「節税に取り組んでいるつもりだが、自分がいくら払い過ぎているのか把握できていない」「青色申告はしているが、それ以外の控除をほとんど使えていない気がする」——こうした状況で確定申告の時期を迎える個人事業主は、リーパル会計事務所の顧問先にも少なくありません。事業所得が400万円の個人事業主が青色申告控除・小規模企業共済・iDeCoを組み合わせると、課税所得が65万円前後まで圧縮でき、所得税だけで16万円超の差がつきます(令和8年分)。使えるはずの制度を見落とすことが、最大の損失です。
事業所得400万円の個人事業主が何もしないと毎年16万円超を余分に払い続ける——節税の仕組みを数字で理解する
節税の基本は「課税所得を減らす」ことです。個人事業主の所得税は次の計算式で決まります。
課税所得 = 売上 − 必要経費 − 各種控除
売上は変えられませんが、経費と控除を最大限活用することで課税所得を合法的に減らせます。所得税は累進課税のため、課税所得が高くなるほど税率も上がります。効果的な節税で、実質的な手取りを大幅に増やせます。
| 課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(出典:国税庁「所得税の税率」)
青色申告65万円・小規模企業共済84万円・iDeCo81万円——確定申告前に今すぐ使える節税12手法
1. 青色申告特別控除(最大65万円)を活用する
青色申告をe-Taxで申告すると、最大65万円の特別控除を受けられます。これは所得から直接差し引かれるため、税率20%の方なら約13万円の節税効果があります。
手続き方法:
- 青色申告承認申請書を開業から2ヶ月以内(または前年12月31日まで)に税務署へ提出
- 複式簿記による帳簿付けが必要
- e-Taxを利用して申告する
2. 小規模企業共済で所得控除を最大化する
小規模企業共済は、個人事業主のための退職金制度です。掛金月額1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、支払った全額が所得控除になります。
節税効果の試算:
- 月7万円(年84万円)掛けた場合、税率20%なら年約16.8万円の節税
- 将来の廃業・退職時に共済金として受け取れる
中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する制度で、安全性も高い選択肢です。
3. iDeCoで老後資金を積みながら節税する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人事業主の場合は月額最大68,000円まで拠出でき、全額が所得控除になります。
個人事業主のiDeCoメリット:
- 掛金全額が所得控除
- 運用益が非課税
- 受取時も退職所得控除・公的年金等控除が適用
→ 詳しい活用方法は「iDeCoの節税効果|個人事業主が活用すべき理由と始め方を解説」をご覧ください。
4. 経費を漏れなく計上する
経費の計上漏れは最も多い節税機会の損失です。事業に関連する支出はすべて経費として計上できます。
計上漏れしやすい経費の例:
- 自宅の一部を仕事に使う場合の家賃・光熱費(按分計算)
- スマートフォン代(事業使用割合分)
- セミナー・書籍代(業務関連のもの)
- 交通費・出張費
- 打ち合わせ時の飲食費(接待交際費)
5. ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、寄附金の一部が所得税・住民税から控除される制度です。返礼品がもらえるため、実質的な節税効果があります。
個人事業主の注意点:
- 上限額は「前年の所得」をもとに計算されるため、事業が好調な年は上限額が高くなる
- 確定申告でワンストップ特例と同じ控除を受けられる
→ 上限額の計算は「ふるさと納税の上限額の計算方法|年収別の早見表と注意点まとめ」を参照してください。
6. 生命保険料控除を最大限活用する
生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料は、最大12万円まで所得控除になります(新制度適用の場合)。
| 保険の種類 | 最大控除額(新制度) |
|---|---|
| 一般生命保険料 | 4万円 |
| 介護医療保険料 | 4万円 |
| 個人年金保険料 | 4万円 |
| 合計 | 12万円 |
7. 国民健康保険料と国民年金保険料を控除する
個人事業主が支払う国民健康保険料と国民年金保険料は、全額が社会保険料控除として所得から差し引けます。見落としがちですが、金額が大きいため必ず申告してください。
国民年金保険料(2026年度): 月額17,920円(年間約21.5万円)
(参考:国税庁「社会保険料控除」)
8. 家族への給与(専従者給与)を活用する
青色申告者は、生計を一にする家族に支払った給与を全額経費にできます(青色事業専従者給与)。青色事業専従者給与の損金算入は、労務に対する適正額であること(同種同規模事業との比較で過大でないこと)も要件となります。
条件:
- 青色事業専従者給与に関する届出書を事前に税務署へ提出
- 業務内容・給与額が適正であること
- 15歳以上で6ヶ月超従事すること
9. 繰越欠損金を活用する
青色申告者は、赤字(純損失)を翌年以降3年間繰り越して所得から控除できます。事業開始直後などで赤字が出た場合、しっかり記録して翌年以降の節税に活用しましょう。
10. 少額減価償却資産の特例を使う
個人事業主(青色申告者)は、取得価額40万円未満(令和8年3月31日までに取得したものは30万円未満)の資産を取得した場合、年間300万円を上限に一括で経費計上できます(少額減価償却資産の特例)。
