会計・税務に関する
お役立ち情報ブログ

廃棄・棚卸と原価|店舗の利益を正しく出す

会計・財務
廃棄・棚卸と原価|店舗の利益を正しく出す

本部の報告では利益が出ているのに、廃棄が多く、手元のお金も増えない。仕入れた商品をどこまで経費にしてよいか、月末になると迷っていませんか。結論は、残った在庫の数量と金額をそろえ、廃棄や値下げを分けて記録することです。この記事では、店舗の原価と利益を読み違えないための実務を整理します。

この記事は「フランチャイズ加盟店の税金と会計の連載|開業から複数店舗・閉店まで」の第8回です。

顧問税理士をお探しの方へ

会社の規模や記帳の状況をお聞きして、顧問料をお見積りします。

顧問契約のお見積り(無料)はこちら →

全国オンライン対応です。

仕入額と売上原価は同じではありません

売上原価とは、売上に対応する商品の仕入費用などです。商品を仕入れても、期末に残っている分まで、その期の原価にするわけではありません。棚卸とは、残っている商品や材料の数量と金額を調べる作業です。棚卸を反映して、販売した分などの費用を計算します。

商品の売買を単純化すると、計算の基本は次のとおりです。ここでは廃棄損などを別の費用科目へ振り替えない場合を考えます。

売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高
粗利益=売上高-売上原価

粗利益は、売上総利益とも呼ばれる、売上から原価を引いた利益です。ここから人件費、家賃、本部への継続的な支払いであるロイヤリティなどの費用を差し引いて、店舗全体の利益を見ます。

次は説明のための架空の例です。ある加盟店の当月売上を500万円、月初在庫を80万円、当月仕入れを300万円、月末在庫を100万円とします。金額の税込・税抜の扱いはそろえ、返品や店舗間移動などはないものとします。

原価は「80万円+300万円-100万円=280万円」、粗利益は「500万円-280万円=220万円」です。仕入額300万円をそのまま原価とすると、粗利益を20万円少なく見てしまいます。

反対に、月末在庫を実際より少なく記録すると、計算上の原価が増え、利益が少なくなります。在庫を多く記録すれば利益は多くなります。同じ売上と仕入れでも、棚卸の誤りが利益を動かすため、利益率の分析より先に在庫の精度を確かめます。

棚卸は売場・倉庫・冷蔵庫を同じ基準で数えます

棚卸の対象は、売場に並ぶ商品だけではありません。販売用の商品、調理に使う原材料、作りかけの品なども対象になります。バックヤード、冷凍庫、別の保管場所を棚卸表に書き出すと、数え忘れを減らせます。

その場所にあるかどうかに加え、自社の在庫かも確認します。他社から預かっている商品と、自社の商品を他の場所へ預けている場合は扱いが異なります。本部との取引も、買取か委託かを名前だけで決めず、契約書と納品・返品の資料で確認します。

個人事業主の年末棚卸は、原則として12月31日現在で行います。国税庁の手引きでは、多忙でその日に実施できない場合、多少前後する日の棚卸から年末までの売上・仕入れなどを調整し、計算方法を明らかにする扱いが示されています。法人は自社の事業年度末の在庫を確認します。

月次管理でも、「いつの時点の在庫か」をそろえることが大切です。棚卸中に納品や販売がある店舗では、数えた時刻と、その後の商品移動を記録しておく運用が考えられます。棚卸日と集計の締め日がずれると、数量が合っていても、その月の原価がずれます。

数える単位も統一します。箱、袋、個、重さが混ざる材料は、棚卸表に換算方法を記載します。開封済みの食材も、残量をどう測ったかが次の担当者に伝わるようにします。完成した表だけでなく、現場で数を書いたメモも一緒に残します。

法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方は顧問契約のお見積りを依頼する →

在庫金額は自社の評価方法に合わせます

在庫の評価とは、数えた商品や材料を金額に直すことです。国税庁の令和8年分の手引きでは、個人事業主は届け出た評価方法を使い、届出がない場合は最終仕入原価法を使うとしています。最終仕入原価法は、年末に最も近い時期に仕入れた同じ種類などの商品の単価で、残った数量を評価する方法です。

