税理士への問い合わせや見積りの依頼は、最初のメールに「誰が・何を・いつまでに・今どんな状態で」頼みたいかを書くと、返信が早く、見積りの前提もずれにくくなります。特に、法人か個人事業主か、決算月(個人は確定申告の年分)と次の申告期限は、事務所が引き受けられるかを判断する材料になります。
この記事では、問い合わせメールに書く要素、期限の書き方、場面別の例文、送る前に確かめることを整理します。見積りの金額を左右する条件や、打合せで聞いておきたい質問は顧問税理士に見積りを頼む前にで扱っているので、あわせて読むと準備が整います。
問い合わせメールに書く6つの要素
税理士事務所は、問い合わせの内容から「対応できる業務か」「期限に間に合うか」「どのくらいの作業量か」を見ます。次の6つが書いてあれば、最初の返信で具体的な話に入りやすくなります。
| 要素 | 書く内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 1. 件名 | 「顧問契約のお見積りのご相談(法人・飲食業)」のように、用件と属性 | ほかの問い合わせと並んでも用件が一目で分かる |
| 2. 依頼者の属性 | 法人か個人事業主か、業種、所在地、設立・開業の時期 | 法人と個人で申告の種類と期限が違う |
| 3. 依頼したいこと | 顧問契約、決算・申告だけ、確定申告だけ、記帳から任せたい、税理士の変更 など | 業務の範囲で作業量が大きく変わる |
| 4. 時期と期限 | 決算月と次の申告期限、個人は何年分の確定申告か、いつから依頼したいか | 期限に間に合うかを最初に判断する |
| 5. 今の状態 | 会計ソフト、記帳を誰がしているか、取引の量(口座・カードの数)、給与を払っている人数、消費税の申告の有無、今の税理士の有無 | 見積りの前提になる |
| 6. 返信の希望 | 連絡しやすい手段と時間帯、オンライン面談の可否 | やり取りの往復を減らす |
「5. 今の状態」は、分からない項目があってもかまいません。「会計ソフトは未導入」「口座は2つ、カードは1枚」のように、分かる範囲で書けば十分です。売上の規模を書くときは、直近の決算書や確定申告書の数字を使うと、事務所側の見立てとずれにくくなります。
期限の書き方:法人と個人事業主で基準が違う
期限は、事務所が最初に確かめる項目です。法人と個人事業主では申告の種類と期限が違うので、どちらの期限かが分かるように書きます。国税庁『申告と納税』は、主な国税の期限を次のように示しています。
| 区分 | 申告 | 申告期限 |
|---|---|---|
| 法人 | 法人税 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
| 法人 | 消費税(課税事業者) | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
| 個人事業主 | 所得税(令和8年分) | 令和9年3月15日(月)。窓口での相談・申告書の受付は令和9年2月16日(火)から |
| 個人事業主 | 消費税(令和8年分・課税事業者) | 令和9年3月31日(水) |
申告期限・納期限が土曜日、日曜日、祝日等にあたる場合は、その翌日が期限になります。また、消費税の確定申告の期限の延長特例の適用を受けている法人は、事業年度終了の日の属する課税期間の消費税の申告期限が1か月延長されます(国税庁タックスアンサーNo.6601)。法人税には、定款等の定めにより決算の定時総会が2か月以内に招集されない常況にある場合などに、税務署長への申請で申告期限を原則1か月延ばす特例があります(法人税法75条の2)。延長の特例を受けている法人は、そのこともメールに書いておきます。
メールには「3月決算の法人で、次の申告期限は2027年5月31日です」のように、決算月と具体的な日付を両方書くと、読み違いがありません。期限まで日が少ない場合は、件名に「申告期限が迫っています」と添えると、事務所側も優先して確認できます。
場面別の例文
以下は書き方の例です。〇〇の部分は実際の内容に置き換えてください。会社名・人名・数字は説明のための架空の例です。
例文1:法人が初めて顧問契約を相談する
件名:顧問契約のお見積りのご相談(法人・小売業)
〇〇税理士事務所 ご担当者様
株式会社〇〇の〇〇と申します。顧問契約のお見積りをお願いしたく、ご連絡しました。
・会社の概要:株式会社、小売業、所在地〇〇、2024年設立、3月決算
・ご依頼したいこと:月々の記帳の確認と相談、決算・申告(法人税・消費税)
・時期:2027年3月期の決算から依頼したいと考えています(申告期限は2027年5月31日)
・今の状態:会計ソフトは〇〇を使用し、記帳は社内で入力しています。事業用の口座は2つ、カードは1枚、給与は役員1名・従業員3名に支払っています。消費税は課税事業者です
・ご連絡:メールでのご返信を希望します。オンラインでの面談も可能です
直近の決算書は、ご指定の方法でお送りできます。よろしくお願いいたします。
例文2:税理士の変更を考えている
件名:税理士の変更に伴うご相談(法人・建設業)
〇〇税理士事務所 ご担当者様
株式会社〇〇の〇〇と申します。現在、別の税理士と顧問契約をしていますが、契約の見直しを考えており、お見積りをお願いしたくご連絡しました。
・会社の概要:株式会社、建設業、9月決算
・ご依頼したいこと:顧問契約(月々の相談、決算・申告、年末調整)
・時期:2027年9月期の決算から切り替えたいと考えています。今の契約の解約予告期間は〇か月です
