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エクセルや手書きの帳簿からクラウド会計へ移る手順|開始残高と最初の1か月

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エクセルや手書きの帳簿からクラウド会計へ移る手順|開始残高と最初の1か月

エクセルや手書きの帳簿からクラウド会計へ移るときに最初にやることは、過去の記録を全部入れ直すことではなく、記帳を始める日の「残高」を作ることです。現金・預金・売掛金・借入金などの残高を開始残高として登録すれば、その日以降の取引を積み上げるだけで帳簿がつながります。過去のエクセルや手書きの帳簿は、取り込まなくても保存期間のあいだ残しておく必要があります。

本部会計がある加盟店の帳簿づけと税理士の関わり方は、本部の月次報告と自社の帳簿|本部会計がある加盟店で税理士がやることで詳しく解説しています。

この記事では、会計ソフトを使っていなかった法人・個人事業主が、クラウド会計に移るときの開始残高の作り方、過去分の扱い、最初の1か月の進め方を整理します。ソフトの選び方からの一般的な導入手順は会計ソフト導入の流れで扱っているため、ここでは移行の部分に絞ります。例として freee会計の公式ヘルプを引きますが、考え方はほかのクラウド会計でも同じです。

移る前に決める3つのこと

決めること 選択肢 分かれ目
いつの残高から始めるか 期首(個人は1月1日)から/期の途中から 期の途中からなら、期首からその日までの取引も入れないと1年分の決算がソフトだけで組めない
過去の記録をどこまで入れるか 入れない(残高だけ引き継ぐ)/当期分だけ入れる 当期の途中から始めるかどうか、エクセルの記録が取り込める形かどうか
預金・カードをどう取り込むか 口座連携で明細を自動取得/手入力・ファイル取込 使っている銀行・カードが連携に対応しているか

freeeのヘルプでは、他のソフトからの乗り換えでも、期首から乗り換えて前期との比較をしない場合の作業は開始残高の設定だけとされています。エクセルや手書きからの移行も同じ考え方で、期首から始めるなら、過去の取引を1件ずつ入れ直す必要はありません。

開始残高の作り方:数字をどこから拾うか

開始残高は、記帳を始める日(期首日など)の時点で持っている資産と負債の残高です。法人で前期の決算書があれば、その貸借対照表の数字を写すのが基本です。決算書がない個人事業主や、手書き・エクセルの記録しかない場合は、次の資料から1つずつ数字を拾います。

科目 拾う資料 注意点
現金 期首日時点の手元の事業用現金を数えた額 事業用とプライベート用を分けていない個人は0円とする方法がある
普通預金など 通帳・インターネットバンキングの期首日時点の残高 口座ごとに分けて登録する
売掛金 期首日より前に商品を引き渡した(サービスの提供を終えた)もので、期首日時点で未入金のもの(請求書の控え・納品書と通帳で拾う) 入金されたら開始残高の売掛金を消し込む
棚卸資産 期首日時点の在庫の金額 商品・原材料など科目ごとに入れる
固定資産 取得時の書類と、前年までの減価償却の計算 期首日時点の残高(取得価額から減価償却費の累計額を引いた金額)を入れ、固定資産台帳にも登録する
買掛金・未払金 期首日より前の日付の請求書のうち、期首日時点で未払いのもの クレジットカードの未払分もここで拾う
借入金 金融機関の返済予定表 期首日時点の元金残高を入れる

個人事業主の場合、資産の合計と負債の合計の差額を「元入金」として登録します。freeeのヘルプ『【個人】開始残高を設定する』では、借方合計が100万円、貸方合計が20万円なら元入金は80万円とする例が示されています。法人の場合は、前期の決算書にある資本金や繰越利益剰余金をそのまま入れます。

固定資産の期首残高が分からないとき

手書きやエクセルで帳簿を付けてきた個人事業主は、車両や機械の減価償却をどこまで済ませたかが分からないことがあります。freeeのヘルプでは、該当の固定資産があるのに期首日時点の残高が分からない場合は、近くの税務署に相談して示された残高を入力するよう案内しています。過去の確定申告書の控え(青色申告決算書や収支内訳書の減価償却費の計算欄)が残っていれば、そこから前年末の未償却残高を確かめられます。

