アルバイトの入退社やシフト変更が重なると、給与計算だけで手いっぱいになり、年末調整の準備が後回しになりがちです。結論からいうと、毎月の勤怠・支給記録をそろえ、年末調整の対象者と必要書類を早めに整理することが、処理漏れを防ぐ基本です。
この記事は「フランチャイズ加盟店の税金と会計の連載|開業から複数店舗・閉店まで」の第10回です。
本記事では、法人の社長・個人事業主が店舗側で整える給与計算の流れと、2026年分の年末調整の注意点を解説します。本部が提供する給与サービスを使う場合も、自店が集める資料と本部へ渡す資料を整理して読み進めてください。
給与計算は「勤怠・支給・控除・振込」をつなげる
給与計算では、働いた時間から支給額を計算し、税金などの控除額を差し引いて手取り額を求めます。源泉徴収とは、給与の支払者が、支払時に所得税などを差し引いて国に納める仕組みです。2026年分の給与では、所得税と復興特別所得税を含む2026年分の源泉徴収税額表を使います。
実務では、次の順番で確認すると整理しやすくなります。これは店舗内の運用手順の提案です。
- 入社・退社、時給改定、支給する手当の変更を確認する。
- 打刻漏れや休憩時間を確認し、勤怠を確定する。
- 基本給と各種手当を計算し、時間外・深夜などの対象時間を区別する。
- 適用する税額表と税区分、保険料などの控除項目を確認する。
- 給与明細、振込データ、帳簿へ渡す集計表の金額を照合する。
厚生労働省の資料では、日ごとに一定時間未満の労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わない処理は労働基準法違反になると示されています。勤怠システムを使っていても、集計設定が適切か確認してください。予定シフトだけで給与を確定せず、実際の始業・終業記録との差を確認することも大切です。
税額表の甲欄・乙欄・丙欄は、源泉徴収に使う区分です。詳しい判定は連載の別回に譲りますが、店舗では区分の根拠となる申告書の提出状況を従業員ごとに管理します。「学生だから」「短時間だから」という呼び方だけで処理を決めないようにします。
開業時は、採用後の給与支払も資金計画に織り込みたいところです。面談に向けた準備の全体像は、創業融資の面談で聞かれること|質問の型ごとの準備と持参する資料で扱っています。
2026年分は毎月の計算と年末調整の改正を分ける
年末調整とは、給与から源泉徴収した税額の年間合計と、その年の給与について計算した税額との差を精算する手続きです。アルバイトでも、対象要件を満たせば店舗側で行います。
2026年10月時点では、令和8年度税制改正により、基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件が見直されています。これらの改正は、国税庁のQ&Aによると、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。一方、この改正による2026年11月までの源泉徴収事務の変更はありません。
ここでいう基礎控除は、本人の所得に応じて所得から差し引く控除です。給与所得控除は、給与収入から給与所得を計算する際に差し引く金額です。店舗側では、前年の控除額をそのまま転記せず、2026年分の申告書と計算資料を使って確認します。
2026年12月に行う年末調整では、改正後の基礎控除額と、国税庁が作成した2026年分の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用します。毎月の給与計算用の表と、年税額を計算する表を混同しないことが重要です。
また、2027年1月1日以後に支払うべき給与には、改正後の2027年分の源泉徴収税額表を使用します。給与ソフトでは、2026年の年末調整への対応と、2027年の通常給与への対応をそれぞれ確認してください。更新済みという表示だけでなく、どの年分の処理に対応したのかを確認すると整理できます。
アルバイトの年末調整は対象者を先に分ける
対象者の確認では、雇用形態よりも、扶養控除等申告書の提出先や年末までの勤務状況が重要です。扶養控除等申告書とは、源泉徴収や年末調整で用いる本人・扶養親族等の情報を申告する書類です。
| 従業員の状況 | 自店での年末調整の考え方 | 店舗側で確認すること |
|---|---|---|
| 通年で勤務し、自店に扶養控除等申告書を提出 | 原則として対象 | 申告内容の変更、給与の集計、対象外となる事情 |
| 年の途中で入社し、年末まで勤務 | 申告書の提出などの要件を満たせば対象 | その年の前職給与と源泉徴収票 |
| 掛け持ち先に扶養控除等申告書を提出 | 自店では対象外 | 申告書の提出先、自店の給与記録 |
| 年の途中で退職 | 原則として対象外。ただし例外あり | 退職日、最後の給与の支給時期、例外への該当 |
2026年10月時点で、年末調整の対象となる勤務状況であっても、その年の主たる給与収入が2,000万円を超える人などは対象外です。また、途中退職でも、12月中に支給期の来る給与を受けた後に退職した人などは対象になります。退職者を一律に処理せず、国税庁の年末調整の対象者一覧で例外を確認します。
途中入社の人に、前の勤務先へ扶養控除等申告書を提出して受けた同じ年の給与がある場合は、その給与を含めて年末調整を行います。前職分の給与額、源泉徴収税額、社会保険料の額を、源泉徴収票などで確認します。
前職分を確認できないときは、年末調整を行うことができません。本人の記憶による金額をそのまま入力せず、未確認として管理します。掛け持ち先で現在受け取っている給与と、退職した前職の給与も区別してください。
書類回収と給与集計は別々に進める
書類は「配った・受け取った・確認した」を分ける
