会計・税務に関する
お役立ち情報ブログ

税理士法人と個人の税理士事務所の違い|担当体制と継続性で比べる

経営相談
税理士法人と個人の税理士事務所の違い|担当体制と継続性で比べる

税理士法人は、税理士業務を組織的に行うために、税理士が共同して設立する法人です。個人の税理士事務所と比べたときの違いは、できる業務の範囲ではなく、契約の相手、事務所の数、社員の責任、税理士が欠けたときに事務所が続くかどうか、といった「組織の仕組み」にあります。

この記事では、税理士法48条の2以下の条文をもとに、税理士法人と個人の税理士事務所の違いを表で整理します。どちらが合うかは会社の事情で分かれるので、比べるときに確かめる点もあわせて説明します。税理士どうしを比べる一般的な基準は顧問税理士の選び方で扱っています。

税理士法人とは:税理士が共同して設立する法人

税理士法48条の2は、税理士法人を「税理士業務を組織的に行うことを目的として、税理士が共同して設立した法人」と定めています。社員(出資して経営に加わる人)は税理士でなければならず(48条の4)、設立するときは社員になろうとする税理士が共同して定款を定め(48条の8)、主たる事務所の所在地で設立の登記をして成立します(48条の9)。

社員の人数にも決まりがあります。税理士法人は、社員が1人になり、その日から引き続き6か月間、社員が2人以上にならなかった場合は、その6か月を経過した時に解散します(48条の18第2項)。国税庁『No.9203 税理士制度について』も、税理士法人は複数の税理士が社員となり、定款を定めて登記することにより設立されると説明しています。

名称には「税理士法人」という文字を使わなければなりません(48条の3)。名刺や契約書の名義に「税理士法人」とあれば法人、税理士個人の名前や「税理士事務所」とあれば個人の税理士が契約の相手、と読み分けられます。

税理士法人と個人の税理士事務所の違い一覧

項目 個人の税理士事務所 税理士法人
契約の相手 税理士個人 法人
行える業務 税理士業務と、それに付随する財務書類の作成・記帳の代行など(2条) 税理士業務のほか、定款で定めるところにより2条2項の業務など(48条の5)
事務所の数 税理士事務所は1つだけ(40条3項) 複数の事務所を置ける。各事務所には、その地域の税理士会の会員である社員が常駐する(48条の12)
税理士の人数 税理士個人の事務所。他の税理士が補助者として業務に従事することはできる(2条3項) 社員は税理士で、1人の状態が6か月続くと解散(48条の4・48条の18第2項)
債務の責任 税理士個人が負う 法人の財産で完済できないときなどは、社員が連帯して弁済する責任を負う(48条の21で会社法580条1項を準用)
税理士が欠けたとき 税理士の死亡・業務の廃止で登録が抹消される(26条1項) 社員が脱退しても、社員が2人以上いれば法人は続く(48条の17・48条の18)
合併 ― 合併後の法人が、消滅する法人の権利義務を承継する(48条の19第4項)
処分の対象 税理士個人への懲戒処分 法人への戒告・業務停止・解散命令と、社員である税理士への懲戒処分(48条の20)

税理士法2条3項は、税理士が他の税理士や税理士法人の補助者として業務に従事することを認めています。個人事務所でも税理士が1人とは限らず、法人でも担当が社員とは限りません。誰が担当するかは、形態を問わず契約前に確かめる点です。

債務の責任の負い方

個人の税理士事務所では、契約上の責任を負うのは税理士本人です。税理士法人では、契約の相手である法人がまず責任を負い、法人の財産で債務を完済できない場合や、法人の財産への強制執行が効を奏しなかった場合には、社員が連帯して弁済する責任を負います(税理士法48条の21により会社法580条1項を準用)。法人だからといって、社員の責任が出資の範囲に限られる仕組みではありません。

法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方は顧問契約のお見積りを依頼する →

継続性:税理士が欠けたときに起きること

個人の税理士事務所では、契約の相手は税理士本人です。税理士が業務を廃止したときや死亡したときは、日本税理士会連合会が遅滞なく登録を抹消します(税理士法26条1項)。登録がなくなれば税理士業務はできないので、その事務所に税務代理や申告書の作成を続けてもらうことはできません。決算や申告の期限が近い時期に重なると、新しい税理士を急いで探すことになります。

税理士法人では、契約の相手は法人です。社員である税理士が登録の抹消などで脱退しても(48条の17)、社員が2人以上残っていれば法人は存続します。社員が1人になった場合も、6か月以内に社員が2人以上に戻れば解散しません(48条の18第2項)。法人どうしが合併した場合は、合併後の法人が消滅する法人の権利義務を承継します(48条の19第4項)。

ただし、法人が続くことと、担当者が続くことは別です。担当していた税理士や職員が退職すれば、法人の中で担当が替わります。どちらの形態でも、担当者が替わるときの引継ぎの方法を契約前に聞いておくと判断しやすくなります。

担当体制:法人なら、どの事務所と社員が担当するかを確かめる

税理士法人は複数の事務所を置くことができ、各事務所には、その事務所の所在地を含む区域の税理士会の会員である社員が常駐します(48条の12)。法人に頼むときは、法人に特有の点として、次の2つを確かめておきます。

