個人タクシーを営む場合と、乗務員を雇う会社では、申告や経理のどこが違うのでしょうか。個人タクシーは所得税、タクシー会社は法人税の確定申告をします。車両の減価償却や乗務員の給与計算には違いがあり、キャッシュレスの入金はどちらも手数料との区分が必要です。
この記事では、個人と法人の立場に分け、車両・燃料の経費、乗務員の歩合給、決済手数料と入金の記帳方法を整理します。
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個人タクシーとタクシー会社で違うところ
個人タクシーは事業所得として所得税の確定申告をし、申告期限は翌年3月15日です。タクシー会社は法人税の申告をし、期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(申告期限の延長を受けている場合を除きます)。
| 項目 | 個人タクシー | タクシー会社(法人) |
|---|---|---|
| 申告 | 所得税の確定申告(翌年2月16日から3月15日まで) | 法人税の確定申告(事業年度終了の日の翌日から2か月以内が原則) |
| 車両の償却方法(届出をしない場合) | 定額法 | 定率法 |
| 乗務員の給与 | 自分ひとりで営業していればなし | 歩合給を含む給与計算と源泉徴収、年末調整 |
| 消費税の納税義務の判定 | 前々年の課税売上高 | 前々事業年度の課税売上高(原則) |
消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として納税義務が免除されます。運賃収入はこの課税売上高に含まれるので、売上が増えてきた個人タクシーは2年前の数字で判定します。なお、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、基準期間の課税売上高にかかわらず消費税の納税義務は免除されません。
乗務員の歩合給と給与計算(タクシー会社)
タクシー会社の乗務員に支払う歩合給は、売上(営業収入)に応じて額が決まっても、雇用契約に基づく賃金なので給与です。毎月の支給時に給与として源泉徴収し、年末調整の対象になります。消費税法2条1項12号は、給与等を対価とする役務の提供を課税仕入れから除いているので、歩合給は消費税の計算で仕入税額控除の対象になりません。
※説明のための架空の例です。給与規程で「月間の営業収入(税抜)の50%を歩合給とする」と定めている会社で、ある乗務員の月間の営業収入が税抜60万円なら、歩合給は30万円です。この歩合給に固定給や手当を合わせた額を給与として、社会保険料などを差し引いたうえで源泉徴収税額表により所得税を計算します。乗務日報、営業収入の集計、歩合率を定めた規程を、給与計算の資料としてそろえて保存します。
乗務員を雇用でなく業務委託として扱う場合は、実態で判断されます。国税庁の消費税法基本通達1-1-1は、雇用契約やこれに準ずる契約に基づく対価かどうかで給与と報酬を区分し、明らかでないときは、他人が代わりに業務を行えるか、指揮監督を受けるか、材料や用具を支給されているかなどを総合して判定するとしています。車両や燃料を会社が支給し、勤務の指示を受けて乗務する形は、この判定事項のうち指揮監督と用具の支給の点で給与の側に寄るので、契約書の名前だけで報酬として扱わないようにします。
労働基準法27条は、出来高払制その他の請負制で使用する労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金の保障を使用者に義務づけています。歩合給の設計や最低賃金との関係、社会保険の手続は社会保険労務士の領域なので、給与規程を作るときは社会保険労務士に確認してください。
燃料と車両の経費
タクシーの燃料にはLPガスが使われることがあります。消費税法基本通達10-1-11は、課税資産の譲渡等の対価の額には酒税、揮発油税、石油ガス税などが含まれる一方、軽油引取税、ゴルフ場利用税、入湯税は、明確に区分されていれば対価の額に含まれないとしています。LPガスの代金に含まれる石油ガス税は対価の一部なので、燃料代は全額を課税仕入れとして扱います。軽油を使う車両では、請求書で軽油引取税が区分されているかを確認し、区分されている部分は課税仕入れから外します。
車両の任意保険や自賠責保険の保険料は、消費税法基本通達6-3-1で非課税とされる保険料に当たるので、課税仕入れになりません。燃料代や修理代と保険料を同じ科目にまとめると消費税の区分を誤りやすいので、科目を分けておきます。
車両の耐用年数と減価償却
タクシーの車両は、国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表で「運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの」に区分されます。一般用の自動車(その他のもの)の6年より短い耐用年数が定められています。
| 運送事業用の自動車(乗合自動車を除く) | 耐用年数 |
|---|---|
| 小型車(総排気量が2リットル以下のもの) | 3年 |
| 大型乗用車(総排気量が3リットル以上のもの) | 5年 |
| その他のもの | 4年 |
償却方法は、届出をしない場合、平成19年4月1日以後に取得した車両について、法人は定率法、個人は定額法が法定の償却方法です。法人で定額法を使いたい場合や、個人で定率法を使いたい場合は、償却方法の届出が要ります。
中古車を買った場合の耐用年数
