会計・税務に関する
お役立ち情報ブログ

法人の決算申告を自分でする手順と難所|別表・地方税・消費税の作業量

決算
法人の決算申告を自分でする手順と難所|別表・地方税・消費税の作業量

法人の決算申告は、会社の代表者や従業員が自分で行うこともできます。ただし、作るのは法人税の申告書だけではありません。決算書と添付書類、別表、地方税の申告書、課税事業者なら消費税の申告書まであり、提出先も税務署・都道府県・市町村に分かれます。

この記事では、法人の決算申告を自分でする場合の手順を順番に並べ、詰まりやすい箇所(別表・地方税・消費税)と作業量を整理します。顧問税理士が要るかどうかの考え方は顧問税理士はいらないかの記事で扱っているため、ここでは「自分でやるなら何をどこまでするか」に絞ります。

決算申告で作る書類と提出先の全体像

法人税の確定申告書は、確定した決算に基づいて作り、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に税務署長へ提出します(法人税法第74条)。同じ時期に、次の書類をそろえます。

書類 提出先 対象
法人税・地方法人税の確定申告書(別表一ほか) 税務署 全ての法人
防衛特別法人税の確定申告書 税務署 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳明細書・事業等の概況に関する書類 税務署(申告書に添付) 全ての法人
適用額明細書 税務署(申告書に添付) 法人税関係の租税特別措置(中小法人の軽減税率を含む)の適用を受ける法人
消費税の確定申告書 税務署 課税事業者
法人事業税の申告書 都道府県 事業を行う法人
法人住民税(都道府県民税・市町村民税)の申告書 都道府県・市町村 法人税の確定申告書を出す法人

防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から申告が必要になった税で、税額が0円でも申告は必要とされています。適用額明細書は、法人税関係の租税特別措置の適用を受けない法人は提出不要です(国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」)。ただし、黒字の中小法人が使う「中小企業者等の法人税率の特例」も、適用額明細書に記載する措置として国税庁の資料に挙がっています。適用額明細書を添付しないで申告すると、その措置は適用されません(国税庁タックスアンサーNo.5932)。

自分でする場合の手順

決算申告を自分でする場合、作業はおおむね次の順に進みます。前の工程の数字が後の工程の材料になるため、順番を飛ばすと手戻りが増えます。

  1. 記帳を締める:1年分の取引を会計ソフトに入れ、通帳・カード明細と残高を合わせる
  2. 決算整理:棚卸、減価償却、未払・未収・前払の計上、役員報酬や借入金利息の確認
  3. 決算書を作る:貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書
  4. 決算を確定させる:株主総会などで決算書を承認する
  5. 勘定科目内訳明細書と事業等の概況に関する書類を作る
  6. 別表を作る:会計上の利益から税務上の所得と税額を計算する
  7. 地方税の申告書を作る:法人事業税・法人住民税
  8. 消費税の申告書を作る(課税事業者の場合)
  9. 提出と納付:e-Taxまたは書面で税務署へ、地方税は都道府県・市町村へ。期限までに納付する

このうち決算の確定から提出・納付までを、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に終えます。確定申告で納める法人税は、申告書の提出期限までに納付します(法人税法第77条)。決算を承認する株主総会の日程も、この2か月の中に組み込む必要があります。

e-Taxで提出する場合、財務諸表や勘定科目内訳明細書などは、法令上、イメージデータ(PDFなどの画像)では送信できないとされています。会計ソフトや申告書作成ソフトから、e-Taxで受け付ける形式のデータとして出力できるかを先に確かめます。

法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方は顧問契約のお見積りを依頼する →

難所1:別表は「会計の利益」と「税の所得」の差を埋める作業

別表は、国税庁が毎年提供する様式です。令和8年4月1日以後に終了する事業年度分だけでも多数の様式があり、会社の取引に応じて必要なものを選んで作ります。中小企業でよく使う別表の例は次のとおりです。

別表 名称 作業の中身
別表一 各事業年度の所得に係る申告書 税額の計算と申告書の本体
別表二 同族会社等の判定に関する明細書 株主の持株割合から会社の区分を判定する
別表四 所得の金額の計算に関する明細書 損益計算書の利益に加算・減算して所得を出す
別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 税務上の純資産を翌期へつなぐ
別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書 期中に納めた税金と未払の税金を整理する
別表七(一) 欠損金の損金算入等に関する明細書 過去の赤字の繰越しと使用
別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書 交際費のうち損金にならない額の計算
別表十六 減価償却資産の償却額の計算に関する明細書など 償却額が税法の上限内かの確認

別表四は、損益計算書に掲げた当期利益(または当期欠損)から始まります。そこへ、会社が費用として処理したが税法上は損金にならないもの(例:損金にならない税金や交際費の一部)を加算し、逆のものを減算して所得を出します(別表四の記載要領)。何が加算・減算になるかを知らないと、所得を正しく計算できません。ここが自分でする場合のいちばんの難所です。

もう一つの落とし穴は、別表どうしのつながりです。別表四の結果が別表一の税額や別表五(一)へ流れ、別表五(一)・五(二)・七(一)の数字は翌期に引き継がれます。前期まで税理士に頼んでいた会社が自分でする場合は、前期の申告書一式の控えが必ず必要です。また、防衛特別法人税の記載欄は、別表一で法人税・地方法人税の欄とは別の用紙になっているため、提出漏れに注意するよう国税庁が案内しています。

難所2:地方税と消費税は別の申告書・別の判定

地方税

法人事業税は、事業年度終了の日から2か月以内に、確定した決算に基づき、事務所又は事業所所在の都道府県に申告納付します(地方税法第72条の25)。法人住民税は、法人税の確定申告書を出す義務がある法人が、その提出期限までに、法人税割額や均等割額などを記載した申告書を出します(地方税法第53条・第321条の8)。