法人にも評価方法の選定・届出の制度があります。まず過去の届出書や決算資料を確認し、本部のシステムが出す在庫金額と、自社が採用している方法が合っているかを確かめます。本部と同じ名前の科目を使うだけでは、計算の前提が一致しているとは限りません。

特に、売価で集計した在庫と、仕入れに基づく在庫金額を混ぜないようにします。売価還元法という、売価の合計額に原価率を掛けて評価する方法もありますが、売価の合計をそのまま原価計算に使うものではありません。どの方法でも、数量表から評価額までの計算を追える形にします。

仕入価格が変わった月は、数量の増減と単価の変化を分けて見ます。原価が増えた原因が値上がりなのか、使う量の増加なのかで、発注や販売価格の検討が変わるためです。月次資料には、数量の根拠と単価の根拠を別々に示せる欄を用意すると確認しやすくなります。

評価方法を見直したい場合も、決算時に都合のよい方法へ置き換える運用は避けます。現在の採用方法と、変更に必要な手続を確認してから進めます。

廃棄・値下げ・評価損を分けて記録します

実際に捨てた商品と、売れにくいまま保管している商品は区別します。評価損とは、手元に残る資産の帳簿上の金額を下げたときの損失です。商品が売れ残ったというだけで、在庫から外したり、金額をゼロにしたりできるとは考えないようにします。

状況 会計を整理する際の見方 残しておきたい資料
販売価格を下げて売った 実際の販売額と、その商品の原価を確認します 販売記録、値下げの履歴
期限切れなどで実際に廃棄した 廃棄した数量と帳簿上の原価を確認します 廃棄日、商品名、数量、理由、処分の記録
品質が変化したが、まだ保管している 棚卸表で区別し、税務上の評価減が認められるか検討します 状態の写真、通常販売が難しい事情、価額の算定資料
帳簿より実物が少ない 数え直し、入力漏れや移動などの原因を調べます 入出庫記録、再集計の結果、差異の調査メモ

国税庁の法人税基本通達では、法人が評価損を計上する際、著しい陳腐化や、破損・品質変化などで通常の方法による販売ができなくなった事情が判断材料になります。陳腐化とは、経済環境の変化などで価値が著しく減り、回復しないと認められる状態です。単なる価格の下落だけでは、同じ扱いにはなりません。会計上の損失と税務上認められる損失は、一致しない場合があります。

法人が採用する評価方法には、原価と期末時価の低い方で評価する「低価法」もあり、その方法に基づく期末評価は、これとは分けて検討します。個人事業主についても、国税庁の手引きには、著しい損傷や陳腐化により通常の販売などができない品を、年末の処分可能価額で評価できる場合が示されています。法人と個人の扱いを混同せず、状態と価額の根拠を整理します。

廃棄の記録には、日付、商品名、数量、原価、理由、担当者を含めると、帳簿との照合に役立ちます。写真や、処分を外注した場合の明細も補助資料になります。これは記録の実務例であり、写真さえあれば税務上認められるという意味ではありません。

廃棄額を集計するときは、売価か原価かを明記します。本部の画面に表示される廃棄額の意味は、仕様や説明資料で確認します。また、実在庫を差し引いた原価計算に廃棄分が含まれている場合、同じ金額を別の費用として足すと二重計上になります。廃棄損を別表示するなら、原価からの振替も含めて整合させます。

事業主が商品を自宅へ持ち帰った場合も、廃棄に混ぜません。個人事業主の家事消費、つまり商品を家庭で使ったり食べたりする行為は、所得税の収入計上の対象になります。販売、廃棄、私的な持出しを分け、実際の用途が分かるようにします。

本部の月次報告と実物・帳簿を照合します

本部の月次報告を確認するときは、利益の数字だけでなく、その計算に使った在庫と廃棄の明細まで見ます。本部が表示する粗利益や、ロイヤリティ計算に使う利益の定義は、契約書と計算書の説明で確認します。自社の会計上の粗利益と同じ前提だと決めつけないことが大切です。

確認の順序は、商品別の数量、評価単価、帳簿への反映です。数量が合わなければ、納品、販売、返品、廃棄、店舗間移動をたどります。数量が合うのに金額が違うなら、単価や売価・原価の区別を確認します。差額をまとめて廃棄扱いにすると、原因を見失います。

