初めて法人の決算申告で内訳書を作ると、取引先をどこまで書けばよいのか迷うものです。まずは決算書の金額を固め、取引先別・口座別の残高を集めます。勘定科目内訳明細書には、金額などの基準に応じて記入し、合計を決算書と合わせます。
この記事では、使う内訳書の選び方、まとめて書ける範囲、提出前の確認点を整理します。参考資料はe-Tax『勘定科目内訳明細書のレコードの内容及び留意事項(令和6年3月1日以後終了事業年度分)』です。
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内訳書とは:確定申告書の添付書類の1つ
法人税法74条3項は、確定申告書に貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならないと定めています。その財務省令(e-Gov法令検索『法人税法施行規則』35条)が、添付書類として次のものを挙げています。
| 施行規則35条 | 添付書類 |
|---|---|
| 1号 | 貸借対照表と損益計算書 |
| 2号 | 株主資本等変動計算書(または社員資本等変動計算書・損益金の処分表) |
| 3号 | 1号の書類に係る勘定科目内訳明細書 |
| 5号 | 事業等の概況に関する書類(完全支配関係がある法人との関係を系統的に示した図を含む) |
| 6号・7号 | 組織再編成を行った場合の契約書等の写し・主要な事項の明細書 |
内訳書は、この3号の書類です。決算書だけでは分からない「預金はどの銀行にいくらあるか」「売掛金はどの取引先にいくら残っているか」を示すもので、決算書の数字の裏付けになります。5号の事業等の概況に関する書類(法人事業概況説明書)は別の書類です。
様式は事業年度で選ぶ
国税庁は、内訳書の様式を「令和6年3月1日以後終了事業年度分」と「令和6年3月1日前終了事業年度分」などに分けて公表しています。事業年度の終了日で使う様式が決まるので、古い年の様式を使い回さないようにします。e-Taxで提出する場合は、e-Taxソフトで作るほか、e-Taxホームページの「標準フォーム」(Excel)からCSV形式のデータを作って提出することもできます。なお、国税庁は、財務諸表や勘定科目内訳明細書などは法令上イメージデータ(PDFの画像など)による送信はできないと案内しています。
16種類の内訳書と対応する科目
令和6年3月1日以後終了事業年度分の内訳書は、e-Taxの標準フォームの一覧では次の16に分かれています。自社の決算書に残高や金額がある科目について、該当する内訳書を作ります。
| 番号 | 内訳書 | 対応する主な科目 |
|---|---|---|
| 1 | 預貯金等の内訳書 | 現金預金(普通預金・当座預金・定期預金など) |
| 2 | 受取手形の内訳書 | 受取手形 |
| 3 | 売掛金(未収入金)の内訳書 | 売掛金・未収入金 |
| 4 | 仮払金(前渡金)の内訳書、貸付金及び受取利息の内訳書 | 仮払金・前渡金・貸付金・受取利息 |
| 5 | 棚卸資産の内訳書 | 商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品 |
| 6 | 有価証券の内訳書 | 有価証券・投資有価証券など |
| 7 | 固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書 | 土地・借地権・建物 |
| 8 | 支払手形の内訳書 | 支払手形 |
| 9 | 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書 | 買掛金・未払金・未払費用 |
| 10 | 仮受金(前受金・預り金)の内訳書、源泉所得税預り金の内訳 | 仮受金・前受金・預り金 |
| 11 | 借入金及び支払利子の内訳書 | 借入金・支払利息 |
| 12 | 土地の売上高等の内訳書 | 土地の売上高など |
| 13 | 売上高等の事業所別内訳書 | 売上高(事業所別) |
| 14 | 役員給与等の内訳書 | 役員給与・人件費 |
| 15 | 地代家賃等の内訳書、工業所有権等の使用料の内訳書 | 地代家賃・権利金・使用料 |
| 16 | 雑益、雑損失等の内訳書 | 雑収入・雑損失・固定資産売却損益・税金の還付金・貸倒損失など |
書き方の基本:相手先ごとに書くものと、まとめて書けるもの
売掛金や買掛金などの内訳書は相手先ごとに書く形ですが、金額の小さいものまで全部書く必要はありません。e-Taxの留意事項(令和6年3月1日以後終了事業年度分)に定められた主な基準は次のとおりです。
