法人の決算申告の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。申告期限を延ばす「延長の特例」は事業年度終了の日までに申請しておく必要があるため、期末を過ぎてから期限に間に合わないと気づいた場合は、基本的に「期限内に申告を間に合わせる」ことと「納付だけでも期限内に済ませる」ことが中心になります。
この記事では、法人の決算申告が間に合いそうにないときに、期限前にできることを残り日数ごとに整理します。期限に遅れた場合に何が起きるか、集める資料の優先順位、急ぎで税理士に依頼するときに伝えることも、国税庁の資料と法令に沿ってまとめます。個人事業主の確定申告の話ではありません。
まず期限と、延長が使えるかを確かめる
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて申告書を提出しなければなりません(法人税法第74条)。確定申告で納める法人税も、申告書の提出期限までに納付します(法人税法第77条)。消費税の課税事業者であれば、消費税も課税期間の末日の翌日から2か月以内に申告します(消費税法第45条)。法人事業税も、各事業年度終了の日から2か月以内の申告納付が原則です(地方税法第72条の25)。
期限が日曜日・祝日などの休日、土曜日、12月29日〜31日に当たるときは、その翌日が期限になります(国税通則法第10条第2項、同法施行令第2条第2項)。期限の日付は、事業年度終了の日から数えて自社で確かめます。
| 確かめること | 内容 |
|---|---|
| 申告・納付の期限 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内(休日等なら翌日) |
| 延長の特例を受けているか | 受けている法人は期限が延びている。消費税は別の届出が要る |
| これから延長の特例を申請できるか | 申請は事業年度終了の日まで。期末後はその事業年度に使えない(法人税法第75条の2第3項) |
| 災害その他やむを得ない理由があるか | その理由で決算が確定しない場合の延長は、事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請(法人税法第75条) |
ポイントは「期末までに申請していなければ、その事業年度には使えない」ことです。決算の作業が遅れているという事情だけで期限が延びる仕組みはありません。
期限に遅れた場合に起きること
期限を過ぎてしまった場合の取扱いは、法令と国税庁の資料で次のように定められています。どれも申告や納付が遅れた日数や事情で結果が変わるため、表は仕組みの整理として見てください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される。令和8年1月1日から12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1% |
| 無申告加算税 | 期限後申告をした場合に課される。調査の通知がある前に、調査による決定を予知せずに自主的に申告した場合は、納付すべき税額の5% |
| 無申告加算税が課されない場合 | 期限内申告書を出す意思があったと認められる一定の場合で、法定申告期限から1か月を経過する日までに期限後申告をしたとき |
| 青色申告の承認 | 2事業年度連続して提出期限内に申告書の提出がない場合に、承認の取消しを行うものとされている |
延滞税は国税庁タックスアンサー No.9205「延滞税について」、無申告加算税は国税通則法第66条によります。1か月以内の期限後申告で無申告加算税が課されない「一定の場合」とは、その申告に係る納付すべき税額の全額が法定納期限までに納付されていること、そして期限後申告の日の前日から5年前の日までの間に、同じ税目で無申告加算税や重加算税を課されたことがなく、この扱いも受けていないことです(国税通則法施行令第27条の2)。つまり、申告書が遅れても納付を期限内に済ませておくことには意味があります。
青色申告の承認の取消しは、国税庁の事務運営指針「法人の青色申告の承認の取消しについて」で、2事業年度連続して提出期限内に申告書の提出がない場合に行うとされています。前の事業年度も期限後だった会社は、特に注意が必要です。
残り日数別:期限前にできること
期限までの残り日数によって、取れる手段は変わります。次の表は、期末を過ぎた後に「間に合わないかもしれない」と気づいた場合の目安です。
| 期限までの残り | やること |
|---|---|
| 1か月以上 | 資料を全部集めて、通常どおり決算を組む。税理士に依頼するなら、この段階で受けてもらえるかを確かめる |
| 2〜4週間 | 優先順位の高い資料(期末残高に関わるもの)から集める。消費税の申告が必要か、前期の申告書がそろっているかを確かめる |
| 1〜2週間 | 申告書の作成に集中する。税額の見込みが立てば、見込額を先に納めることも検討する |
| 期限を過ぎた | できるだけ早く申告する。納付は期限内に済んでいるか、1か月以内に出せるかを確かめる |
見込額を先に納める方法として、国税通則法第59条は、最近において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税として納付する旨を申し出て納付することを定めています(予納)。延滞税は法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかるため、期限内に見込額を納めておけば、その分は延滞税の対象になりません。ただし、見込額が足りなければ、差額には延滞税がかかります。
期限が迫ると、資料を全部そろえてから始めるやり方では間に合いません。期末の残高を確定させる資料を先にそろえ、細かな経費の整理は後から進める順番にすると、申告書の骨組みを早く作れます。
集める資料の優先順位
法人税の申告書には、貸借対照表・損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類などを添付します(法人税法第74条第3項、法人税法施行規則第35条)。勘定科目内訳明細書を作るには、期末の残高の内訳が必要です。そのため、期末残高に関わる資料ほど優先順位が高くなります。
