弥生会計からfreee会計へは、勘定科目・補助科目・開始残高・仕訳データを、弥生会計から書き出したCSVファイルで取り込めます。法人であれば固定資産台帳も取り込めます。手順そのものより迷いやすいのは、弥生会計の「補助科目」がfreeeでは「口座」「取引先」「品目」に分かれることと、移行した後も弥生会計の帳簿を保存し続ける必要があることです。
この記事では、freee会計のヘルプセンターの案内をもとに、移行の順番、補助科目の置き換え方、開始残高と仕訳データの取り込み、移行後の確認と過去データの保存までを整理します。ソフトの機能や使い勝手の比較ではなく、乗り換えると決めた後の作業の進め方が対象です。画面の細かい操作は、各段落で示すfreeeの公式ヘルプで確かめてください。
移行の前に決める2つのこと
最初に決めるのは「いつから freee で記帳を始めるか」と「前の期の数字を freee に入れるか」です。freeeの法人向けヘルプ『【法人】他社会計ソフトからのデータ乗り換えの流れまとめ』では、この2つの組み合わせで作業を4つのパターンに分けています。
| パターン | 乗り換えの時点 | 前期と比較するか | 必要な作業 |
|---|---|---|---|
| 1 | 期首 | しない | 当期の期首時点の開始残高を登録 |
| 2 | 期首 | する | 前期の会計年度に切り替え、前期の開始残高と前期分の仕訳を移行し、前期の年度締め |
| 3 | 期中 | しない | 当期の期首時点の開始残高を登録し、直近までの当期分の仕訳を移行 |
| 4 | 期中 | する | パターン2の作業の後、当期分の仕訳を移行 |
期首から乗り換えて前期との比較も要らなければ、作業は開始残高の登録だけで済みます。期の途中で乗り換える場合は、期首から乗り換え日までの仕訳を freee に入れないと、その期の決算が freee だけでは組めません。前期比較をするかどうかは、月次の推移表や決算書で前期の数字を並べて見たいかどうかで決まります。
弥生会計から移せるデータと作業の順番
freeeのヘルプでは、弥生会計から移せるデータとして、勘定科目、補助科目、開始残高、補助残高、仕訳データ、固定資産データ(法人の事業所のみ)が挙げられています。作業の順番は次のとおり考えると、後の工程で手戻りが起きにくくなります。
| 順番 | 作業 | 弥生会計で書き出すもの | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 口座の登録 | なし(freeeで登録) | 現金・預金・クレジットカードなどを freee の「口座」として先に作る |
| 2 | 勘定科目・補助科目 | 勘定科目一覧表・補助科目一覧表(汎用形式・CSV) | 補助科目を口座・取引先・品目のどれにするか決める |
| 3 | 開始残高 | 残高試算表の貸借対照表(汎用形式・CSV) | 内訳が要る科目は補助残高一覧表も取り込む |
| 4 | 仕訳データ(必要な場合) | 仕訳日記帳(汎用形式・CSV) | 振替伝票として取り込まれる |
| 5 | 固定資産台帳(法人) | 固定資産一覧 | 減価償却費の二重計上に注意 |
口座を最初に作るのは、freeeのヘルプが、データの移行には同期の有無にかかわらず口座の作成が必要だとしているためです。銀行やカードと同期させるかどうかは後で決められます。口座の連携設定そのものはfreeeの銀行口座連携の設定方法で扱っています。
なお、ここでの手順は弥生会計(パソコンにインストールする製品)を前提にしています。弥生会計オンラインの仕訳データは、freeeのインポート用テンプレートファイルに転記して取り込む方法が案内されており、手順が異なります。
補助科目は「口座・取引先・品目」に置き換わる
弥生会計と freee のいちばん大きな違いは補助科目の扱いです。弥生会計では「普通預金」の下に銀行ごとの補助科目を作るように、勘定科目の下に補助科目を置いて内訳を管理します。freeeには同じ意味の補助科目がなく、代わりに口座(銀行・クレジットカード等)、取引先、品目を使います。
預金は銀行口座ごとの「口座」にする
freeeのヘルプでは、弥生会計で「普通預金」「郵便貯金」「定期積金」に設定した補助科目に合わせて、freeeに口座を設定しておく必要があるとしています。その際、弥生会計の補助科目と freee での口座名を一致させます。たとえば弥生会計の「普通預金/〇〇銀行」は、freeeでは「〇〇銀行(普通)」という口座になります。
そのほかの補助科目は取引先か品目にする
補助科目一覧表を取り込むと、新しく取り込まれる補助科目ごとに、口座・取引先・品目のどれに当たるかを選ぶ画面になります。考え方の目安は次のとおりです。
| 弥生会計での補助科目の例 | freeeでの置き先 | 理由 |
