「最低いくら売れば赤字にならないのか」——この問いに即座に答えられない、と感じる中小企業経営者の方は少なくありません。損益分岐点(=Break Even Point:BEP。売上と費用が一致して利益がゼロになる売上水準)を毎月把握できているかどうかは、資金繰りの安定度を分ける決定的な分岐点になります。
リーパル会計事務所では1,100社以上の関与実績をもとに、損益分岐点を「年に一度計算する数式」ではなく「月次決算と一体で運用するKPI」として顧問先に組み込んでいます。本記事ではその計算式・実例・経営改善への活かし方までを解説します。
損益分岐点とは何か
損益分岐点とは、売上高と費用がちょうど等しくなる「利益がゼロになる売上高」のことです。これを下回れば赤字、上回れば黒字になります。
経営者にとっての損益分岐点は、単なる数式ではなく「今月生き残るための最低ライン」です。この数字を毎月確認することで、資金繰りの改善策や販売計画の根拠が明確になります。
損益分岐点の計算に必要な3つの概念
1. 固定費
売上高に関わらず毎月一定額発生する費用です。
- 人件費(正社員の給与・役員報酬)
- 家賃・リース料
- 減価償却費
- 保険料・顧問料
2. 変動費
売上高に比例して増減する費用です。
- 仕入原価・材料費
- 外注費・業務委託費
- 販売手数料
3. 限界利益(貢献利益)
売上高から変動費を引いた金額が「限界利益」です。この利益が固定費を賄うことで、最終的な利益が生まれます。
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 × 100
損益分岐点はこう計算する
基本公式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
計算例
ある製造業の中小企業のケースを見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 2,000万円 |
| 変動費(材料費・外注費) | 800万円 |
| 限界利益 | 1,200万円 |
| 限界利益率 | 60% |
| 固定費(人件費・家賃等) | 900万円 |
損益分岐点売上高 = 900万円 ÷ 60% = 1,500万円
この企業は月次換算で125万円(1,500万円÷12)以上の売上があれば黒字です。現状の売上2,000万円に対し、500万円の「安全余裕額」があることも確認できます。
安全余裕率の計算
安全余裕率 =(売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 売上高 × 100
上記例:(2,000万 − 1,500万)÷ 2,000万 × 100 = 25%
安全余裕率が20%以上あれば比較的安定した経営、10%以下であれば経営改善が急務と判断できます。リーパル会計事務所では月次レポートに必ず安全余裕率を掲載し、10%を切った段階で経営者と打ち手を協議しています。
損益分岐点の正確な計算には、固定費と変動費の分類(特に半固定費の扱い)に専門知識が必要です。リーパル会計事務所では1,100社以上の関与実績をもとに、業種特性に合った損益分岐点の設計と月次トラッキング体制を構築できます。
損益分岐点をExcelで計算する方法
基本の計算式(セル設定例)
| セル | 内容 | 数式 |
|---|---|---|
| B1 | 売上高 | 手入力 |
| B2 | 変動費合計 | 手入力 |
| B3 | 固定費合計 | 手入力 |
| B4 | 限界利益 | =B1-B2 |
| B5 | 限界利益率 | =B4/B1 |
| B6 | 損益分岐点売上高 | =B3/B5 |
| B7 | 安全余裕率 | =(B1-B6)/B1 |
グラフで可視化するコツ
Excelの折れ線グラフで「売上高ライン」「総費用ライン」「固定費ライン」を表示すると、損益分岐点が直感的にわかります。経営会議での説明にも活用できます。
損益分岐点を下げる3つの打ち手——固定費・限界利益率・月次運用
視点1:固定費の削減
損益分岐点を下げる最も確実な方法は固定費の削減です。家賃の見直し・不要なリースの解約・残業代の削減などが代表的な施策です。
固定費を100万円削減すると、損益分岐点は「100万円 ÷ 限界利益率」だけ下がります。限界利益率60%の企業なら、固定費を100万円削減するだけで損益分岐点が約167万円下がります。
視点2:限界利益率の向上
単価を上げる・変動費を削減することで限界利益率が上がり、損益分岐点が下がります。値上げは顧客離れのリスクがありますが、コスト競争力の強化は持続的な効果があります。
視点3:損益分岐点を月次で追う
損益分岐点は年に一度計算するだけでは意味がありません。月次決算のタイミングで毎月確認し、「今月は損益分岐点の何%まで売れているか」を把握することが重要です。
よくある質問
Q1. 損益分岐点の計算が難しくて自社でできません。どうすればいいですか?
A. 税理士に依頼することで、正確な固定費・変動費の分類から損益分岐点の計算まで対応してもらえます。リーパル会計事務所では、月次レポートに損益分岐点の分析を含めてご提供しています。
Q2. 複数の商品・サービスを展開している場合はどう計算しますか?
A. 商品・サービスごとに限界利益率が異なるため、加重平均の限界利益率を使って計算します。または商品別にセグメントを分けて個別に損益分岐点を求める方法も有効です。
Q3. 損益分岐点は月次と年次どちらで計算すべきですか?
A. 両方で計算することをお勧めします。年次で全体像を把握し、月次で毎月の達成状況を確認する体制が理想的です。
Q4. 安全余裕率はどのくらいあれば安心ですか?
A. 一般的に20〜30%以上あれば安定した経営と言われます。10%未満になると、少しの売上減少でも赤字に転落するリスクが高まります。
Q5. 損益分岐点の計算で固定費と変動費の分類が難しいです。
A. 半固定費(一定量を超えると段階的に増加する費用)の扱いが難しい場合は、税理士に相談することをお勧めします。電気代・通信費などは固定費・変動費の両面を持つケースがあります。
自社の固定費・変動費の分類が難しい場合は、リーパル会計事務所の無料相談で具体的な分類表とシミュレーションをフラットにご相談いただけます。
まとめ:損益分岐点を月次で追わない理由はほとんどない
損益分岐点を知ることは、「経営の安全圏」を知ることにほかなりません。毎月この数字を確認し、安全余裕率が低下しているときは固定費削減・単価向上・売上増加の対策を素早く打てる体制を整えれば、急な売上ダウンにも耐えうる経営基盤が手に入ります。
「自社の固変分解が難しい」「損益分岐点を月次でモニタリングする仕組みを作りたい」とお考えの方は、リーパル会計事務所にご相談ください。業種別の固定費・変動費の切り分けから、安全余裕率を可視化する月次レポートのフォーマット作成まで支援します。
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参考資料
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参考リンク: 中小企業庁「財務サポート」
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。1,100社以上の関与実績をもとに、CVP分析(損益分岐点分析)と固変分解を活用した経営改善支援を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日