「年末に入った翌年分の家賃は、どちらの年で申告するのか」「敷金も入金額に含めてよいのか」と迷っていませんか。結論は、家賃は原則として契約上の支払日で、敷金は返還の約束で判断し、礼金・更新料は引渡しや契約の効力発生日を確認することです。
この記事は「大家さんの税金と確定申告の連載|家賃収入の申告から、法人化・相続まで」の第4回です。
個人の大家さんに向けて、2026年10月時点で確認できる所得税の取扱いを整理します。通帳にお金が入った日と、申告上の収入にする日は一致しないことがあります。年をまたぐ家賃と契約時の一時金を分けると、申告する年の取り違えを防ぎやすくなります。
家賃・共益費は、まず契約上の支払日を確認する
「収入計上」とは、申告の計算に使う収入として帳簿に載せることです。不動産所得は、家賃などの総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。先に収入の年をそろえ、そのうえで経費を集計する順番で考えましょう。
家賃・地代・共益費は、契約や慣習で支払日が決まっていれば、その日を基準にします。支払日が決まっていなければ、実際に支払を受けた日です。ただし、請求を受けて支払う約束なら、請求した日が基準になります。「何月分か」と「いつ支払う約束か」を分けて読むことが出発点です。
不動産所得の全体像は、大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説で整理しています。ここでは、収入をどの年に入れるかに絞ります。
| 受け取るお金 | 収入にする時期の基本 | 照合する資料 |
|---|---|---|
| 家賃・地代・共益費 | 原則は契約や慣習で定めた支払日。定めがなければ受領日。請求時払いの約束なら請求日 | 賃貸借契約書、請求書、入金明細 |
| 翌年分の前受家賃 | 原則は上と同じ。一定要件のもとで賃貸期間に対応させる方法もある | 契約上の支払日、前年の帳簿、前受収益の明細 |
| 返還する敷金・保証金 | 受け取った時点では収入にしない | 返還条項、敷金の預り残高 |
| 返還しない敷金・保証金 | 返還不要が確定する時期による。契約当初から返還不要の部分にも注意 | 敷引き・償却の条項、契約終了時の精算書 |
| 礼金・更新料などの一時金 | 原則は引渡日。引渡しを要しないものは契約の効力発生日 | 契約書、更新合意書、引渡しの記録 |
表は通常の賃貸借を前提とした整理です。契約の存在自体が争われ、判決や和解で過去の賃料相当額が決まった場合には、別の取扱いがあります。単なる入金の遅れと、契約をめぐる争いは分けて確認します。
前受家賃は、原則と期間に対応させる方法を分ける
翌年分でも、年内に支払日が来れば原則は年内の収入
前受家賃とは、これから貸す期間の家賃を先に受け取ったものです。「翌年の家賃だから翌年に申告する」とは限りません。原則の支払日基準で処理しているなら、翌年分でも契約上の支払日が年内に来る家賃は、その年の収入になります。
次は説明のための架空の例です。月額家賃は10万円で、2027年1月分の支払日を2026年12月25日とする契約です。実際の入金が2026年12月24日だった場合、支払日基準では10万円を2026年分の収入にします。対象月が2027年1月であることだけを理由に、翌年へ送る処理はしません。
この例で見るべき資料は、通帳だけではありません。契約書の支払条項に加え、何月分の支払いかが分かる明細を残します。同じ日に複数月分が入ったときも、対象月と約束の支払日を個別に整理すると、年の境目を説明できます。
賃貸期間に対応させるには、継続した記帳などが必要
一方、継続的に帳簿を付け、賃貸料収入の全部を貸付期間に対応させ、前受収益・未収収益の経理をしているなどの要件を満たす場合は、貸した期間に対応する年の収入にする方法も認められます。現金主義の特例を適用している場合は除きます。前受収益は将来の期間に対応する受取済みの収益、未収収益は経過した期間に対応する未受領の収益です。
事業的規模でない大家さんでも、この取扱いはあります。ただし、対象は1年以内の期間にかかる賃貸料収入で、継続記帳などの要件を満たす必要があります。事業的規模で行う場合に1年を超える期間の賃貸料収入をこの方法で処理するには、前受収益または未収収益の明細書の確定申告書への添付も必要です。
この方法を継続して適用し、要件を満たしているなら、先ほどの2027年1月分は2027年の収入に対応させます。ただし、礼金・更新料などの一時金は、この期間対応の対象に含まれません。家賃と同じように翌年以降へ配分しないようにします。
方法を変える年には、収入の抜けや二重計上を防ぐための調整が定められています。年末分だけ翌年に移すのではなく、前年に収入にした範囲と、変更後に収入にする範囲を照合してください。「前受家賃」という勘定名を付けただけで要件を満たすわけではありません。
敷金・保証金は、返す部分と返さない部分を分ける
敷金や保証金は、本来、返還を前提に預かるお金です。返還義務のある部分は、受け取った時点では収入にしません。預り金、つまり後で返す義務のあるお金として、家賃とは別に残高を管理します。
一方で、返還しないことになった部分は収入の対象です。「敷金」という名前だけでは判断できません。契約上いつ返還不要となるかにより、次のように整理します。
- 貸付期間の経過に関係なく返還しない部分は、原則として引渡日、引渡しを要しない場合は契約の効力発生日。