借方と貸方が合わないとき

開始残高は借方の合計と貸方の合計を一致させる必要があります。freeeでは、一致しないまま設定すると差額を埋める仮の科目として「未確定勘定」が自動で追加されます。個人事業主なら元入金で差額を調整しますが、法人で差額が出る場合は、拾い漏れか金額の誤りを疑って資料を見直します。

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過去のエクセル・手書き帳簿の扱い

取り込まなくても保存は続ける

会計ソフトに移った後も、それまでの帳簿と書類を保存する義務は続きます。法人は、帳簿と書類をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)保存します。個人事業主も、収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年間の保存が必要です(国税庁『個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について』)。手書きの帳簿は紙のまま、エクセルのファイルは消さずに残します。

期の途中から始めるならエクセルの記録を取り込む

期の途中から会計ソフトを使い始める場合は、期首からその日までの取引も入れないと、その年の決算がソフトだけで組めません。freeeには、エクセルで作った仕訳や売上・経費のデータを、CSVに変換せずにそのまま取り込む「エクセルインポート」があります。形式は次の3つです。

  • 振替伝票形式:借方・貸方の勘定科目と金額を並べた仕訳のデータ
  • 収入形式:売上などの収入の一覧(発生日・勘定科目・金額・取引先など)
  • 支出形式:経費などの支出の一覧

収入・支出の形式では、決済口座の欄を空欄にすると未決済の取引として扱われます。すでに入金・支払が済んでいるものは、決済日・決済口座・決済金額の3つの列をそろえて取り込みます。1回に取り込める行数は、目安として20,000行です。エクセルの列の名前や並びはヘルプの様式に合わせる必要があるため、詳しくはfreeeヘルプ『Excel・販売管理ソフトからデータを取り込む(エクセルインポート)』で確かめてください。

手書きの帳簿しかない場合は、取り込みではなく手入力になります。量が多いときは、月ごとの合計で入れるか1件ずつ入れるかで手間が大きく変わりますが、合計だけにすると取引先別の残高や消費税の区分ごとの集計が後から追えなくなる点に注意が要ります。

最初の1か月の進め方

移行した最初の月は、記帳そのものより「ソフトの残高と実際の残高が合っているか」を確かめる仕組みを作る期間です。進め方の一例です。

時期 やること 終わったかを確かめる方法
1週目 口座(現金・銀行・カード)を登録し、銀行・カードの連携を設定する。開始残高を登録する 開始残高の借方と貸方が一致し、仮の科目が残っていない
2週目 連携で取り込まれた明細を、勘定科目と取引先を付けて登録する。よく出る取引の登録ルールを作る 未処理の明細が溜まっていない
3週目 現金で払った経費、口座を通らない取引を入力する。期首日時点の売掛金・買掛金の入金・支払を消し込む 開始残高の売掛金・買掛金が、入金・支払の分だけ減っている
月末 月末の口座ごとの残高を、通帳・カードの利用明細・手元の現金と照合する ソフトの残高と実際の残高が一致している

※上の表は進め方の一例です。取引の量や連携できる口座の数で、かかる期間は変わります。

銀行口座の連携は、明細を自動で取り込める一方、連携を始める日と開始残高の日付がずれると、同じ取引が開始残高と明細の両方に入ることがあります。年の途中で開業した個人事業主について、freeeのヘルプは、同期を設定する際は開業日以降の明細を取得するよう案内しています。口座連携の設定はfreeeの銀行口座連携の設定方法もあわせてご覧ください。

