経理を外注すれば、請求書の回収から支払いまで任せられると思っていませんか。記帳や計算を頼んでも、書類をそろえて保存することや、支払ってよいかの判断は会社に残ります。現金の管理や、外注先からの質問に答える担当も必要です。
この記事では、外注後も社内で続ける仕事と、担当者・資料の受け渡しルールの決め方を整理します。外注を検討中の方は、経理アウトソーシングのメリット・デメリットも参考にしてください。
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外注後も社内に残る仕事の一覧
外注の範囲が記帳だけでも、給与計算や振込データの作成まででも、次の仕事は社内に残ります。
| 仕事 | 社内に残る理由 | 外注先に渡すもの |
|---|---|---|
| 請求書・領収書・契約書の回収 | 取引の相手から受け取るのは会社 | 証憑の写しやデータ |
| 証憑の保存 | 保存の義務を負うのは会社 | なし(写しを渡しても保存は会社) |
| 支払の承認と実行 | 会社のお金を動かす判断 | 支払った記録 |
| 手元の現金の管理 | 現金は会社の手元にしかない | 現金の出入りの記録と残高 |
| 売上の請求と入金の確認 | 取引先との約束を知っているのは会社 | 請求書の控え、入金予定 |
| 外注先からの質問への回答 | 取引の事情を知っているのは会社 | 回答と追加の資料 |
| 税金・社会保険料の納付の実行 | 会社の口座や現金から納める | 納付した記録 |
| 会計ソフト・銀行の権限の管理 | 契約とデータの持ち主は会社 | 必要な範囲の閲覧・編集の権限 |
このうち、法令で会社に義務があるものと、会社のお金と情報を守るために社内に残すものがあります。以下、順に見ていきます。
証憑の回収と保存:外注しても保存の義務は会社に残る
青色申告の承認を受けている法人は、帳簿と決算の書類のほか、取引に関して相手方から受け取った注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などと、自社で作った書類の写しを整理して保存します(法人税法施行規則59条)。保存の期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間で、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です(国税庁『タックスアンサーNo.5930 帳簿書類等の保存期間』)。
記帳のために証憑の写しを外注先へ送っても、保存の義務は会社に残ります。カードや口座振替で払ったものは、利用明細や通帳の記録から記帳はできますが、受け取った請求書や領収書は記帳できるかどうかとは別に保存が必要です。
消費税を本則課税で計算する会社では、仕入税額控除の要件として、一定の事項が記載された帳簿と、インボイス(適格請求書)等の保存が求められます(国税庁『タックスアンサーNo.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)』)。インボイスは売手が買手に交付するものなので、カード会社の利用明細だけではこの要件を満たしません。どのインボイスを回収するかは、社内で取引のたびに押さえる必要があります。
メールやウェブで受け取った請求書などの電子取引データは、電子のまま保存することが義務付けられています。改ざんを防ぐ措置として、タイムスタンプが付いたデータの受領、受領後のタイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムでの授受と保存、改ざん防止のための事務処理規程の策定・運用・備付けのいずれかを行います(国税庁『電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について』)。どの措置をとるか、事務処理規程を誰が運用するかは、会社が決めることです。
社内で決めておくことは次のとおりです。
- 証憑を受け取った人が、いつまでに、どこへ出すか(紙の箱、共有フォルダ、経費精算の仕組みなど)。
- 紙の原本を保存する場所と、外注先に送るのが写しか原本か。
- 電子取引データを保存する場所と、改ざん防止の措置。
- 領収書が出ない支払(交通機関・自動販売機など)で、日付・相手先・内容・金額を残す方法。
支払の承認と実行:外注先に任せない理由と分け方
支払は、請求書を受け取り、発注どおりかを確かめ、承認し、振込などを実行し、記帳する、という順に進みます。外注先が担えるのは記帳と、頼めば振込データの作成までで、「払ってよいか」の判断と、実際にお金を動かす操作は社内に残します。会社のお金を動かす権限を社外に渡すと、誤りや不正が起きたときに社内で気付けないためです。
| 工程 | 担当の例 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 請求書の受取と内容の確認 | 発注した部署の担当者 | 発注書や契約と金額・内容が合っているか |
| 支払の承認 | 経営者または決裁権のある人 | 金額ごとの承認者 |
| 振込データの作成 | 社内の経理担当、または外注先 | 支払予定の一覧をいつ渡すか |
| 振込の実行(送信) | 承認者、またはデータを作った人とは別の人 | インターネットバンキングの承認の権限を誰が持つか |
| 記帳 | 外注先 | 支払った記録をいつ渡すか |
振込データの作成を外注する場合も、インターネットバンキングで送信を承認する権限は社内に残します。経費の立替精算も同じで、精算を申請した人と、内容を見て承認する人を分けます。
