「調査官に聞かれたことを全部話してしまい、後から問題になった」「緊張してうまく説明できなかった」——税務調査当日の対応ミスのほとんどは、事前に「何を聞かれるか」を想定していなかったことから起きています。聞かれる質問のパターンを把握し、応答の基本姿勢を身につけておくだけで、調査の結果は大きく変わります。
税務調査の質問は「確認」か「探り」か——調査官の質問の意図を理解して答える
調査官の質問の目的
調査官が行う質問には、大きく2種類あります。
| 質問の種類 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| 事実確認のための質問 | 取引の実態・経緯・相手方の確認 | 「この領収書の取引先はどういった方ですか?」 |
| 税務判断のための質問 | 処理の適切性・法令適合性の確認 | 「この支出はなぜ交際費として計上しましたか?」 |
事実確認の質問は社長や経理担当者が答えるべきもので、税務判断の質問は顧問税理士が対応すべきものです。この振り分けを明確にしておくことが、調査をスムーズに進めるポイントです。
基本姿勢:正直・簡潔・余計な情報を出さない
調査への基本姿勢は「聞かれたことに正直かつ簡潔に答え、聞かれていないことは自分から話さない」です。
緊張から過剰に説明しようとする方が多いですが、不必要な情報提供が新たな調査ポイントを生み出します。元国税局OBの経験から言えば、「回答が丁寧すぎる経営者の発言から、調査官が新たな着眼点を得る」ことは珍しくありません。
実際にどんな質問が来るか——税務調査でよく聞かれる10の質問と適切な応答例
事業内容・取引に関する質問
Q:「御社の主な事業内容を教えてください」
この質問は調査の冒頭で必ず聞かれます。事業内容・取引の流れ・主要な顧客層・仕入先を簡潔に説明してください。準備なく答えると、説明が曖昧になったり、矛盾が生じたりする可能性があります。事前に会社概要をまとめた資料を用意しておくと便利です。
推奨回答例
「主な事業はXXです。売上の大部分はYY向けのサービス提供で、仕入先は主にZZ社です。年間の取引件数はおおよそ〇〇件程度です。」
Q:「この期の売上高が前期と比べて大きく変動している理由を教えてください」
売上の増減は調査官が必ず確認する項目です。変動の理由を論理的に説明できるよう準備してください。
推奨回答例
「前期比で売上が増加したのは、〇〇月に大手取引先との新規契約を締結したためです。その資料はこちらになります。」
資料を提示しながら説明できると説得力が高まります。口頭だけで説明しようとすると、調査官が「文書で確認させてください」と要求することが多くなります。
経費・支出に関する質問
Q:「この領収書の取引先はどのような方ですか?また、何の目的で使いましたか?」
交際費・接待費の領収書で最も多く聞かれる質問です。日付・相手方・目的を即答できるよう、交際費明細表を事前に作成しておくことを強く推奨します。
推奨回答例
「こちらは〇月〇日に、XX社の山田部長との営業打ち合わせ後の食事代です。新規案件の商談でお世話になっているお客様です。」
相手方の氏名・会社名・商談の内容まで即答できれば、調査官の追加確認はほぼ不要になります。
Q:「役員が使った費用はすべて経費に計上していますか?プライベートの支出はどう区分していますか?」
役員のプライベートと法人経費の混入は最も指摘されやすい項目です。「区分の基準」を明確に説明できることが重要です。
推奨回答例
「役員の経費については、業務目的のものに限定しています。プライベートの費用は一切経費計上していません。申告書に役員貸付として処理している支出はありません。」
Q:「外注費の支払先について、契約書や業務完了の証拠はありますか?」
外注費(業務委託費)は、架空計上の疑いを持たれやすい科目です。以下の書類を準備してください。
- 業務委託契約書
- 業務完了報告書または成果物
- 銀行振込の明細
- 発注書・請求書
推奨回答例
「外注先との契約書はこちらです。業務完了後に成果物を受け取り、その後振込で支払いを行っています。振込明細はこちらです。」
特定の科目・処理に関する質問
Q:「この資産はなぜ〇〇年で減価償却しているのですか?」
減価償却方法・耐用年数の選定について聞かれることがあります。法定耐用年数を適用していれば問題ありませんが、中古資産の見積耐用年数を使っている場合はその計算根拠を説明できる必要があります。
Q:「この年度に計上した〇〇の費用は、なぜ翌年ではなく当年の費用としたのですか?」
期ずれの問題に関する質問です。費用の計上基準(発生主義・現金主義の区別)を明確に説明し、一貫した処理を行っていることを示してください。
リーパル会計事務所には元国税局OBが在籍しており、「リーパル税務調査119番」として事前通知から修正申告までを支援しています。税務調査は「受けてから慌てる」のではなく、「日常から逆算して備える」ものです。専門家への相談は費用ではなく、追徴課税・加算税というより大きなコストを未然に防ぐ投資となります。
答えに困る質問が来たときの正しい対処法——「後で確認します」は使えるか?
