「毎月赤字だと思っていたら実は黒字、その逆もある」——資金繰り表なしで現金の動きを把握しようとしている中小企業経営者の方に向けて書いています。感覚と数字のズレが頻繁に起きる理由は、損益と資金が一致しないことを月次で見える化する仕組みが欠けているからにほかなりません。資金繰り表(=毎月の現金の入出金を時系列で記録・予測する管理表)は複雑に見えますが、正しい手順を踏めば2〜3時間で初版が完成します。
建設業の資金繰り(入金までの立替えと工事資金の借入)は、建設業の資金繰り|入金までの立替えと、工事の資金を借りるときで詳しく解説しています。
リーパル会計事務所では1,100社以上の関与実績をもとに、初回の資金繰り表作成から月次更新の運用支援までを一貫サポートしています。本記事では中小企業経営者の方が実際に使える資金繰り表の作り方を、具体的な数値例を交えて解説します。
資金繰り表なしの経営は航海図のない船にほかならない
資金繰り表の定義
資金繰り表とは、毎月の「現金の入り(収入)」と「現金の出(支出)」を時系列で記録・予測したものです。損益計算書が「利益の計算書」であるのに対し、資金繰り表は「現金の動き一覧表」です。
資金繰り表が必要な理由
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 資金ショートの予防 | 数ヶ月先の資金不足を事前に把握して対策を打てる |
| 銀行融資の準備 | 融資申請時に「返済能力の根拠」として提出できる |
| 経営判断の根拠 | 新規採用・設備投資のタイミングを数字で判断できる |
| 税理士との連携強化 | 月次でデータを共有することで的確なアドバイスを受けられる |
資金繰り表の基本構造
3つのセクションで構成する
資金繰り表は次の3つのセクションで構成します。
セクション1:経常収支(本業の現金の入出金)
- 収入:売上入金・受取手数料など
- 支出:仕入支払・人件費・家賃・光熱費・その他経費
セクション2:財務収支(借入・返済・増資など)
- 収入:銀行借入金・補助金受取
- 支出:借入返済(元本のみ)・リース支払
セクション3:特別収支(設備投資など)
- 収入:資産売却
- 支出:設備投資・敷金・保証金
資金繰り表の作り方を実例で解説
ステップ1:過去3ヶ月の実績を入力する
最初に、過去3ヶ月の実際の入出金を入力します。銀行通帳の明細・クレジットカードの利用明細を参照します。
クラウド会計(freee・マネーフォワード)を使用している場合は、入出金明細がデータとして取得できるため、手作業が大幅に省けます。
資金繰り表テンプレート(簡易版)
| 項目 | 1月実績 | 2月実績 | 3月実績 | 4月予測 | 5月予測 | 6月予測 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 【収入】 | ||||||
| 売上入金 | 800 | 850 | 900 | 880 | 920 | 950 |
| その他収入 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 |
| 収入合計 | 810 | 860 | 910 | 890 | 930 | 960 |
| 【支出】 | ||||||
| 仕入・外注費 | 400 | 420 | 440 | 430 | 450 | 460 |
| 人件費 | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 | 200 |
| 家賃 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
| その他経費 | 80 | 90 | 85 | 85 | 85 | 90 |
| 借入返済 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
| 法人税等 | 0 | 0 | 150 | 0 | 0 | 0 |
| 支出合計 | 760 | 790 | 955 | 795 | 815 | 830 |
| 月次収支 | 50 | 70 | -45 | 95 | 115 | 130 |
| 月末残高 | 300 | 370 | 325 | 420 | 535 | 665 |
(金額の単位:万円)
ステップ2:入出金のタイミングを正確に把握する
