記帳代行を税理士に依頼したときの費用は、月次の仕訳数で決まります。月50件までなら5,000〜1万円、200件で2万〜3.5万円が相場です。経理担当者を1人雇えば給与と社会保険料で月25万〜35万円かかることを考えると、小規模なうちは外注のほうが合理的な水準といえます。
ただし、記帳代行には「丸投げすれば安心」とは言い切れない側面もあります。帳簿の内容について最終的な責任を負うのは、あくまで事業者本人です。本記事では、2026年時点の費用相場を仕訳数別に整理したうえで、業務範囲、記帳代行専門業者との違い、そして依頼前に確認しておくべき点を解説します。
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税理士の記帳代行とは何をしてもらえるのか
記帳代行とは、事業者に代わって税理士事務所が帳簿への記録・入力を行うサービスです。主な業務範囲は次のとおりです。
- 領収書・請求書・通帳明細をもとにした仕訳入力
- 勘定科目の分類と消費税区分の判定
- 売掛金・買掛金の残高管理
- 月次試算表(損益計算書・貸借対照表)の作成
- クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードクラウド等)での入力・管理
記帳代行と顧問契約は別のサービス
混同されやすいのですが、この2つは目的が違います。
記帳代行は帳簿を作る作業そのものです。顧問契約は、その帳簿をもとに税務判断へ関与し、申告書の作成や節税提案まで行う包括的なサービスです。記帳代行だけを契約している場合、確定申告書や法人税申告書の作成は別途依頼が必要になります。
実務では、顧問契約に記帳代行をオプションで追加する形が一般的です。両者の違いは記帳代行とは?メリット・デメリット、税理士に依頼すべき理由でも整理しています。
記帳代行の費用相場
法人:月次仕訳数別の料金目安
| 月次仕訳数(取引件数) | 記帳代行費用(月額) |
|---|---|
| 〜50件 | 5,000〜10,000円 |
| 51〜100件 | 10,000〜20,000円 |
| 101〜200件 | 20,000〜35,000円 |
| 201〜300件 | 35,000〜50,000円 |
| 300件超 | 50,000円以上(個別見積もり) |
仕訳数とは、1か月あたりの取引件数のことです。銀行口座の入出金、クレジットカードの明細、現金精算のそれぞれが1件ずつカウントされるため、感覚より多くなりがちです。見積もりを取る前に、直近3か月分の通帳とカード明細の行数を数えておくと、提示された金額が妥当かを判断できます。
個人事業主の場合
個人事業主は仕訳数が少ない傾向にあるため、月3,000〜15,000円程度(年間3.6万〜18万円)が目安です。クラウド会計ソフトで銀行口座とクレジットカードを自動連携していれば、税理士側の作業は確認と修正が中心になるため、費用が下がることがあります。
決算・申告とセットで依頼した場合
記帳代行と決算申告をセットで依頼する場合、月次の記帳代行1万〜3万円に加えて、決算申告料が年1回5万〜20万円というのが一般的な組み立てです。事務所によっては顧問料に記帳代行と決算料を含めたパッケージプランを用意しており、個別に積み上げるより総額が抑えられる場合があります。
年間の総額で比較しないと判断を誤りやすいのはここです。月額だけを見て安いと感じた契約が、決算料を加えると割高になることがあります。経理業務全体を外注する場合の相場は経理代行の費用相場はいくら?サービス内容別の料金比較と選び方をご参照ください。
経理担当者を雇う場合とのコスト比較
| 比較項目 | 税理士への記帳代行 | 経理担当者の採用 |
|---|---|---|
| 月額コスト | 5,000〜50,000円 | 250,000〜350,000円(給与+社会保険料) |
| 採用・教育コスト | なし | 求人費用と教育期間が必要 |
| 申告書の作成 | 対応可(税理士のみ) | 対応不可 |
| 退職・休職のリスク | なし | あり(業務が止まる) |
| 業務の属人化 | 起こりにくい | 起こりやすい |
金額差は大きく見えますが、比較のポイントは金額だけではありません。経理担当者が1人しかいない体制では、その人が辞めた瞬間に業務が止まり、引き継ぎ資料もないという事態が起こります。いわゆる一人経理のリスクです。取引量が増えて外注では回らなくなるまでは、外部に任せておくほうが体制として安定します。
税理士と記帳代行専門業者の違い
記帳代行は税理士の独占業務ではないため、記帳代行専門業者に依頼することもできます。ただし、できることの範囲が異なります。
| 比較項目 | 税理士への記帳代行 | 記帳代行専門業者 |
|---|---|---|
| 費用 | 月5,000〜50,000円 | 月3,000〜15,000円 |
| 申告書の作成 | セットで依頼可 | 不可(税理士法により税理士のみ) |
| 税務相談 | 可 | 不可 |
| 節税提案 | あり | なし |
| 税務調査の立会い | あり | なし |
| 月次試算表と経営コメント | あり | 試算表のみのことが多い |
決定的な違いは、税務書類の作成と税務相談は税理士法により税理士の業務とされている点です。専門業者に記帳を依頼した場合、申告書の作成は別途税理士に頼むことになり、しかもその税理士は自分が作っていない帳簿を前提に申告することになります。帳簿の作成者と申告者が分かれることで、確認の手間と責任の所在が曖昧になりやすい構造です。