複数店舗では、同じ事業者内の店舗間移動も記録します。出庫側と入庫側で日付や数量を照合すれば、片方だけに在庫が残る、双方から消えるといった集計ミスを探せます。別法人との商品のやり取りは、この社内移動と区別して整理します。

月次締めの際は、次のチェックリストを使って、自社の資料で説明できるかを確認します。

  • 売場以外の保管場所と、他の場所へ預けた自社在庫を確認したか。
  • 自社の商品と、本部や他社からの預かり品を区別したか。
  • 箱・袋・個数・重さの単位と、開封品の測り方をそろえたか。
  • 棚卸の時点と、仕入れ・販売・移動の締めを合わせたか。
  • 自社の評価方法と、在庫金額の計算根拠を確認したか。
  • 廃棄、値下げ、原因不明の数量差、家事消費を分けたか。
  • 廃棄分を売上原価と別の費用に重複して入れていないか。
  • 本部報告と帳簿の差額について、理由を記録したか。

廃棄記録は、税務の説明資料であると同時に、発注を見直す手掛かりにもなります。商品別に理由を整理し、発注量、仕込み量、納品の間隔のどこを見直すかを考えます。売上だけを追う月次報告に、在庫と廃棄の動きを加えると、利益の変化を具体的に説明しやすくなります。

開業前の収支計画でも、仕入れた分がすぐに全て売れる前提にせず、残る在庫と資金の動きを分けて考えます。計画の根拠を整理する際は、創業融資の面談で聞かれること|質問の型ごとの準備と持参する資料も参考になります。

棚卸表や仕入明細を誰が集め、誰が帳簿と照合するかも決めておきます。開業準備での資料作成や役割分担は、創業融資を税理士と進める流れ|最初の相談から着金までの分担で扱っています。

まとめ

店舗の原価と利益を把握するには、仕入額だけでなく、期首と期末の在庫をそろえて見ることが出発点です。実際の廃棄、値下げ、保管中の商品の評価損は、それぞれの事実に沿って整理します。数量と単価の根拠を残し、本部報告と自社の帳簿を照合すれば、利益が動いた理由を追いやすくなります。まずは棚卸の範囲と、廃棄の記録方法を店舗内で共有しましょう。

よくある質問

Q. 本部の在庫一覧があれば、実物を数える必要はありませんか。

一覧の数量が実物を反映しているか確認します。販売や廃棄の入力漏れがあれば、一覧にも誤りが残ります。本部の一覧を棚卸の出発点として使い、数えた数量との違いを調べる運用が考えられます。個人事業主の国税庁手引きでも、商品の種類などごとに数量を実地に調べる方法が示されています。

Q. 廃棄した商品の売価を、そのまま損失にできますか。

廃棄した商品の損失額は、帳簿上の原価を基に確認します。売価には、販売できた場合の利益も含まれるため、売価合計をそのまま費用として追加する考え方ではありません。既に原価へ反映されている分を重複計上しないよう、在庫と費用の両方を照合します。

Q. 長期間売れない商品は、棚卸表から外してもよいですか。

売れていないという理由だけで外す扱いにはしません。残っている数量と状態を記録し、通常の商品と区別して評価を検討します。実際の廃棄と、保有したまま金額を下げる処理では確認事項が異なるため、販売が難しい事情と価額の根拠をそろえます。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日

参考資料

新着情報NEWS

法人成りしたときの会計ソフトの切り替え|個人の事業所から法人用へ移す手順

IT・クラウド会計

会社の解散確定申告から清算確定申告までの流れ|たたむときの税務手続き

決算

社会保険の手続きを外注するときの分担|入社・退職・算定基礎・月額変更

法人向けサービス

freee・マネーフォワードで年末調整を行う手順【令和8年分】改正対応の確認ポイント

IT・クラウド会計

顧問税理士が廃業・引退するとき|引継ぎ先の探し方と会社側の手続き

経営相談

相続した賃貸物件の確定申告|遺産分割前の家賃の分け方と、亡くなった方の準確定申告

税務

賃貸物件を子に移す方法|贈与・売買・相続時精算課税と、移した後の家賃

税務

家賃収入の申告漏れに気づいたとき|期限後申告・修正申告と、さかのぼる年数

税務

夫婦・親子の共有名義の賃貸物件|持分での按分と経費の負担

税務