個人事業主が気を付けること

帳簿の付け方が複式簿記に変わる

エクセルで現金出納帳のような入出金の一覧だけを付けていた場合、会計ソフトに移ると帳簿は複式簿記の形になります。青色申告特別控除のうち55万円の控除は、取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、その記帳に基づく貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に申告することが要件です。65万円の控除は、これに加えて、e-Taxでの申告か、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存することが要件になります(国税庁『No.2072 青色申告特別控除』、令和8年4月1日現在の法令等による案内)。上の金額と要件は令和8年分までのものです。2026年3月31日に成立した所得税法等の一部を改正する法律による見直しで、令和9年分以後は、55万円の控除はe-Taxでの期限内の提出を要件に加えたうえで65万円に、65万円の控除は仕訳帳と総勘定元帳の電子的な保存などの要件を満たす場合に75万円になります。また、簡易な簿記で記録している人のうち、前々年分の事業所得に係る収入金額(不動産所得の事業の場合は不動産所得に係る収入金額)が1,000万円を超える人は、10万円の控除の対象から外れます(財務省『令和8年度税制改正の大綱』)。

どの控除の要件を満たすかは、青色申告の承認を受けているか、記帳の方法、申告の方法で決まります。会計ソフトに移っただけで要件を満たすわけではない点に注意してください。青色申告の手続そのものは、個人事業主の青色申告のやり方で扱っています。

事業用とプライベートのお金が混ざっている

個人事業主は、事業用の現金と生活費の現金を分けていないことがあります。freeeのヘルプでは、現金を分けていないか期首日の残高が分からない場合、開始残高の現金を0円とし、取引を登録する際の決済口座を「プライベート資金」にする方法が案内されています。事業用の通帳を1つに決め、事業の入出金をそこに集めると、最初の月の照合がしやすくなります。

まとめ:残高を作れば過去を入れ直さなくてよい

  • 移行の起点は「記帳を始める日の残高」。期首から始めるなら、過去の取引を入れ直す必要はない。
  • 開始残高は、通帳・請求書の控え・返済予定表・決算書などから科目ごとに拾う。個人は差額を元入金にする。
  • 期の途中から始めるなら、期首からの取引をエクセルインポートや手入力で入れる。
  • 過去のエクセル・手書きの帳簿は、取り込まなくても保存期間のあいだ残す。
  • 最初の1か月は、月末の口座残高と通帳・カード明細・現金が一致するかを確かめる。

開始残高と最初の月の照合が済めば、2か月目以降は明細の登録と月末の照合を繰り返す形に落ち着きます。

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よくある質問

Q. 過去数年分のエクセルの帳簿も会計ソフトに入れたほうがよいですか?

期首から使い始めるなら、帳簿をつなぐために過去分を入れる必要はありません。前の年と月ごとに比べたい場合は、前の年の分も入れる方法があります。入れない場合も、過去の帳簿は保存期間のあいだ残します。

Q. 期首日時点の売掛金が分からないときはどうしますか?

期首日より前に商品を引き渡した(サービスの提供を終えた)もののうち、期首日時点で入金されていない分が売掛金になります。受注しただけで引き渡していない分は含めません。国税庁『No.2200 収入金額とその計算』でも、その年の収入は、実際に代金を受け取ったか、請求したかではなく、収入すべき権利が確定したかで決まるとしています。請求書の控えや納品書と通帳を突き合わせると拾えます。拾い漏れがあると、前の期の売上を当期の売上として計上してしまうおそれがあります。

Q. エクセルのデータをそのまま取り込めないのはなぜですか?

主な原因は、取り込む側のソフトが決めた列の名前・並び・入力のしかたに合っていないことです。freeeのエクセルインポートでは、税区分の列がない場合は勘定科目と発生日に紐づく既定の税区分が割り当てられるなど、列ごとに扱いが決まっています。エラーが出た列を、ヘルプの様式に合わせて作り直してから取り込みます。

Q. 手書きの帳簿は、会計ソフトに移った後に捨ててもよいですか?

保存期間が終わるまでは捨てられません。個人事業主の帳簿は7年間、法人は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です。また、国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、手書きで作成された帳簿は電子データによる保存が認められないとしています。スキャンしたデータに置き換えて紙を捨てることはできないため、紙のまま保存します。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日

参考資料

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