「会社を設立したいが、資本金はいくらにすればよいのか」。会社設立を検討する経営者から最も多くいただく相談の一つが、この資本金の金額です。現在は資本金1円でも株式会社を設立できますが、金額の決め方しだいで税金・信用・資金繰りに影響が出るため、いくつかの視点から総合的に判断する必要があります。
本記事では、会社設立の資本金の決め方を、消費税・許認可・信用・運転資金という4つの視点から、2026年時点の情報で解説します。
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資本金とは?1円でも設立できるが「0円」ではいけない
資本金とは、会社を設立する際に株主(出資者)が払い込む事業の元手です。2006年の会社法施行で最低資本金制度が撤廃され、現在は資本金1円から株式会社を設立できます。ただし、資本金は会社の体力や信用を示す数字でもあるため、極端に少ないと後述の信用面で不利になります。実務では、次の4つの視点から金額を決めるのが一般的です。
資本金を決める4つの視点
1. 消費税(1,000万円未満で免税の可能性)
資本金は消費税の納税義務に直結します。資本金1,000万円未満で設立した新設法人は、原則として設立1期目・2期目の消費税の納税義務が免除されます(2期目は特定期間の課税売上高・給与等による判定があります)。一方、資本金1,000万円以上で設立すると、初年度から消費税の課税事業者になります。この差は小さくないため、当面の資金に問題がなければ1,000万円未満に設定するのが一般的です。
ただし、インボイス(適格請求書)を発行するために登録すると、資本金にかかわらず課税事業者になる点に注意してください。消費税の納税義務の基準は国税庁 No.6501で確認できます。
2. 許認可の要件
事業によっては、許認可の取得に一定額以上の資本金が求められます。代表例として、一般労働者派遣事業は資産・基準資産の要件、建設業許可は500万円以上の自己資本、有料職業紹介事業なども財産的基礎の要件があります。許認可が必要な事業を予定している場合は、その要件を満たす資本金を確保する必要があります。予定する事業の許認可要件を必ず事前に確認してください。
3. 取引先・銀行からの信用
資本金は登記事項で、誰でも確認できます。取引先が新規取引の可否を判断する際や、銀行が融資を審査する際に、資本金の額は会社の規模・体力の目安として見られます。資本金1円の会社は「事業継続の体力があるのか」と見られることがあり、法人口座の開設審査で不利になるケースもあります。対外的な信用を重視するなら、ある程度まとまった金額が望ましいといえます。
4. 当面の運転資金
資本金は事業の元手であり、設立直後の運転資金でもあります。売上が安定するまでの数か月分の経費(家賃・人件費・仕入れ等)をまかなえる金額を確保しておくと、資金繰りに余裕が生まれます。一般には、当面必要な運転資金の3〜6か月分を一つの目安とする考え方があります。
資本金の目安と注意点
以上をふまえた資本金の目安を整理します。
| 資本金の水準 | 主な特徴・注意点 |
|---|---|
| 1円〜100万円未満 | 設立は可能だが信用・運転資金の面で不安。法人口座開設で不利なことも |
| 100万〜300万円未満 | 小規模事業の現実的な下限。株式会社の定款認証手数料は4万円 |
| 300万〜900万円 | 信用と免税のバランスがとりやすい水準。定款認証手数料は5万円 |
| 1,000万円以上 | 初年度から消費税の課税事業者。1,000万円を超えると法人住民税の均等割も上がる |
資本金1,000万円以上にすると、消費税の免税メリットを受けられないうえ、1,000万円を超えると、赤字でも課税される法人住民税の均等割(資本金等の額と従業員数で決まる)の負担も大きくなります。特別な理由がなければ、1,000万円未満に収める設計が多く選ばれます。会社設立の費用全体は会社設立の費用総額はいくら?株式会社・合同会社別に完全解説もあわせてご参照ください。
なお、資本金は登録免許税にも影響します。株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%(最低15万円)です。資本金が約2,143万円までは最低額の15万円で済み、それを超えると0.7%が効いてきます。
業種別の資本金例と融資を見据えた準備
業種や初期費用に応じた資本金の例は次のとおりです。
| 業種・状況 | 資本金の目安 | 判断の背景 |
|---|---|---|
| IT・Web・コンサルの一人起業 | 100万円〜300万円 | 低コストでの事業開始 |
| 飲食業の1店舗開業 | 300万円〜500万円 | 初期設備・内装費用 |
| 小売・EC | 100万円〜300万円 | 在庫確保のための運転資金 |
融資では資金を準備した経緯も確認される
創業融資では、自己資金を計画的に貯めた履歴も見られます。申込直前に親族から借りて入金した資金は、「見せ金」と判断されることがあります。資本金として払い込む資金は、貯蓄の経緯を通帳の履歴に残しておきましょう。
融資審査では、事業計画・返済能力・代表者の経歴も重視されます。資本金の額とあわせて確認することが大切です。
資本準備金の活用と設立後の増資・減資
出資金を資本金と資本準備金に分ける
出資金の最大2分の1を、資本準備金とする方法があります。例えば200万円を出資する場合、資本金100万円・資本準備金100万円という配分です。
資本金は登記される金額で、資本準備金は登記されない部分です。
設立後に金額を変更する場合
増資には変更登記の費用がかかります。登録免許税は増資額の0.7%で、最低3万円です。司法書士に依頼する場合の報酬は、3万〜10万円が目安です。
減資には債権者保護手続きが必要です。後からの変更に伴う費用や手続きもふまえ、設立時の金額を検討しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 資本金は1円でも会社を設立できますか?
A. できます。2006年の会社法施行で最低資本金制度が撤廃され、資本金1円から株式会社を設立できます。ただし、信用や運転資金の面で不利になりやすいため、実務では一定額を設定するのが一般的です。
Q2. 資本金はいくらにすると消費税が免除されますか?
A. 資本金1,000万円未満で設立した新設法人は、原則として1期目の消費税の納税義務が免除されます(2期目は特定期間の判定あり)。ただし、インボイス登録をすると資本金にかかわらず課税事業者になります。
Q3. 資本金1,000万円以上にするとどんなデメリットがありますか?
A. 初年度から消費税の課税事業者になり、免税メリットを受けられません。また、1,000万円を超えると、赤字でも課税される法人住民税の均等割の負担も大きくなります。特別な理由がなければ1,000万円未満が選ばれることが多いです。
Q4. 資本金の目安はどのくらいですか?
A. 一つの考え方として、当面必要な運転資金の3〜6か月分を確保する方法があります。信用面や許認可要件も考慮し、消費税の免税ラインである1,000万円未満で設定するケースが一般的です。
Q5. 資本金は登録免許税に影響しますか?
A. 影響します。株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%で、最低15万円です。資本金が約2,143万円を超えると、0.7%を掛けた額が15万円を上回ります。
参考資料
会社設立の資本金は、消費税・許認可・信用・運転資金という4つの視点で決めるのが実務です。1円でも設立はできますが、税負担や信用への影響をふまえ、自社の事業計画に合った金額を設計することが大切です。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、会社設立・法人化の支援を専門とする。
最終更新日: 2026年10月24日
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