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中古アパートの減価償却|耐用年数の出し方と、建物と土地の分け方

税務
中古アパートの減価償却|耐用年数の出し方と、建物と土地の分け方

中古アパートを買ったものの、売買契約書には土地と建物の合計額しかなく、減価償却の入力で手が止まっていませんか。結論は、土地と建物の金額を根拠のある方法で分け、建物の構造と築年数から耐用年数を確認することです。この記事では、個人の大家さんが国内の中古アパートを購入し、賃貸する場合を中心に、その手順を説明します。

この記事は「不動産の税金の連載|大家さん・資産管理会社・不動産会社」の第2回です。

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減価償却できるのは建物。土地は対象外です

減価償却とは、建物などを取得するためにかかった金額を、使用する期間に分けて必要経費にする手続です。購入代金を支払った年に、建物の金額をまとめて経費にする仕組みではありません。土地は減価償却資産に当たらず、購入代金を減価償却することはできません。

計算の出発点となるのが「取得価額」です。これは、購入代金に購入手数料などの付随費用や、業務に使うための費用を加えた金額です。物件の広告に載っている価格を、そのまま建物の取得価額として入力しないようにします。

もう一つの土台が「耐用年数」です。税務上、何年にわたって減価償却するかを決める年数を指します。税務上の年数と、現実に建物を使い続けられる期間は同じ意味ではありません。耐用年数だけで、修繕の時期や物件の購入判断を決めないことが大切です。

申告全体の流れや青色申告については、大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説で扱っています。本記事では、取得時の区分と減価償却の計算に絞ります。

土地と建物の金額は、契約書と客観的な資料で分けます

契約書の内訳と、その根拠を確認します

まず、売買契約書、代金の精算書、売主から受け取った価格の内訳を並べます。土地と建物が区分されているか、記載内容が資料同士で食い違っていないかを確認します。内訳があっても、実態を離れた金額をそのまま採用することは避けます。

内訳がない場合には、按分を検討します。按分とは、一定の割合で総額を振り分けることです。国税庁は、消費税の土地・建物の一括譲渡に関する説明で、時価の比率、固定資産税評価額など、合理的な区分方法を示しています。取得価額を整理する際も、対象物件に合う根拠をそろえることが重要です。

確認する資料・方法 役立つ場面 確認したい点
売買契約書などの内訳 土地と建物の対価が記載されている 区分の根拠や実態との整合性を確認する
固定資産税評価額の比率 土地・建物の評価資料がそろう 同じ年度の対象物件の評価額を使う
鑑定評価などによる時価の比率 物件固有の事情を検討したい 評価時点と対象範囲をそろえる

固定資産税評価額を使う場合、納税通知書にある税額や「課税標準額」と取り違えないようにします。土地と建物について、どの欄の数値を使ったかも計算メモに残してください。土地の評価額だけを売買総額から引き、残額を建物とする計算と、評価額の比率で総額を分ける計算は異なります。

架空の例:評価額の比率で購入代金を分けます

次は説明のための架空の例です。土地・建物の購入代金の合計を3,000万円、固定資産税評価額を土地1,200万円、建物800万円とします。この例では、評価額の比率による区分が合理的であることを確認できたものとし、消費税の調整や付随費用は計算から外します。

建物の割合は、800万円÷(1,200万円+800万円)=40%です。したがって、建物に配分する購入代金は3,000万円×40%=1,200万円、土地は1,800万円となります。建物の評価額800万円を、そのまま取得価額にするわけではありません。

これは計算方法を示す例です。どの物件も建物を40%にしてよいという意味ではありません。購入手数料などを含む最終的な取得価額は、別途整理します。計算表には採用した資料と方法を添え、後から同じ計算をたどれるようにします。

中古建物の耐用年数は、構造と経過年数から確認します

最初に住宅用建物の法定耐用年数を調べます

法定耐用年数とは、資産の構造や用途ごとに定められた税務上の年数です。住宅用建物の主な区分は次のとおりです。いずれも2026年10月時点で国税庁の耐用年数表を確認した数値です。

住宅用建物の構造 法定耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年
金属造:骨格材の肉厚が4mm超 34年
金属造:骨格材の肉厚が3mm超4mm以下 27年
金属造:骨格材の肉厚が3mm以下 19年

金属造は、「軽量鉄骨」「重量鉄骨」という呼び名だけで決めず、骨格材の肉厚を確認します。登記事項証明書に加え、設計図書や建築時の資料も集めます。店舗などが混在する物件では、住宅用の表だけで判断しないようにします。

使用可能期間の見積りが難しい場合に、簡便法を検討します

中古資産は、取得後に使用できる期間を見積もって耐用年数とすることができます。その見積りが難しい場合に、一定の計算式で求める「簡便法」を使えます。ただし、大規模な改良がある場合などには制限があります。

  • 法定耐用年数をすべて経過したもの:法定耐用年数×20%
  • 法定耐用年数の一部を経過したもの:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
  • 計算結果の1年未満の端数は切り捨てます。2年未満となる場合は2年とします。

次は説明のための架空の例です。取得時点で築15年ちょうどの住宅用木造アパートを購入し、簡便法を使える条件を満たしているとします。計算は(22年-15年)+15年×20%=10年です。「22年から築15年を引く」だけの7年ではありません。

別の架空の例として、築25年ちょうどの住宅用木造アパートなら、法定耐用年数をすべて経過しています。22年×20%=4.4年となり、端数を切り捨てて4年です。経過年数に月単位の端数がある実際の物件では、建築日と取得日を確認して計算します。