確かめること 聞き方の例
担当する事務所 本店と支店のどちらの事務所が担当しますか
常駐する社員 担当する事務所に常駐している社員は誰ですか

このほか、申告書を確認する税理士は誰か、日々の連絡相手は誰か、職員が実務を担当するときに税理士がどう確認しているかは、法人か個人かを問わず確かめる点です。

比べるときに確かめること:形態より中身を見る

形態だけで、どちらが合うかは決まりません。会社の事情によって、見るべき点が分かれます。

  • 拠点が複数ある会社:個人の税理士事務所は1つだけなので(40条3項)、複数の拠点で対面の対応を望むなら、法人の事務所の配置が判断材料になります。オンラインでのやり取りが中心なら、事務所の場所の重みは下がります。
  • 担当者との継続した関係を重視する会社:法人か個人かよりも、担当者が長く続けられる体制か、替わるときの引継ぎがどうなっているかが判断材料になります。
  • 業種や取引に専門性が要る会社:形態に関係なく、同じ業種・規模の申告を担当しているかを聞いておくと判断しやすくなります。

契約前には、契約書の当事者(法人名か税理士個人か)と業務の範囲を確かめておきます。契約書の確認項目は税理士の顧問契約書で確認すべき9項目にまとめています。

登録の確かめ方

税理士法人は成立したとき、税理士会を経由して日本税理士会連合会に届け出ることになっており、日本税理士会連合会は税理士法人の名簿を作成します(48条の10)。国税庁『税理士をお探しの方へ』は、日本税理士会連合会のホームページで、登録されているすべての税理士・税理士法人の情報を見られると案内しています。

まとめ:違いは組織の仕組み。担当体制と引継ぎを確かめて選ぶ

  • 税理士法人は、税理士が共同して設立する法人で、社員は税理士に限られます。社員が1人の状態が6か月続くと解散します。
  • 行える業務の範囲は、個人の税理士事務所と大きく変わりません。
  • 個人の税理士は事務所を1つしか設けられず、税理士法人は社員を常駐させて複数の事務所を置けます。
  • 個人事務所は税理士の死亡・廃業で登録が抹消され、法人は社員が2人以上いれば続きます。ただし担当者が続くかは別の問題です。
  • 法人に頼むときは、担当する事務所と、そこに常駐する社員を確かめます。担当者が替わるときの引継ぎは、どちらの形態でも確かめます。

形態の違いを知ったうえで、会社にとって大事な点(拠点・継続性・専門性)を担当体制の中身で比べると、選びやすくなります。

顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。

👉 顧問契約のお見積りを依頼する

よくある質問

Q. 税理士法人に頼めば、担当が替わっても安心ですか?

法人は社員が欠けても存続する仕組みですが、担当者は退職や配置換えで替わることがあります。安心できるかは、担当が替わるときの引継ぎの方法と、申告書を確認する税理士が誰かで決まります。契約前にこの2点を聞いておくと判断しやすくなります。

Q. 個人の税理士事務所の税理士が亡くなったら、申告はどうなりますか?

税理士が死亡すると登録が抹消され(税理士法26条1項2号)、その税理士は申告書の作成や税務代理を続けられません。申告の期限は会社の側に残るので、新しい税理士を探して引き継ぐ必要があります。預けていた帳簿や申告書の控えの返却もあわせて確認します。

Q. 税理士法人の支店に頼むと、本店の税理士が担当してくれますか?

税理士法人の各事務所には、その地域の税理士会の会員である社員が常駐することになっています(税理士法48条の12)。実際にどの事務所の誰が担当するかは法人ごとに違うので、契約前に担当する事務所と税理士を確かめてください。

Q. 税理士法人の社員と、法人に勤める税理士は何が違いますか?

社員は法人に出資して経営に加わる税理士で、すべて業務を執行する権利を持ち義務を負います(税理士法48条の11)。社員は、自分や第三者のために法人の業務の範囲に属する業務を行うことが禁じられています(48条の14)。法人に勤める税理士は、補助者として業務に従事する立場です(2条3項)。

Q. 顧問先の税理士法人が合併したら、契約はどうなりますか?

税理士法48条の19第4項により、合併後に存続する法人や新しく設立された法人が、合併で消滅する法人の権利義務を承継します。担当者や連絡先、契約の条件に変更があるかは、合併の知らせを受けた時点で確かめておくと安心です。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月17日

参考資料

新着情報NEWS

法人成りしたときの会計ソフトの切り替え|個人の事業所から法人用へ移す手順

IT・クラウド会計

会社の解散確定申告から清算確定申告までの流れ|たたむときの税務手続き

決算

社会保険の手続きを外注するときの分担|入社・退職・算定基礎・月額変更

法人向けサービス

freee・マネーフォワードで年末調整を行う手順【令和8年分】改正対応の確認ポイント

IT・クラウド会計

顧問税理士が廃業・引退するとき|引継ぎ先の探し方と会社側の手続き

経営相談

相続した賃貸物件の確定申告|遺産分割前の家賃の分け方と、亡くなった方の準確定申告

税務

賃貸物件を子に移す方法|贈与・売買・相続時精算課税と、移した後の家賃

税務

家賃収入の申告漏れに気づいたとき|期限後申告・修正申告と、さかのぼる年数

税務

夫婦・親子の共有名義の賃貸物件|持分での按分と経費の負担

税務