「予算と実績の乖離に頭を悩ませている」「予実管理を導入したが、差異分析にまで手が回らない」——そう悩む中小企業経営者の方やCFO候補の方は少なくありません。予実管理(=事前に立てた予算と月次の実績を比較し、差異の原因を分析して経営判断に活かす仕組み)は、作って終わりではなく「差異を経営判断に活かす」ことに本来の価値があります。
リーパル会計事務所では1,100社以上の関与実績をもとに、Excel/Googleスプレッドシートで運用できる予実管理テンプレートを顧問先と一緒に構築・運用しています。本記事ではその実装手順と差異分析の進め方を解説します。
なぜ予実管理が「作って終わり」になるのか?
予実管理の定義
予実管理とは、事前に立てた「予算(計画)」と月次の「実績」を比較し、差異の原因を分析して経営判断に活かす仕組みです。
「予算は立てた。でも実績との比較は年度末にしか見ない」という状態では、予実管理とは言えません。毎月の差異分析と改善アクションの実行まで含めて、初めて予実管理が機能します。
予実管理がもたらす効果
| 効果 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 問題の早期発見 | 売上未達・費用超過を当月中に発見し、対策を打てる |
| 資金繰りの安定 | 月次の資金不足を2〜3ヶ月先に予測できる |
| 銀行融資への対応 | 「事業計画通りに経営できている」ことを数字で証明できる |
| 組織への目標共有 | 予算を共有することで、全員が同じ目標に向かえる |
予算策定の具体的な方法
予算策定の3つのアプローチ
1. ボトムアップ方式
現場の各部門・担当者が積み上げた数字を集計して予算を作ります。現場の実態に近い予算ができますが、全社の目標との整合性を調整する必要があります。
2. トップダウン方式
経営者が全社目標(売上・利益)を決め、各部門に割り振ります。会社全体の方向性に沿った予算ができますが、現場が「無理な数字」と感じるリスクがあります。
3. 前年実績ベース方式
前年の実績に一定の成長率を掛けて予算を作ります。最もシンプルで、中小企業が最初に取り組むのに適しています。
最初は「前年実績ベース+経営者の見通しによる調整」のハイブリッド方式から始めることをお勧めします。リーパル会計事務所では業種・規模に応じた予算策定アプローチを顧問先に提案しています。
月次予算への落とし込み
年次予算が決まったら、12ヶ月に按分します。ただし売上は季節変動があるため、単純に12分の1にするのではなく、前年の月別実績の比率で按分することが重要です。
月次按分の例(年間売上1,200万円の企業)
| 月 | 前年売上 | 前年比率 | 当年予算 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 90万 | 7.5% | 90万 |
| 5月 | 100万 | 8.3% | 100万 |
| 6月 | 120万 | 10.0% | 120万 |
| … | … | … | … |
| 合計 | 1,200万 | 100% | 1,200万 |
予算策定とExcelテンプレート設計は、業種特性と勘定科目の整理が複雑に絡むため、早期に専門家へ相談することで機会損失を防げます。リーパル会計事務所の無料相談では、自社版予実管理テンプレートの素案を一緒に作れます。
Excelで予実管理テンプレートを作る方法
基本構成
シート1:損益予実管理表
| 科目 | 年間予算 | 月次予算(4月) | 月次実績(4月) | 差異 | 差異率 | YTD予算 | YTD実績 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,000 | 1,000 | 950 | -50 | -5.0% | 1,000 | 950 |
| 売上原価 | 7,200 | 600 | 570 | +30 | +5.0% | 600 | 570 |
| 売上総利益 | 4,800 | 400 | 380 | -20 | -5.0% | 400 | 380 |
| 販管費 | 3,600 | 300 | 310 | -10 | -3.3% | 300 | 310 |
| 営業利益 | 1,200 | 100 | 70 | -30 | -30.0% | 100 | 70 |
(金額の単位:万円)
重要な数式の設定
差異 = 実績 − 予算
差異率 = 差異 ÷ 予算
YTD(累計)実績 = SUMIF関数で月ごとに積み上げ
条件付き書式 = 差異がマイナスのセルを赤・プラスのセルを緑に自動着色
シート2:グラフダッシュボード
月別の売上予算vs実績を折れ線グラフで表示することで、トレンドが一目で把握できます。営業利益の予実差異を棒グラフで表示すると、どの月で問題が起きたかが視覚的にわかります。
差異分析を「数字の眺め」で終わらせない方法
差異が生じた時の分析ステップ
ステップ1:差異の大きさで優先順位をつける
全ての差異を分析しようとすると時間が足りません。差異金額が大きい科目・差異率が10%以上の科目から優先して分析します。
ステップ2:差異の原因を「量」と「単価」に分解する
売上差異の場合:
- 量差異 =(実績数量 − 予算数量)× 予算単価
- 単価差異 =(実績単価 − 予算単価)× 実績数量
この分解により、「売れなかったのか」「値下げしたのか」が明確になります。
ステップ3:再発防止策を決める
差異の原因が特定できたら、来月以降の改善アクションを具体的に決めます。「次月から値引き交渉を断る」「営業訪問頻度を週1から週2に増やす」など、行動レベルに落とし込みます。
自社の差異分析が「数字の眺め」で止まっている場合は、リーパル会計事務所の無料相談で改善アクションへの落とし込みをフラットに整理できます。
よくある質問
Q1. 予算策定にどのくらいの時間がかかりますか?
A. 最初の年は1〜2週間かかることがありますが、前年実績を基にした簡易版であれば1〜2日で作成できます。毎年更新すれば、次年度からは数時間で完成します。
Q2. 予算が大きく外れた場合はどうすればいいですか?
A. 外部環境の変化(市場縮小・コスト急騰など)が原因の場合は、予算を修正(修正予算の策定)することも有効です。ただし、修正しすぎると予実管理の意味が薄れるため、年2回程度に留めることをお勧めします。
Q3. 予実管理にBIツールは必要ですか?
A. 小規模企業ではExcel+Googleスプレッドシートで十分です。月次データが100行を超えてきた、または複数人でリアルタイム共有が必要になった場合は、Looker StudioやNotionへの移行を検討するタイミングと言えます。
Q4. 銀行に提出する事業計画と予実管理の予算は同じものを使っていいですか?
A. 基本的には同じ数字を使うことをお勧めします。「社内向け予算」と「銀行向け事業計画」が乖離していると、融資審査で整合性を問われることがあります。
Q5. 予実管理を税理士に手伝ってもらえますか?
A. はい、リーパル会計事務所では月次決算と連動した予実管理のサポートを行っています。予算策定・差異分析・改善提案まで一貫して対応できます。
まとめ:予実管理なしのPDCAは絵に描いた餅にほかならない
予実管理は、経営者が「計画→実行→検証→改善」のサイクルを月次で回すための基盤です。最初はシンプルなExcelテンプレートから始め、差異分析と改善アクションの習慣を定着させれば、PDCA経営の土台が手に入ります。クラウド会計と連動させれば運用負荷も最小化できる今、予実管理を導入しない理由はほとんどありません。
「Excel予実テンプレートを今期から導入したい」「差異分析コメントの書き方を整えたい」とお考えの方は、リーパル会計事務所にご相談ください。年度予算の組み立てから月次差異分析・修正予算の運用まで、PDCAが定着するまで伴走します。
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参考資料
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参考リンク: 中小企業庁「中小企業の経営管理指針」
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。1,100社以上の関与実績をもとに、予実管理・差異分析・修正予算プロセスの設計を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日