売上が無い期でも、法人は事業年度ごとに法人税の確定申告書を提出します。設立したばかりで事業を始めていない法人も、事業を休んでいる法人も同じです。申告書には所得の金額だけでなく「欠損金額」を書く欄があり、赤字や0円の期も申告の対象になっています。
一方で、地方税の均等割や消費税は、事務所の有無や課税事業者かどうかで扱いが分かれます。この記事では、売上ゼロ・事業未開始・休業中の法人について、出さなければならない申告と、出さないと失うもの、休業するときに確かめる手続を整理します。赤字法人の均等割の仕組みそのものは法人住民税・均等割の記事で扱っています。
売上ゼロでも法人税の確定申告は毎期必要
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて申告書を提出しなければなりません(法人税法第74条)。記載事項の最初に挙がっているのは「当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額」です。売上が無くても、法人である限り事業年度は続き、決算と申告が毎期必要になります。
| 法人の状態 | 法人税の確定申告 | 確かめること |
|---|---|---|
| 設立したが事業を始めていない | 必要(設立事業年度から) | 設立費用や役員の立替の記録、事業年度の終了日 |
| 事業はしているが売上が無い期 | 必要 | 経費の記帳、欠損金の金額 |
| 事業を休んでいる(休業中) | 必要 | 事務所や預金の残り方、地方税の扱い |
| 解散した | 解散後の申告に切り替わる | 解散の日までの申告と清算中の申告 |
売上が無い期の決算は、作業量こそ少ないものの、貸借対照表・損益計算書と勘定科目内訳明細書などの添付書類は通常の期と同じように必要です。預金の利息、役員からの借入金、年会費や均等割などの支出が少しでもあれば、それを記帳して決算書に載せます。
売上ゼロの期の決算でそろえるもの
- 全ての預金口座の通帳・入出金明細(期末日の残高が分かるもの)
- 役員が会社のために立て替えた支出の領収書と、その精算の記録
- 役員や金融機関からの借入金の残高が分かる書類
- 前期の法人税・地方税の申告書と決算書の控え(欠損金の繰越額や均等割の納付状況の確認に使う)
- 期中に届いた地方税の納付書や通知
- 事務所の賃貸借契約書(解約した場合はその時期が分かるもの)
売上が無い期は、資料の量が少ない分、1期分をまとめて作れることが多い一方、事務所を残したか、役員が何を立て替えたかといった事実の確認が中心になります。事務所の有無は地方税の扱いにも関わるため、契約の状況を先に整理しておきます。
申告しないと失うもの:欠損金の繰越しと青色申告
売上ゼロの期は税額が0円になることが多いため、申告を後回しにしがちです。しかし、出さないことで次の不利益が生じます。
- 欠損金の繰越し:過去の赤字(欠損金)を後の黒字と相殺するには、欠損金が生じた事業年度に確定申告書を提出し、かつ、その後も連続して確定申告書を提出していること、欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を保存していることが要件です(法人税法第57条第10項)。また、青色申告書を提出しなかった事業年度に生じた欠損金は、災害による損失の部分を除き、繰り越せません(法人税法第58条)。休業中に1期でも出さないと、事業を再開して利益が出たときに、過去の欠損金を使えなくなるおそれがあります。
- 青色申告の承認:国税庁の事務運営指針では、2事業年度連続して期限内に確定申告書の提出がない場合に、青色申告の承認を取り消すものとしています(法人の青色申告の承認の取消しについて)。
期限を過ぎてしまった申告も、税務署長の決定があるまでは期限後申告書として提出できます(国税通則法第18条)。売上ゼロのまま何期も申告していない場合は、古い期から順に決算を組み直して提出することになります。
地方税:均等割は事務所の有無で決まる
法人住民税(都道府県民税・市町村民税)には、所得に応じてかかる法人税割と、所得に関係なくかかる均等割があります。道府県民税は、道府県内に事務所又は事業所を有する法人に対し、均等割額及び法人税割額の合算額により課するとされています(地方税法第24条)。市町村民税も同じ形です(地方税法第294条)。
東京都は、都内に事務所又は事業所を有する法人は赤字決算でも法人都民税の申告及び納付が必要で、均等割は決算の状況にかかわらず、資本金等の額及び従業者の数に応じて課税されると案内しています(東京都主税局「法人事業税・法人都民税」Q&A)。売上ゼロでも、事務所があれば均等割の申告と納付は残ります。法人住民税の申告書は、法人税の確定申告書を提出する義務がある法人が、その提出期限までに、均等割額などを記載して提出します(地方税法第53条・第321条の8)。法人税の申告を止めている場合は、地方税の申告と均等割の納付の状況も合わせて確かめます。
休業中は「事務所又は事業所」があるかが分かれ目
同じQ&Aでは、事務所又は事業所を、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所と説明しています。休業中でも事務所や人員が残っていれば均等割の対象になり得ます。事務所等が無くなったと扱われるかどうかは、都道府県・市町村に休業の状況を伝えて確かめます。
