と同じです。甥・姪が複数いるときは、その分を人数で分けます(民法901条1項・2項)。
1行目のように均等に分かれる場合の税額は、上の「兄弟姉妹3人」の列と同じです。2行目のように相続分が均等でない場合は、法定相続分ごとに税率を掛けて相続税の総額を計算するため、均等の表とは金額が変わります。甥・姪には2割加算が付きます。
兄弟姉妹が相続人になる相続で、手続きに全員が関わる場面
兄弟姉妹の相続では、普段つきあいのない人が共同の相続人になることがあります。相続税の手続きで、全員が関わる場面を整理します。
| 手続き | 全員が関わるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続人の確定 | 申告書に、被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続の開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)か、法定相続情報一覧図の写しを添付する | 相続税法施行規則16条3項1号 |
| 遺産分割協議書 | 配偶者の税額軽減を受ける場合、協議書の写しに、共同相続人の全員の自署・押印と印鑑証明書が必要 | 相続税法施行規則1条の6第3項1号、国税庁 No.4158 |
| 申告書の提出 | 各人が別々に出すことも、同じ税務署に共同で出すこともできる | 相続税法27条5項 |
| 申告期限 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 相続税法27条1項、国税庁 No.4205 |
| 納付 | 各人が自分の税額を納める。他の人が納めない場合、受けた利益を限度に連帯納付の責任を負う(一定の例外あり) | 相続税法34条1項 |
遺産分割がまとまらない間も、申告期限は延びません。未分割のまま申告し、後から分割する流れは遺産分割がまとまらない時の相続税申告で説明しています。
兄弟姉妹の相続の時間割
兄弟姉妹が相続人になる場合は、相続人を確定し、全員と連絡を取るだけで時間がかかることがあります。期限のある手続きを、早い順に並べます。
| 期限(起算点) | 手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | 相続放棄・限定承認(家庭裁判所)。期間は家庭裁判所が伸ばすことがある | 民法915条1項 |
| 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 | 亡くなった人の確定申告(準確定申告)。申告が必要な場合のみ | 所得税法125条1項 |
| 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 相続税の申告と納付 | 相続税法27条1項 |
| 申告期限から3年以内(配偶者がいる場合) | 未分割財産を分割して、配偶者の税額軽減を受ける | 相続税法19条の2第2項 |
たとえば2026年10月23日に亡くなり、同日に知った場合、相続税の申告期限は2027年8月23日(月)です。準確定申告の手続きは準確定申告で説明しています。兄弟姉妹が相続人のときは、相続人の調査と、連絡が取れない人への対応を先に進めておくと、10か月の間に分割協議と申告の準備を進めやすくなります。
遺言と遺留分|兄弟姉妹には遺留分がない
遺留分は、一定の相続人に最低限保障される取り分です。民法1042条1項は、「兄弟姉妹以外の相続人」に遺留分を認めています。兄弟姉妹には、遺留分がありません。
| 相続人の組み合わせ | 遺留分があるのは | 遺言で全財産を配偶者に渡した場合 |
|---|---|---|
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者だけ | 兄弟姉妹は遺留分を請求できない |
| 配偶者と親(直系尊属) | 配偶者と親 | 親は遺留分を請求できる |
| 兄弟姉妹だけ | なし | 遺留分の問題は起きない |
遺言の方式は、自筆証書、公正証書、秘密証書の3つです(民法967条)。遺言で誰にどの財産を渡すかを決められる範囲と、税金の面で気をつけることは遺言書と相続税で、遺留分を請求された場合の申告は遺留分と相続税で説明しています。遺言を残すかどうかは、財産と家族の状況によって変わります。
兄弟姉妹が相続人のときの生命保険金
生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、相続人が受け取った保険金に使えます(相続税法12条1項6号)。兄弟姉妹が相続人になる場合は、兄弟姉妹が受取人であれば、非課税枠の対象です。一方、相続人ではない人が受取人になった場合は、この非課税枠を使えません。非課税枠の計算は生命保険金の相続税で説明しています。
よくある誤り
| よくある思い込み | 実際 |
|---|---|
