税理士に決算書や給与の資料を渡すとき、会社の情報をどこまで守ってもらえるのか気になりませんか。税理士には、税務の仕事で知った秘密を、正当な理由なく漏らしたり利用したりしない義務があります。クラウドで誰が資料を見られるかは、会社と事務所の間で確認が必要です。
この記事では、税理士と事務所の職員に及ぶ守秘義務の範囲、第三者への開示が認められる場合、資料共有の確認点を整理します。
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税理士の守秘義務は税理士法38条で決まっている
税理士法38条は、税理士は正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または窃用してはならないと定めています(税理士法38条(e-Gov法令検索))。条文の後段には、税理士でなくなった後も同様とあります。廃業や引退をした後でも、在職中に知った秘密を漏らしてはならないということです。
ここでいう「税理士業務」は、税理士法2条1項の税務代理・税務書類の作成・税務相談を指します。決算や申告、税務調査への対応、税金の相談の中で税理士が知った会社の情報は、この義務の対象になります。
「秘密」と「正当な理由」はどこまでか
条文の言葉の意味は、国税庁の税理士法基本通達で示されています。会社側から見た意味と並べると、次のとおりです。
| 条文の言葉 | 通達での意味 | 会社側から見た意味 |
|---|---|---|
| 正当な理由 | 本人の許諾または法令に基づく義務があること | 会社が許可した相手への共有と、法令上の義務による開示は、守秘義務違反にならない |
| 税理士業務に関して知り得た秘密 | 税理士業務を行うに当たって、依頼人の陳述または自己の判断によって知り得た事実で、一般に知られていない事項と、関係者が他言を禁じた事項 | 会社が話したことだけでなく、税理士が帳簿や資料を見て気づいた事実も含まれる |
| 窃用 | 自らまたは第三者のために利用すること | 外に漏らさなくても、会社の情報を自分や他人の利益のために使うことも禁じられる |
「正当な理由」が本人の許諾を含むということは、裏を返せば、会社が許可すれば税理士は第三者に情報を伝えられるということです。金融機関・別の専門家・グループ会社などに税理士から説明してもらいたいときは、だれに・どの範囲を伝えてよいかを会社側から明示します(国税庁「税理士法基本通達」)。
事務所の職員にも守秘義務がある
会社の資料に実際に触れるのは、税理士本人だけではありません。記帳や申告書の作成を担当する事務所の職員もいます。税理士法54条は、税理士または税理士法人の使用人その他の従業者についても、正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を漏らしたり盗用したりしてはならないと定めており、従業者でなくなった後も同様です。
さらに税理士法41条の2は、税理士が使用人などを使うときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならないと定めています。また通達では、所属税理士から使用者である税理士が知り得た事項も「税理士業務に関して知り得た秘密」に含まれるとされています。事務所の中で担当が変わっても、守秘義務がかかる範囲は変わらないということです。
違反したときの罰則と懲戒
守秘義務に違反した場合の扱いは、刑事罰と懲戒処分の2本立てです。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 刑事罰 | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。38条(税理士)と54条(使用人等)の違反が対象。告訴がなければ公訴を提起できない | 税理士法59条 |
| 懲戒処分 | この法律の規定に違反したときは、財務大臣が懲戒処分をすることができる | 税理士法46条 |
| 懲戒の種類 | 戒告、2年以内の税理士業務の停止、税理士業務の禁止の3種類 | 税理士法44条 |
刑事罰の対象になるのは告訴があった場合なので、情報が漏れたと考えたときに、会社が告訴するかどうかを判断する場面があり得ます。どの手続を取るかは、事実関係と被害の内容によって変わります。
守秘義務の外側にあるもの:会社側で決めること
税理士法の守秘義務は、税理士と、その使用人などに課された義務です。会社の情報を扱う相手がそれ以外の場合や、法律が直接は決めていない部分については、会社側で取り決めておく必要があります。
税理士でない記帳代行業者などに頼む場合
記帳や給与計算を、税理士でない事業者に頼むこともあります。その事業者には税理士法38条・54条の守秘義務はかからないため、秘密の扱いは委託契約の秘密保持条項で決めることになります。税理士に頼む場合でも、記帳の代行や給与計算など、税務代理・税務書類の作成・税務相談以外の業務を含めて頼むときは、契約書で秘密保持の範囲を業務全体に及ぶように書いておくと、境目があいまいになりません。契約書で確認する項目は、顧問契約書で確認すべき項目の記事で扱っています。
