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無申告の個人事業主は何年分を申告する?遡る年数と申告する順番

税務調査
無申告の個人事業主は何年分を申告する?遡る年数と申告する順番

何年も確定申告をしていない個人事業主が、自分から申告し直すときの答えを先に書きます。期限後申告は、税務署から税額の「決定」を受けるまでは出すことができます。税務署が決定できるのは、原則として各年分の法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。何年分を出すかはこの線と各年の所得の有無で決まり、作る順番は古い年からが基本です。

この記事では、国税通則法と国税庁の案内に沿って、遡る年数の考え方、自主的に出す場合と調査の後に出す場合の負担の違い、年をまたいで数字がつながる理由、資料の集め直し、納付が難しいときの手続を順に整理します。税務調査で税務署が何年前まで遡れるかという調査側の話は「税務調査は何年前まで遡れる?」に譲ります。

期限後申告はいつまで出せるか:「決定まで」と5年・7年の線

個人事業主の所得税は、1月1日から12月31日までの1年分の所得について、翌年2月16日から3月15日までに確定申告と納付をします。この期限を過ぎても、申告の義務がなくなるわけではありません。国税通則法18条は、期限内に申告書を出すべきだった人も、提出期限の後に「決定があるまでは」申告書を出せると定めています。期限の後に出す申告書を期限後申告書といいます。

一方、税務署の側にも期間の制限があります。国税通則法70条により、税務署が更正や決定をできるのは、法定申告期限から5年を経過する日までです。偽りその他不正の行為によって税を免れた場合は、7年を経過する日までに延びます。

区分 期間 根拠
自分で期限後申告を出せる期間 税務署の決定があるまで 国税通則法18条1項
税務署が決定できる期間(原則) 法定申告期限から5年 国税通則法70条1項
偽りその他不正の行為がある場合 法定申告期限から7年 国税通則法70条5項
税金が戻る年分(還付申告) その年の翌年1月1日から5年間 国税庁タックスアンサーNo.2030

この線から、何年分を出すかは次のように考えます。まず、直近5年分のうち所得があって税額が出る年は、税務署が決定できる範囲に入っているので、自分から出す対象になります。源泉徴収された税金があって納めすぎになる年は、還付申告として翌年1月1日から5年の間に出せます。

5年より前の年分は、原則として税務署が決定できない期間に入ります。ただし、売上を隠すなど偽りその他不正の行為があったと判断されると7年の線になります。何が不正の行為にあたるかは個別の事実で決まるため、5年より前の年分をどう扱うかは、各年の取引の状況を見たうえで税理士と決める事項です。

自主的に出すか、調査の後に出すかで負担が変わる

期限後申告をすると、納める税金のほかに無申告加算税がかかります。その割合は、税務署からの調査の事前通知の前に自分から出したかどうかで大きく変わります。国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」の整理は次のとおりです(令和5年分以降の年分の割合)。

出した時期 無申告加算税の割合
調査の事前通知の前に自主的に出した 納付すべき税金の5%
事前通知の後、調査による決定を予知する前に出した 50万円までの部分10%、50万円超300万円までの部分15%、300万円超の部分25%
調査を受けた後に出した、または決定を受けた 50万円までの部分15%、50万円超300万円までの部分20%、300万円超の部分30%

令和4年分以前の年分には300万円超の区分がなく、50万円を超える部分は、事前通知の後に出した場合は15%、調査の後に出した場合は20%です(自主的に出した場合の5%は同じです)。

何年分もまとめて出す人が気にしておきたいのは、前年・前々年の加重です。令和5年分以降は、事前通知の後に出した場合や決定を受けた場合に、その前年と前々年の所得税に無申告加算税などが課されていると、10%が上乗せされます。国税通則法66条6項2号は、調査を予知せず、調査通知の前に出した期限後申告をこの上乗せの対象から除いています。また、上乗せの判定に数える無申告加算税からも、自主的に出した場合の5%の無申告加算税は除かれています。

つまり、複数の年分を事前通知の前にそろえて出せば、各年分は5%の扱いになります。逆に、作業の途中で調査の事前通知が届くと、それ以後に出す年分は5%の対象から外れます。全部の年分がそろうのを待たずに、作り終えた年分から出すという進め方も選択肢になります。

期限内に申告しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、無申告加算税はかかりません。法定申告期限から1か月以内に自主的に出し、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合も同じです。何年も申告していない場合に後者が当てはまることは通常ありません。加算税の割合の詳しい比較は「確定申告の期限を過ぎたら?無申告加算税・延滞税の負担」で扱っています。

