法人の申告を1期出しそびれたまま次の期も過ぎ、気づいたら何期も申告していない。こうした状態でも、期限後申告で一つずつ正常な状態に戻すことはできます。ただし、1期だけの遅れと違い、複数期の無申告では青色申告の承認の取消し、無申告加算税の加重、地方税の均等割の累積といった論点が重なります。
この記事では、何期も申告していない法人がとるべき対処を、さかのぼる期間、決算書の作り直しの順番、青色申告の取消しと欠損金、期ごとの加算税、地方税、延滞税の順に、国税通則法・法人税法・地方税法と国税庁の資料に沿って整理します。期限後申告そのものの仕組みは、1期分の遅れを前提にした記事でも説明しています。
何期分さかのぼることになるか
法人税法74条は、内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、所得の金額または欠損金額などを記載した申告書を提出しなければならないと定めています。売上がなかった期や赤字の期も、申告書を出す義務がある点は同じです。
税務署長が申告のない期について税額を決定できる期間は、国税通則法70条により、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為で税額を免れた場合は7年になります。どの期から出すかは、申告していない期を全て書き出し、それぞれの法定申告期限からの経過年数と、所得や税額が出るかどうかを並べて整理します。
古い期から順に決算書を作り直す
複数期の決算書は、古い期から順に作ります。前の期の期末の残高が次の期の期首の残高になり、数字がつながっているからです。消費税の納税義務も、法人は原則として前々事業年度の課税売上高で判定するので、古い期の売上が確定しないと新しい期の判定ができません。
- 預金通帳、借入金の返済予定表、請求書・領収書、売上の記録を期ごとにそろえる
- 各期の決算書を作り、株主総会などで決算の承認を受ける(法人税法74条の「確定した決算」)
- 各期の法人税・地方法人税、課税事業者の期は消費税の申告書を作る
- 各期の法人事業税・法人住民税の申告書を、事務所等のある地方公共団体ごとに作る
資料が残っていない期は、取引先や金融機関から明細を取り寄せて埋めます。推定の数字で決算書を作ると、後の調査で根拠を示せない部分が残ります。
消費税の計算方法にも注意します。簡易課税は、届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後に適用される制度(消費税法37条1項)なので、過去の期について後から選ぶことはできません。届出を出していなかった課税事業者の期は、原則として一般課税で計算します(インボイスの登録により課税事業者となった期は、2割特例の対象になるかも確かめます)。そのため、各期の仕入れや経費の請求書・領収書もそろえます。
青色申告は2期連続の期限後で取り消される
法人税法127条1項4号は、確定申告書を提出期限までに提出しなかったことを青色申告の承認の取消し事由としています。国税庁の事務運営指針は、この取消しを2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に行い、2事業年度目以後の事業年度について承認を取り消すとしています。何期も申告していない法人は、この条件に当たります。
取り消されると何が変わるか
欠損金の繰越控除は、国税庁のタックスアンサーNo.5762によると、欠損金額が生じた事業年度に青色申告書である確定申告書を提出し、その後連続して確定申告書を提出している法人が対象です。取消しは2事業年度目の事業年度までさかのぼって行われ、その期以後に提出した青色申告書は青色申告書以外の申告書とみなされます(法人税法127条1項)。取消しの通知より前に期限後申告書を青色申告書として出していても、2期目以後の期の赤字は、原則として翌期以後に繰り越して所得と相殺することができません。
また法人税法131条は、青色申告書に係る法人税を除き、税務署長が更正や決定をするときに、財産や債務の増減の状況、収入や支出の状況などから所得を推計できると定めています。
もう一度青色申告にするには
青色申告の承認を受けるには、適用を受けたい事業年度開始の日の前日までに申請書を出します(法人税法122条1項)。ただし法人税法123条3号により、取消しの通知を受けた日以後1年以内に出した申請は却下されることがあります。手続の流れは青色申告承認申請書の記事で整理しています。
無申告加算税は期ごとにかかり、調査後は加重もある
無申告加算税は、期限後申告をした期ごとに計算します。国税通則法66条8項により、調査の通知がある前に自主的に期限後申告をした場合は、納付すべき税額の5%です。調査の通知の後や、調査による決定を予知した後の提出では割合が上がり、決定を予知した後なら15%(50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%)です。
複数期の無申告で特に重いのが、国税通則法66条6項の加重です。期限後申告や決定に係る期の初日が属する年の前年と前々年に開始した期について、無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合(課されるべき場合を含みます)などは、納付すべき税額の10%がさらに加算されます。ただし、調査の通知がある前に自主的に行った期限後申告は、この加重の対象から除かれ、5%で済んだ無申告加算税も加重の原因に数えません。何期分あっても、調査の通知を受ける前にまとめて提出すれば、この加重を避けられます。
