税理士から返事が来ず、経営上の判断が止まっている。提案や料金の説明にも納得できず、変えるべきか迷っていませんか。税理士を変える前は、不満を具体的な出来事に置き換え、契約内容と改善できる点を確かめましょう。この記事では、連絡・提案・料金を整理し、契約を続けるか、引継ぎ先を探すかを判断する方法を解説します。
この記事は「税理士の乗り換えの連載|変えるか決めるところから、変えた後の1年目まで」の第1回です。
不満は「起きたこと」と「期待していたこと」に分ける
「連絡が遅い」「提案がない」「料金が分かりにくい」。こうした不満を整理するときは、税理士の人柄や能力を評価する前に、自社の仕事にどのような支障が出ているかを書き出します。本記事では理由の順位や割合を示さず、判断に使える確認項目を取り上げます。
たとえば、質問を送った日、返事を必要としていた日、実際の回答内容を並べます。「対応が合わない」という感想に加え、「設備を発注する前に税務上の扱いを確認したかった」と目的まで言葉にすると、改善してほしい点が伝わります。
次に、契約書、業務案内、これまでのメールを確認します。顧問契約とは、継続して依頼する仕事や条件を取り決める契約です。名称から内容を決めつけず、何を頼み、いつ説明を受ける約束だったかを確かめます。
| 不満の種類 | 先に確かめること | 話し合う内容 | 見直しを考える材料 |
|---|---|---|---|
| 連絡が遅い | 連絡先、質問の受領、資料の不足、回答予定 | 急ぎの連絡方法と途中経過の共有 | 合意した連絡方法でも進捗が分からない |
| 提案がない | 求める提案の内容、契約範囲、事業計画の共有状況 | 面談の議題と事前に渡す情報 | 必要な支援を継続して受けられる見通しが立たない |
| 料金が分かりにくい | 業務別の請求内容、追加業務、説明の記録 | 追加依頼時の確認方法と請求の時期 | 依頼内容と請求の関係を確認できない |
| 廃業・引退で継続が難しい | 対応終了の予定と処理中の仕事 | 引継ぎ先、資料の受渡し、担当の区切り | 現在の体制で対応を続けられる期間 |
この表は、該当したら解約すべきという判定表ではありません。契約や連絡方法を調整する材料として使いましょう。
連絡への不満は、回答までの流れを確かめる
受領の連絡と、税務判断の回答を分ける
質問を送った後は、届いているか、誰が確認しているか、いつ回答を受けられるかを確かめます。すぐに結論を出せない質問でも、確認中であることや不足資料が分かれば、社内の予定を調整できます。
依頼する側も、質問の背景、判断したい内容、回答を希望する日をまとめます。「この支出はどうなりますか」だけでなく、取引の内容や契約書、実行予定を添えます。希望日までに結論が難しい場合は、その時点で分かることと、追加で確認することを分けてもらいましょう。
返信時間の目安を決める場合は、受領連絡の目安なのか、最終回答の目安なのかを区別します。担当者の不在時の連絡先や、急ぎと通常の質問の振り分けも決めておくと、同じ行き違いを繰り返しにくくなります。
説明を受けた後に、自社で判断できるか
返事の速さとともに、説明の内容も確認します。結論、前提となる事実、自社が次にすることが分かるかを見ます。専門用語が分からないときは、「今回の取引ではどう扱うのか」「何の資料が必要なのか」と、実際の行動につなげて聞く方法があります。
また、窓口の担当者と、税務判断を確認する税理士の役割を把握しましょう。担当者を通じて質問する場合も、どの段階で税理士が確認するのかを共有しておくと、回答を待つ間の見通しが立てやすくなります。
行き違いが続く場合は、やり取りの履歴を残して、連絡手段や担当体制の調整を申し入れます。改善を判断する日も双方で決めておきましょう。
提案への不満は、欲しい判断材料を具体化する
「提案が欲しい」と感じたら、どの経営判断を支えてほしいのかを言葉にします。納税資金の準備、投資前の税務上の確認、資金繰りの把握など、目的によって必要な資料や説明は変わります。提案の数だけで満足度を測らず、判断に役立つ内容かを確かめましょう。
税務代理は、申告などについて納税者に代わって手続きをする業務です。税務書類の作成は申告書などを作る業務、税務相談は申告などに関わる税の計算について質問に答え、意見を示す業務です。国税庁の「税理士の業務」では、これらを税理士業務として説明し、記帳の代行などの会計事務についても説明しています。
ただし、税理士が行える業務と、自社が契約で依頼した業務は分けて確認する必要があります。資金繰り表の作成、経営計画の検討、定期的な打合せなどについては、対応の有無や頻度を個別に確かめましょう。
事業の予定を共有し、面談の議題を決める
税理士に伝えていない採用や投資の予定があれば、検討段階で共有します。面談前に、社長が決めたいことと、税務面で確認したいことを整理すると、話し合う範囲が明確になります。説明を受けた内容は、実行前に確認する事項と、実行後に渡す資料に分けて残しましょう。
次は説明のための架空の例です。ある小規模法人の社長は、「投資について提案がない」と感じていました。確認すると、投資計画を伝えておらず、定期面談の議題も決めていませんでした。そこで、見積書と実行予定を先に共有し、税務上の扱いを確認する場を設けることにしました。
この例は、計画の共有で解決する場面を説明したものです。希望を伝えた後も対応範囲が合わない場合は、自社が必要とする支援を受けられる体制かを検討します。