|---|---|---|
| 普通預金の銀行名、クレジットカード名 | 口座 | 入出金の明細を取り込む単位になる |
| 売掛金・買掛金・未払金の相手先名 | 取引先 | 相手先ごとの残高や消込に使う |
| 売上高の商品区分、支払手数料の種類など | 品目 | 相手先ではなく「何の取引か」で分けたい内訳 |
※表の例は、置き先を考えるための説明用の例です。
注意点が1つあります。freeeの事業所設定で取引先コードを有効にしていると、補助科目の取り込みで新しい取引先を作れません。取引先コードを使う予定がある場合は、取り込みの前に設定の順番を確かめておきます。詳しくはfreeeヘルプ『弥生会計から勘定科目・補助科目を移行する』の案内に従ってください。
開始残高の取り込み
開始残高は、freeeで記帳を始める時点(期首日など)の資産・負債・純資産の残高です。前期に弥生会計を使っていた場合は、弥生会計の残高試算表から取り込めます。
- 弥生会計で残高試算表(月次・期間)を開き、全期間を選んで、書式を汎用形式、区切りをカンマ(CSV)、出力対象を貸借対照表にして書き出します。
- freeeの開始残高の画面で、乗り換え元に弥生会計を選び、「弥生残高試算表」としてアップロードします。
- freeeにない勘定科目は新規データとして設定します。現預金の勘定科目はfreeeでは使わないので、そのままにします。
- 取引先別・口座別の内訳が要る科目は、続けて補助残高一覧表を取り込むか、手入力で内訳を登録します。
預金の残高は、弥生会計では「普通預金」「当座預金」など預金の種類ごとですが、freeeでは口座ごとに登録し直します。同じ「普通預金」に2つの銀行の残高が入っていれば、freee では2つの口座に分けて入力し、使わない「普通預金」の行は削除します。
取り込んだ開始残高は、弥生会計の前期末の貸借対照表と科目ごとに金額が合うかを確かめます。弥生会計の残高試算表の取り込みで「貸借が一致しません」と表示される場合の対処は、freeeヘルプ『乗り換え(データ移行)のトラブルシューティング』に載っています。
仕訳データの取り込み
期中乗り換えや前期比較をする場合は、仕訳データも移します。手順はfreeeヘルプ『弥生会計から仕訳データを移行する』にまとまっています。要点は次のとおりです。
- 弥生会計の仕訳日記帳を、出力したい期間を選んだ状態で、汎用形式・カンマ区切り(CSV)で書き出します。拡張子が txt になっていたら csv にします。
- 「弥生形式」で書き出すと読み込みに失敗します。汎用形式で出し直します。
- 弥生会計からの取り込みは5,000行以上のデータをアップロードできません。5,000行以内に分け、分けたファイルにも見出し行を付けます。仕訳が多い場合は、freeeの「他社会計ソフト仕訳のインポート」なら50,000行まで取り込めるとされています。
- 取り込んだ仕訳は、freeeでは「振替伝票」という仕訳形式のデータになります。freee の通常の入力(取引)とは画面上の扱いが違う点を、社内で共有しておくと混乱が減ります。
- 一度取り込んだ勘定科目・補助科目・税区分の組み合わせは、次の取り込みでも同じ設定が使われます。設定を変えたい場合は、過去のインポート設定を削除してからやり直します。
消費税の経理方式を合わせる
弥生会計で税込経理方式を使っていたか、税抜経理方式を使っていたかで、書き出される仕訳データの中身が変わります。税込経理方式では消費税額の欄が空欄のまま、税抜経理方式では課税取引の消費税額が入った状態で出力されます。freeeの設定でも弥生会計と同じ経理方式を選んでから取り込みます。移行に合わせて経理方式も変えたい場合は、移行の作業とは切り離して、変える時期と影響を先に検討します。
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固定資産台帳と減価償却費の二重計上
法人の事業所は、弥生会計の固定資産一覧を書き出して freee の固定資産台帳に取り込めます。個人事業主の事業所は弥生会計形式の固定資産台帳の取り込みの対象外で、freeeヘルプの個人向けの別手順になります。
法人で注意したいのは減価償却費です。freeeでは固定資産台帳に登録した資産から減価償却費の仕訳が作られます。同じ年度に、弥生会計で入力済みの減価償却費を含む仕訳データも取り込むと、減価償却費が二重に計上されるおそれがあります。
| 仕訳データの取り込み方 | 固定資産の取り込み時の設定 |
|---|---|
| 弥生会計で入力した減価償却費の仕訳も取り込む | 減価償却費の仕訳を「計上しない」側の設定にする(取り込んだ翌年度からは固定資産台帳から作られる) |
| 弥生会計の減価償却費の仕訳は取り込まない | 減価償却費の仕訳を「計上する」 |
移行後の確認と、弥生会計のデータの保存