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申告する順番:古い年から作る理由

期限後申告書を何年分か出すとき、作る順番は古い年からが基本です。理由は、事業の数字が年をまたいでつながっているからです。

  • 在庫:前年の年末の棚卸高が、翌年の期首の棚卸高になります。
  • 事業用の資産:車や設備などの減価償却は、前年までに償却した後の残りの金額から翌年の計算を始めます。
  • 青色申告の貸借対照表:前年の年末の残高が、翌年の期首の残高になります。
  • 赤字の繰越し:前の年の赤字を翌年以後に差し引くには、赤字の年の申告書が要ります。

赤字の繰越しは、順番を誤ると取り戻しにくい論点です。国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」によると、青色申告者は、損益通算をしても控除しきれない純損失の金額を、翌年以後3年間にわたって繰り越して各年分の所得金額から控除できます。

所得税法70条4項は、この繰越しを、純損失が生じた年分の確定申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出している場合に限っています。所得税法2条1項37号の「確定申告書」には期限後申告書も含まれるので、赤字の年分を後から出しても、その後の年分を続けて出していれば繰越しの対象になり得ます。ただし、繰り越せるのは赤字の年分を青色申告書で出している場合で、帳簿の備付け・記録・保存が定めのとおりでない年分は、青色申告の承認が取り消されることがあります(所得税法150条1項1号)。赤字の年を飛ばして黒字の年だけを出すと、この連続が切れます。

もう1つ順番が効くのが、青色申告特別控除です。令和8年分までの最高55万円・65万円の控除は、確定申告書をその年の提出期限までに出していることが要件です(令和8年度税制改正で令和9年分以後は65万円・75万円に見直されますが、いずれも提出期限までにe-Taxで提出することが要件です)。期限後に出す年分ではこの控除が受けられないため、期限内に出していた場合と比べて所得が大きくなります。各年分でどの控除が使えるかを確かめながら古い年から順に作ると、後の年分を作り直す手間を減らせます。

資料の集め方:帳簿がない年を作り直す

何年も申告していない場合、その間の帳簿が手元にないこともあります。白色申告であっても、事業所得のある人には記帳と帳簿書類の保存の制度があり、確定申告書を出すときは収支内訳書などの添付が必要です(国税庁タックスアンサーNo.2080)。帳簿がない年は、残っている記録から1年分の収入と経費を組み立て直すことになります。

資料 手に入れ方 何が分かるか
事業用・個人用の通帳 手元の通帳。記帳していない期間は金融機関に取引明細を依頼する 売上の入金、経費の引落し、事業と家計の混ざり方
クレジットカードの利用明細 カード会社の会員ページや明細書 カードで払った経費
請求書・納品書の控え、取引先の支払明細 自分の控え。ない分は取引先に問い合わせる 売上の相手と金額、入金のずれ
販売サイトや決済サービスの売上記録 各サービスの管理画面 手数料を引く前の売上
給与の源泉徴収票、報酬から源泉徴収された記録 勤務先・取引先 差し引く源泉徴収税額
領収書・レシート 残っているもの 現金で払った経費

通帳から組み立てるときは、入金のすべてが売上とは限らない点に注意が要ります。個人の口座間の移動、借入れ、事業と関係のない入金を分けておかないと、所得が大きく出すぎます。反対に、現金で受け取った売上は通帳に出てこないので、請求書の控えや手帳などの記録で埋めます。

申告書は、その年分の様式で作ります。国税庁ホームページの「確定申告書等の様式・手引き等」には、令和3年分から令和7年分までの年分ごとの様式と手引きが掲載されています(2026年10月14日時点)。年分によって控除の額や様式の欄が違うため、新しい年分の様式で古い年を作らないようにします。

あわせて、消費税の申告が要る年がないかも確かめます。個人事業主は、その年の前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合や、インボイス発行事業者の登録を受けている場合は、消費税の納税義務が免除されません(国税庁タックスアンサーNo.6501)。所得税と消費税では申告書が別なので、両方の漏れを年分ごとに確かめます。

納付の期限と、一度に払えないときの手続

期限後申告で納める税金は、申告書を出した日が納期限です。その日に本税を納め、あわせて納付の日までの延滞税を納めます。延滞税は本税だけにかかり、加算税にはかかりません。

延滞税は、法定納期限(各年分の3月15日)の翌日から納付する日までの日数に応じてかかります。割合は2段階で、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です(国税庁タックスアンサーNo.9205「延滞税について」)。期限後申告の場合の「納期限」は申告書を出した日なので、出した日から2か月を過ぎると高い方の割合に切り替わります。古い年分ほど日数が長くなるため、出すのが遅れるほど延滞税は膨らみます。