法人事業税は、事務所又は事業所を設けて事業を行っている法人が納税義務者とされています(同Q&A)。休業中の申告の要否も、均等割と合わせて都道府県に確かめます。
消費税:免税か課税事業者かで分かれる
消費税は、法人税と違い、全ての法人に申告義務があるわけではありません。
| 状態 | 消費税の申告 |
|---|---|
| 納税義務が免除される事業者(免税事業者) | 申告義務なし |
| 課税事業者で、課税資産の譲渡等も特定課税仕入れも無く、納付する消費税額も無い課税期間 | 申告義務なし(消費税法第45条第1項ただし書) |
| 上記以外の課税事業者 | 課税期間の末日の翌日から2か月以内に申告 |
基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として納税義務は免除されますが、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されません(国税庁タックスアンサーNo.6501)。売上が無くなっても登録を続けていれば課税事業者のままです。売上ゼロの期に仕入や経費の支払があり、還付を受けたい場合は申告書を出すことになるため、課税事業者かどうかと合わせて確かめます。
休業・休眠するときの手続と「休眠会社」のみなし解散
国税庁の「異動事項に関する届出」の案内に挙がっている異動事項は、事業年度の変更、納税地の異動、資本金の額の異動、商号の変更、代表者の変更、事業目的の変更、合併、法人の解散・清算結了、支店・工場等の異動などで、「休業」という項目はありません。休業する場合に税務署・都道府県・市町村へ何を出すかは、それぞれの提出先に確かめます。どの届出をしても、法人が存続している限り、上で見た確定申告は続きます。
また、会社法には「休眠会社」の定めがあります。株式会社であって、その会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものは、法務大臣の官報公告から2か月以内に事業を廃止していない旨の届出も登記もしないと、解散したものとみなされます(会社法第472条)。登記の変更が長く無い会社は、この点も確かめておきます。
なお、事業年度の途中で解散した場合、その事業年度は解散の日に終了し、翌日から次の事業年度が始まります(法人税法第14条)。解散すると、解散の日までの申告と清算中の申告へ手続が切り替わります。
事業を再開する見込みが無い場合は、休業を続けて均等割と申告の負担を払い続けるか、解散・清算するかの選択になります。どちらがよいかは、残っている資産・負債や欠損金の額で変わるため、決算の内容を見て試算しないと決まりません。
まとめ:売上ゼロでも申告は毎期、均等割は事務所次第
- 法人税の確定申告は、売上ゼロ・事業未開始・休業中でも事業年度ごとに必要
- 申告しないと欠損金の繰越しを使えなくなるおそれがあり、2期連続で期限内に出さないと青色申告の承認取消しの対象になる
- 均等割は事務所又は事業所を有する法人にかかり、赤字でも申告と納付が必要。休業中の扱いは自治体に確かめる
- 消費税は免税事業者なら申告不要。課税事業者でも売上も税額も無い課税期間は申告不要だが、インボイス登録中は免税にならない
- 休業の届出の様式は提出先ごとに確かめ、登記が12年無い株式会社はみなし解散にも注意する
売上ゼロの期の決算や、過去の期の申告漏れの整理は、決算のみの依頼で対応できる場合もあります。依頼の形の違いは税務顧問と決算のみの違いの記事を参考にしてください。
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よくある質問
Q. 設立したばかりで事業を始めていません。最初の申告はいつですか?
設立の日を含む最初の事業年度の終了の日の翌日から2か月以内です。事業を始めていなくても、設立費用や役員が立て替えた支出などを記帳して決算書を作り、申告します。
Q. 休業中の会社の決算書は0円だらけでもよいのですか?
取引が無ければ損益計算書の多くの欄は0円になりますが、貸借対照表には預金・借入金・資本金などの残高が残ります。均等割や預金利息など、少額でも動きがあれば記帳して決算書に反映します。
Q. 何年も申告していない休眠法人はどうすればよいですか?
税務署長の決定があるまでは期限後申告書を提出できます(国税通則法第18条)。古い期から順に決算を組み直して申告し、地方税の申告と均等割の納付状況も都道府県・市町村に確かめます。今後も事業をしないなら、解散・清算を含めて方針を決めます。
Q. 均等割はいくらかかりますか?
均等割は、資本金等の額と従業者の数に応じて課税され、額は都道府県・市町村ごとに定められています。売上ゼロでも事務所があれば納付が必要になるため、具体的な額は事務所のある都道府県・市町村の案内で確かめます。
Q. 売上ゼロなら消費税の申告は要りませんか?
免税事業者なら不要です。課税事業者でも、課税資産の譲渡等も特定課税仕入れも無く、納付する消費税額も無い課税期間は申告義務がありません。ただし、適格請求書発行事業者の登録をしていると免税事業者にはならないため、登録の状況を確かめます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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