年末調整では、扶養控除等申告書の内容を確認し、基礎控除申告書や、適用する控除に応じた保険料控除申告書などを受け取ります。申告書を配布しただけでは、必要な情報がそろったことにはなりません。
店舗内では、配布日、受領日、不足事項、確認完了日を一覧にする方法が役立ちます。未提出と記載不足を分ければ、次に誰へ何を確認するかが明確になります。店長と給与担当者が別の場合は、従業員からの変更連絡をどちらが一覧に反映するかも決めます。
2026年分は、改正を反映した年末調整関係書類を12月1日より前に提出しても差し支えないと国税庁が示しています。施行日を待って回収を始める必要はありません。最新様式を用意し、記載内容の確認に使う期間を見込んで、店内の提出日を設定します。
給与は勤務月と支給日を取り違えない
年末調整の対象は、原則としてその年に支払うことが確定した給与です。支給日が決まっている場合は、その支給日が収入の確定する日となります。12月勤務分を翌年1月の所定支給日に支払う場合、通常は翌年分の対象です。
店舗のシフト表が勤務月単位でも、年末調整用の集計はそのまま一致するとは限りません。給与ソフトの対象年、締日、支給日を照合します。所定支給日を過ぎても未払いとなっている給与は、その年に支払が確定していればその年の対象となるため、通常の翌月払いと分けて確認してください。
本部へ資料を送る場合は、送信した版と修正後の版が混在しない工夫も必要です。修正日、修正箇所、再送先を記録し、給与担当者が使う最終版を明確にします。従業員の申告内容を、店長の推測で埋めないことも運用上の基本です。
精算・納付・帳簿まで確認して処理を閉じる
年末調整では、源泉徴収済みの税額が年税額より多ければ還付し、少なければ不足額を徴収します。給与明細での表示と、実際の振込額への反映を照合してください。計算結果が出た段階と、精算が終わった段階は分けて管理します。
帳簿へ渡す集計表も、手取りの振込額だけでは内容を追いにくくなります。給与の総支給額、控除額、年末調整の還付・徴収額、差引支給額を並べ、給与明細と振込結果に対応させると確認しやすくなります。本部の月次報告を使う場合も、その報告にどこまで含まれるかを確認します。
2026年10月時点で、給与から源泉徴収した所得税等の納付期限は、原則として実際に支払った月の翌月10日です。給与の支給人員が常時10人未満で、申請・承認を受けて納期の特例を適用する場合は、対象となる源泉所得税等を半年分まとめて納付できます。
特例適用時は、1月から6月分が7月10日、7月から12月分が翌年1月20日です。これらの期限が土日・祝日などに当たる場合は、その休日明けの日となります。詳しくは国税庁の納付期限と納期の特例で確認できます。従業員が増えた店舗は、以前の納付方法を続けられるかも確認してください。
年末調整の対象外の人も含め、源泉徴収票の交付は必要です。交付期限は原則として翌年1月31日、途中退職者は退職の日以後1か月以内です。給与支払報告書は、原則として翌年1月31日までに対象者の住所地の市区町村へ提出します。
2027年1月1日以後は、市区町村へ給与支払報告書を提出すると、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。2026年10月時点で公表されているこの改正を踏まえ、提出担当者と提出先を確認してください。従業員へ交付する源泉徴収票の作成・交付は引き続き必要です。
創業時から店舗、本部、外部の担当者の分担を整理したい場合は、創業融資を税理士と進める流れ|最初の相談から着金までの分担も参考になります。本記事の給与業務でも、資料を用意する人と、内容を確認する人を決めることが出発点です。
自社で確かめるチェックリスト
- 入退社、時給変更、実際の勤怠を給与計算に反映しているか。
- 税区分の根拠となる申告書の提出状況を管理しているか。
- 2026年分の年末調整資料と給与ソフトの対応状況を確認したか。
- 前職分がある人と、現在の掛け持ち先がある人を区別したか。
- 書類の未提出・記載不足・確認完了を分けているか。
- 還付・徴収額を給与明細、振込額、帳簿で照合したか。
- 納付方法、源泉徴収票の交付、給与支払報告書の提出担当を決めたか。
まとめ
アルバイトの多い店舗では、毎月の勤怠、給与、申告書の記録をつなげることが年末調整の土台になります。対象者の判定と書類回収を先に進めると、年末に残る確認事項を絞れます。2026年分は、年末調整と翌年の通常給与で改正への対応時期が異なるため、年分と支給日を確認してください。精算、納付、源泉徴収票の交付、給与支払報告書の提出まで、担当者と完了の記録をそろえましょう。
よくある質問
Q. 短時間のアルバイトも年末調整の対象ですか?
勤務時間の短さだけで対象外にはなりません。自店への扶養控除等申告書の提出状況、年末までの勤務状況、対象外となる事情を確認します。正社員とアルバイトを一括で分けず、従業員ごとに判定してください。
Q. 前職の源泉徴収票が届いていなくても計算できますか?
年末調整に含める前職給与があり、その金額や源泉徴収税額などを確認できない場合は、年末調整を行えません。店舗では不足資料として管理し、未確認の金額を仮入力したまま確定しないようにします。
Q. 本部に給与計算を任せている場合、自店では何をしますか?
まず、契約や業務案内で、本部が担当する範囲を確認します。そのうえで、勤怠の確定、入退社・時給変更の連絡、申告書の回収、振込結果の確認を誰が担うか決めます。年末調整、税金の納付、書類の交付・提出も、それぞれ担当範囲を確認してください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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