最終更新日: 2026年4月21日
確定申告の医療費控除|対象となる費用と申請方法をわかりやすく解説
「家族の医療費が10万円を超えそうだが、医療費控除の対象になる費用とならない費用の線引きがあいまい」「市販薬の購入費は控除対象になるのか」。確定申告の時期に毎年寄せられる悩みです。医療費控除は、年間10万円(または所得の5%)を超える医療費が所得控除になる仕組みで、家族全員の医療費を合算して申告できます。所得税率と住民税率を合わせた実効税率(おおむね20〜43%)が掛かるため、年間20万円の医療費があれば実質4〜8万円の節税につながるケースも珍しくありません。
本記事では、医療費控除の対象となる費用・ならない費用を、診療科目別・薬の種類別に網羅し、セルフメディケーション税制(スイッチOTC薬控除)との使い分け、申告書類の書き方、e-Taxでの提出方法まで、リーパル会計事務所の現場で得た知見を踏まえて解説します。
まずここを押さえる|医療費控除とは?基本的な仕組み
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に、超えた分を所得から差し引くことができる制度です。
控除額の計算式
医療費控除額 = (実際に支払った医療費 − 保険金等で補填された金額)− 10万円※
※総所得金額が200万円未満の場合は「総所得金額 × 5%」
医療費控除の上限は200万円です。控除を受けるには確定申告が必要であり、年末調整では対応できません。会社員の方でも、医療費が一定額を超えた年は確定申告を行うことで税金の還付を受けられます。
2. 医療費控除の対象となる費用
対象となる主な費用
| 費用の種類 | 具体例 | 条件 |
|---|---|---|
| 病院・診療所の診察費 | 内科・外科・歯科・眼科等の診察代 | 保険診療・自由診療ともに対象 |
| 治療のための薬代 | 処方薬・市販薬(治療目的) | 医師の指示に基づくものが基本 |
| 入院費 | 入院基本料・食事代(標準負担額) | 差額ベッド代は対象外の場合あり |
| 手術費 | 手術代・麻酔代 | 保険適用外でも対象 |
| 通院交通費 | 電車・バス・タクシー代 | 自家用車のガソリン代は対象外 |
| 歯科治療費 | 虫歯治療・義歯・インプラント(治療目的) | 審美目的のホワイトニングは対象外 |
| 産婦人科・助産院 | 定期健診・出産費用 | 妊娠中絶(医学的理由)も含む |
| 介護サービス費 | 介護保険の対象サービス | 居宅サービス等の自己負担分 |
| 鍼灸・マッサージ | 医師の指示に基づく施術 | 単なるリラクゼーション目的は対象外 |
| 補聴器 | 医師の指示に基づく補聴器 | — |
医療費控除の対象外となる費用
| 対象外の費用 | 理由 |
|---|---|
| 美容整形・ホワイトニング | 治療目的でないため |
| 健康増進目的のサプリメント | 治療目的でないため |
| 予防接種(任意) | 治療ではなく予防のため |
| 人間ドック(異常なしの場合) | 疾病の治療・発見につながらない場合 |
| 自家用車のガソリン代 | 通院交通費として認められない |
| 差額ベッド代(本人希望の場合) | 治療上必要でない場合 |
| 眼鏡・コンタクトレンズ(一般的な視力矯正) | 治療目的でない場合 |
医療費控除を取り損ねやすいのは「対象になるとは思っていなかった支払い」です。たとえば歯科の自由診療の一部・通院のための公共交通費・治療目的のマッサージ・出産費用——いずれも控除対象に含まれます。リーパル会計事務所では、確定申告の準備段階で「年間家計簿の医療カテゴリを丸ごと棚卸し」する手順を勧めており、漏れなく拾うだけで毎年数万円の還付差を生むケースが少なくありません。
3. 家族の医療費もまとめて申告できる
医療費控除は、生計を一にする家族全員分の医療費を合算して申告できます。同居していなくても、仕送り等で生活費を負担している場合は「生計を一にする」と判断されるケースがあります。
家族合算で申告する場合、所得が高い方(税率が高い方)がまとめて申告すると節税効果が大きくなります。所得税率が高い配偶者が家族全員の医療費を申告することで、控除による節税額が増加します。
4. 保険金・給付金の取り扱い
医療費控除の計算では、健康保険からの給付金や民間の医療保険からの入院給付金を「補填された金額」として差し引く必要があります。
補填として差し引くもの
- 健康保険の高額療養費・附加給付
- 傷病手当金
- 民間医療保険の入院・手術給付金
- 会社からの傷病見舞金(なお傷病手当金は就労できない期間の所得を補償するもので、医療費を補填する保険金等には該当しないため差し引く必要はありません。国税庁タックスアンサーNo.1120)
ただし、給付金の対象となった医療費を超える金額については、他の医療費に充当することはできません(給付金超過分はそのまま)。
5. 医療費控除の申請方法
必要書類
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 医療費控除の明細書(国税庁Webサイトから入手可能)
- 医療費の領収書(提出は不要だが5年間保存が必要)
- マイナンバー確認書類
2017年分以降の申告から、領収書の添付は不要になりました。ただし、領収書は5年間保存する義務があります(税務署から求められた際に提出する必要があります)。
医療費通知書(健診等)の活用
加入している健康保険組合等から送付される「医療費通知書」を利用すると、明細書の記入を一部省略できます。ただし通知書の内容は概算であるため、実際の支払額との差異がある場合は領収書で確認が必要です。
申告の手順
