「経費精算に毎月何時間も取られていて、本来の業務が圧迫されている」「紙の領収書とExcelの申請書のやり取りに限界を感じている」——こうした悩みを抱える経理担当者や経営者の方にとって、経費精算システムの導入は業務負担を大きく軽くする選択肢です。ただし、サービスは数多く、料金体系も機能も大きく異なるため、比較の軸を持たないまま選ぶと「導入したのに現場が使ってくれない」「会計ソフトと連携できず二度手間になった」という結果になりかねません。本記事では、経費精算システムを比較する際に押さえるべきポイントと、主要サービスの違い、そして失敗しない導入の進め方を整理します。
なぜ今、経費精算システムの比較が重要なのか
手作業の経費精算が抱える3つの課題
紙の領収書とExcelで経費精算を回している場合、申請者・承認者・経理それぞれに負担が集中します。申請者は領収書を貼り付けて申請書を作成し、承認者は内容を目視で確認し、経理は仕訳を手入力したうえで振込処理を行います。この一連の流れには、入力ミス・確認漏れ・差し戻しによる手戻りがつきものです。
特に課題になりやすいのは次の3点です。
- 領収書の紛失や提出遅れによる締め作業の遅延
- 交通費や交際費の按分・科目判断のばらつき
- 月末月初に経理業務が集中する繁忙の偏り
電子帳簿保存法への対応が前提になった
2024年1月から電子帳簿保存法(=帳簿や書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律)の電子取引データ保存が本格的に義務化され、メールやWebで受け取った領収書・請求書は電子のまま保存する必要があります。手作業での運用では、保存要件(真実性・可視性の確保)を満たすのが難しく、システム化が現実的な対応策になっています。電子帳簿保存法の全体像については電子帳簿保存法の対応方法を完全解説もあわせてご確認ください。
リーパル会計事務所では、経費精算システムの導入を単なる効率化ではなく、法令対応と月次決算の早期化をセットで実現する取り組みとして位置づけています。
経費精算システムを比較する7つのポイント
サービスを比較するときは、価格の安さだけで判断せず、自社の運用に合うかどうかを多面的に確認することが重要です。比較の軸を次の表に整理しました。
| 比較ポイント | 確認したい内容 | 見落とすとどうなるか |
|---|---|---|
| 料金体系 | 初期費用・月額・ユーザー単価・最低契約人数 | 利用人数が増えるとコストが想定外に膨らむ |
| 電子帳簿保存法対応 | スキャナ保存・電子取引保存の要件充足 | 法令対応のために別ツールが必要になる |
| 会計ソフト連携 | 使用中の会計ソフトと仕訳連携できるか | 仕訳の手入力が残り効率化が中途半端になる |
| 申請・承認フロー | 多段階承認・部門別ルートの設定可否 | 自社の決裁ルールに合わず運用が回らない |
| 入力の自動化 | OCR・交通費の自動計算・ICカード連携 | 入力工数が削減できず導入効果が薄い |
| モバイル対応 | スマホ撮影・外出先からの申請可否 | 現場の利用率が上がらず定着しない |
| サポート体制 | 導入支援・問い合わせ対応・無料お試し | 設定でつまずき運用開始が遅れる |
料金体系——ユーザー単価と最低人数に注意
経費精算システムの多くは「月額基本料金+ユーザー単価」の形をとります。1人あたり数百円程度が目安ですが、最低契約人数が設定されているサービスもあり、少人数の事業では割高になることがあります。利用人数が今後増える見込みがあるかを踏まえて試算することをお勧めします。
電子帳簿保存法対応——法令要件を満たせるか
経費精算システムを選ぶうえで、電子帳簿保存法の保存要件に対応しているかは外せない確認項目です。スキャナ保存・電子取引データ保存に正式対応しているか、タイムスタンプや訂正削除履歴の機能があるかを確認します。法令対応が不十分だと、結局は別の保存手段を併用することになり、効率化のメリットが相殺されます。
会計ソフト連携——仕訳まで自動化できるか
経費精算の効率化で最も効果が大きいのは、承認後の仕訳を会計ソフトへ自動連携できる点です。使用中の会計ソフトに対応しているか、勘定科目や部門のマッピングが柔軟にできるかを確認します。連携の可否で経理の作業量は大きく変わります。クラウド会計の選び方はクラウド会計のメリット・デメリットでも整理しています。
経費精算システムの選定は、単体での使い勝手だけでなく、会計・給与・勤怠を含めたバックオフィス全体の設計のなかで考えると失敗が少なくなります。専門家への相談がコストではなく投資になる理由は、こうした全体最適の視点を得られる点にあります。
主要な経費精算システムのタイプと違い
経費精算システムは、大きく「会計ソフト一体型」「経費精算特化型」「ERP・基幹システム連携型」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
