会社をたたむときは、株主総会で解散を決めた後、清算の手続を経て清算結了の登記をするまでが一連の流れです。税務の申告もこの流れに合わせて区切られ、解散の日までの申告(いわゆる解散確定申告)、清算中の事業年度ごとの申告、残余財産が確定したときの最後の申告(いわゆる清算確定申告)と、少なくとも2回の確定申告が必要になります。
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この記事では、株式会社が解散してから清算結了までの会社法の手続と、それぞれの時点で必要な税務の申告・届出を、期限とともに順番に整理します。廃業・M&Aなど会社をどう引き継ぐかの選択肢そのものは後継者不在の対策の記事で扱っているため、ここでは「たたむと決めた後」の手続に絞ります。
解散から清算結了までの全体像
株式会社は、株主総会の決議などによって解散し(会社法第471条)、解散した場合は清算をしなければなりません(会社法第475条)。清算をする株式会社は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(会社法第476条)。そのため、清算が終わるまでは税務の申告も続きます。
| 段階 | 会社法の手続 | 税務の手続 |
|---|---|---|
| 解散 | 株主総会の決議。解散の日から2週間以内に解散の登記と清算人の登記 | 税務署・都道府県・市町村へ解散の届出 |
| 解散の日まで | — | 事業年度開始の日から解散の日までの確定申告(2か月以内) |
| 清算の開始 | 財産目録・貸借対照表の作成、債権者への公告(2か月以上の申出期間) | 給与の支払が無くなれば給与支払事務所等の廃止届出(1か月以内) |
| 清算中 | 清算事務年度ごとの貸借対照表・事務報告の作成 | 清算事務年度ごとの確定申告(2か月以内) |
| 残余財産の確定 | 債務の弁済と残余財産の分配 | 残余財産の確定の日までの確定申告(1か月以内)。分配額のうち資本金等の額を超える部分(みなし配当)の源泉徴収と、翌月10日までの納付 |
| 清算結了 | 決算報告の株主総会承認。承認の日から2週間以内に清算結了の登記 | 清算結了の届出、課税事業者なら消費税の事業廃止届出 |
登記の期限は会社法第926条・第928条・第929条に、債権者への公告は会社法第499条に定められています。債権者が申し出る期間は2か月を下ることができないため(会社法第499条)、解散から清算結了までは少なくとも2か月以上かかります。
解散の日までの申告(いわゆる解散確定申告)
事業年度の途中で解散した場合、その事業年度は解散の日に終了し、翌日から次の事業年度が始まります(法人税法第14条)。たとえば3月決算の会社が9月30日に解散すれば、4月1日から9月30日までが1つの事業年度になり、その終了の日の翌日から2か月以内に確定申告をします(法人税法第74条)。
この申告は、決算書・勘定科目内訳明細書を添付する通常の確定申告と同じ形で、地方税(法人事業税・法人住民税)と、課税事業者なら消費税の申告も同じ時期に必要です。
解散の日の時点で、売掛金の回収、在庫や固定資産の処分、従業員への給与や退職金の支払がどこまで済んでいるかを整理しておくと、清算中の申告の見通しが立てやすくなります。
清算中の事業年度ごとの申告
株式会社が解散した場合の清算中の事業年度は、定款で定めた事業年度にかかわらず、会社法第494条第1項の清算事務年度になります(国税庁法人税基本通達1-2-9)。清算事務年度は、解散した日の翌日から始まる各1年の期間です。清算が1年を超えて続く場合は、この1年ごとに確定申告をします。
- 申告期限は、各清算事務年度の終了の日の翌日から2か月以内です。
- 清算中の普通法人は、通算子法人を除き、中間申告の対象から外れています(法人税法第71条)。
- 清算中も法人は存続しているため、地方税の申告も続きます(法人事業税は地方税法第72条の29)。
清算中は、資産の売却や債務の整理によって利益が出ることがあります。内国法人が解散した場合で、残余財産がないと見込まれるときは、過去の欠損金額を基礎として計算した金額を、清算中に終了する事業年度の損金の額に算入する定めがあります(法人税法第59条第4項)。この適用には、残余財産がないと見込まれることを説明する書類などの添付が必要です(同条第6項)。適用できるかどうか、どの金額まで使えるかは、清算の進み方と欠損金の残り方を見て試算しないと決まりません。
残余財産が確定したときの申告(いわゆる清算確定申告)
清算中の法人の残余財産が事業年度の途中で確定した場合、その事業年度は残余財産の確定の日に終了します(法人税法第14条)。この事業年度の確定申告の期限は、通常の2か月ではなく、終了の日の翌日から1か月以内です。その1か月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合は、その行われる日の前日までになります(法人税法第74条第2項)。
消費税も同じ扱いで、残余財産の確定の日の属する課税期間は、末日の翌日から1か月以内(その間に最後の分配等が行われる場合はその前日まで)に申告します(消費税法第45条第4項)。地方税についても、東京都は、残余財産が確定した日から1か月を経過する日と残余財産の最終分配日の前日とのいずれか早い日を申告期限として案内しています。
株主に分配する金銭等のうち、その株式に対応する資本金等の額を超える部分は配当とみなされます(所得税法第25条第1項第4号)。会社は分配の際に所得税を源泉徴収し、翌月10日までに納付します(所得税法第181条)。
