法人の決算申告で税理士に渡す資料は、「申告書に添付する決算書と内訳書を作るための資料」と考えると整理しやすくなります。中心は、期末日の残高を確かめる資料(通帳・売掛金・在庫・借入金など)と、前期の申告書一式です。申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。
この記事では、法人が決算を税理士に依頼するときに渡す資料を一覧にし、決算月から申告期限までの日程の組み方を整理します。個人事業主の確定申告で渡すものは確定申告で税理士に渡すものの記事にまとめているため、ここでは法人の決算に絞ります。
申告書に添付する書類から逆算する
法人税の確定申告書は、確定した決算に基づいて作り、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出します(法人税法第74条)。申告書には、貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければなりません。
その書類は法人税法施行規則第35条で次のように定められています。税理士に渡す資料は、これらを作るための材料です。
| 添付する書類 | 作るのに必要な資料の例 |
|---|---|
| 貸借対照表・損益計算書 | 1年分の記帳データ、期末日の各残高を確かめる資料 |
| 株主資本等変動計算書 | 前期の決算書、配当や増資の有無が分かる資料 |
| 勘定科目内訳明細書 | 預金・売掛金・在庫・借入金などの期末残高の内訳 |
| 事業等の概況に関する書類 | 事業の内容、従業員や役員の状況など会社の概要 |
勘定科目内訳明細書には、期末の残高を相手先ごとなどに分けて記載します。そのため「1年分の取引」だけでなく「期末日の残高とその内訳」が分かる資料がそろっているかが、決算の進み方を大きく左右します。
税理士に渡す資料の一覧
会社の状況によって不要なものもありますが、法人の決算で税理士に渡す資料は、おおむね次のとおりです。
前期と会社の基本情報
| 資料 | 使い道 |
|---|---|
| 前期の法人税・地方税・消費税の申告書と決算書、勘定科目内訳明細書 | 期首の残高の確認、前期から繰り越す金額の確認 |
| 当期に納めた中間申告の税額が分かる書類 | 確定申告で差し引く税額の確認 |
| 定款、登記事項の変更があればその内容 | 事業年度・役員・本店所在地の確認 |
| 株主名簿(株主や持株数に変更があれば、その内容) | 申告書に記載する株主の情報 |
| 税務署・都道府県・市町村に出した届出書の控え | 青色申告、消費税の届出、事務所の数などの確認 |
期末日の残高を確かめる資料
| 資料 | 使い道 |
|---|---|
| 全口座の通帳・入出金明細(期末日を含むもの)、必要に応じて残高証明書 | 預金残高の確定と内訳 |
| 期末日の現金の残高 | 現金残高の確定 |
| 期末の売掛金・未収入金の一覧(請求書控え) | 売上と債権の確定 |
| 期末の在庫の棚卸表(品目・数量・単価) | 棚卸資産と売上原価 |
| 期末の買掛金・未払金の一覧(請求書) | 仕入・経費と債務の確定 |
| 借入金の返済予定表、期末残高の分かる書類 | 借入金残高と支払利息の区分 |
| 保険料の支払内容が分かる保険証券など | 前払・資産計上の有無の確認 |
1年間の取引と契約
| 資料 | 使い道 |
|---|---|
| 売上・仕入・経費の請求書、領収書、クレジットカード明細 | 記帳の確認と証憑の確認 |
| 固定資産の購入・売却・廃棄の契約書や請求書 | 資産の計上と減価償却 |
| 新しく結んだ賃貸借・リース・保険などの契約書 | 費用の計上時期や資産・負債の確認 |
| 賃金台帳、役員報酬の決定の記録、源泉所得税の納付書、社会保険料の通知 | 人件費・預り金・役員給与の確認 |
| 役員や株主との取引(貸付・借入・立替など)の記録 | 役員貸付金・借入金の残高の確認 |
消費税と地方税のために伝えること
消費税の課税事業者であれば、売上と仕入の税率(標準税率と軽減税率)の区分が分かる請求書や領収書が必要です。簡易課税制度などの届出を出している場合は、その控えも渡します。
法人事業税は、事業年度終了の日から2か月以内に、確定した決算に基づき、事務所又は事業所所在の都道府県に申告納付します(地方税法第72条の25)。期中に事務所や店舗を開設・移転・廃止した場合は、その時期と所在地を必ず伝えます。申告先が変わることがあり、2つ以上の都道府県に事務所や事業所がある法人は、課税標準を各都道府県に分割して申告する計算も必要になるためです(地方税法第72条の48)。
会計ソフトで口座やカードを連携している場合も、連携の取り込みが止まっている期間が無いか、期末日の残高がソフトと通帳で一致しているかを確かめてから渡すと、確認の往復が減ります。
決算月から申告期限までの日程
申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。確定申告で納める法人税は、申告書の提出期限までに納付します(法人税法第77条)。消費税の課税事業者であれば、消費税も課税期間の末日の翌日から2か月以内に申告します(消費税法第45条)。期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限になります(国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」)。
たとえば事業年度の終了日が2026年12月31日の法人は、2か月後の2027年2月28日が日曜日のため、申告期限は2027年3月1日(月曜日)です。2027年3月31日が終了日の法人なら、期限は2027年5月31日(月曜日)です。暦によって期限がずれるため、日付は毎回確かめます。
2か月の中で、決算作業はおおむね次の流れで進みます。期間は目安で、会社の規模や資料の状態で変わります。