なお、使用可能期間を見積もる「見積法」や簡便法で中古資産の耐用年数を算定できるのは、業務に使い始めた年(法人は事業年度)だけです。その年に見積法・簡便法による算定をせず、法定耐用年数で申告した場合、翌年以降に簡便法へ切り替えることはできません。取得時の資料と、そのとき採用した計算を残しておくと、翌年以降の処理も確認しやすくなります。

減価償却費は、取得価額・償却率・使用月数で計算します

2026年に購入する中古建物は、定額法で減価償却します。定額法とは、原則として各年に同じ額を配分する方法です。建築された年が古くても、今回の購入時期に応じた償却方法を確認します。

年間の減価償却費=建物の取得価額×定額法の償却率が基本です。年の途中から賃貸の業務に使う場合は、年間額を12で割り、その年に業務に使用した月数を掛けます。取得価額を耐用年数で単純に割るのではなく、対応する償却率を確認します。

次は説明のための架空の例です。建物の取得価額を1,200万円、簡便法による耐用年数を4年とし、建物全体を賃貸するものとします。2026年10月時点の定額法の償却率は0.250なので、通年の償却費は1,200万円×0.250=300万円です。

同じ条件で10月から業務に使用し、12月まで使用した場合は、300万円×3か月÷12か月=75万円となります。これは初年の例であり、年の途中から使い始めた場合に「4年分の申告で終わる」という意味ではありません。最後は未償却残高を確認し、現行の定額法では1円を残すよう調整します。

購入代金の支払日だけで月数を決めず、いつ賃貸の業務に使い始めたかを確認します。引渡し、改修工事の完了、募集や賃貸の状況が分かる資料を、時系列でそろえておくと判断の根拠になります。

改修工事と将来の売却まで見据えて、資料をそろえます

工事代金をすべて修繕費にしないようにします

修繕費は、通常の維持管理や修理のための費用です。一方、使用可能期間を延ばしたり、価値を高めたりする部分は「資本的支出」とされ、減価償却で各年の必要経費にします。請求書に「修繕工事」と書かれているかではなく、工事の実質で判断します。

取得した中古資産を業務に使うための資本的支出が、その中古資産の取得価額の50%を超えると、簡便法は使えません。比較するのは、その資産の取得価額です。土地を含む物件総額との比較で判断しないようにします。さらに、同じ新品の資産を取得する場合の価額である「再取得価額」の50%を超える場合は、法定耐用年数によります。

工事の予定があるなら、購入額と工事額を合わせて耐用年数を検討します。工事項目ごとの見積書、施工前後の状況、工事の目的をそろえてください。工事代金の一部を修繕費にするか、取得に伴う費用とするかも、内容を見て整理します。

購入時・申告前のチェックリスト

  • 売買契約書と精算書で、土地・建物の内訳を確認しましたか。
  • 按分に使った評価資料と計算メモを残しましたか。
  • 住宅用などの用途、建物の構造、金属造の骨格材の肉厚を確認しましたか。
  • 建築日、取得日、業務に使い始めた時期を確認しましたか。
  • 購入手数料などを含む取得価額を整理しましたか。
  • 取得に伴う改修工事と、簡便法への影響を確認しましたか。
  • 固定資産台帳に取得価額、耐用年数、償却率、使用月数を記録しましたか。

固定資産台帳は、資産ごとの取得価額や減価償却の履歴を管理する帳簿です。申告書の数字だけを保存するより、根拠資料と一緒に管理すると、購入時の判断を後から説明しやすくなります。

また、個人が建物を売却する際の取得費は、購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。保有中の経費が増えることだけを見ず、将来の売却も含めて考える必要があります。売却時の税率や特例の詳しい説明は、ここでは扱いません。

法人での保有や、販売するために取得する不動産については、不動産業(法人)の税務・経費・節税|販売用不動産・消費税の課税区分を税理士が解説も参照してください。物件を取得する目的を整理してから、会計処理を検討します。

まとめ

中古アパートの減価償却は、土地と建物の金額を根拠のある方法で分けるところから始まります。建物の構造と経過年数を確認し、簡便法を使えるかを改修工事の内容と合わせて判断します。取得価額、償却率、業務に使用した月数をそろえると、その年の償却費を計算できます。契約書、評価資料、工事明細、計算メモをまとめ、将来の申告や売却時にも確認できる形にしておきましょう。

よくある質問

Q. 築22年を超えた木造アパートは、減価償却できませんか。

購入した中古建物は、法定耐用年数を経過していても減価償却の対象になります。住宅用木造で簡便法を使える場合は、22年×20%の端数を切り捨てて4年です。物理的な寿命や修繕の要否とは分けて考えます。

Q. 最初の年に法定耐用年数で申告した後、翌年から簡便法へ切り替えられますか。

業務に使い始めた年(法人は事業年度)に見積法・簡便法による算定をせず、法定耐用年数で申告した場合、翌年以降に簡便法へ切り替えることはできません。中古資産の耐用年数を見積法・簡便法で算定できるのは、業務に使い始めた年(法人は事業年度)だけです。初めて申告する前に、採用する耐用年数とその根拠を確認します。

Q. 減価償却費を経費に入れなければ、売却時の取得費を多く残せますか。

個人の業務用建物では、その考え方にはなりません。売却時に差し引く減価償却費は、必要経費に計上していない部分があっても合計する取扱いです。毎年の計算と記録を整えることが大切です。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日

参考資料

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