| 内訳書 | 各別に書くもの | まとめて書けるもの・その他の定め |
|---|---|---|
| 受取手形 | 一取引先からの総額が100万円以上のもの | その他は一括。一括するもののうち割引したものは割引銀行ごとに区分 |
| 売掛金(未収入金) | 相手先別の期末現在高が50万円以上のもの | その他は一括。未収入金は摘要欄に取引内容 |
| 仮払金(前渡金) | 相手先別の期末現在高が50万円以上のもの | 相手先が役員・株主・関係会社なら50万円未満でも全て各別 |
| 貸付金及び受取利息 | 貸付先別の期末現在高が50万円以上のもの | 役員・株主・関係会社は全て各別。期末残高が無くても期中の受取利息が3万円以上なら各別 |
| 支払手形 | 一取引先に対する総額が100万円以上のもの | その他は一括。融通手形は各別に書き、摘要欄にその旨 |
| 買掛金(未払金・未払費用) | 相手先別の期末現在高が50万円以上のもの | その他は一括 |
| 仮受金(前受金・預り金) | 相手先別の期末現在高が50万円以上のもの | 役員・株主・関係会社は50万円未満でも全て各別 |
| 借入金及び支払利子 | 借入先別の期末現在高が50万円以上のもの | 役員・株主・関係会社は全て各別。期末残高が無くても期中の支払利子が3万円以上なら各別 |
| 雑益、雑損失等 | 科目別かつ相手先別の金額が10万円以上のもの | 税金の還付金は10万円未満でも全て各別 |
受取手形・売掛金・支払手形・買掛金では、基準以上のものが5口未満のときは、期末現在高の多いものから5口程度を各別に書くことになっています。
行数が多いとき(100口を超えるとき)
各別に書くべきものが100口を超える場合は、期末現在高の多いものから100口だけを書き、100口目に残り全部をまとめる方法か、自社の支店・事業所ごとの合計で書く方法をとることができます。預貯金・棚卸資産・有価証券なども、記載口数が100口を超えるときは期末現在高の多いものから100口だけを書いてよいとされています。
登録番号・法人番号を書けば名称や所在地を省略できる欄がある
令和6年3月1日以後終了事業年度分の様式では、売掛金の内訳書などに「登録番号」(「T」に続く13桁の番号)と「法人番号」の欄があります。たとえば売掛金の内訳書では、登録番号か法人番号を書いた場合は、相手先の「名称(氏名)」欄と「所在地(住所)」欄の記載を省略しても差し支えないとされています。どちらか一方だけを書く(両方は書かない)点に注意します。
科目ごとの注意点
預貯金等:口座ごとに、名義にも注意
金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号・期末現在高を、口座ごとに書きます。合計は貸借対照表の現金預金のうち預貯金の額と一致させます。預貯金の名義人が代表者になっているなど法人名と異なる場合は、摘要欄に「名義人○○○○」のように名義人を書くことになっています。
売掛金・買掛金:補助元帳の残高と合わせる
相手先ごとの残高は、取引先別の補助元帳(得意先元帳・仕入先元帳)から拾います。内訳書の合計が貸借対照表の科目の残高と合わない場合は、どこかの相手先の残高か、決算書の側に誤りがあります。売掛金と未収入金は同じ内訳書に書き、「科目」欄でどちらかを区別します。
仮払金・貸付金・仮受金・借入金:役員との取引は金額にかかわらず書く
この4つの内訳書は、相手先が役員・株主・関係会社であれば、50万円未満でも全て各別に書くことになっています。社長が会社から借りているお金(役員貸付金)や、社長が会社に貸しているお金(役員借入金)は、少額でも1行ずつ書くことになります。期中に社長との貸し借りがあった会社は、期末の残高を相手ごとに確かめておきます。
役員給与等:給与の区分ごとに分けて書く
役員給与等の内訳書には、役員ごとの給与の内訳として、使用人職務分、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与、その他、退職給与を分けて書く欄があります。人件費の内訳には、役員給与・従業員給料手当・従業員賃金手当の総額と、そのうち代表者とその家族の分を書きます。給与台帳や賃金台帳と照らして書きます。
固定資産(土地・建物):期中に売買した物も書く
土地・借地権・建物の内訳書の「期中取得(処分)の明細」は、期末に残高がないものでも、期中に売却・購入・評価換えをした場合に書くことになっています。期中に不動産を売った会社は、期末の残高が無くても記載が必要かどうかを確かめます。
雑益、雑損失等:10万円の基準と還付金