何年分もまとめて出すと、本税・加算税・延滞税を一度に払えないことがあります。国税を一度に納めると事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合は、申請による「換価の猶予」という手続があります(国税庁「換価の猶予の申請手続」)。

項目 内容
申請できる時期 納付すべき国税の納期限から6か月以内
提出の方法 e-Tax、または書面を持参・送付
添付する書類 財産収支状況書(猶予を受けたい金額が100万円を超える場合は財産目録と収支の明細書)、担保提供書

この猶予は、納税について誠実な意思を有すると認められることが条件です(国税徴収法151条の2)。申請する国税以外の国税に滞納がある場合は、申請中のものなど一定のものを除き、受けられません。期限後申告の納期限は申告書を出した日なので、6か月はそこから数えます。申告書を出す前に、各年分の税額の見込みと手元の資金を並べ、払える分と猶予を申請する分を分けておくと、出した後に慌てずに済みます。

税理士に頼む場合に先にそろえるもの

何年分もの期限後申告を税理士に頼む場合、見積りと作業期間は、年分の数、取引の量、資料がどれだけ残っているか、消費税の申告が要る年があるかで変わります。依頼の前に次のものをそろえておくと、何年分をどの順で出すかの判断が早くなります。

  1. 最後に申告した年分の控え(あれば)と、青色申告承認申請書の控え(出していた場合)
  2. 申告していない各年の通帳、クレジットカードの明細
  3. 請求書の控え、販売サイトの売上記録、取引先の支払明細
  4. 源泉徴収票や、報酬から源泉徴収された金額が分かるもの
  5. 事業用の車や設備を買った時期と金額が分かるもの
  6. 税務署から届いた書類(お尋ね・事前通知など)があれば、その現物

6番目は特に大切です。事前通知が届いているかどうかで、これから出す年分の無申告加算税の割合が変わります。期限後申告書の作成や税務署への提出の代理は税理士の業務なので、作業を誰に任せるかもこの段階で決めておきます。

まとめ:何年分を出すかは5年の線と各年の所得で決まる

  • 期限後申告は税務署の決定があるまで出せる。税務署が決定できるのは原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年。
  • 調査の事前通知の前に自主的に出せば、無申告加算税は各年分とも5%で、前年・前々年による10%の上乗せの対象にもならない。
  • 作る順番は古い年から。在庫・減価償却・貸借対照表・赤字の繰越しが年をまたいでつながっている。
  • 帳簿がない年は通帳・カード明細・請求書控えから組み立て直し、その年分の様式で作る。消費税の申告が要る年がないかも確かめる。
  • 期限後申告の納期限は出した日。一度に払えないときは納期限から6か月以内に換価の猶予を申請できる。

5年より前の年分の扱いや、赤字の年をどう組み込むかは、各年の取引と資料の状態を見て決まるので、まず手元の資料を年分ごとに並べるところから始めてください。

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よくある質問

Q. 税務署から何も連絡がないのに、自分から申告すると調査を呼び込みませんか?

自分から出すかどうかで変わるのは、主に無申告加算税の割合です。調査の事前通知の前に自主的に出した期限後申告は5%で、通知の後や調査の後に出した場合より低く定められています。調査が行われるかどうかは税務署が判断することなので、出すかどうかで決まるものではありません。

Q. 赤字だった年も申告書を出す必要がありますか?

青色申告者が赤字を翌年以後に繰り越すには、赤字の年分の確定申告書を出し、その後も連続して出していることが要件です。期限後申告書もこの確定申告書に含まれます。赤字の年を出さないと、その後の黒字の年から赤字を差し引けなくなります。

Q. 申告書は何年分を一度に出してもよいのですか?

各年分の期限後申告書を同じ時期に出すこともできます。ただし、無申告加算税の5%は調査の事前通知の前に出した年分だけに当たるので、作業が長引きそうなときは、作り終えた年分から順に出す方法もあります。各年分の納期限はそれぞれの申告書を出した日です。

Q. 帳簿も領収書もほとんど残っていない年はどうすればよいですか?

通帳、カード明細、取引先の支払明細など、第三者の記録から収入と経費を組み立て直します。通帳の入金には売上以外のものも混ざるので、口座間の移動や借入れを分けることが先です。それでも分からない部分の扱いは、残っている資料を見て個別に判断することになります。

Q. 期限後申告をすると、青色申告の65万円控除は受けられますか?

令和8年分までの最高55万円・65万円の青色申告特別控除は、確定申告書を提出期限までに出していることが要件なので、期限後に出す年分では受けられません。控除額の違いと、期限後に出す年分で使える控除は、各年分の申告書を作るときに確かめます。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月18日

参考資料

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