中古の車両は、事業に使い始めた時以後の使用可能期間を見積もって耐用年数とし、見積もりが難しい場合は簡便法を使えます。簡便法では、法定耐用年数の全部を経過した資産はその20%に相当する年数、一部を経過した資産は法定耐用年数から経過年数を引いた年数に経過年数の20%を加えた年数とし、1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。法定耐用年数3年の車両を登録から2年経過で買った場合、1年に0.4年を足して1.4年となり、端数を切り捨てると2年未満なので耐用年数は2年です。
個人タクシーの車を私用にも使う場合
個人の場合、家事上の経費に関連する経費は、主たる部分が業務の遂行上必要で、その部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけが必要経費になります。営業以外にも車を使うなら、走行距離の記録などで業務の割合を示せるようにしておきます。
キャッシュレス決済の手数料と入金
クレジットカードや電子マネー、配車アプリの決済では、乗車した日と入金の日がずれ、入金額は手数料を差し引いた金額になります。売上は乗車した日に運賃の総額で計上し、決済事業者からの入金を待つ間は未収入金とします。差し引かれた手数料は支払手数料として別に記帳します。入金額だけを売上にすると、売上と手数料の両方が実際より小さく記帳されます。
手数料の消費税の区分は、契約の形によって異なります。消費税法基本通達6-3-1は、金銭債権の買取又は立替払に係る差益を非課税の対象に挙げています。決済事業者が売上の債権を買い取る形の手数料はこれに当たる場合があるので、決済事業者の請求書や明細に書かれた税区分を確認して記帳します。
法人向けのタクシーチケットで後日まとめて請求する運賃も、乗車した日の売上として未収入金に計上します。
月に一度は、決済事業者ごとに乗車日ベースの売上明細と入金明細を照合し、未収入金の残高が入金で消えているかを確かめます。締め日と入金のサイクルは事業者ごとに違うので、決算月の末日に残っている未収入金は、事業者ごとの内訳を作っておきます。
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消費税の計算区分とインボイス
簡易課税を選ぶ場合、タクシー業は運輸通信業として第5種事業に当たり、みなし仕入率は50%です。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に選べる方法なので、一般課税と比べて自分の数字で試算してから判断します。
インボイスについては、消費税法施行令70条の11が、適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付できる事業に、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー業)を挙げています。ただし、営業所のみで運送を引き受けるものとして認可を受けた運賃等が適用されるものなどは除かれています。レシートやメーターの領収書に登録番号などの記載事項がそろっているかを確認します。
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まとめ:売上は総額、車両は事業用の耐用年数で
- 個人タクシーは所得税の確定申告、タクシー会社は法人税の申告。車両の法定の償却方法は個人が定額法、法人が定率法
- 乗務員の歩合給は給与として源泉徴収し、消費税の課税仕入れにはならない
- LPガスの石油ガス税は対価の一部、軽油引取税は区分されていれば対価に含まれない。保険料は非課税
- タクシー車両は運送事業用の耐用年数(2リットル以下の小型車は3年)。中古車は簡便法で2年が下限
- キャッシュレス決済は乗車日に総額で売上計上し、手数料は別に記帳する
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よくある質問
Q. 個人タクシーの車の耐用年数は何年ですか?
個人タクシーの車両も運送事業用の自動車に当たり、総排気量が2リットル以下の小型車は3年、3リットル以上の大型乗用車は5年、その他は4年です。中古で買った場合は簡便法で計算でき、2年に満たないときは2年になります。
Q. 乗務員の歩合給は、消費税の計算で仕入税額控除できますか?
できません。歩合給も雇用契約に基づく給与で、消費税法は給与等を対価とする役務の提供を課税仕入れから除いています。給与として源泉徴収し、年末調整をします。
Q. キャッシュレス決済の手数料が引かれて入金されます。売上はどちらの金額ですか?
売上は手数料を引く前の運賃の総額です。入金までは未収入金とし、差し引かれた手数料は支払手数料として別に記帳します。手数料の消費税の区分は、決済事業者の請求書や明細で確認します。
Q. 個人タクシーでも簡易課税を選べますか?
課税事業者で、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が5,000万円以下なら、届出により簡易課税を選べます。タクシー業は第5種事業で、みなし仕入率は50%です。車両の買替えが近い年は一般課税の方が有利になることもあるので、試算して決めます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年11月1日
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