- 1年分の医療費の領収書を集計する
- 「医療費控除の明細書」に医療機関名・支払額を記入する
- 確定申告書の「医療費控除」欄に控除額を記入する
- e-Taxまたは郵送・窓口で申告書を提出する
国税庁の確定申告書等作成コーナー(www.keisan.nta.go.jp)では、画面の指示に従って入力するだけで申告書が自動作成されます。
6. セルフメディケーション税制との比較と選択方法
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として2017年から導入された制度です。
| 比較項目 | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
|---|---|---|
| 対象費用 | 病院の診察費・薬代等(幅広い) | 特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)のみ |
| 控除のしきい値 | 10万円(又は所得の5%) | 1万2,000円 |
| 最大控除額 | 200万円 | 8万8,000円 |
| 条件 | 特になし | 一定の健康増進のための取組が必要 |
| 使い分けの目安 | 病院通院が多い年 | 病院にほぼ行かず市販薬中心の年 |
セルフメディケーション税制は、市販薬(スイッチOTC医薬品)の購入費用が年間1万2,000円を超えた場合に、超えた分を所得から控除できる制度です。医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方のみ選択できます。
一般的に、年間の医療費合計が10万円未満でも市販薬の購入が多い場合にセルフメディケーション税制が有利になります。利用する際は「健康増進のための取組」(健康診断・予防接種等)を行っていることが要件です。
個人事業主の確定申告全体については「個人事業主の確定申告のやり方完全ガイド」も参考にしてください。確定申告と住民税の関係については「確定申告と住民税の関係」で解説しています。
ここまでの判断基準を読んでもご自身の状況に当てはめにくい場合は、リーパル会計事務所の税理士に直接ご相談いただくのが最短です。所得・控除・帳簿状況をヒアリングしたうえで、必要な対応を具体的にお伝えします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 医療費が10万円に満たなくても申告できますか?
総所得金額が200万円未満の場合は「総所得金額の5%」がしきい値になります。例えば総所得が100万円であれば、医療費が5万円を超えた分が控除対象です。
Q2. 市販の風邪薬は医療費控除の対象になりますか?
医師の指示がない市販薬の場合、通常の医療費控除では対象外です。ただしセルフメディケーション税制の対象であるスイッチOTC医薬品に該当する場合は、そちらの制度を活用できます。
Q3. レーシック手術は医療費控除の対象ですか?
視力矯正を目的としたレーシック手術は、「治療」ではなく「視力矯正」として医療費控除の対象外と判断されることがあります。ただし、眼疾患の治療の一環として行われた場合は対象となりえます。税理士に個別に確認することをお勧めします。
Q4. 通院のためのタクシー代は全額対象ですか?
公共交通機関が利用できない状況(深夜・体調不良・歩行困難等)でのタクシー利用は対象となります。通常の通院でのタクシー利用は、電車・バスが利用できる状況では認められにくいケースがあります。
Q5. 出産にかかった費用はすべて医療費控除の対象ですか?
出産費用(分娩費・入院費等)は医療費控除の対象です。ただし、出産育児一時金(50万円)は補填される金額として差し引く必要があります。
まとめ
医療費控除は、確定申告の中でも比較的多くの方が活用できる制度です。家族全員の医療費を合算し、所得が高い方がまとめて申告することで節税効果を最大化できます。
領収書は1年間通して保管しておき、確定申告の時期に一括して集計する習慣をつけることが、控除漏れを防ぐ最も確実な方法です。
リーパル会計事務所へのご相談
リーパル会計事務所は、PwCあらた出身の公認会計士・税理士 鳥羽 卓朗が代表を務める会計事務所です。1,100社以上の関与実績を持ち、freee・マネーフォワードクラウド認定アドバイザーとして、確定申告のサポートを行っています。神戸・横浜・東京・大阪・札幌の5拠点対応で、完全フルリモートにも対応しています。
医療費控除や確定申告のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
リーパル会計事務所では、個人事業主の確定申告・節税対策について、これまで1,100社以上の関与実績をもとにご相談をお受けしています。freee・マネーフォワードクラウド両対応の認定アドバイザーとして、クラウド会計を活用したリアルタイムな経営支援を提供しています。
医療費控除は、家族全員分を合算できるため、家計全体での節税余地を見極めることが肝心です。共働き世帯なら所得の高い方で控除を取るのが基本、子どもの医療費・親の通院費・歯科自由診療など、家族単位で1年分をまとめて把握する習慣を作るだけで、毎年数万円規模の還付が積み上がります。リーパル会計事務所では、医療費控除を含めた所得控除の取り漏れチェックも併せてご対応しています。控除の取り方をプロの目で点検したい方は、お気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、個人事業主の確定申告・所得税実務を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日