トータルで見れば、記帳から申告までを一本化できる税理士のほうが有利になるケースが多いといえます。役割の違いは経理代行と税理士の違い|それぞれの役割と上手な使い分け方で詳しく解説しています。
参考:日本税理士会連合会
依頼する前に知っておきたい3つの注意点
丸投げしても帳簿の責任は事業者に残る
記帳代行を使っても、帳簿書類の保存義務と記載内容の責任は事業者本人にあります。税務調査で誤りが見つかったとき、「税理士に任せていた」という説明で加算税が免除されることはありません。
したがって、上がってきた月次試算表には必ず目を通してください。売上と利益がおおむね実感どおりか、見覚えのない大きな支出がないか。この確認を毎月5分行うだけで、期末にまとめて修正する事態はかなり防げます。
資料を渡すのが遅れると効果が半減する
記帳代行の価値は、月次の数字が早く出ることにあります。領収書を3か月分ためてから渡していると、試算表が出る頃には打てる手がなくなっています。節税策の多くは期末までに実行する必要があるため、資料提出の遅れはそのまま選択肢の減少につながります。
電子帳簿保存法への対応は自社側でも必要
メールやWebサイト経由で受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、電子データのまま保存することが原則として義務づけられています。紙に印刷して保管するだけでは要件を満たしません。
記帳代行を依頼していても、データを受け取っているのは自社です。受領した電子データをどこに、どう保存するかのルールは、自社側で決める必要があります。要件や猶予措置の詳細は国税庁の特設サイトで確認できます。対応の進め方は電子帳簿保存法の対応方法を完全解説|最新要件と実務チェックリストにまとめています。
参考:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
税理士への依頼を考えるときの関連記事
クラウド会計を使うと記帳代行はどう変わるか
freeeやマネーフォワードクラウドで銀行口座・クレジットカードを自動連携すると、取引の多くが自動で仕訳候補として起票されます。税理士側の作業は「入力」から「確認と修正」へ変わるため、同じ取引量でも費用を抑えやすくなります。
さらに効果が大きいのは、資料の受け渡しが不要になる点です。通帳のコピーを郵送する手間も、月末に領収書をまとめる作業もなくなり、税理士側は常に最新のデータを見られる状態になります。結果として月次報告が早まり、期中に手を打てる期間が延びます。
自社で入力まで行う「自計化」に切り替えれば記帳代行料そのものを削減できますが、消費税区分の判定など判断を伴う部分は残ります。どこまで自社で持つかは、経理にかけられる時間と取引の複雑さから決めるのが現実的です。
よくある質問
Q1. 税理士に記帳代行を頼むと月いくらかかりますか?
A. 法人は月次仕訳数に応じて月5,000〜50,000円程度、個人事業主は月3,000〜15,000円程度が目安です。仕訳数50件までなら5,000〜1万円、200件で2万〜3.5万円が相場です。決算申告料は別途年5万〜20万円かかることが多いため、年間総額で比較してください。
Q2. 記帳代行は税理士以外に頼んでも問題ありませんか?
A. 帳簿への入力作業そのものは税理士でなくても行えるため、記帳代行専門業者への依頼は可能です。ただし、確定申告書や法人税申告書などの税務書類の作成、および税務相談は税理士法により税理士の業務とされています。申告まで一括で任せたい場合は税理士に依頼する必要があります。
Q3. 記帳は自分でやって申告だけ頼めますか?
A. できます。クラウド会計で自社入力を行い、決算と申告のみを税理士に依頼する形は、費用を最も抑えられる選択肢です。ただし、期中に相談する機会が減るため、節税提案を受けにくくなる点は理解しておいてください。
Q4. 記帳代行を依頼すると毎月何が届きますか?
A. 一般的には、月次試算表(損益計算書・貸借対照表)、仕訳帳・総勘定元帳の確認用データ、そして数字に対するコメントの3点です。届いた試算表を確認する時間を毎月確保しておくと、経営判断の材料として機能します。
Q5. 記帳代行に頼めば税務調査で指摘されなくなりますか?
A. そうとは限りません。専門家が作成した帳簿は勘定科目や消費税区分の精度が高くなるため、単純な誤りは減ります。ただし、渡された資料そのものに漏れがあれば帳簿にも反映されませんし、指摘を受けるかどうかは事業内容や取引の実態にもよります。「指摘されなくなる」ではなく「誤りが起きにくくなる」と理解するのが正確です。
参考資料
税理士への記帳代行は、法人で月5,000〜5万円、個人事業主で月3,000〜1.5万円が相場です。経理担当者を雇う場合の月25万〜35万円と比べれば、取引量が中規模までの事業者にとっては合理的な選択肢といえます。
ただし、外注しても帳簿の責任は自社に残り、電子取引データの保存も自社で行う必要があります。渡す資料を早く揃えること、上がってきた試算表に毎月目を通すこと。この2つができているかどうかで、同じ費用でも得られる効果は変わります。
リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績とクラウド会計導入支援の知見をもとに、記帳から決算申告までを一貫してご支援しています。今の記帳コストが適正かを知りたい方もお気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、中小企業の税務顧問とクラウド会計導入支援を専門とする。
最終更新日: 2026年7月28日
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