雑収入・雑損失、固定資産の売却損益、税金の還付金、貸倒損失などは、科目別かつ相手先別で10万円以上のものを書きます。税金の還付金は10万円未満でも全て書くことになっているので、前期の法人税・消費税などの還付金を雑収入に入れた場合は忘れずに載せます。
作る順番とチェックリスト
内訳書は決算書が固まってから作ります。次の順で進めると、決算書との食い違いを見つけやすくなります。
- 決算書(貸借対照表・損益計算書)の科目と金額を確定する
- 補助元帳や残高証明書から、相手先別・口座別の残高を拾う
- 基準(50万円・100万円・10万円など)で、各別に書くものとまとめるものに分ける
- 各内訳書の合計を、決算書の科目の残高・金額と照らす
- 前期の内訳書と並べて、毎期同じ相手先に同じ残高が残っていないかを見る
| 確かめること | 見る資料 |
|---|---|
| 預貯金の残高が金融機関の残高と一致しているか | 通帳・残高証明書 |
| 借入金の残高と期中の支払利子が合っているか | 金銭消費貸借契約書・返済予定表 |
| 役員・株主・関係会社との残高が漏れなく各別に書かれているか | 役員との精算記録・関係会社との契約 |
| 地代家賃の貸主・物件・金額が合っているか | 賃貸借契約書 |
| 税金の還付金が雑益の内訳書に載っているか | 還付金の通知・入金記録 |
| 使っている様式が事業年度に合っているか | 事業年度の終了日 |
決算書の種類と役割の全体像は「法人決算書の種類」の記事で扱っています。内訳書は、そのうち決算書の数字の中身を説明する書類です。決算申告を税理士に依頼する場合は、上の表の資料(残高証明書、契約書、返済予定表、給与台帳など)を揃えておくと、作業の範囲が見積りやすくなります。
まとめ:決算書の科目ごとに、基準どおりに中身を並べる
- 内訳書は、法人税の確定申告書に添付する書類(法人税法施行規則35条3号)。様式は事業年度の終了日で選ぶ
- 令和6年3月1日以後終了事業年度分は16種類。決算書に残高・金額のある科目について作る
- 売掛金・買掛金・仮払金・仮受金・貸付金・借入金は50万円以上、受取手形・支払手形は100万円以上、雑益・雑損失等は10万円以上を各別に書き、その他はまとめて書ける
- 役員・株主・関係会社との仮払金・貸付金・仮受金・借入金は金額にかかわらず各別に書く。税金の還付金も全て各別
- 各内訳書の合計を決算書の金額と照らし、前期の内訳書とも比べる
内訳書は決算書の数字を相手先の単位まで分解する作業なので、日々の帳簿で取引先ごとの残高が管理できているかどうかで、作る手間が大きく変わります。
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よくある質問
Q. 勘定科目内訳明細書は省略できますか?
勘定科目内訳明細書は、法人税法施行規則35条で確定申告書の添付書類とされています。省略できるのは書類そのものではなく、記載の範囲です。金額が基準未満の相手先をまとめて書く、100口を超えるときは多いものから100口だけ書く、登録番号や法人番号を書いて名称・所在地を省略する、といった定めがあります。
Q. 社長個人から借りているお金は、少額でも書く必要がありますか?
借入金及び支払利子の内訳書では、借入先が役員・株主・関係会社の場合、期末現在高が50万円未満であっても全て各別に書くことになっています。社長からの借入金は金額にかかわらず1行で書きます。社長への貸付金・仮払金も同じ扱いです。
Q. e-Taxで申告するとき、内訳書をPDFの画像で送れますか?
国税庁は、財務諸表や勘定科目内訳明細書などは法令上イメージデータによる送信はできないと案内しています。e-Taxソフトで作成するか、e-Taxホームページの標準フォームからCSV形式のデータを作って提出します。
Q. 前期の内訳書の様式を使ってもよいですか?
国税庁は内訳書の様式を事業年度の終了日で分けて公表しており、令和6年3月1日以後に終了する事業年度は、その事業年度用の様式を使います。e-Taxの標準フォームも、事業年度の区分ごとに別のものが用意されています。
Q. 小口の売掛金が数百件あります。全部書く必要がありますか?
相手先別の期末現在高が50万円以上のものを各別に書き、それ以外はまとめて書けます。各別に書くものが100口を超える場合は、多いものから100口だけ書いて100口目に残りをまとめるか、支店・事業所ごとの合計で書く方法もとれます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月30日
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