現金の管理:手元に現金を置くなら決めること
手元の現金(小口現金)は、外注先からは見えません。外注先は現金の出入りの記録を見て記帳しますが、記録と手元の現金が合っているかは社内でしか確かめられません。現金を置く場合は、次の点を決めておきます。
- 現金を管理する人と、残高を確かめる人(別の人にする)。
- 残高を数えて記録と合わせる日(毎月の締めの日など)。
- 現金で払ったときに、領収書かレシートを必ず受け取り、現金の記録と一緒に保管すること。
- 手元に置く現金の上限と、補充の手続。
現金の取引が多いと、外注先に渡す資料が増え、記帳の確認にも時間がかかります。立替精算や会社名義のカードで払う形に寄せて手元の現金を減らす方法もありますが、どの形が合うかは取引の内容と社内の人手で変わります。
税金と社会保険料の納付:計算は外注、実行は社内
源泉所得税の計算や納付書の作成は外注先が担っても、納付の実行は会社が行います。源泉所得税は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した分は翌年1月20日を納付期限とする納期の特例を受けられます(国税庁『タックスアンサーNo.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例』)。
納付の期限は外注先も把握していますが、口座から払う操作や、納付のための資金を口座に用意するのは会社です。外注先から金額と期限の連絡を受けたら、誰が、いつまでに納付するかを決めておきます。法人税や消費税の納付も同じで、申告書の作成を外注していても、期限までに納める資金の準備と納付の実行は社内に残ります。
厚生年金保険料も、事業主が、使用する被保険者の分と自己の負担する分を納付する義務を負います(厚生年金保険法82条2項)。給与計算を外注している場合は、給与から控除した本人負担分と、会社が納付する保険料の額を、社内で突き合わせる担当を決めておきます。
外注先との受け渡しのルールと、社内の担当の決め方
社内に残る仕事が回らないと、外注先の作業も止まります。外注を始める前に、次の点を外注先と書面で決めておきます。※日付は説明のための架空の例です。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 資料を渡す期日 | 前月分を毎月10日までに |
| 資料の渡し方 | 共有フォルダに置く、会計ソフトに明細を取り込む |
| 質問の窓口 | 社内の担当者1名と、不在のときの代わりの1名 |
| 質問への回答の期限 | 質問を受けてから5営業日以内 |
| 承認者 | 支払・経費精算を承認する人と、金額ごとの区分 |
| 権限 | 会計ソフト・銀行の明細を外注先が見られる範囲 |
社内の担当者は、経理の専任でなくてもかまいません。ただ、資料の回収と質問への回答を一人に集めると、その人が休んだときに止まります。窓口の担当者と代わりの人、支払の承認者を分けて決め、手順を書面にしておくと、担当者が替わっても引き継げます。
まとめ:外注しても「資料をそろえる」と「お金を動かす」は社内に残る
- 社内に残るのは、証憑の回収と保存、支払の承認と実行、現金の管理、質問への回答、納付の実行、権限の管理。
- 帳簿書類と取引の証憑の保存の義務は会社にある。写しを外注先に送っても義務は残る。
- 本則課税ならインボイスの保存が仕入税額控除の要件。電子取引データは電子のまま保存し、改ざん防止の措置を会社が選ぶ。
- 振込データの作成は外注できても、承認と送信の権限は社内に残す。
- 資料の期日・質問の窓口と代わりの人・承認者を書面で決めておく。
どこまでを外注し、何を社内に残すかは、会社の人手と取引の形で変わります。上の一覧で社内の担当を決めてから外注先と範囲を相談すると、外注後に作業が止まりにくくなります。
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よくある質問
Q. 証憑の原本を外注先に預けておけば、保存したことになりますか?
保存の義務を負うのは会社です。法人税法施行規則59条は、保存する場所を納税地(取引に関する書類は、納税地かその取引に係る国内の事務所などの所在地)と定めています。原本を外注先に送る場合は、返してもらう時期と方法を決めておいてください。
Q. 経費精算の承認も外注先に任せられますか?
領収書がそろっているか、科目が合っているかといった形の確認は、外注先に頼めることがあります。一方、その支出を会社として認めるかどうかの判断は、取引の事情を知っている社内の承認者が行う方が確実です。形の確認と承認を分けて決めておきます。
Q. 社内に経理の担当者がいなくても外注できますか?
外注はできますが、社内に残る仕事は無くなりません。担当者がいない会社では、経営者が資料の回収・質問への回答・支払の承認を担うことになります。外注先との受け渡しの期日を、経営者の予定に合わせて決めておくと回りやすくなります。
Q. 個人事業主の場合も、社内に残る仕事は同じですか?
証憑の回収と保存、支払、現金の管理、納付の実行が本人に残る点は同じです。ただ、帳簿書類の保存の定めは所得税法の側にあり、保存期間などの扱いが法人と違うところがあります。個人事業主向けの定めで確かめてください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月30日
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