・今の状態:記帳は今の税理士事務所に依頼しています。会計ソフトの変更が必要かどうかもご相談したいです
・ご連絡:平日の日中は電話がつながりにくいため、メールでのご連絡を希望します
よろしくお願いいたします。
変更の理由を詳しく書く必要はありません。今の税理士との契約の解約予告期間と、預けている帳簿や資料の状況が分かれば、切り替えの時期を具体的に相談できます。変更の手続の流れは税理士の変更手続きと注意点で扱っています。
例文3:個人事業主が確定申告を相談する
件名:令和8年分の確定申告のご相談(個人事業主・デザイン業)
〇〇税理士事務所 ご担当者様
個人でデザインの仕事をしている〇〇と申します。令和8年分の確定申告について、ご相談とお見積りをお願いしたくご連絡しました。
・事業の概要:個人事業主、デザイン業、2023年開業、青色申告
・ご依頼したいこと:令和8年分の確定申告書の作成と提出。今後の顧問契約も検討しています
・今の状態:会計ソフトに入力していますが、期中の記帳が途中までです。事業用の口座は1つ、カードは1枚です。消費税の申告は〇〇(している/していない)
・ご連絡:メールでのご返信を希望します
よろしくお願いいたします。
送る前に確かめること
- 宛先が税理士・税理士法人か:税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)は、税理士・税理士法人でない者が行ってはならないとされています(税理士法52条)。宛先の事務所が税理士として登録しているかは、国税庁『税理士をお探しの方へ』が案内するとおり、日本税理士会連合会のホームページで確かめられます。
- 最初のメールに書きすぎない情報:マイナンバー、口座番号、取引先の個人名などは、最初のメールには書かず、契約や送付方法が決まってから渡します。
- 決算書などの添付:添付する前に、事務所が指定する送付方法(共有フォルダ、パスワード付きのファイルなど)を確かめます。
- 複数の事務所に送るとき:同じ内容で送ると、見積りを比べやすくなります。
- 返信がないとき:迷惑メールのフォルダを確かめ、数日たっても返信がなければ電話や問い合わせフォームで届いているかを確かめます。
返信が来たあとの流れ
事務所によって順番は違いますが、返信のあとは、面談(対面・オンライン)で詳しい状況を確かめ、資料を見たうえで見積りが出る、という流れで進みます。面談で聞いておきたい質問は顧問税理士に見積りを頼む前ににまとめています。
- 返信の内容を確かめ、面談の日程と方法を決める
- 求められた資料(直近の決算書・申告書、試算表など)を指定の方法で送る
- 見積りと業務の範囲(何が含まれ、何が別か)を受け取る
- 複数の事務所の見積りを、同じ項目で並べて比べる
- 契約書で業務の範囲と解約の条件を確かめてから契約する
見積りを比べたうえで依頼しないと決めた事務所には、短くてよいのでお断りの連絡を入れておくと、相手も予定を組みやすくなります。断るときの文面は税理士への断り方・解約メールの文面例にあります。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
まとめ:最初のメールで「誰が・何を・いつまでに」を伝える
- 件名に用件と属性(法人・個人、業種)を書きます。
- 本文には、依頼者の属性、依頼したいこと、時期と期限、今の状態、返信の希望を書きます。
- 法人は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人事業主の令和8年分の所得税は令和9年3月15日が申告期限です。決算月と日付を両方書きます。
- マイナンバーや口座番号は最初のメールに書かず、送付方法が決まってから渡します。
- 宛先が税理士として登録しているかは、日本税理士会連合会のホームページで確かめられます。
最初のメールで前提がそろうと、事務所ごとの見積りや対応の違いを、同じ条件で比べやすくなります。
顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 問い合わせフォームしかない事務所には、どう書けばよいですか?
フォームの項目が限られている場合は、自由記入の欄に、この記事の6つの要素を箇条書きでまとめて書きます。フォームに会社名やお名前の欄があれば、本文では繰り返さなくてかまいません。
Q. 売上や利益の数字は、最初のメールに書いたほうがよいですか?
おおよその規模を書いておくと、見積りの前提がそろいやすくなります。正確な数字は、直近の決算書や確定申告書を送るときに伝えれば足ります。数字を書く場合は、何年何月期の数字かを添えます。
Q. 期限まで時間がない場合でも、問い合わせてよいですか?
期限が近いほど、早く問い合わせるほうが選べる事務所が多くなります。件名と本文の最初に申告期限の日付を書き、今ある資料の状態を具体的に伝えると、引き受けられるかどうかの返事を早くもらえます。
Q. 税理士の変更を考えているとき、今の税理士にはいつ伝えればよいですか?
新しい事務所の見積りと業務の範囲を確かめ、切り替えの時期が決まってから伝えると、引継ぎの段取りを具体的に話せます。その前に、今の契約書で解約予告期間を確かめておくと、切り替えられる時期の見当がつきます。預けている帳簿や申告書の控えの返却も、あわせて相談します。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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