家賃を申告していない年がある、提出済みの申告書から一部の物件が抜けていた。そんなときは、年ごとの申告状況を確認し、未提出なら期限後申告、税額が不足していれば修正申告で対応します。この記事では、さかのぼる期間の考え方と、追加の税金、資料の整理から納付までの手順を解説します。
この記事は「大家さんの税金と確定申告の連載|家賃収入の申告から、法人化・相続まで」の第12回です。
申告書を出したかどうかで、必要な手続きが変わります
最初に調べるのは、問題の年分の所得税の確定申告書を提出したかどうかです。「家賃を申告した記憶がない」だけでは、手続きは決まりません。家賃以外の所得について申告書を出していれば、提出済みの申告内容を直すことになります。
まず申告義務の有無を確認したうえで、期限を過ぎた年分は次のように整理します。税額の計算には、所得税とあわせて申告する復興特別所得税も含めて確認します。
| その年の状況 | 基本となる手続き | 確認すること |
|---|---|---|
| 申告が必要なのに、申告書を提出していない | 期限後申告 | その年全体の所得と税額を計算する |
| 提出済みだが、納める税金が少なかった、または還付が多かった | 修正申告 | 元の申告内容と正しい内容を照合する |
| 提出済みで、納める税金が多かった、または還付が少なかった | 更正の請求を検討 | 税額などが変わるか、請求期限内かを確認する |
期限後申告は、期限を過ぎてから行う申告です。修正申告は、不足する税額などを訂正する手続きです。更正の請求は、納め過ぎた税金などの訂正を税務署に求める手続きで、税務署が内容を検討します。費用の入れ忘れが見つかっても、最終的な税額や純損失の金額に変動がなければ、更正の請求はできません。
申告書の控え、電子申告の受信通知、過去の納付記録を並べ、提出の有無を年ごとに確認しましょう。不動産所得の計算自体を整理したい方は、大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説も参照できます。
さかのぼる年数は「原則5年」と「不正がある場合の7年」を区別します
税務署が税額を直す期間の原則
税務署が申告内容を直すことを「更正」、申告がない場合に所得や税額を定めることを「決定」といいます。通常の所得税の申告漏れに対する更正・決定は、原則として法定申告期限から5年が期間制限の基準です。法定申告期限とは、法律で定められた申告の締切です。
一方、偽りその他不正の行為により税額の全部または一部を免れた場合などは、7年の期間が適用されます。根拠は国税通則法第70条です。国税庁の令和8年度版「国税通則法(基礎編)」でも、通常の場合と不正がある場合を分けて説明しています。
これは税務署が更正・決定できる期間の説明で、年分ごとに法定申告期限から数えます。気づいた日から数えるのではありません。自分で申告し直せる範囲は、この期間とは同じではなく、納税の時効の扱いなども含めて年分ごとに確かめます。「見つかった年から過去5年分を選んで出せばよい」と決めつけず、申告漏れが始まった年を洗い出し、各年の期限、既に受けた処分、期間制限の特例の有無を確認して、対応する範囲を整理します。
古い資料が残っていない年も、最初から対象外にはしません。賃貸を始めた時期や、物件を取得した時期まで確認し、どの年に同じ漏れがあるかを把握することが先です。単なる計算ミスか不正な行為かという判断も、年数だけで決めず、記帳や申告に至る事情と資料で検討します。
更正の請求の「5年」は別の制度です
納め過ぎた税金を直す更正の請求にも、原則として法定申告期限から5年以内という期限があります。こちらは納税者が請求できる期間です。税務署の更正・決定の期間と混同しないようにしましょう。
複数年を見直すと、税金が不足する年と、経費の漏れなどで納め過ぎていた年が混在することも考えられます。差額をまとめて今年の申告に載せたり、年をまたいで独自に相殺したりせず、各年の正しい計算と手続きを分けて整理します。
追加で納めるのは、本来の税金・加算税・延滞税です
追加の負担は、本来納めるべき税金である「本税」と、申告や納付の遅れなどに応じた税金に分けます。「自主的に出したから追加負担はない」と一括りにせず、申告状況と提出の時期を確認することが大切です。
自主的な修正申告と期限後申告では扱いが異なります
過少申告加算税は、申告した税額が少なかった場合などに課される税金です。税務調査の事前通知より前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税はかかりません。ただし、当初の申告が期限後申告だった場合には、無申告加算税がかかることがあります。
無申告加算税は、期限内に申告しなかった場合などに課される税金です。事前通知より前に自主的に期限後申告をしても、原則として納付すべき税額の5%がかかります。一定の要件を満たす不適用の制度はありますが、自主的に提出したことだけで不適用になるわけではありません。
2026年10月時点では、令和5年分以降の所得税について、調査による決定を予知した期限後申告などに係る無申告加算税の基本割合は、納付すべき税額の50万円までの部分が15%、50万円を超え300万円までの部分が20%、300万円を超える部分が30%です。令和4年分以前の年分には300万円超の区分がなく、50万円を超える部分は20%です。家賃収入にこの割合を掛けるのではありません。
調査の事前通知後でも、決定を予知する前かどうかで割合が変わります。無申告を繰り返した場合や帳簿の提示状況などによる加重措置もあります。隠蔽や仮装に基づく申告などでは、通常の加算税に代えて重加算税が課される場合もあるため、上記の割合だけで総額を見積もらないようにします。
具体的な区分は、国税庁の「確定申告を忘れたとき」と「確定申告を間違えたとき」で確認できます。税務署から連絡がある場合は、連絡日と内容を記録し、受け取った文書も保存します。
延滞税は、過去年分でも期間ごとの割合を確認します
延滞税は、納付の遅れに応じてかかる利息に相当する税金です。原則として法定納期限の翌日から納付日までの期間が計算対象です。期限後申告や修正申告で納める税金がある場合にも問題になります。
