本部から毎月の利益報告が届くのに、自社でも帳簿を作り、税理士に依頼する必要があるのか迷っていませんか。結論は、本部会計の対象範囲を確認し、そのデータに対象外の取引を補って、決算・申告につなげる分担を決めることです。
この記事は「フランチャイズ加盟店の税金と会計の連載|開業から複数店舗・閉店まで」の第6回です。
本部の月次報告は、どこまでを集計した数字か
本部会計とは、この記事では本部が加盟店向けに行う記帳や集計などのサービスを指します。月次報告は、月ごとの売上や費用、利益などをまとめた資料です。名称だけで申告まで含まれていると判断せず、契約書、業務案内、実際の出力資料を並べて確認します。
最初に分けたいのは、店舗運営に使う集計と、事業全体の決算・申告に使う記録です。本部報告を使えるかどうかは、対象となる取引と明細の内容で判断します。本部のデータを生かすためにも、何を取り込み、何を別途補うかを明らかにしましょう。
法人には取引の記帳と帳簿書類の保存が求められます。個人事業主も、青色申告・白色申告のそれぞれに記帳と保存のルールがあります。本部に作業を任せる場合も、自社が必要な記録を取り出せる状態かを確認することが大切です。
次の表は、分担を決めるための比較です。特定の本部サービスの内容を示すものではありません。
| 確認する項目 | 本部側で確認すること | 自社・税理士側で決めること |
|---|---|---|
| 売上・仕入・本部への支払い | 集計範囲、締め日、明細の提供方法 | 帳簿への取り込み方法と照合方法 |
| 自社が直接支払う経費 | 資料を提出すれば集計されるか | 未収録の経費を誰が記帳するか |
| 預金・借入金・設備 | 残高や増減まで管理しているか | 通帳や契約書と誰が照合するか |
| 決算・税務申告 | 決算整理や税理士による申告が契約に含まれるか | 申告する税目と担当者、資料の受渡日 |
「決算対応あり」という案内も、決算書を作るところまでか、申告書の作成・提出までかを確認します。すでに担当税理士が関与している場合は、その業務範囲を先に把握しましょう。
自社の帳簿に補う取引を洗い出す
本部を通さない支払いと残高
確認の出発点は、本部報告と事業用口座の明細を並べることです。家賃、通信費、保険料、設備代金などについて、本部報告への反映の有無を確認します。口座に支払いがあるだけで追加せず、すでに本部側で記帳されていないかも調べます。
帳簿には、売上や費用のほかに、預金、借入金、未払いの代金などの残高もあります。残高とは、ある時点で残っている金額です。毎月の利益が合っていても、残高が資料と合うかは別に確認する必要があります。
借入金については返済予定表と引落明細を用意し、元本と利息を分けて確認します。設備の購入は、請求書だけでなく契約書や使用開始の記録もまとめます。加盟金・保証金などの個別処理は、ここでは範囲の確認にとどめ、契約内容を見て別途検討します。
個人と法人の支払いを区別する
個人事業では、生活費と事業の支出を区別します。自宅兼事務所の通信費などが混ざる場合も、全額を事業の費用とはしません。国税庁「必要経費の知識」では、家事と業務の両方に関係する費用について、取引の記録などに基づき、業務上直接必要な部分を明らかに区分できる金額に限り、必要経費になると説明しています。
法人では、社長個人の口座やカードで会社の代金を立て替えた取引がないかを確認します。誰が支払ったか、何のための支払いか、会社が精算したかを記録しましょう。個人で支払ったものを一律に会社の費用として扱うことは避けます。
税理士は入力のほかに何をするのか
国税庁の税理士制度のQ&Aによると、税理士の業務には、申告などを代理する「税務代理」、申告書などの作成、税金の計算に関する相談対応があります。記帳代行や財務書類の作成も行えますが、どの作業を依頼するかは契約で決めます。本部会計がある場合は、次の流れで担当を整理すると、依頼内容が具体的になります。
データをつなぎ、重複と漏れを点検する
仕訳とは、取引を会計上の項目に分けて記録することです。本部から仕訳データを受け取れるなら、対応する項目や対象期間を確認し、自社の帳簿へ取り込む方法を検討します。報告書の合計を手入力する場合は、元の明細までたどれる形にします。
口座やカードの自動連携を併用するときは、同じ支払いを重ねて登録しないよう、取り込みの担当と範囲を決めます。修正が必要になったら、どの月の何を直したかを記録し、本部データと自社データの差を説明できるようにします。
計上時期と経理方式を確認する
計上とは、売上や費用などを帳簿に載せることです。個人事業の収入は原則として、入金したかどうかではなく、収入を得る権利が確定した金額で判断します。現金の出入りを基準とする特例を適用している場合は扱いが異なるため、自社の適用状況も確認します。
また、消費税を売上などに含める「税込経理」と、区分する「税抜経理」では、表示される数字の前提が異なります。本部報告と自社帳簿を比較するときは、この前提をそろえます。免税事業者の所得計算には税込経理を適用する扱いです。いずれも2026年10月時点の国税庁「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」に基づきます。
決算と申告までの担当を明らかにする
本部から受け取った利益の数字を、そのまま税額計算の出発点にしてよいかを点検します。自社で追加した取引、決算時に確認する事項、税務上の扱いを整理し、申告書の作成につなげます。税理士を依頼先に含める場合も、月次確認だけか、決算・申告までかを明記します。