従業員のマイナンバーを渡す場合
年末調整や法定調書の作成のために、従業員のマイナンバーを税理士に渡すことがあります。この場合、会社は委託する側として、番号法11条により、委託先で特定個人情報の安全管理が図られるよう必要かつ適切な監督を行う立場にあります。また番号法10条により、委託を受けた者は、委託した者の許諾を得た場合に限って再委託ができます。税理士がさらに外部に作業を出す可能性があるかは、依頼の時点で確かめておきます。
従業員や取引先の個人データを渡す場合
給与や支払先の情報など、個人データの取扱いを委託する場合も、個人情報保護法25条により、会社は委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません。税理士の守秘義務があることと、会社自身の監督の義務は別のものとして考えます。
クラウド会計・チャットで資料を共有するときの確認点
税理士法2条の3は、税理士が業務で電磁的方法を積極的に利用するなどして、納税義務者の利便の向上を図るよう努めると定めています。クラウド会計・共有フォルダ・チャットで資料をやり取りする方法は、広く使われています。共有の方法そのものは法律で細かく決まっていないため、次の点を会社と税理士の間で確認しておきます。
| 確認すること | 具体的に見る点 |
|---|---|
| だれが見られるか | 会計ソフト・共有フォルダの閲覧権限を持つ人(会社側・事務所側の両方)を一覧にできるか |
| 担当者が変わったとき | 事務所側・会社側の退職者や担当替えのとき、アカウントや権限を外す手順があるか |
| 共有リンクの範囲 | リンクを知っている人ならだれでも見られる設定になっていないか |
| チャットのメンバー | 会社と事務所のやり取りの場に、関係のない人が入っていないか |
| マイナンバーの送り方 | ほかの資料とは別に、送る方法と保管場所を決めているか |
| 再委託の有無 | 入力作業などを事務所の外に出すことがあるか、その場合に会社の許諾を取るか |
| 契約終了時 | 共有したデータや資料を返すのか、削除するのか、いつまでに行うのか |
このうち、権限の一覧と契約終了時の扱いは、最初に決めておかないと後から確かめにくい点です。クラウド会計に慣れた税理士の見分け方は、クラウド会計に対応した税理士の見分け方で扱っています。
まとめ:守秘義務は法律で、共有の手順は契約と運用で守る
- 税理士は税理士法38条で、税理士業務に関して知り得た秘密を正当な理由なく漏らしたり窃用したりできず、税理士でなくなった後も同様です。
- 「正当な理由」は本人の許諾または法令に基づく義務です。会社が許可すれば、税理士から第三者へ説明してもらうこともできます。
- 事務所の職員にも税理士法54条で守秘義務があり、税理士には職員を監督する義務があります。
- 違反には2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(告訴が必要)と、戒告・業務停止・業務禁止の懲戒があります。
- 税理士でない業者への委託、マイナンバーや個人データの委託、クラウドでの共有の手順は、契約と運用で会社側から決めておきます。
どこまでを契約に書き、どこからを運用で決めるかは、委託する業務の範囲と扱う情報の種類で変わります。依頼する前に、共有する資料と方法を書き出して確認しておくことが出発点になります。
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よくある質問
Q. 税理士は、会社の情報を税務署に伝えることがありますか?
税理士は会社から依頼を受けて申告や税務調査の対応をするので、その依頼の範囲で会社の情報を税務署に示すのは業務そのものです。また、守秘義務の「正当な理由」には、本人の許諾のほか法令に基づく義務があることも含まれます。どの情報をどう説明するかは、事前に税理士と打ち合わせておくと安心です。
Q. 銀行に決算の内容を説明してほしいとき、税理士に頼めますか?
会社が許可すれば、守秘義務の「正当な理由」(本人の許諾)に当たります。だれに対して、どの資料や内容を説明してよいかを会社から明示しておくと、範囲の行き違いを防げます。
Q. 税理士との契約を終えた後も、守秘義務は続きますか?
税理士法38条の守秘義務は、税理士業務に関して知り得た秘密について課されるもので、税理士でなくなった後も同様とされています。契約を終えた後に預けていた資料やデータをどう扱うかは、法律でなく契約の取り決めになるため、終了時の返却・削除の方法を確認しておきます。
Q. 事務所が入力作業を外部に委託していないか心配です。
依頼する時点で、入力作業などを事務所の外に出すことがあるかを聞いておくのが確実です。マイナンバーを含む事務は、番号法10条により委託した者の許諾がなければ再委託できません。それ以外の情報も、再委託の可否と条件を契約書に書いておくと確認しやすくなります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年11月1日
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