本部から開業費用の見積書を受け取ったものの、手元のお金と借入れで足りるのか、判断に迷っていませんか。結論は、加盟金・保証金・内装費に、開業後の運転資金を加え、支払日と融資の入金予定日を並べて資金計画を作ることです。
この記事は「フランチャイズ加盟店の税金と会計の連載|開業から複数店舗・閉店まで」の第1回です。
この記事では、支出の整理方法と、日本政策金融公庫の創業融資を検討するときの準備を説明します。個人事業主・法人のどちらにも共通する資金計画を中心に、税務の説明は対象を明示します。
開業資金は「店を作るお金」と「営業を続けるお金」で考える
まず、本部の見積書に含まれる項目と、別途負担する項目を分けましょう。資金計画では、税務上の経費になるかどうかよりも、いつ、いくら支払うかを先に整理します。保証金のように返還の条件があるお金も、預けている間は営業の支払いに使えません。
設備資金とは、店舗や機器など、事業の土台を整えるためのお金です。運転資金とは、仕入れや人件費など、日々の営業を続けるためのお金です。日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックでも、両者を分けて必要資金と調達方法を整理しています。
| 項目 | 資金計画での見方 | 契約・見積書で確認する点 |
|---|---|---|
| 加盟金・研修費 | 加盟や開業準備のための支払いとして計上する | 提供される内容、支払日、見積書への含まれ方 |
| 本部への保証金 | 返還予定があっても、当面使えない資金として見込む | 返還時期、控除される項目、追加差入れの条件 |
| 物件の敷金・保証金 | 本部への保証金と分けて見込む | 契約相手、返還条件、家賃の発生日 |
| 内装・厨房機器・備品 | 設備資金として見積りを積み上げる | 工事範囲、購入か賃借か、追加工事、支払日 |
| 仕入れ・人件費・家賃など | 開業前後の運転資金として見込む | 営業開始前の支出、支払周期、売上の入金時期 |
この表は支出を洗い出すための整理です。加盟金などの融資上の資金区分や対象範囲は、契約内容を示して金融機関に確認します。税務上の勘定科目と、融資で使う設備資金・運転資金の区分を同じものとして扱わないようにしましょう。
開業後の資金も、月ごとの収支から積み上げる
運転資金は、毎月の支払額だけでなく、売上が入金されるまでの間隔も踏まえて考えます。本部を通じて精算される売上があるなら、契約書や精算資料で入金日と差引項目を確認してください。売上高をそのまま預金への入金額として計画しないことが大切です。
公庫のセルフチェックは、開業後の運転資金として、半年程度の赤字補てん資金などの検討を挙げています。これは一律の融資要件ではありません。自店の家賃、人員配置、売上の立ち上がりを使って、残す資金を見積もるための視点です。
加盟金と保証金は、名称より契約内容を確認する
加盟金については、何の対価なのかを契約書と請求明細で確認します。ノウハウの提供、研修、開業準備の支援などがまとめて記載されているなら、内訳を本部に確認しましょう。支払先と金額だけでは、税務処理を判断する資料が不足することがあります。
法人が支払う加盟金のうち、ノウハウの設定契約に際して支出する一時金に当たるものは、税務上の繰延資産に該当します。繰延資産とは、支出の効果が続く期間に応じて費用に配分するものです。国税庁の法人税基本通達には、使用料に充当する部分などを前払費用として処理できる取扱いもあります。加盟金という名称だけで、全額を支払時の経費と判断しないでください。
一方、保証金では、返還の有無だけでなく、返還される時期と差し引かれる条件を読みます。本部への保証金と物件の保証金は、支払先も契約も分けて整理します。保証金の返還予定を、開業直後の仕入代金や給与の支払原資に組み込まない計画が基本です。
公正取引委員会の指針でも、加盟時に徴収する金銭の性質・金額・返還条件は、開示が望ましい事項とされています。説明資料と契約書で内容が異なる箇所があれば、資金計画を固める前に書面で説明を受けましょう。
加盟金の償却方法や保証金の仕訳は、別の回で扱います。開業資金を考える段階では、「何に対する支払いか」「いつ使えなくなるか」「戻る条件は何か」を押さえることが先です。
内装費は工事の内訳と支払工程をそろえる
内装費の見積書では、「一式」の金額だけで判断しないようにします。内装工事、電気・給排水などの設備、厨房機器、家具や備品について、何が含まれているかを確認しましょう。指定業者の工事でも、工事範囲と追加費用の条件を把握しておく必要があります。
あわせて、機器は購入するのか、賃借するのかを区別します。開業時の支払いが少ない契約でも、月々の支払額が増えるなら、その分を開業後の資金計画に反映させます。初期費用と月額負担の両方で判断しましょう。
内装や設備への支出は、支払った年に全額が税務上の経費になるとは限りません。減価償却とは、設備などの取得費を一定の方法で各年の費用に配分する手続です。個人事業主についても、国税庁の「減価償却のあらまし」は、建物や機械、器具備品などの取得費を期間に配分する原則を示しています。
また、法人が借りた建物に行う造作、つまり内装などの作り付け工事は、建物の耐用年数や工事の種類・用途・材質などを踏まえて、合理的に耐用年数を見積もります。賃貸借契約の期間だけで一律に決める扱いではありません。詳細な区分を検討できるよう、工事明細と契約書を残してください。
資金面では、着手時、中間時、完成時など、実際の支払工程が重要です。融資の入金より先に支払いが必要なら、その時点の手元資金で足りるかを確認します。追加工事が未確定のときは、確定済みの見積額と分けて管理しましょう。