| 時期 | 会社がすること | 税理士側の作業 |
|---|---|---|
| 決算月の前月〜決算月 | 期中の記帳を締める。棚卸の段取り、売掛金・未払金の洗い出しの準備 | 期中の数字の確認、決算前の論点の洗い出し |
| 事業年度の終了日 | 在庫の棚卸、現金の残高確認。必要なら金融機関へ残高証明書を依頼 | |
| 終了日から2〜3週間 | 上の一覧の資料をそろえて渡す | 記帳の確認、決算整理 |
| 3〜6週間 | 質問への回答、追加資料の提出 | 決算書・内訳書の作成、税額の計算 |
| 6〜8週間 | 決算書と申告書の内容確認、決算の承認、納付資金の準備 | 申告書の最終確認、電子申告 |
| 期限まで | 法人税・地方税・消費税の納付 | 納付額の連絡 |
申告書は確定した決算に基づいて作るため、株主総会などで決算を確定させる日程も、この2か月の中に組み込みます。定時総会を2か月以内に開けない常況にある法人には申告期限の延長の特例がありますが、事業年度終了の日までの申請が必要です(法人税法第75条の2)。この特例を受ける法人は、届出により消費税の申告期限も1か月延ばせます(消費税法第45条の2)。災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合の延長は別の制度で、事業年度終了の日の翌日から45日以内に申請します(法人税法第75条)。
事業年度の終了日にしかできないこと
決算の資料の中には、後からでは正確に作れないものがあります。終了日の前に段取りを決めておきます。
- 在庫の棚卸:期末日の数量は、その日に数えないと分からなくなります。品目・数量・単価を記録し、数えた人と日付も残します。
- 現金の残高:帳簿の残高と実際の残高が合っているかを、期末日に確かめます。
- 残高の確認の依頼:預金や借入金の残高証明書は、期末日の残高について金融機関に依頼して発行してもらうものです。必要かどうかは税理士と相談して決めます。
- 未払・未収の洗い出し:期末日までに納品や役務の提供を受けたのに請求書が届いていないもの、提供したのに請求していないものを一覧にします。
資料の状態で、依頼の範囲と見積りが変わる
決算を税理士に依頼するときの見積りは、資料の状態で大きく変わります。たとえば次の点です。
- 記帳が済んでいるか(会計ソフトに1年分が入っているか、領収書の束から入力するか)
- 仕訳の数と、口座・カードの数
- 在庫や固定資産の有無、業種
- 消費税の課税事業者か、事務所や店舗のある自治体の数
- 決算月(依頼が集中する時期かどうか)と、期限までの残り日数
毎月の記帳を自社で締め、上の一覧の資料を期末後すぐに渡せる状態なら、税理士側の作業は決算整理と申告書の作成が中心になります。反対に、1年分の記帳から頼む場合は、資料を渡す時期を早めないと期限に間に合いません。なお、記帳は会社でもできますが、申告書の作成や税務代理、税務相談は税理士の業務です(税理士法第2条)。税務顧問と決算のみの依頼の違いは税務顧問と決算のみの違いの記事、決算書の種類と役割は法人決算書の種類の記事を参考にしてください。
まとめ:期末残高の資料と前期の申告書を先にそろえる
- 申告書には決算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳明細書・事業等の概況に関する書類を添付する。渡す資料はそのための材料
- 優先するのは期末日の残高を確かめる資料(通帳・売掛金・在庫・買掛金・借入金)と前期の申告書一式
- 申告と納付の期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。休日等なら翌日になる
- 棚卸や現金の確認は期末日にしかできないため、決算月のうちに段取りを決める
- 資料の状態と残り日数で、依頼の範囲と見積りが変わる
決算月に入ってから慌てないよう、上の一覧を社内の決算準備表として使ってください。
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よくある質問
Q. 残高証明書は必ず用意しなければなりませんか?
残高証明書は、預金や借入金の期末日の残高を金融機関に証明してもらう書類で、通帳や入出金明細で期末日の残高が確かめられる場合は、別に用意しないこともあります。複数の金融機関と取引がある場合や、借入金の残高を確かめたい場合などに使います。どこまで用意するかは依頼先と相談して決めます。
Q. 在庫の棚卸を期末日に忘れました。どうすればよいですか?
数えた日の実際の数量から、期末日以降の入出庫を加減して期末日の数量を推計する方法が考えられます。入出庫の記録が無いと推計が難しくなるため、できるだけ早く数え、期末日以降の仕入と出荷の記録をそろえます。次の期からは、期末日に数える段取りを先に決めておきます。
Q. 資料は紙で渡すのと、データで渡すのとどちらがよいですか?
依頼先の受け取り方によります。通帳やカード明細は会計ソフトの連携データやPDFで、契約書や請求書はスキャンしたデータで受け取る依頼先もあります。期末日の残高が分かるページが含まれているかは、どちらの場合も確かめます。
Q. 決算の後、次に税金を納めるのはいつですか?
前期の実績によっては、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に中間申告をすることになります(国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」)。中間申告が必要かどうかは前期の税額によって分かれるため、確定申告のときに依頼先に確かめておきます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月16日
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