パソコン・スマートフォン・カメラ・デスクなどの購入を事業年度内に計画する際に活用できます。
令和8年度税制改正により、令和8年4月1日以後に取得する資産は取得価額の上限が40万円未満に引き上げられ、適用期限も令和11年3月31日まで延長されました(対象は従業員400人以下の青色申告者)。
11. 医療費控除を申告する
年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、超えた金額を所得から控除できます。薬局での市販薬購入も対象になる場合があります。
医療費の範囲:
- 病院・歯科の診察費・治療費
- 処方薬代
- 通院交通費(電車・バス)
- 特定の市販薬(セルフメディケーション税制)
12. 配偶者控除・扶養控除を活用する
配偶者や扶養親族がいる場合、一定の条件を満たせば配偶者控除・扶養控除を受けられます。
配偶者控除の主な条件(2026年時点):
- 配偶者の合計所得が62万円以下(給与収入136万円以下)※令和8年分。令和7年分は58万円以下(給与収入123万円以下)
- 納税者自身の合計所得が1,000万円以下
リーパル会計事務所では、個人事業主・副業の方向けに節税余地の棚卸しと申告手順の伴走支援を行っています。所得控除や経費計上は、知っているか知らないかだけで税額が数万円〜数十万円変わる領域です。専門家への相談は費用ではなく、払い過ぎを取り戻すための投資にあたります。
年商600万円・経費200万円の事業主が節税策を全て使うと所得税は約3万円に圧縮できる——年商別・手法別シミュレーション
年間売上600万円・経費200万円・青色申告をしていない個人事業主の場合
| 項目 | 節税前 | 節税後 |
|---|---|---|
| 事業所得(青色申告特別控除前) | 400万円 | 400万円 |
| 青色申告特別控除 | 0円 | 65万円 |
| 基礎控除(令和8年分) | 104万円 | 104万円 |
| 小規模企業共済 | 0円 | 84万円 |
| iDeCo | 0円 | 81.6万円 |
| 課税所得(概算) | 296万円 | 65.4万円 |
| 所得税額(概算) | 約19.9万円 | 約3.3万円 |
| 節税効果 | — | 約16.6万円 |
※令和8年分の基礎控除104万円(合計所得金額489万円以下)を適用。課税所得は、節税前が400万円−104万円、節税後が400万円−65万円−104万円−84万円−81.6万円です。社会保険料控除・その他の控除と復興特別所得税は省略した概算値です。
ご自身の所得・家族構成・控除の組み合わせによって、最適な打ち手は大きく変わります。判断に迷う部分があれば、リーパル会計事務所の税理士に直接ご相談いただくのが最短です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 節税と脱税の違いは何ですか?
節税は法律の範囲内で税負担を軽減することです。脱税は収入を隠したり、架空の経費を計上したりする違法行為です。適切な根拠のある経費計上や制度の活用は節税であり、問題ありません。
Q2. 確定申告直前でもできる節税はありますか?
確定申告の際に申告できるものとして、医療費控除・生命保険料控除・ふるさと納税・iDeCoの所得控除などがあります。ただし、小規模企業共済やiDeCoへの加入は年度内の手続きが必要です。
Q3. 青色申告の承認申請書はいつまでに提出すればいいですか?
開業した年に青色申告を適用したい場合は、開業日から2ヶ月以内に提出します。すでに事業を行っている場合は、適用したい年の3月15日までに提出が必要です。
Q4. 家族に給与を払う場合、いくらまで認められますか?
適正額に関する明確な上限はありませんが、業務内容・勤務時間に見合った金額である必要があります。同種の業務を他人に依頼した場合の相場が基準となります。税務調査で問題になる可能性もあるため、専門家への相談をおすすめします。
Q5. 副業の節税は個人事業主の場合、どう考えればよいですか?
本業の個人事業とは別に副業収入がある場合、副業にかかる経費も計上できます。ただし、副業が「事業所得」か「雑所得」かによって扱いが異なります。
まとめ
個人事業主が活用できる主な節税方法を12個ご紹介しました。
- 青色申告特別控除(最大65万円)は必ず取得する
- 小規模企業共済・iDeCoで退職金を積みながら節税する
- 経費の計上漏れをなくす
- ふるさと納税・各種保険料控除を忘れない
節税は一度きりではなく、毎年継続することで積み重なる効果があります。適切な節税は事業の健全な継続につながります。
節税対策を「やっておけばよかった」と後悔するタイミングは、確定申告の締め切り後です。青色申告特別控除・小規模企業共済・iDeCoのいずれも、制度の存在を知り、年度内に行動しているかどうかだけが分岐点です。12の節税手段の中で自分がまだ使えていないものがひとつでもあれば、来期こそ見落とさないよう今すぐリストを確認してください。
リーパル会計事務所では、freee・MFクラウドの過去データをもとに「未活用の控除」を洗い出し、確定申告前の節税プランを1枚のシートで提示しています。
使える制度をすべて把握して活用してしまえば、毎年払い過ぎた税金を後から悔やみ続けない理由はほとんどありません。判断に迷う場合はリーパル会計事務所までご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、個人事業主の確定申告・所得税・所得控除を専門とする。
最終更新日: 2026年10月15日