料金への不満は、請求と業務の対応を確かめる
料金の説明に納得できないときは、依頼した仕事と請求項目のつながりを確認します。記帳代行は帳簿への入力を代わりに行う仕事です。自社で入力する部分、事務所が確認する部分、申告書を作る部分を分けると、認識の違いを見つけやすくなります。
日本税理士会連合会の資料では、業務範囲を明確に表示して説明することや、業務ごとの報酬、支払時期・方法を明示し、改定時期も合意することが示されています。また、契約書を渡すだけでなく、内容を説明することも重視されています。
追加の請求については、どの依頼に対応するものか、契約内の仕事との区切りはどこか、事前にどのような説明があったかを確認します。不明なまま次の依頼を重ねず、追加業務の内容と費用を確認してから進める流れを決めましょう。
口座引落しの場合は、対象となる業務の時期と引落しの時期の対応も確かめます。日税連の「契約にあたっての留意事項」でも、この対応を明らかにすることが支払時のトラブル防止に重要とされています。
契約の確認項目は、【2026年版】税理士の顧問契約書で確認すべき9項目|業務範囲・決算料・解約予告のトラブル回避チェックリストで詳しく扱っています。顧問契約の必要性を整理したい方は、税理士の顧問料は「無駄」なのか?払う価値があるケースと契約を見直すべきタイミングも参考になります。
続けるか変えるかは、改善の見通しと引継ぎを見て決める
希望を伝え、合意した対応を振り返る
不満を伝える際は、困った出来事、自社への影響、希望する対応をまとめます。合意できた内容はメールなどで残し、その後の面談や報告で実施状況を確かめます。「気をつけます」という返答を受けたときも、具体的に何を変えるかまで確認しましょう。
連絡方法や議題の調整で支障が解消する見通しがあれば、契約を続ける判断もあります。希望する業務を受けられない、体制上の制約が解消しない、合意した改善が進まない場合は、引継ぎ先を探す理由を具体的に整理できます。
一方、申告の進捗や資料の所在が分からない場合は、改善の様子を見る前に現状を把握します。期限の近い仕事について、処理状況、残っている作業、担当者を確認しましょう。一般的な不満の話合いと、目の前の手続きの確認を分けて進めることが大切です。
電子申告の送信状況は、e-Taxの「即時通知」と「受信通知」で確認できます。即時通知は送信直後の確認結果、受信通知はメッセージボックスに入る確認結果です。国税庁の案内では、これらにエラー情報がないことを確認する方法が示されています。送信済みと説明を受けた場合も、対応する通知を共有してもらうと状況を把握できます。
自社で確かめるチェックリスト
- □ 不満を、質問・依頼の内容や日付などの出来事として記録したか。
- □ 契約書と業務案内で、依頼範囲と担当の分担を確認したか。
- □ 回答を希望する日や、経営判断の予定を伝えたか。
- □ 事業計画や必要資料を、相手が確認できる形で共有したか。
- □ 追加業務の内容と、費用の説明を受ける流れを確認したか。
- □ 改善する内容と、実施状況を確認する時期を合意したか。
- □ 処理中の申告・届出と、資料の所在を把握しているか。
- □ 変更する場合に求める業務と担当体制を言葉にできるか。
チェックが付かない項目は、次に確認する事項です。付かなかった数で乗り換えを決めるものではありません。自社の判断が止まる原因と、それを解消する方法に注目しましょう。
廃業・引退の連絡を受けた場合は、対応終了の予定と、処理中の仕事を整理します。紹介される引継ぎ先があるときも、自社の希望する業務を受けられるかを確認しましょう。変更を進める際の負担や注意点は、【2026年版】税理士変更のデメリットは5つだけ|リスクを抑えてメリットを最大化する方法で扱っています。
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まとめ
税理士を変えたいときは、不満を具体的な出来事に置き換え、契約と実際の対応を確かめましょう。連絡は回答までの流れ、提案は欲しい判断材料、料金は請求と業務の対応を整理します。希望を伝えた後の改善の見通しを見て、自社に必要な支援を受けられるかを判断します。申告の進捗が不明な場合や廃業・引退の予定がある場合は、処理中の仕事と引継ぎの確認を先に進めましょう。
よくある質問
Q. 不満があれば、すぐに解約を伝えた方がよいですか?
まず、困っている内容と希望する対応を整理しましょう。連絡方法や業務範囲の調整で改善する見通しがあるかを確かめます。解約を検討する場合は、契約条件と処理中の仕事を確認してから、終了時期や担当の区切りを話し合います。
Q. 提案がないことだけで、変更を決めてもよいですか?
欲しい提案の内容、契約範囲、共有済みの事業情報を先に確認しましょう。何を判断するための支援かを伝え、対応できるかを確かめます。求める支援と提供される業務が合わないことは、契約を見直す判断材料になります。
Q. 期の途中で変更を考えた場合、何から確認しますか?
現在の契約条件、申告・届出の進捗、帳簿や資料の所在から確認します。そのうえで、引継ぎ先が対応できる時期と、どこまでの仕事を誰が担うかを調整します。変更時期の詳細は、個別の契約と業務の状況に沿って検討しましょう。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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