| 子がいなければ、財産は配偶者がすべて相続する | 配偶者と、直系尊属または兄弟姉妹が一緒に相続人になります。遺言がなければ、共同相続人の全員で遺産分割の協議をします。協議で、法定相続分と異なる分け方にもできます(民法907条1項) |
| 子が相続放棄をすれば、孫が代わりに相続する | 放棄した子は初めから相続人でないとみなされ、孫は代襲しません |
| 甥・姪の子まで、代襲して相続できる | 代襲は甥・姪までです。甥・姪が亡くなっている場合、その子は相続人になりません |
| 兄弟姉妹にも遺留分がある | 兄弟姉妹に遺留分はありません |
| 兄弟姉妹の相続税は、子と同じ計算で、同じ金額になる | 兄弟姉妹には2割加算が付きます。遺産1億円・2人なら、子2人の770万円に対して924万円です |
よくある質問
兄弟姉妹の誰かと連絡が取れません。どうすればよいですか。
相続税の申告書には、被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本を添付します(相続税法施行規則16条3項)。その戸籍で相続人の氏名と続柄を確かめます。申告書は、他の相続人と共同で出すことも、各人が別々に出すこともできます(相続税法27条5項)。遺産分割協議には全員が加わるため、連絡が取れない場合の進め方は、状況によって変わります。専門家に相談してください。
兄弟姉妹が既に亡くなっている場合、その配偶者は相続人になりますか。
なりません。代襲相続人になるのは、亡くなった兄弟姉妹の子(甥・姪)です(民法889条2項)。亡くなった兄弟姉妹の配偶者は、代襲相続人ではありません。
兄弟姉妹が相続人でも、相続税の申告は必要ですか。
課税価格の合計額が基礎控除を超える場合は、申告が必要です(相続税法27条1項)。配偶者がいない場合、基礎控除は兄弟姉妹の人数で変わります。上の表のとおり、遺産5,000万円で兄弟姉妹が4人なら基礎控除(5,400万円)以下で、申告は不要です。
兄弟姉妹が相続放棄をすると、相続税の基礎控除の人数は減りますか。
減りません。相続税の基礎控除の人数は、相続放棄があった場合は、放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます(相続税法15条2項)。相続放棄をした兄弟姉妹も、人数に含めます。
2割加算は、兄弟姉妹の全員に付きますか。
付きます。兄弟姉妹は一親等の血族ではないため、相続人全員が2割加算の対象です。甥・姪が代襲した場合も同じです。
まとめ
- 兄弟姉妹は、子(孫を含む)も直系尊属もいない場合に、相続人になります。代襲は甥・姪までで、子や兄弟姉妹が相続放棄をしても、その子は代襲しません。
- 兄弟姉妹の相続税には、2割加算が付きます。遺産1億円・2人(配偶者なし)で、納付額の合計は924万円(子2人なら770万円)です。
- 配偶者がいる場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が合計4分の1です。兄弟姉妹の分には、配偶者の税額軽減が働きません。
- 兄弟姉妹には遺留分がありません。遺言の内容は、配偶者や親との関係でも結果が変わります。
- 相続人の確定、遺産分割協議、連帯納付など、全員が関わる場面が多いため、早めに相続人と連絡を取る準備が必要です。
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監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 民法(相続人・相続分):887条(子及びその代襲者等の相続権)・889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)・890条(配偶者の相続権)・900条(法定相続分)・901条(代襲相続人の相続分)
- 民法(放棄・遺言・遺留分):915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)・939条(相続の放棄の効力)・967条(遺言の種類)・1042条(遺留分の帰属及びその割合)
- 相続税法:12条1項6号(保険金の非課税)、15条(基礎控除)、16条(相続税の総額)、18条(相続税額の加算)、19条の2(配偶者に対する相続税額の軽減)、27条(申告書)、34条(連帯納付の義務)
- 相続税法施行規則:1条の6(軽減の特例の適用を受ける場合の添付書類)、16条(申告書に添付する明細書の記載事項等)
- 相続税法基本通達15-2(相続人の数の設例)
- 相続税法基本通達16-3(各取得金額・相続税の総額の端数処理)
- 国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
- 国税庁 No.4157 相続税額の2割加算
- 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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