税務調査で「重加算税の対象です」と言われ、申告の間違いと何が違うのか戸惑っていませんか。結論からいうと、税額が不足していた事実と、隠蔽・仮装があったかどうかは分けて確認する必要があります。この記事では、線引きの考え方、重加算税の一部が取り消された裁決、社長や個人事業主が整理しておきたい資料を解説します。
この記事は「税務調査の連載|税務署から連絡が来てから、調査が終わるまで」の第22回です。
重加算税は、申告の誤りだけで決まるものではありません
重加算税は、税金の計算の基になる事実を隠したり、事実と異なる形に装ったりした場合に課される加算税です。加算税とは、申告や納付の義務違反に対して、本来の税金とは別に課される税金をいいます。重加算税の根拠は国税通則法第68条です。
申告した税額が少なかった場合の過少申告加算税に代わる重加算税は、原則35%です。期限内の申告がなかった場合の無申告加算税に代わるものは、原則40%です。いずれも2026年10月時点の基本税率であり、重加算税の対象となる税額に対する割合です。過去の加算税の処分歴などによって、加重措置が適用される場合があります。
同じ対象税額について、過少申告加算税や無申告加算税に重加算税を重ねて課す仕組みではありません。一方、申告漏れの中に隠蔽・仮装のある部分とそれ以外の部分があれば、対象部分を分けて考えます。基本的な仕組みは、国税庁「税大講本・国税通則法(令和8年度版)」で確認できます。
重加算税が争点になったときは、税率を掛ける前に、その対象となる取引と税額を特定することが出発点です。追徴されるお金の全体像は、【2026年版】税務調査の追徴課税とは?加算税・延滞税の種類と計算方法・防ぐ対策を税理士が解説で扱っています。
「隠蔽・仮装」と単なる誤りは、何で分かれますか
隠蔽とは、事実を意図的に隠すことです。仮装とは、架空の取引などを使い、事実と異なる内容を真実らしく装うことです。「売上が漏れた」「経費が認められなかった」という結果だけでなく、その結果に至った行為を確認します。
法人税については、国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて」が判断の参考になります。次の表は、この指針に挙げられた行為と、確認すべき事情を整理したものです。
| 確認する場面 | 隠蔽・仮装の判断につながる事情 | 区別して確認したい事情 |
|---|---|---|
| 帳簿や売上の記録 | 二重帳簿を作る、帳簿を改ざんするなどの行為 | 誤った数字がどの資料から、どの工程で入ったか |
| 売上を計上する年度 | 資料の隠匿や取引先との通謀を伴う処理 | 翌事業年度の収益に計上されているか。通謀や資料の破棄・隠匿・改ざん等がないか |
| 経費を計上する年度 | 虚偽の証拠書類を作るなどの行為 | 翌事業年度の支出が確認できるか。通謀や資料の破棄・隠匿・改ざん等がないか |
指針は、売上の翌期計上や経費の繰上計上について、表に示した条件の下では、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等に該当しないとしています。ただし、これは誤った年度での申告を認める意味ではありません。本来どの年度で申告すべきだったかは、別に検討します。
また、二重帳簿が見つからなければ重加算税にならない、という理解も適切ではありません。国税不服審判所の裁決では、当初から過少申告などを意図し、その意図を外部からうかがえる特段の行動をした場合にも、要件を満たすと説明されています。「うっかりでした」という言葉だけでなく、当時の記録と具体的な行動が問題になります。
架空の例:売上の翌期計上を指摘された場合
次は説明のための架空の例です。ある法人で、前期の売上を翌期に計上したことが調査で分かりました。社長は「隠していない」と説明しています。この場合は、契約書、納品記録、請求書、翌期の帳簿を照合し、処理の経緯を整理します。
翌期に売上が載っていることに加え、資料の改ざんなどがないかも確認します。翌期計上の事実だけを切り取って結論を出すことは避けましょう。元の資料を残し、申告の誤りと隠蔽・仮装の指摘を別々に検討するための例です。
裁決で取り消された例:所得税と消費税で結論が分かれました
国税不服審判所の2025年4月11日裁決では、清掃業の個人事業者に対する重加算税が争われました。裁決とは、国税不服審判所が、税務署などの処分を見直す審査請求に対して示す判断です。この事案では、所得税等と消費税等の両方が対象でした。
事業者は、実際の売上をノートに正確に記録する一方、申告書等には少ない売上を記載していました。審判所は所得税等について、過少申告とは別の隠蔽・仮装に当たる行為や、過少申告の意図を外部からうかがわせる特段の行動を認めるには足りないと判断しました。ノートを保存して調査時に提出していたことなども検討されています。
その結果、所得税等に係る重加算税の処分のうち、通常の過少申告加算税に相当する額を超える部分が取り消されました。所得税等の追加納税や加算税のすべてがなくなった事案ではありません。
他方、消費税等では重加算税が維持されました。所得税の申告書等に少ない売上を記載して提出した行為が、消費税の納税義務がないかのように装う行為と評価されたためです。同じ一連の行為でも、どの税目について何を装ったかによって結論が分かれています。
