「個人事業が軌道に乗ってきたので、会社を設立して法人化すべきか」。売上や利益が伸びてきた個人事業主にとって、法人成り(個人事業を法人化すること)は大きな節目です。ただし、タイミングを誤ると節税メリットより負担のほうが大きくなることもあります。
本記事では、個人が会社を設立する方法を、法人化を検討すべきタイミング、設立の手順、損をしないための注意点という観点から、2026年時点の情報で解説します。
夜のお店(キャバクラ・ホストクラブ等)の開業と法人化は、夜のお店の開業と法人化|個人で始めるか会社で始めるかで詳しく解説しています。
個人事業主が法人化する(法人成り)とは
法人成りとは、個人事業として営んでいた事業を、新たに設立した会社(株式会社・合同会社)に引き継ぐことです。事業主は会社の代表者となり、会社から役員報酬を受け取る形になります。法人化には、税負担の軽減、社会的信用の向上、消費税の免税期間の活用といったメリットがある一方、設立コストや社会保険の加入義務などの負担も生じます。法人化のメリットの全体像は個人事業主が法人化するメリット|節税・信用・将来設計まで完全解説で解説しています。
法人化を検討すべきタイミング
法人化の判断は、次の3つの視点から行うのが実務的です。
1. 課税所得が増えてきたとき
個人事業主の所得税は、所得が大きいほど税率が上がる超過累進税率(住民税と合わせて最大約55%)です。一方、法人税は中小法人で所得800万円以下が15%、超過部分が23.2%と、高所得帯では個人より税率が低くなります。加えて、法人化すると自分への給与に給与所得控除を使えるため、所得を会社と個人に分散して全体の税負担を抑えられます。一般に、課税所得がおおむね数百万円を超えたあたりから法人化のメリットが出始めるとされますが、最適なラインは事業内容や家族構成によって変わるため、個別の試算が欠かせません。法人化を検討すべき年収の目安は法人成りの年収目安はいくら?をご参照ください。
2. 消費税の課税事業者になるとき
基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、個人事業主でも消費税の課税事業者になります。このタイミングで資本金1,000万円未満の新設法人を設立すると、原則として設立後の一定期間、消費税の納税義務が免除される可能性があります(インボイス登録をした場合を除く)。消費税の観点からも、法人化のタイミングは重要です。
3. 社会的信用が必要になったとき
取引先が法人としか契約しない、銀行融資を本格的に受けたい、優秀な人材を採用したい——こうした場面では、法人であることが信用面で有利に働きます。事業拡大を見据えるなら、信用の観点も法人化の判断材料になります。
個人が会社を設立する手順
- 会社形態を決める:株式会社か合同会社かを選びます。費用を抑えたいなら合同会社(実費約6〜10万円)、信用を重視するなら株式会社(同約20〜25万円)が目安です。
- 基本事項と資本金を決める:商号・事業目的・本店・決算期・資本金を決めます。資本金は消費税を考えると1,000万円未満が一般的です(資本金の決め方を参照)。
- 定款を作成する:株式会社は公証人の認証が必要、合同会社は不要です。電子定款なら印紙代4万円が不要になります。
- 資本金を払い込み、登記する:資本金を払い込み、法務局へ設立登記を申請します。申請日が設立日です。
- 設立後の届出を行う:税務署へ法人設立届出書・青色申告承認申請書、都道府県・市区町村へ設立届、年金事務所へ社会保険の手続きを行います。
- 個人事業の資産・契約を引き継ぐ:個人事業で使っていた資産(車両・備品等)や契約を会社へ引き継ぎ、個人事業の廃業届を提出します。
設立手続きの詳細は会社設立の流れを5ステップで解説もあわせてご覧ください。
法人化で損をしないための注意点
法人化に伴う主なコスト・注意点を整理すると次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立コスト | 株式会社で約20〜25万円、合同会社で約6〜10万円の実費 |
| 社会保険 | 社長1人でも加入が原則義務。保険料は会社と個人で折半 |
| 法人住民税の均等割 | 赤字でも最低でも年7万円程度が発生 |
| 役員報酬の制約 | 原則、期首から3か月以内に決めた額を1年間変更できない |
| 固定費 | 税理士に依頼する場合の顧問料・決算料など |
第一に、社会保険の加入義務です。法人は社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則義務で、保険料は会社と個人で折半します。個人事業の国民健康保険・国民年金より負担が増えるケースがあります。第二に、赤字でも発生する法人住民税の均等割(最低でも年7万円程度)です。第三に、設立コストと、税理士に依頼する場合の顧問料などの固定費です。第四に、法人のお金は自由に使えず、役員報酬として受け取る必要があり、役員報酬は原則として期首から3か月以内に決めた金額を1年間変更できない点です。これらの負担を上回るメリットがあるかを、事前に試算して判断することが大切です。法人化のベストタイミングは法人成りのベストタイミングを見極めるで詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人事業主はどのくらいの利益で法人化を検討すべきですか?
A. 一般に課税所得がおおむね数百万円を超えたあたりから法人化のメリットが出始めるとされますが、最適なラインは事業内容・家族構成・社会保険負担によって変わります。「必ず得をする所得ライン」があるわけではないため、個別の試算をおすすめします。
Q2. 法人化すると消費税は免除されますか?
A. 資本金1,000万円未満で新たに会社を設立すれば、原則として設立後一定期間の消費税の納税義務が免除される可能性があります。ただし、インボイス登録をすると課税事業者になります。
Q3. 会社設立の費用はいくらかかりますか?
A. 実費の目安は、合同会社が約6〜10万円、株式会社が約20〜25万円です。電子定款を使えば印紙代4万円を節約できます。
Q4. 法人化のデメリットは何ですか?
A. 社会保険の加入義務、赤字でも発生する法人住民税の均等割(年7万円程度〜)、設立コストや税理士報酬などの固定費、役員報酬の制約などがあります。これらを上回るメリットがあるかの見極めが重要です。
Q5. 個人事業の資産は会社に引き継げますか?
A. 引き継げます。車両や備品などの資産、取引先との契約を会社へ引き継ぎ、個人事業は廃業届を提出します。引き継ぎ方法によっては消費税や税務上の論点が生じるため、専門家への相談をおすすめします。
参考資料
個人が会社を設立する(法人成りする)際は、課税所得・消費税・社会的信用の3つの視点でタイミングを見極め、社会保険や均等割などの負担も織り込んで判断することが大切です。
リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績をもとに、法人化の有利判定シミュレーションから設立手続き、設立後の税務までをワンストップでサポートしています。法人化を検討中の個人事業主の方は、お気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、法人成り・会社設立の支援を専門とする。
最終更新日: 2026年7月2日
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