「わかりません」「確認します」は正当な応答
調査官の質問に対して、すべての場で即答する必要はありません。以下の応答は正当であり、調査官も受け入れます。
- 「その件については、顧問税理士に確認させてください」
- 「資料を確認してからご回答します」
- 「担当の〇〇から改めて連絡させます」
NG対応:推測で答える、「たぶん〜だったと思います」という曖昧な回答は避けてください。記録に残り、後から矛盾が生じた場合に問題になります。
答えたくない質問への対応
プライベートな内容に踏み込んでくる質問や、税務調査の範囲を超えていると感じる質問があった場合は、その場で顧問税理士に相談することが重要です。
調査の拒否は任意調査では可能ですが、正当な調査への不当な妨害と判断されないよう、毅然として、かつ丁寧に対応することが求められます。
税理士が同席しないと何が起きるか——同席の重要性と納税者の権利
調査当日に顧問税理士が同席することには、以下のメリットがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 質問の振り分け | 事実確認と税務判断の質問を適切に振り分け、社長が不利な証言をしないよう誘導 |
| 的確な資料提出 | 必要以上の資料を提出しないよう調整できる |
| 調査の流れのコントロール | 調査が脱線しないよう論点を整理できる |
| 交渉力 | 指摘内容の妥当性を税法に基づき反論できる |
リーパル会計事務所の「リーパル税務調査119番」では、元国税局OBが調査官の思考プロセスを理解したうえで調査に立ち会います。「調査官が何を狙っているか」がわかるため、適切なタイミングで適切な情報を提供する対応が可能です。
「事前通知が来てしまった」「修正申告に応じるべきか分からない」など、調査が動き出してからの判断は時間との勝負です。リーパル会計事務所では元国税局OB協働の調査立会・スポット支援も承っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 調査官の質問を録音することはできますか?
任意調査においては、録音を禁止する明確な規定はありませんが、調査官の同意なく秘密録音を行うことは信頼関係を損なう可能性があります。記録が必要な場合は、メモを取るか、税理士に議事録的な記録を残してもらうことを推奨します。
Q2. 「前任の税理士が処理した内容はわかりません」と答えてよいですか?
当時の担当税理士が処理した内容であっても、申告責任は納税者本人にあります。「前任者の処理なのでわかりません」という回答は通用しません。できる限り記録を追い、顧問税理士と協力して説明責任を果たしてください。
Q3. 役員が質問に答えずに経理担当者だけが対応するのは問題ありますか?
問題ありません。調査の種類によっては、経理担当者が窓口になることのほうが円滑に進む場合があります。ただし、会社の意思決定に関わる事項(役員報酬の設定経緯等)は役員本人が答えるほうが信頼性が高いです。
Q4. 調査官に「全部話してください」と言われたら?
「全部話してください」という要求は範囲が曖昧です。調査の対象となっている税目・年分の範囲で回答すれば十分です。範囲を超える情報提供は、その場で顧問税理士に相談してから判断してください。
Q5. 事後にわかった誤りを申告しないと問題になりますか?
調査後に追加の誤りを発見した場合、隠蔽と判断されるリスクがあります。発見次第、速やかに顧問税理士に報告し、必要であれば修正申告を行うことを推奨します。
まとめ:準備と税理士の同席が税務調査を乗り切る鍵
税務調査で重要なのは、「正直に、でも必要以上の情報は出さない」という姿勢です。そのためには、事前準備として取引の流れや主要な経費の目的を整理しておくことが不可欠です。
特に大切なのは以下の3点です。
- 交際費・外注費については相手方・目的・証拠書類を事前に整理する
- 答えに困る質問は「確認してから回答します」と伝える
- 税理士を同席させ、税務判断の質問は任せる
税務調査の質問に「正直に答えすぎる」ことと「情報を隠す」ことは、どちらも調査リスクを高めます。最も適切な対応は「聞かれたことに正確に答え、証拠で裏付けられることだけを話す」という姿勢です。その状態を作るのが事前準備であり、税理士の同席の意義です。
リーパル会計事務所では、元国税局OB在籍の「リーパル税務調査119番」として、調査前の応答準備・当日の立会・事後の修正申告まで一貫してサポートしています。
調査前に質問パターンと適切な応答方法を準備してしまえば、調査当日に「何を言ったらいいか分からない」という状態で臨み続けない理由はほとんどありません。判断に迷う場合はリーパル会計事務所までご相談ください。
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参考資料
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、税務調査対応・修正申告・元国税局OB協働を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日
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