この裁決から読み取れるのは、「売上を少なく申告してもよい」ということではありません。対象年分の法令と証拠に基づき、重加算税の要件を税目ごとに検討した事例です。自社に当てはめる際も、結論だけを引用せず、似ている事実と異なる事実を書き分けてください。
重加算税と言われたら、説明と資料をどう整理しますか
対象の取引・行為・税額を分けて聞く
まず、どの年度のどの取引について、誰のどの行為が隠蔽・仮装と判断されているのかを確認します。「売上が漏れている」という説明と、「その売上を意図的に隠した」という説明を分けて記録しましょう。重加算税の対象税額が、どの項目から計算されているかも確認します。
国税庁の税務調査手続に関するFAQでは、調査結果の説明は原則口頭とされています。説明を聞いた日時、説明した人、対象項目、理由を手元で整理すると、資料との照合が進めやすくなります。
当時の事実と、後から分かったことを分ける
次に、取引から申告までの経緯を時系列にします。契約や請求の担当者、記帳した人、社長が確認した内容、税理士に渡した資料を並べます。記憶だけで書いた部分には、その旨を付記してください。確認前の推測を、当時の事実として説明しないことが大切です。
帳簿やメール、会計データは、元の状態を保って確認します。説明用の一覧表を作る場合は、作成日と参照資料を記載し、当時の資料と区別します。関係者の記憶が違うときも、話を合わせるのではなく、食い違いと裏付け資料を整理しましょう。質問への答え方は、税務調査の質問にどう答える?よくある質問と適切な応答方法で説明しています。
修正申告と、重加算税の処分を区別する
修正申告は、自ら申告した税額などを直す手続きです。修正申告そのものは税務署の処分ではないため、それ自体に不服申立てはできません。申告額が過大だった場合は、要件に応じて更正の請求という訂正を求める手続きを検討します。
これに対して、重加算税を課す賦課決定は、不服申立ての対象になります。本税の修正を認めることと、重加算税の要件を認めることは、同じ論点ではありません。国税庁の不服申立てができる場合・できない場合も踏まえ、何を争うのかを整理します。
2026年10月時点では、再調査の請求や、それを経ずに行う審査請求の期限は、原則として処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内です。処分後は、通知書と受け取った日を確認してください。根拠は国税庁「税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続」です。修正申告の準備は、修正申告のやり方|必要書類・手続きの流れ・ペナルティを軽減する方法で扱っています。
自社で確かめるチェックリスト
社長や個人事業主は、次の点を税目・年度・取引ごとに確認してください。結論を先に決めるためではなく、税理士と事実を共有するための一覧です。
- 対象となる税目、年度、取引、追加の本税と重加算税の対象税額を把握しているか。
- 隠蔽・仮装とされた具体的な行為と、その根拠資料が分かっているか。
- 契約書、請求書、入出金記録、会計データがつながるか。
- 当時の担当者と、記帳・確認・申告の流れを説明できるか。
- 売上の翌期計上などは、翌期の帳簿まで照合したか。
- 当時の資料と、調査後に作成した説明資料を区別したか。
- 説明内容を記した書面に、記憶や資料と異なる表現がないか。
- 処分を受けた場合は、通知書、受領日、不服申立ての期限を確認したか。
足りない資料があれば、何が不足し、どこまで確認できているかを明らかにします。後から作る説明資料には、確認できた事実と未確認の事項を分けて書きましょう。税務署側の認定と自社の認識を同じ項目で並べると、争点も見えやすくなります。
例えば、売上の記録は残っているのに申告へ反映されなかったのであれば、記録から集計表、決算書、申告書へ数字が移る過程を追います。「資料はある」という説明で止めず、どの資料が何を裏付けるかまで整理することが重要です。
まとめ
重加算税を検討するときは、申告の誤りと、隠蔽・仮装に当たる行為を分けて確認します。紹介した裁決では、所得税等の重加算税の一部が取り消された一方、消費税等の重加算税は維持されました。自社でも、税目・年度・取引・証拠を整理し、どの要件が争点なのかを明らかにしましょう。修正申告と重加算税の賦課決定では手続きが異なるため、内容と期限を分けて確認することが大切です。
よくある質問
Q. 売上の計上漏れがあれば、重加算税になりますか?
計上漏れという結果だけで判断することはできません。隠蔽・仮装と評価される行為があり、それに基づいて申告したかなどを検討します。誤りが起きた経緯を、当時の記録で確認してください。
Q. 本当の売上の記録が残っていれば、重加算税は取り消されますか?
記録が残っているだけで結論は決まりません。紹介した裁決でも、所得税等と消費税等で判断が分かれました。記録の内容に加え、申告までの行為や、それぞれの税目との関係を確認します。
Q. 修正申告を提出した後も、重加算税を争えますか?
修正申告そのものと、重加算税の賦課決定は別です。賦課決定に不服があれば、不服申立ての対象となります。何を変更したいのかを明らかにし、処分の通知と申立ての期限を確認してください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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