最後の分配の日を先に決めてしまうと、申告期限がその前日に繰り上がります。分配の日は、申告書の作成と税額の納付の日程を確かめてから決めます。
日程の例:3月決算の会社が3月末で解散する場合
※説明のための架空の例です。3月決算の株式会社が、事業年度末の2027年3月31日(水曜日)を解散の日とし、清算を4か月で終える場合の日程は次のようになります。
| 日付 | 手続 |
|---|---|
| 2027年3月31日 | 株主総会で解散を決議(解散の日) |
| 2027年4月14日まで | 解散の登記と清算人の登記(解散の日から2週間以内) |
| 2027年4月中 | 財産目録・貸借対照表の作成、官報公告と知れている債権者への催告。税務署・自治体へ解散の届出 |
| 2027年5月31日(月曜日)まで | 2026年4月1日〜2027年3月31日の事業年度の確定申告と納付(解散確定申告) |
| 公告から2か月以上後 | 債権の申出期間の満了。債務の弁済 |
| 2027年7月31日 | 残余財産の確定(清算中の事業年度の終了) |
| 2027年8月31日(火曜日)まで | 2027年4月1日〜7月31日の事業年度の確定申告と納付(清算確定申告)。この前に残余財産の最後の分配をするなら、その前日まで |
| 分配と決算報告の承認の後 | 清算結了の登記(承認の日から2週間以内)、清算結了の届出 |
取締役は、定款で定める者や株主総会で選任された者がいない場合に清算人となります(会社法第478条)。この例では清算中の事業年度が1つで終わっていますが、清算が2028年3月31日を越えて続く場合は、清算事務年度ごとに確定申告が1回ずつ増えます。
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税務署・自治体への届出
申告とは別に、次の届出が必要です。
| 届出 | 提出先 | 時期 |
|---|---|---|
| 異動届出書(解散・清算結了) | 税務署 | 異動等後速やかに |
| 異動届出書など(自治体の様式) | 都道府県・市町村 | 自治体の定め(東京都は廃止・変更の日から10日以内) |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 廃止の事実があった日から1か月以内 |
| 消費税の事業廃止届出書 | 税務署 | 課税事業者が事業を廃止したとき、速やかに |
国税庁の「異動事項に関する届出」には、法人の解散・清算結了が手続の対象として挙がっています。この届出書の「消費税」欄にレ印を付けて出した場合は、消費税の異動届出書を重ねて出す必要はないとされています。
まとめ:解散・清算中・残余財産確定の3つの区切りで申告する
- 解散の日で事業年度が終わり、その日までの確定申告を2か月以内に行う
- 清算中の事業年度は清算事務年度(解散の日の翌日から1年ごと)で、各年度の確定申告が続く。中間申告は原則不要
- 残余財産が確定したら、その日までの確定申告を1か月以内(最後の分配がその前ならその前日まで)に行う。消費税も同じ
- 残余財産がないと見込まれる場合の欠損金の扱いは、添付書類が要件になる
- 解散・清算結了の届出、給与支払事務所等の廃止届出、消費税の事業廃止届出を忘れない
解散から清算結了までは、登記・公告・申告の期限が重なります。解散を決める前に、清算結了までの日程と申告の回数を並べておくと、手続の漏れを防げます。決算と申告だけを依頼する形は税務顧問と決算のみの違いの記事も参考にしてください。
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よくある質問
Q. 解散から清算結了まで、最短でどれくらいかかりますか?
債権者に対して、2か月を下らない期間内に債権を申し出るよう公告する必要があるため、少なくとも2か月以上かかります。その後に債務の弁済、残余財産の分配、決算報告の承認、清算結了の登記と進みます。
Q. 清算結了の登記をすれば、税務の手続も終わりますか?
登記と税務の手続は別です。残余財産の確定の日までの確定申告と納付、税務署・自治体への清算結了の届出が済んでいるかを確かめます。
Q. 財産より借金が多く、清算できない場合はどうなりますか?
清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければならないとされています(会社法第484条)。この場合は通常の清算とは手続が変わるため、弁護士など専門家への相談が必要です。
Q. 解散確定申告と清算確定申告は、同じ事業年度でまとめられますか?
まとめられません。解散の日に事業年度が終わるため、解散の日までの申告と、解散の日の翌日以後の清算中の申告は別の事業年度の申告になります。清算が1年以内に終わる場合でも、少なくとも2回の確定申告が必要です。
Q. 合同会社でも同じ流れですか?
解散の日や残余財産の確定の日で事業年度が区切られる点と、申告期限(2か月以内、残余財産の確定時は1か月以内)は、法人税法の定めなので同じです。一方、会社法の手続は持分会社の定めにより、たとえば合同会社の清算結了の登記の期限は、清算に係る計算の承認の日から2週間以内とされています。清算中の事業年度を清算事務年度とする扱い(法人税基本通達1-2-9)は株式会社などが対象のため、合同会社の清算中の事業年度の区切り方は別に確かめます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
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