資金繰り表で最も重要なのは、「売上が上がったタイミング」ではなく「現金が実際に入ってきたタイミング」を記録することです。
入金タイミングの確認事項
- 請求書の発行から実際の入金まで何日かかるか(支払サイト)
- 翌月末払いか・翌々月末払いか
- 銀行振込の着金日はいつか
支出タイミングの確認事項
- 人件費の支払日(月末・翌月10日など)
- 社会保険料・厚生年金の引落日
- 法人税・消費税の納付日
ステップ3:向こう3〜6ヶ月の予測を入力する
過去実績を入力したら、向こう3〜6ヶ月の予測値を入力します。
予測の基準
- 売上入金:受注見込み・前年同月実績・季節変動を考慮
- 人件費・家賃:固定費は前月と同額で入力
- 法人税・消費税:申告・中間納付の時期を確認して入力
ステップ4:月末残高の最低ラインを設定する
月末残高が「ゼロ」に近づいた月を特定し、事前に対策を立てます。一般的に、月商(月次売上高)の1ヶ月分以上の現金残高を「最低ライン」として設定します。リーパル会計事務所では、業種特性に応じた適切な最低ラインを顧問先と一緒に決めています。
資金繰り・後継者・M&Aの判断は、税務・法務・財務が複雑に絡むため、早期に専門家への相談で機会損失を防げます。リーパル会計事務所の無料相談では、資金繰り表のテンプレート提供と運用設計を具体的にご提案します。
資金繰り表の活用方法
銀行への提出資料として活用する
融資申請時に資金繰り表を持参することで、「資金使途」と「返済原資」を数字で説明できます。銀行担当者への説明力が格段に上がります。
月次でアップデートする習慣を作る
資金繰り表は「作ったら終わり」ではなく、毎月の実績を更新しながら予測の精度を高めていくものです。月次決算のタイミングで同時に更新する習慣をつけましょう。
自社の資金繰り表の運用設計に迷う場合は、リーパル会計事務所の無料相談で具体的なテンプレートと月次フローをフラットに整理できます。
よくある質問
Q1. 資金繰り表と貸借対照表の違いは何ですか?
A. 貸借対照表は決算日時点の資産・負債・純資産のスナップショットですが、資金繰り表は現金の入出金の時系列一覧です。目的が異なります。
Q2. 消費税・法人税の資金繰り表への記入方法を教えてください。
A. 消費税は確定申告・中間申告の納付月に「支出」として記入します。法人税は確定申告(期末から2〜3ヶ月後)・中間申告の月に計上します。納付月を見落とすと大きな資金ショートの原因になります。
Q3. 資金繰り表はExcelとGoogleスプレッドシートどちらが便利ですか?
A. 複数人でリアルタイム共有が必要な場合はGoogleスプレッドシートが便利です。単独使用であればExcelでも十分です。
Q4. 資金繰り表を税理士に作ってもらうことはできますか?
A. はい。リーパル会計事務所では、初回の資金繰り表作成支援と、その後の月次更新サポートを提供しています。
Q5. 資金繰り表をどこまで詳細に作ればいいですか?
A. 最初はシンプルで構いません。「月次の入金合計・支出合計・月末残高」の3行だけでも、資金の流れを把握する出発点になります。詳細化は徐々に進めればOKです。
まとめ:資金繰り表を月次で運用しない理由はほとんどない
資金繰り表の本当の価値は、「問題が起きた後の確認」ではなく「問題が起きる前の予防」にあります。毎月の実績を更新しながら、向こう3ヶ月の資金状況を常に把握する習慣をつけることが、資金ショート(=手元資金が支払額を下回る状態)を防ぐ最善策にほかなりません。
「初版の資金繰り表を一緒に作ってほしい」「向こう3ヶ月の予測を毎月更新する運用を整えたい」とお考えの方は、リーパル会計事務所にご相談ください。入出金の分類整理・3ヶ月予測のフォーマット作成・月次更新フローの構築まで、初版から運用定着まで伴走します。
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参考資料
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参考リンク: 中小企業庁「資金調達ガイド」
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。1,100社以上の関与実績をもとに、資金繰り表の作成支援と月次資金予測の運用設計を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日