取り込みが終わったら、弥生会計と freee の数字が一致しているかを確かめます。確認の順番の例です。
- 開始残高:弥生会計の前期末の貸借対照表と、freee の開始残高が科目ごとに一致するか。
- 口座ごとの残高:freee の各口座の残高が、通帳やカードの利用明細の残高と合うか。
- 期中の仕訳を移した場合:移行した月末時点の試算表が、弥生会計の同じ月の試算表と一致するか。
- 取引先別の残高:売掛金・買掛金の取引先ごとの残高が、弥生会計の補助残高と一致するか。
- 固定資産:取得価額・期首帳簿価額・当期の減価償却費が二重になっていないか。
過去の帳簿は保存期間のあいだ残す
会計ソフトを替えても、過去の帳簿を保存する義務はなくなりません。法人は、帳簿と書類をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します(青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間。国税庁『No.5930 帳簿書類等の保存期間』)。個人事業主も、収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年間の保存です(国税庁『個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について』)。
弥生会計の契約やパソコンを手放す前に、保存期間内の年度について、仕訳日記帳・総勘定元帳・補助元帳・固定資産台帳などを紙かデータで残しておきます。帳簿を電子データのまま保存する場合、国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、システムを変更した場合でも、変更前のシステムを使うなどして検索機能が確保されていれば、現在のシステムで検索できなくても差し支えないとしています。
また、優良な電子帳簿の要件を満たして過少申告加算税の軽減措置の届出をしている場合、市販の会計ソフトの変更は変更の届出書を出す場面に当たるとされています(同じソフトのバージョンアップは含まれません)。この届出をしているかどうかは、移行前に確かめておきます。
まとめ:補助科目の置き換えと過去データの保存を先に決める
- 移行の範囲は「期首か期中か」と「前期比較をするか」の組み合わせで決まる。
- 作業は、口座の登録、勘定科目・補助科目、開始残高、仕訳データ、固定資産台帳の順に進める。
- 弥生会計の補助科目は、freeeでは口座・取引先・品目に置き換える。預金は口座名を補助科目と一致させる。
- 仕訳データは汎用形式のCSVで書き出し、5,000行以内に分け、消費税の経理方式を合わせて取り込む。
- 弥生会計の帳簿は、保存期間のあいだ見られる状態で残す。
freeeとの違いを比べる段階であれば、弥生会計とfreeeの比較もあわせてご覧ください。
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よくある質問
Q. 弥生会計オンラインからも同じ手順で移行できますか?
同じ手順にはなりません。freeeのヘルプでは、弥生会計オンラインの仕訳データは、freeeのインポート用テンプレートファイルに転記して取り込む方法が案内されています。移行を始める前に、使っている弥生の製品がどちらかを確かめてください。
Q. 仕訳データを取り込み直したら、前と同じ科目に割り当てられてしまいます。
freeeでは、過去に同じ勘定科目・補助科目・税区分を含むデータを取り込んでいると、そのときと同じ内容で取り込む仕組みです。割り当てを変えたい場合は、科目のインポート設定から過去の内容を削除してから、ファイルをアップロードし直します。
Q. 期の途中で移行すると、決算は弥生会計と freee のどちらで組みますか?
期首から乗り換え日までの仕訳を freee に取り込めば、その期の決算を freee で組めます。取り込まない場合は、1つの期の帳簿が2つのソフトに分かれるため、決算のたびに両方の数字を合算する手間が残ります。どちらにするかは、取り込む仕訳の量と、期首からの残高をそろえる手間で決まります。
Q. 移行した後、弥生会計のデータは消してもよいですか?
保存期間が終わるまでは消さずに残してください。法人の帳簿は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間、個人事業主の帳簿も原則7年間の保存が必要です。弥生会計を使わなくなる前に、必要な帳簿を書き出しておくと安心です。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月15日
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