法人税の申告書から数字を写す部分が多い一方、税率や均等割の額は都道府県・市町村の案内で確かめる必要があり、事務所が複数の都道府県にある場合は分割の計算も加わります(地方税法第72条の48)。所得が赤字の年も、法人住民税の申告書の提出は残ります。

消費税

消費税は、まず課税事業者かどうかの判定から始まります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば原則として納税義務が免除されますが、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、1,000万円以下でも免除されません(国税庁タックスアンサーNo.6501)。課税事業者であれば、課税期間の末日の翌日から2か月以内に申告します(消費税法第45条)。

消費税の申告書を作るには、1年分の取引について課税・非課税・不課税の区分と税率の区分が正しく記帳されている必要があります。区分の誤りは申告書を作る段階では見つけにくく、記帳の段階で確かめておく作業になります。

自分でする場合と依頼する場合の比較

自分でするか依頼するかは、作業の量と、判断を要する論点の数で決まります。会社の状況で変わるため、一律にどちらがよいとは言えません。

作業 自分でする場合 税理士に依頼する場合
記帳と決算整理 自社で行う 自社で行い確認を受ける、または依頼する
別表の作成 加算・減算の判断も自分で行う 税理士が作成し、論点の説明を受ける
地方税・消費税 自治体ごとの申告書も自分で作る 税理士が作成する
提出 e-TaxとeLTAXの利用準備も自分で行う 税理士が代理で提出できる
誤りに気付いたとき 修正申告や更正の請求も自分で行う 依頼先と相談して対応する

たとえば、取引が少なく、消費税が免税で、事務所が1か所、固定資産や在庫もほとんど無い会社なら、自分で作る作業量は比較的小さくなります。反対に、在庫や固定資産が多い、事務所が複数ある、役員との取引がある、消費税の課税事業者であるといった場合は、判断の数が増えます。税額や作業時間の差は、決算の内容を見て試算しないと決まりません。

なお、申告書の作成を外部に頼むときは、相手が税理士か税理士法人かを確かめます。税理士又は税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならないとされています(税理士法第52条)。決算だけを依頼する形もあり、違いは税務顧問と決算のみの違いの記事にまとめています。

まとめ:自分でするなら別表と地方税・消費税の作業量を先に見積もる

  • 決算申告は自社で行うこともできるが、作るのは法人税の申告書だけでなく、決算書・内訳書・概況書・別表・地方税・消費税まである
  • 令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、税額が0円でも防衛特別法人税の申告が必要
  • いちばんの難所は別表四の加算・減算と、別表どうし・前期とのつながり
  • 地方税は提出先が分かれ、赤字でも法人住民税の申告書は残る。消費税は課税事業者の判定から始まる
  • 申告書の作成を外部に頼むなら、相手が税理士か税理士法人かを確かめる

まず前期の申告書一式を並べ、どの別表と地方税の申告書を出しているかを数えると、自分でする場合の作業量の見当が付きます。

決算申告を依頼したい法人の方へ
リーパル会計事務所では、法人の決算申告を単発でもお引き受けしています(最短5日・法人のみ)。個人事業主の方は、顧問契約のご相談・お見積りの窓口をご利用ください。

👉 法人の決算申告を依頼する

👉 顧問契約のお見積りを依頼する(法人・個人事業主)

よくある質問

Q. 赤字の年も決算申告は必要ですか?

必要です。法人税の確定申告書は所得の有無にかかわらず提出し、法人住民税も法人税の確定申告書を出す法人が均等割額などを記載した申告書を出します。防衛特別法人税も、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、税額が0円でも申告が必要です。

Q. 前期まで税理士に頼んでいました。今期から自分でするときに必要なものは何ですか?

前期の法人税・地方税・消費税の申告書と決算書、勘定科目内訳明細書の控え一式です。別表五(一)・五(二)・七(一)など、前期の数字を引き継ぐ別表があるためです。e-Taxで提出する場合は、利用開始の手続も必要です。

Q. 申告書を出した後で誤りに気付いたらどうなりますか?

税額が少なかった場合は修正申告を、多かった場合は更正の請求をします。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です(国税通則法第23条)。誤りの内容によっては加算税がかかることがあります。

Q. 自分で作った申告書を税理士に確認だけしてもらうことはできますか?

依頼先によります。確認だけを受ける形でも、内容に責任を持って見るには記帳や決算書の根拠資料まで確かめる必要があるため、依頼の範囲を事前に決めておきます。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月18日

参考資料

新着情報NEWS

法人成りしたときの会計ソフトの切り替え|個人の事業所から法人用へ移す手順

IT・クラウド会計

会社の解散確定申告から清算確定申告までの流れ|たたむときの税務手続き

決算

社会保険の手続きを外注するときの分担|入社・退職・算定基礎・月額変更

法人向けサービス

freee・マネーフォワードで年末調整を行う手順【令和8年分】改正対応の確認ポイント

IT・クラウド会計

顧問税理士が廃業・引退するとき|引継ぎ先の探し方と会社側の手続き

経営相談

相続した賃貸物件の確定申告|遺産分割前の家賃の分け方と、亡くなった方の準確定申告

税務

賃貸物件を子に移す方法|贈与・売買・相続時精算課税と、移した後の家賃

税務

家賃収入の申告漏れに気づいたとき|期限後申告・修正申告と、さかのぼる年数

税務

夫婦・親子の共有名義の賃貸物件|持分での按分と経費の負担

税務