創業融資は制度の上限と自店の返済可能額を分けて考える
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、開業時に検討する融資制度の一つです。2026年10月時点の公式案内では、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分あると認められることなどが前提となります。
資金使途は設備資金と運転資金で、融資限度額は7,200万円です。ただし、限度額は個別の借入可能額ではありません。審査の結果、希望どおりの融資にならない場合があります。加盟金や内装費の全額を借りられる前提で、支払いを確定させないようにしましょう。
同制度の返済期間は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内で、据置期間はいずれもそのうち5年以内です。これらは2026年10月時点の制度上の条件です。実際の返済期間や適用金利は個別に確認し、提示された返済予定を資金繰りに反映させます。
本部の収益モデルを、自店の条件で組み直す
本部の収益モデルは検討の出発点になります。ただし、自店の売上や利益と同じになるものとして扱うと、必要資金を見誤るおそれがあります。公正取引委員会の指針も、予想売上げ・予想収益の根拠や算定方法を示す必要があるとしています。
客数や客単価、営業日数を自店の条件に置き換え、家賃や採用予定も反映させましょう。ロイヤリティ、つまり商標の使用や経営指導などの対価として本部へ定期的に支払うお金は、契約上の算定方法を使います。割合の分母や差し引く費用を推測して計算しないことが大切です。
さらに、通常の見通しと、売上の立ち上がりが遅れる見通しを作ります。それぞれで返済後の現金残高を比べると、借入額や設備投資額を見直す判断材料になります。個人事業主は生活費として必要な額も別に置き、事業に残せる資金を確認しましょう。
面談の質問や持参資料は、創業融資の面談で聞かれること|質問の型ごとの準備と持参する資料で詳しく説明しています。この記事で作った支出一覧と、自店の収支の根拠をつなげて準備してください。
契約前のチェックリストと、準備する資料
最後に、支出一覧を月ごとの資金繰り表に移します。資金繰り表とは、入金・出金と現金残高の予定表です。借入希望額を入れた計画とは別に、入金が遅れる場合や希望額を下回る場合の支払予定も確認しておきましょう。
- 本部の見積書に含まれる支出と、物件・採用・工事などの別途支出を分けたか。
- 加盟金の対価、保証金の返還条件、継続して支払う費用を契約書で確認したか。
- 内装・機器の明細と、追加費用が発生する条件を把握したか。
- 見積額の税込・税抜の表示を確認し、実際の支払総額で資金計画を作ったか。
- 融資の入金予定日より前に来る支払いを、手元資金で賄えるか。
- 売上の入金日と、本部精算・仕入れ・給与・家賃の支払日を並べたか。
- 売上の立ち上がりが遅れても、営業と返済を続けられるか。
- 開業後の運転資金、納税用の資金、生活に必要な資金を残しているか。
資料は、加盟契約書、物件の賃貸借契約書、工事や機器の見積書、支払予定表、自己資金の状況が分かる資料をまとめます。未契約のものは、契約案や見積段階であることが分かるように整理しましょう。借入れで調達するお金は自己資金と分け、返済の予定も記載します。
公庫の創業計画書の記入例は、必要資金と調達方法の合計を一致させ、見積書などを添付する形です。支払済みの場合は領収書・請求書などを添付する案内もあります。ただし、書類を添付すれば支払済みの支出がすべて融資対象になる、という意味ではありません。対象範囲は申込先に確認します。
本部、オーナー、税理士の間で準備する資料を整理する方法は、創業融資を税理士と進める流れ|最初の相談から着金までの分担も参考になります。支出の内訳と支払時期をオーナー自身が説明できる状態を目指しましょう。
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まとめ
フランチャイズの開業資金は、加盟金・保証金・内装費に、営業を続けるための運転資金を加えて考えます。支出額と税務上の経費は一致しないため、契約書と明細をそろえて整理しましょう。創業融資は制度の限度額だけで判断せず、自店の収支と返済後の現金残高を確かめることが大切です。契約や工事発注の前に、支払日と融資の入金予定日を並べ、資金不足が起きる時点を確認してください。
よくある質問
Q. 加盟金は、支払った年の経費にできますか?
名称だけでは決まりません。法人では、ノウハウの設定契約に際する一時金は繰延資産に該当する取扱いがあります。契約書で対価の内容を確認し、資金計画では税務処理にかかわらず実際の支払額を見込みます。
Q. 返還される保証金も、開業資金に含めますか?
含めます。返還条件があっても、預けている間は給与や仕入れの支払いに使えないためです。本部への保証金と物件の保証金を分け、差引項目や返還時期も確認しましょう。
Q. 本部の収益モデルがあれば、そのまま融資を申し込めますか?
自店の立地、家賃、人員配置などを反映した事業計画を準備しましょう。公庫は創業計画書の提出などにより計画内容を確認します。本部の資料に、自店の売上・費用の根拠と支払予定を補って説明することが大切です。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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