- 貸付期間の経過に応じて返還しなくなる部分は、契約の定めにより返還不要となった日。
- 貸付けが終了しないと返還不要が確定しない部分で、終了により確定した金額は、貸付けが終了した日。
次は説明のための架空の例です。2026年10月1日に物件を引き渡し、同日に敷金20万円を受け取りました。契約は、期間の経過に関係なく5万円を返還せず、残る15万円は返還する内容とします。この場合、原則として5万円を2026年分の収入にし、15万円は預り金として管理します。
契約書では「敷引き」「保証金償却」と書かれることもあります。保証金の償却は、返還しない部分を定める契約上の扱いです。建物の取得費を各年の必要経費に配分する減価償却の説明は、中古アパートの減価償却|耐用年数の出し方と、建物と土地の分け方を参照してください。
退去精算では、敷金から差し引いた金額の内訳も残します。すでに収入にした未収家賃への充当であれば、家賃を回収する処理であり、同じ金額を再び新たな収入にしません。契約上の返還不要額と、未収家賃の回収を混ぜないことが大切です。
礼金・更新料は、入金日より引渡しと効力発生日を見る
家屋や土地を貸す際に一時に受け取る礼金・権利金などは、原則として、引渡しが必要なら引渡日、不要なら契約の効力発生日に収入計上します。契約の効力発生日とは、その契約の効果が生じる日です。契約書への署名日や、振込日と同じとは限りません。
なお、引渡しが必要なものでも、契約の効力発生日で総収入金額に算入して申告した場合には、その処理を認める取扱いがあります。過去の申告を確認するときは、引渡日との違いだけで誤りと決めず、採用した処理と契約内容を照合します。
更新料も、一時金のルールで確認します。物件の引渡しを要しない更新なら、更新契約の効力発生日が基準です。毎月の家賃と同じ支払日基準で処理すると、申告する年がずれることがあります。
次は説明のための架空の例です。引渡しを要しない更新契約の効力発生日が2027年1月1日で、更新料10万円を2026年12月20日に受け取りました。この更新料は2027年分の収入に計上します。先に入金があったことを理由に2026年分に入れたり、更新後の期間へ分割したりする処理とは分けて考えます。
更新時の明細では、大家さんが受け取る更新料と、管理会社が受け取る更新事務手数料などを見分けましょう。自分に帰属する金額はどれか、根拠となる契約はどれかを整理してから、計上する日を判断します。
年末は契約書・帳簿・入金明細を照合する
通帳の入金を順に足すだけでは、前受分と未収分の区別がつきません。物件や部屋ごとに「対象月」「契約上の支払日」「実際の入金日」「収入にする年」を並べると、確認が進みます。礼金・更新料・敷金は、毎月の家賃と別の欄で整理すると見落としを減らせます。
集金代行を管理会社に頼んでいる場合も、大家さんへの送金日だけで年分を決めず、賃貸借契約と集金明細を確認します。契約上の支払日と送金日を別々に記録しておくと、年末に入金がずれた理由をたどれます。
自分の賃貸経営で確認するチェックリスト
- 家賃・共益費の支払日を、契約書や変更合意書で確認したか。
- 年末に受け取った家賃の対象月と、収入にする年を区別したか。
- 前年の帳簿と同じ計上方法か。期間対応の方法なら、その要件を確認したか。
- 年末の未収家賃と、前年以前に収入にした家賃の回収を区別したか。
- 敷金の返還条項と返還不要額を確認し、入金のない償却も拾ったか。
- 礼金・更新料の引渡日や効力発生日を、契約書類と照合したか。
- 退去精算書の内訳と、敷金の預り残高がつながっているか。
確認後は、判断の根拠となった契約条項や精算書を、その年の収入明細と一緒に整理しておきましょう。翌年の入金を見たときに、前年に収入にしたものかを確認できます。相続で大家さんになった方も、通帳と併せて、契約書や敷金の残高資料の引継ぎ状況を点検すると整理しやすくなります。
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まとめ
家賃の計上時期は、原則として契約や慣習で定めた支払日で判断します。前受家賃を賃貸期間に対応させるには、継続記帳などの要件の確認が必要です。敷金は返還する部分を預り金とし、返還不要の部分は契約に応じて収入にします。礼金・更新料は引渡日や契約の効力発生日を確認し、通帳・契約書・前年の帳簿を照合して、収入の抜けと重複を防ぎましょう。
よくある質問
Q. 年末に入っていない家賃は、翌年の収入でよいですか。
原則の支払日基準では、契約上の支払日が年内なら、未入金でもその年の収入です。後日の入金は未収家賃の回収として区別します。滞納していることだけを理由に収入から外す扱いにはなりません。
Q. 敷金を返した年は、その金額を経費にしますか。
返還義務のある敷金を預り金として処理していた場合、その返還は預り残高を減らす処理です。受け取ったときの収入と、返したときの経費をそれぞれ立てる考え方ではありません。
Q. 入金日だけで収入を計算する方法は使えますか。
小規模事業者の要件を満たす青色申告者には、届出をして現金の収支を基準に計算する「現金主義」の特例があります。青色申告であれば自動で使えるわけではありません。賃貸期間に対応させる方法とも別なので、現在の届出と帳簿の処理を確認してください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
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