会計ソフト一体型
freeeやマネーフォワードクラウドのように、会計ソフトの機能の一部として経費精算を提供するタイプです。同じプラットフォーム内で完結するため、仕訳連携がスムーズで、すでに会計ソフトを導入している事業では追加コストを抑えやすいのが特徴です。マネーフォワードの経費精算機能についてはマネーフォワード経費精算の使い方で詳しく解説しています。
経費精算特化型
経費精算に機能を絞り込んだ専用サービスです。複雑な承認フローや、ICカード・コーポレートカードとの連携、出張・交通費精算の自動化などに強みがあります。一定規模以上で、経費精算の運用が複雑な企業に向いています。
ERP・基幹システム連携型
会計・販売・人事を含む基幹システムの一機能として経費精算を扱うタイプです。大企業や多拠点・多部門の運用に適していますが、導入コストと設定の負荷は大きくなります。
| タイプ | 向いている規模 | 強み | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 会計ソフト一体型 | 個人事業〜中小企業 | 仕訳連携がスムーズ・低コスト | 高度な承認フローには不向きな場合がある |
| 経費精算特化型 | 中小〜中堅企業 | 承認フロー・カード連携が柔軟 | 会計ソフト連携の確認が必要 |
| ERP連携型 | 中堅〜大企業 | 全社業務との統合 | 導入コスト・設定負荷が大きい |
自社の規模や運用の複雑さによって最適なタイプは変わります。自社の状況に当てはめにくい場合は、税理士に直接相談するのが最短です。
失敗しない経費精算システムの導入手順
現状の業務フローを棚卸しする
導入の前に、申請から振込までの流れと、誰がどの作業に何時間かけているかを書き出します。現状を可視化しないままシステムを選ぶと、機能過多で使いこなせなかったり、逆に必要な機能が足りなかったりします。
無料トライアルで現場の使い勝手を確認する
多くのサービスが無料お試し期間を用意しています。経理担当者だけでなく、実際に申請する従業員にも触ってもらい、スマホでの撮影・申請のしやすさを確認することをお勧めします。現場の利用率が上がらなければ、効率化の効果は得られません。
会計ソフトとの連携設定を確認する
導入時に最もつまずきやすいのが、会計ソフトへの仕訳連携の設定です。勘定科目・部門・税区分のマッピングを正しく行わないと、連携後に仕訳の修正が発生します。リーパル会計事務所では、経費精算システムの選定から会計ソフトとの連携設定、運用開始後の月次フローの設計までを一貫して支援しています。経理のペーパーレス化を体系的に進めたい方は経理のペーパーレス化を進める5つのステップもご参照ください。
なお、電子帳簿保存法の保存要件の詳細は、国税庁の電子帳簿等保存制度に関する情報で最新の取り扱いを確認できます。制度は改正が続いているため、公式情報とあわせてご判断ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 経費精算システムは何人くらいの規模から導入する価値がありますか。
A. 利用人数が少なくても、領収書の電子保存や仕訳連携による効果は得られます。数名規模でも、すでに会計ソフトを使っているなら一体型を追加する形で低コストに始められるケースが多くあります。導入効果は人数よりも「精算件数の多さ」と「会計連携の有無」に左右される傾向があります。
Q. 比較する際に最も重視すべきポイントはどれですか。
A. 自社の運用次第ですが、見落とすと効果が半減しやすいのは「会計ソフトとの仕訳連携」と「電子帳簿保存法対応」の2点です。この2つを満たしたうえで、料金と承認フローを比較すると失敗が少なくなります。
Q. 会計ソフトを使っていない場合でも導入できますか。
A. 導入は可能です。ただし、仕訳連携のメリットを十分に得るには、会計ソフトとセットで検討するのが効率的です。これを機にクラウド会計の導入もあわせて検討する事業も少なくありません。
Q. 導入後にすぐ業務は楽になりますか。
A. 初期設定と現場への定着には一定の期間がかかります。承認フローやマッピングの設定を丁寧に行い、従業員への操作説明を済ませてから本格運用に移ると、無理なく効率化を進められます。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。経費精算システムの比較・選定は、自社の業務フローや使用中の会計ソフト、今後の人員計画によって最適解が変わります。どのサービスが自社に合うか判断しにくいとお考えの経営者・経理担当者の方は、リーパル会計事務所までお気軽にご相談ください。freee・マネーフォワードクラウド両対応の認定アドバイザーとして、システム選定から連携設定、運用フローの設計までを一貫して支援しています。
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