作業の分担を文書にしておく考え方は、資金調達でも役立ちます。開業時の流れは、創業融資を税理士と進める流れ|最初の相談から着金までの分担で整理しています。
架空の例:本部報告と通帳だけでは分からないこと
次は説明のための架空の例です。個人で加盟店を営むオーナーが、本部の月次報告と事業用通帳を税理士に渡しました。本部報告には店舗の売上と本部経由の費用が載っています。一方、オーナーが直接契約した事業用の通信費は含まれていませんでした。
この場合、まず通信費の請求書と支払いを確認し、重複がなければ自社の帳簿へ補います。さらに、本部の精算明細に載る売上と、通帳への入金の関係を調べます。この例では、売上代金から本部への支払いを差し引いて送金する契約だったとします。
こうした契約なら、通帳の入金額だけを見ても売上と差引項目の内訳は分かりません。売上資料、精算明細、入金明細をつなげ、何が差し引かれたかを確認します。実際の処理は、自社の契約と取引内容に沿って判断します。
ここでの税理士の役割は、本部報告を資料として活用し、報告にない通信費を補い、精算と入金の関係を帳簿上で説明できるようにすることです。利益と入金額の差が分かれば、オーナーも翌月の支払いに向けて資金を確認しやすくなります。
毎月のチェックリストと資料の保存方法
月次確認では、資料を提出したかに加え、未処理の取引と差額が残っていないかを見ます。自社の担当者と税理士で、次の項目を共有しておくと進めやすくなります。
- 本部報告の対象期間、対象店舗、税込・税抜の前提を確認したか
- 売上資料、本部の精算明細、実際の入金を対応させたか
- 本部を通さない経費と立替払いを集めたか
- 自動連携と本部データで同じ取引を重ねていないか
- 預金、借入金、本部との未精算額について差額の理由を確認したか
- 不明な取引について、確認する人と回答予定日を決めたか
- 本部報告の修正版と元の明細を区別して保存したか
- 決算・申告の担当者と、追加資料の受渡日を共有したか
証憑とは、請求書や領収書など、取引の内容を裏付ける資料です。月次報告だけを残して元の証憑を処分せず、帳簿の記録から資料を探せるように整理します。
2026年10月時点では、法人の帳簿書類の保存期間は、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告で欠損金が生じた事業年度などには、10年間となる場合があります。個人は青色・白色の区分や書類の種類で保存期間が異なるため、自社用の保存一覧を作りましょう。
電子メールや本部のシステムで受け取る請求書・精算書なども、保存対象となる電子取引データかを確認します。対象データは、電子データのまま保存する必要があります。2026年10月時点では、原則として改ざん防止と検索などの要件がありますが、要件の緩和や猶予措置もあります。紙に印刷する運用だけで済ませず、自社に合う方法を確認します。
本部の画面をいつまで見られるか、契約終了後にデータを取得できるかも確認事項です。法定の保存期間と本部サービスの閲覧期間を混同せず、自社で保存する担当者を決めましょう。
複数店舗や法人化に備え、数字のつながりを残す
複数店舗を考えているなら、店舗ごとの数字と事業全体の数字を分けて見られるようにします。共通して発生する事務所経費などは、店舗に割り振るか、共通費として別に表示するかを決め、比較するときの前提をそろえます。
法人化を予定する場合は、個人と法人の契約・口座・取引の切替日を整理する準備が必要です。本部データで契約名義や対象期間を確認できるかを、事前の確認項目に入れておきます。具体的な税務手続は、個別に検討します。
出店計画に使う数字も、既存店の利益、本部への支払い、手元資金の動きがつながっていると説明しやすくなります。開業時に数字の根拠をそろえる方法は、創業融資の面談で聞かれること|質問の型ごとの準備と持参する資料も参考になります。
今月の数字を確認するたびに、集計範囲、修正内容、未確認事項を短く残しましょう。担当者が替わった後も、本部報告から自社の決算へどうつながるかを追える状態が目標です。
まとめ
本部会計がある加盟店では、まず契約と実際の資料から、記帳・決算・申告の担当範囲を確認します。本部のデータに対象外の取引を補い、重複と残高の差を点検することが、自社の帳簿を整える出発点です。税理士には、記帳のほかに何を確認し、どの申告まで担当するのかを具体的に定めます。月次報告、帳簿、証憑をつなげて保存すると、決算や次の出店に使う数字の根拠を説明しやすくなります。
よくある質問
Q. 本部に税理士が関与していても、別の税理士が必要ですか?
まず、その税理士が本部側の業務を担当しているのか、自社の申告まで担当しているのかを確認します。自社の決算・申告まで含まれているなら、別の税理士へ依頼する作業があるかを整理します。関与しているという説明だけでなく、契約と担当税目を確かめましょう。
Q. 本部と同じ取引を、自社でもすべて入力するのですか?
自社で把握すべき取引が記録され、必要な明細と証憑を確認できるなら、本部データを活用する方法を検討できます。自社側で補う取引と取り込み方法を決め、同じ取引の二重計上を避けます。
Q. 本部の利益報告と預金の増減が違うと、誤りですか?
差があることだけでは判断できません。入金時期、本部との精算、借入金の返済などを確認します。利益報告と資金の動きを対応させ、差の理由を説明できるかを点検しましょう。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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