2026年10月時点で公表されている2026年中の割合は、納期限までの期間と納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、その後が年9.1%です。ここでいう期限後申告・修正申告の「納期限」は、申告書を提出した日です。元の法定納期限から2か月経ったという理由だけで、高い割合になるわけではありません。
過去年分を今から納める場合は、暦年ごとの割合を使い分けます。また、一定の修正申告などでは、延滞税の計算から除く期間があるため、経過した全期間に同じ割合を掛ける計算は避けます。
過去の家賃と経費を、年ごと・物件ごとに復元します
不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。申告漏れに気づいても、通帳の入金額を足すだけで申告書を作るのは避けましょう。賃貸借契約書、管理会社の送金明細、預金履歴、請求書を照合します。
総収入金額には、家賃のほか共益費や更新料、敷金・保証金のうち返還を要しないものなども含まれます。また、家賃は契約などで支払日が定められていれば、原則としてその支払日が収入計上の基準です。入金された年だけで振り分けず、契約内容も確認します。
管理会社の明細では、入居者が支払った家賃と、管理料などを控除した後の送金額を区別します。控除前の家賃を収入として整理し、対応する費用を別に確認すれば、収入の漏れや費用の二重計上を見つけやすくなります。
必要経費は、不動産収入を得るために直接必要で、私生活の費用と明確に区分できるものが対象です。固定資産税、損害保険料、修繕費などの資料も同じ年分にまとめます。資料が足りない場合は管理会社への再発行依頼などで補い、根拠のない概算で経費を作らないようにします。
建物の取得資料や減価償却の明細も集めます。減価償却は、資産の取得費を使用期間に応じて費用に配分する仕組みです。詳しい計算は、中古アパートの減価償却|耐用年数の出し方と、建物と土地の分け方で扱っています。
架空の例:申告書は出していたが、家賃が抜けていた場合
次は説明のための架空の例です。ある大家さんが、別の所得について確定申告をした後、賃貸物件の家賃を載せていなかったことに気づきました。この場合、家賃の申告が初めてでも、その年分の申告書は提出済みです。
まず元の申告書と、家賃・経費の資料を集め、正しい税額を計算します。その結果、納める税金が不足していれば修正申告を行います。併せて、同じ物件について他の年にも漏れがないかを確認します。手続きは「家賃を出したか」ではなく「その年分の申告書を出したか」から判断する、という例です。
提出・納付・住民税の確認までを一続きに進めます
資料がそろったら、年ごとに申告書を作成します。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、期限後申告に使う申告書や修正申告書などの作成・提出ができます。過去の申告書がある場合は、その内容を手元に置き、元の数字と訂正後の数字を照合します。
期限後申告によって納める税金と、修正申告で新たに納める税金は、いずれも申告書の提出日が納期限です。提出だけで一区切りにせず、納付方法と必要資金も先に確認します。提出した申告書、受付の記録、納付の記録は、計算の根拠資料と一緒に保存しましょう。
所得税の修正は住民税にも影響します。台東区の公式案内では、修正申告や更正の請求をした場合、住民税も再計算の対象となり、税額が変われば変更通知を送ると説明しています。所得税を追加で納めた後も、自治体から届く通知の対象年度、税額、納期限を確認してください。
会社に勤めながら大家をしている方も、不動産所得の申告を直した後は、住民税の納め方を確認します。納付書による支払いか、給与からの特別徴収か、追加分がどう扱われるかは自治体の通知で確認し、不明点は自治体の担当窓口で確かめます。
自分の賃貸経営で確認するチェックリスト
- 賃貸を始めた年から、申告の提出状況と漏れの有無を整理したか
- 通帳だけでなく、契約書と管理会社の明細を照合したか
- 家賃以外の収入と、対応する必要経費を確認したか
- 税務署からの連絡や通知の有無、日付、内容を記録したか
- 年ごとの申告方法と、本税・加算税・延滞税を分けて確認したか
- 申告書の提出と納付、住民税の変更通知まで確認する段取りを整えたか
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まとめ
家賃収入の申告漏れは、年ごとの申告書の提出状況と、正しい税額を確認することから始めます。未提出なら期限後申告、提出済みで税額が不足していれば修正申告が基本です。さかのぼる期間は、税務署の更正・決定の原則5年と、不正がある場合の7年、更正の請求の期限を区別して考えます。資料の復元から申告・納付、住民税の確認までを整理し、気づいた段階で早めに対応を進めましょう。
よくある質問
Q. 今年の確定申告に、過去の家賃をまとめて入れてもよいですか?
過去年分の申告漏れは、その年分の所得と税額を見直して対応します。入金日だけでなく契約上の支払日なども確認し、どの年の収入かを整理してください。今年分へまとめて載せても、過去の申告内容を訂正したことにはなりません。
Q. 自分で申告漏れを直せば、加算税はかかりませんか?
手続きと時期で異なります。事前通知より前の自主的な修正申告では過少申告加算税はかかりませんが、当初の申告が期限後申告だった場合は別途確認が必要です。自主的な期限後申告は原則として無申告加算税の対象です。延滞税も分けて確認します。
Q. 古い年の通帳や管理会社の明細が見つからない場合はどうしますか?
金融機関の取引履歴や管理会社の明細を取得できるか確認し、契約書、請求書、過去の申告資料も集めます。確認できた事実と未確認の項目を分け、根拠資料との対応を残しながら計算を復元します。資料がないことだけを理由に、その年を調べる対象から外さないようにしましょう。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
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