| 優先度 | 資料 | 使い道 |
|---|---|---|
| 高 | 前期の申告書・決算書一式 | 前期から繰り越す金額、中間申告で納めた税額の確認 |
| 高 | 全口座の通帳・入出金明細(期末日の残高が分かるもの) | 預金残高の確定、入出金の記帳 |
| 高 | 借入金の返済予定表・残高の分かる書類 | 借入金残高と支払利息 |
| 高 | 売上の請求書・入金の記録、期末の売掛金の一覧 | 売上と売掛金の確定 |
| 高 | 期末の在庫の数量と金額 | 棚卸資産と売上原価 |
| 中 | 仕入・外注の請求書、期末の買掛金・未払金の一覧 | 費用と負債の確定 |
| 中 | 固定資産の購入・売却の契約書や請求書 | 減価償却と資産の計上 |
| 中 | 給与台帳・源泉所得税の納付書 | 人件費と預り金 |
| 低 | クレジットカード明細・領収書 | 経費の記帳(金額の大きいものから) |
会計ソフトを使っている場合は、口座やカードの連携がどこまで取り込めているかを先に確かめます。連携が止まっている期間があると、その期間の入出金がまとめて抜けていることがあるためです。
期限内に出した後で誤りが見つかったとき
期限内に申告した後で誤りが見つかった場合は、直す手続があります。納める税額が増える場合は修正申告書を出します(国税通則法第19条)。税額が多すぎた場合は、法定申告期限から原則5年以内に更正の請求ができます(国税通則法第23条)。
ただし、修正申告で納める税額が増えた場合、その税額には法定納期限の翌日から納付する日までの延滞税がかかります(国税庁タックスアンサー No.9205)。後で直せるからといって粗い数字で出すのではなく、期限までに集められる資料で、できるだけ正確に作ることが前提です。どこまでの精度で期限内に出すかは、資料の状態と税額によって判断が分かれます。
急ぎで税理士に依頼するときに伝えること
申告書の作成や税務代理は、税理士の業務です(税理士法第2条)。期限が迫っている状態で依頼する場合、依頼先が受けられるかどうかは、残り日数と資料の状態で決まります。最初の連絡で次の点を伝えると、受けられるかの判断が早くなります。
- 事業年度の終了日と申告期限、延長の特例を受けているか
- 前期の申告書・決算書があるか、前期は誰が作ったか
- 会計ソフトの種類と、記帳がどこまで進んでいるか
- 消費税の課税事業者か、簡易課税を選んでいるか
- 事務所や店舗がある都道府県・市町村の数
- 通帳・請求書・在庫の記録など、上の表の資料がどこまでそろっているか
顧問契約を結ばずに決算と申告だけを頼む場合と、毎月の顧問契約を結ぶ場合の違いは、税務顧問と決算のみの違いの記事で比べています。次の期から同じ状況を繰り返さないためには、毎月の記帳を締めておくことが効きます。進め方は中小企業の月次決算の記事を参考にしてください。
まとめ:期末後は「期限内に出す」「納付を先に済ませる」
- 法人の申告・納付の期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。休日等なら翌日
- 延長の特例は期末までの申請が必要で、期末後に気づいてもその事業年度には使えない
- 遅れると延滞税、無申告加算税がかかる。2事業年度連続で期限後になると青色申告の承認取消しの対象
- 1か月以内の期限後申告で、納付が期限内に済んでいるなど一定の場合は無申告加算税が課されない
- 資料は期末残高に関わるものから集め、税額の見込みが立てば見込額を先に納める方法もある
どの手段を取るかは、残り日数、資料の状態、税額の大きさで変わります。迷ったときは、期限の日付と資料の状況を書き出すところから始めます。
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リーパル会計事務所では、法人の決算申告を単発でもお引き受けしています(最短5日・法人のみ)。個人事業主の方は、顧問契約のご相談・お見積りの窓口をご利用ください。
よくある質問
Q. 申告書だけ期限内に出して、納付は後からでもよいですか?
確定申告で納める法人税の納付期限は、申告書の提出期限と同じです(法人税法第77条)。納付が遅れれば、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて延滞税がかかります。申告と納付の両方を期限内に済ませるのが原則です。
Q. 期限が土曜日です。月曜日に出しても間に合いますか?
国税の申告や納付の期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、その翌日(休日が続く場合は休日明けの日)が期限になります(国税通則法第10条第2項)。土曜日が期限なら、翌週の月曜日(祝日でない場合)が期限です。
Q. 赤字で納める法人税が無い場合も、期限を守る必要はありますか?
税額が無くても、確定申告書は期限内に提出しなければなりません(法人税法第74条)。国税庁の事務運営指針では、2事業年度連続して提出期限内に申告書の提出がない場合に青色申告の承認の取消しを行うとされており、基準は申告書が期限内に提出されたかどうかです。
Q. 期末を過ぎてから、申告期限の延長の特例を申請できますか?
延長の特例の申請は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに行う必要があるため、期末後に申請してもその事業年度には使えません。災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合は、事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請する別の制度(法人税法第75条)があります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月15日
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