また、事実を隠蔽し、又は仮装したところに基づいて申告書を出していなかった場合は、調査による決定を予知した後の期限後申告や税務署の決定のときに、無申告加算税に代えて、税額の40%の重加算税が課されます(国税通則法68条2項)。
地方税:均等割は毎期たまる
法人住民税の均等割は、所得に関係なく事務所等がある法人に毎期かかります(地方税法294条)。地方税法の標準税率では、資本金等の額が1,000万円以下の法人の道府県民税の均等割は年額2万円、資本金等の額が1,000万円以下で市町村内の従業者数の合計数が50人以下の法人の市町村民税の均等割は年額5万円です。標準税率は通常よるべき税率で、実際の税率は各地方公共団体の条例で確認します。
※説明のための架空の例です。標準税率どおりの地域にある、資本金100万円・従業者数名の法人が3期申告していなければ、均等割だけで年7万円の3期分、21万円が未納になっています。これに不申告加算金と延滞金が加わるので、赤字の期でも地方税の申告は省けません。
延滞税は申告した日に納めれば低い割合で済む
国税庁のタックスアンサーNo.9205によると、延滞税は本税だけにかかり、期限後申告の場合の納期限は申告書を提出した日です。納期限の翌日から2か月を経過する日までは低い割合(令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間は年2.4%、令和8年中は年2.8%)、それ以後は高い割合(令和8年中は年9.1%)になります。
何年も前の期でも、法定納期限の翌日から申告書の提出日までは低い割合の対象です。申告書を出したら同じ日に各期の本税を納めると、高い割合の期間を作らずに済みます。
対処の進め方
- 申告していない期を全て書き出し、各期の法定申告期限と経過年数を確認する
- 古い期から順に、資料を集めて決算書を作り、決算の承認を受ける
- 各期の国税(法人税・地方法人税・消費税)と地方税の申告書を作る
- 税務署から調査の通知が来る前に、全ての期をまとめて提出する
- 提出した日に各期の本税と均等割などを納付し、加算税・延滞税・不申告加算金・延滞金は通知に沿って納める
- 青色申告の再申請の時期を確認し、以後の期は期限内に申告する体制を作る
1期だけ期限を過ぎた場合の加算税と延滞税の考え方は、確定申告の期限を過ぎたときの記事も参考になります。
まとめ:古い期から、調査の通知前にまとめて出す
- 売上がない期や赤字の期も申告義務がある。税務署の決定は原則5年、不正があれば7年さかのぼれる
- 決算書は古い期から順に作る。期首残高、消費税の納税義務の判定、欠損金がつながっている
- 2期連続の期限後で青色申告の承認は2期目までさかのぼって取り消され、その期以後の赤字は原則として繰り越せない。再申請は取消し通知から1年以内だと却下されることがある
- 調査の通知前の自主的な期限後申告なら無申告加算税は5%で、連続した期の加重もかからない
- 均等割は赤字でも毎期かかる。申告書を出した日に本税を納めれば延滞税は低い割合で済む
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よくある質問
Q. 何年分さかのぼって申告すればよいですか?
税務署長が決定できる期間は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。申告していない期を全て書き出し、各期の経過年数と所得・税額の有無を確認して、提出する期を整理します。
Q. 事業をしていなかった期も申告が必要ですか?
必要です。法人税法74条は、各事業年度について所得の金額または欠損金額を記載した申告書の提出を求めています。事務所等がある限り法人住民税の均等割もかかるので、地方税の申告も行います。
Q. 赤字の期だけ、申告しないままにしてもよいですか?
よくありません。赤字の期も欠損金額を記載した申告書を出す義務があります。また欠損金の繰越控除は、欠損金額が生じた期に青色申告書である確定申告書を出していることが条件なので、出さないままだとその赤字を後の期の所得と相殺できません。均等割の申告と納付も残ります。
Q. 青色申告が取り消されたら、いつからまた青色申告にできますか?
適用を受けたい事業年度開始の日の前日までに承認の申請書を出します。取消しの通知を受けた日以後1年以内の申請は却下されることがあるので、通知の日付から逆算して申請の時期を決めます。
Q. 税務署から連絡が来る前に出すのと、来てから出すのとでは何が違いますか?
調査の通知前に自主的に出せば、無申告加算税は各期5%です。通知の後や調査による決定を予知した後は割合が上がり、前年・前々年の期に無申告加算税を課された場合の10%の加重も対象になります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月17日
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