「借入はできたが、返済計画を立てないまま走り出してしまった」「毎月の返済が利益を上回っていて資金が減り続けている」——そう感じている中小企業経営者の方は少なくありません。借入金の返済計画(=いつ・いくら・どの原資で返すかをあらかじめ数字で設計したもの)は、借りる前に立てるのが理想ですが、借りた後でも整えることで資金繰りは大きく安定します。返済は利益から行うものであり、感覚で組むと資金ショートを招きます。本記事では、無理のない返済計画の作り方を、返済原資の考え方から具体的な手順まで整理します。
なぜ借入金の返済計画が必要なのか——返済は利益から行うものだから
利益と返済額のズレが資金を削る
借入金の元本返済は、損益計算書上の費用にはなりません。つまり、利益が出ていても、その利益を超える元本返済をしていれば手元の現金は減り続けます。ここを理解しないまま借入を増やすと、「黒字なのに資金が苦しい」状態に陥ります。返済計画とは、この「返済に回せる利益」と「実際の返済額」を一致させる作業にほかなりません。
計画があるから金融機関も安心して付き合える
返済計画を数字で示せる経営者は、金融機関からの信頼も得やすくなります。返済の見通しが立っていることは、追加融資や条件変更の交渉でも有利に働きます。リーパル会計事務所では、返済原資を利益とキャッシュフローから明確にし、金融機関に説明できる返済計画づくりを支援しています。
返済原資の考え方——何から返すのかを明確にする
返済原資は「税引後利益+減価償却費」が基本
返済の元手となる返済原資は、おおまかに「税引後利益+減価償却費」で考えるのが基本です。減価償却費(=設備などの取得費用を耐用年数にわたって費用配分する会計処理)は現金の支出を伴わない費用のため、その分は手元に現金として残り、返済に充てられるからです。この返済原資が、年間の元本返済額を上回っているかどうかが、返済の無理のなさを測る出発点になります。
返済余力を簡易に把握する
年間の返済原資と年間の元本返済額を比較すれば、返済に余裕があるか、ギリギリか、不足しているかをおおまかに把握できます。返済額が返済原資を上回っている場合は、手元資金を取り崩しながら返している状態であり、早めに見直しが必要です。
| 項目 | 内容 | 確認の視点 |
|---|---|---|
| 税引後利益 | 税金を引いた後の利益 | 安定的に確保できているか |
| 減価償却費 | 現金支出を伴わない費用 | 設備投資後は大きくなる |
| 返済原資 | 税引後利益+減価償却費 | 年間の元本返済額を上回るか |
| 年間元本返済額 | 1年間に返す元本の合計 | 返済原資の範囲内に収まるか |
返済原資の前提となる利益やキャッシュの読み方は資金繰り改善の方法10選もあわせてご確認ください。
借入金返済計画の作り方——手順を整理する
手順1:現在の借入を一覧化する
複数の借入がある場合は、まずすべての借入を一覧にします。借入先・残高・金利・毎月の返済額・完済予定時期を整理すると、返済負担がどの時期に集中するかが見えてきます。この全体像の把握が、計画づくりの土台です。
手順2:返済原資の範囲で返済額を設計する
次に、年間の返済原資を算出し、その範囲に元本返済額が収まるように設計します。新規の借入を検討する際も、返済額が返済原資を超えない範囲に抑えることが基本です。超える場合は、借入額を減らすか、返済期間を延ばして月々の負担を下げる方向で調整します。
手順3:返済表と資金繰り表を連動させる
返済計画は、資金繰り表(=毎月の現金の入出金を予測する管理表)と連動させて初めて機能します。毎月の返済額を資金繰り表に落とし込むと、どの月に資金が薄くなるかを事前に把握できます。これにより、賞与資金や納税資金と返済が重なる時期に備えられます。事業計画として整える際は融資審査に通る事業計画書の書き方も参考になります。
手順4:返済が苦しいときは早めに相談する
業績の変動で返済が苦しくなることもあります。その場合は、放置せず早めに金融機関へ相談することが重要です。返済期間の延長(リスケジュール)など、条件を見直せる余地があるからです。リーパル会計事務所では、返済が厳しくなる前に資金繰りの予兆を捉え、金融機関との条件交渉に同席する支援を行っています。
返済計画でつまずきやすいポイントと対策
利益と返済を混同してしまう
返済計画でつまずく最大の原因は、損益と資金の感覚が結びついていないことです。利益が出ているという安心感から借入を増やし、気づけば元本返済が利益を上回っていた、というケースは珍しくありません。元本返済は費用ではないという原則を、経営判断のたびに意識することが、過剰な借入を防ぐ第一歩になります。
季節変動と納税のタイミングを見落とす
返済額は毎月一定でも、入金は季節によって波があります。売上が落ち込む時期や、納税が集中する時期に返済が重なると、その月だけ資金が一気に薄くなります。年間を通じた資金繰り表に返済と納税を並べて落とし込み、資金が薄くなる月を事前に把握しておくことで、賞与資金や納税資金との衝突を避けられます。
繰り上げ返済を急ぎすぎる
手元資金に余裕が出ると、早く借金を減らしたいという心理から繰り上げ返済を急ぐことがあります。しかし、手元資金を厚く保つことは、不測の事態への備えでもあります。繰り上げ返済は、当面の運転資金や納税資金を確保したうえで、無理のない範囲で行うのが基本です。リーパル会計事務所では、返済と手元資金のバランスを数字で示しながら、安心して事業を続けられる返済計画づくりを支援しています。
なお、借入や事業資金の制度については公的機関の情報も役立ちます。日本政策金融公庫などの公式情報とあわせて確認することをお勧めします。自社の返済計画を無理のない形に整えたい経営者の方は、リーパル会計事務所までお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 借入金の元本返済はなぜ経費にならないのですか。
A. 元本の返済は借りたお金を返す行為であり、費用の支出ではないためです。経費になるのは利息部分のみです。そのため、利益が出ていても元本返済が大きいと現金は減るという現象が起こります。
Q. 無理のない返済額の目安はありますか。
A. 年間の元本返済額が「税引後利益+減価償却費」で計算した返済原資の範囲に収まっていることが、一つの目安になります。これを超えている場合は、手元資金を取り崩している状態であり、見直しが必要です。
Q. 複数の借入がある場合、どう整理すればよいですか。
A. まず借入先・残高・金利・返済額・完済時期を一覧化し、返済が集中する時期を把握します。そのうえで、金利の高いものから繰り上げ返済する、返済時期を分散させるなど、資金繰り全体のバランスで判断します。
Q. 返済が苦しくなったらどうすればよいですか。
A. 早めに金融機関へ相談することをお勧めします。返済期間を延ばすリスケジュールなど、条件を見直せる場合があります。資金が完全に尽きてから相談するよりも、余力があるうちに動くほうが選択肢は広がります。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。無理のない返済計画は、利益・減価償却費・資金繰りの見通しを踏まえて設計する必要があります。自社の返済計画を整え、資金繰りの不安を解消したい経営者の方は、リーパル会計事務所までお気軽にご相談ください。
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